第四十八話
今年最後の投稿
「んがぁ」
「んぷっ」
将和は顔に手が当たった拍子に目が覚めた。枕元にある時計を見れば時刻は0636を指していた。どうせ0600には起きる予定だったので将和はごそごそと布団を取る。布団を取れば将和は裸でありその隣にはイビキをかく麗蓮が同じく裸で寝ていた。どう見ても夜戦をしていたんですね分かります。
そんな作者の叫びを無視しつつ(でも最近、初彼女が出来ました)将和は身なりを整えて部屋を出て一階の食堂に向かうのである。
「あら、もう起きたの?」
「麗蓮の裏拳で目が覚めてな」
「あら、夜の躾が足りなかったのかしら?」
「勘弁してくれ……」
食堂で朝食の準備をしている夕夏(メイド服姿)に将和は軽い会話を入れる。
「ごはんは0700には用意出来るわ。ついでに皆を起こしてきて頂戴な」
「ほいほい」
夕夏に言われ将和は食堂を後にして各部屋に向かう。最初に入ったのはタチアナ、アナスタシアの部屋である。
「朝だぞ二人とも」
「うん……」
「ふわ……」
それぞれのベッドに寝ていた二人は将和に起こされながらゆっくりと起き上がるのである。それを確認した将和は二人の頬にキスをして部屋を後にする。次に入ったのは夕夏との子である将弘と将治の部屋だった。だが部屋に入れば既に二人は起きており歯を磨いていた。
「あ、おはよう父さん」
「おはよう」
「おぅ、早起きだな」
「勘弁してよ。此方は前の記憶もあるから早く起きる習慣になってるからな」
「右に同じく」
将和の言葉に二人は頷く。この二人も前世の記憶を持っており、覚醒したのは夕夏に悪戯をしてしばかれた時らしい。(どのようにしばかれたのは黙秘している)
「0700には食堂な」
「へいへい」
「りょー」
将和はそう言って部屋を後にし次々と部屋を回って子ども達を起こしてくるのである。
「はい、揃ったわね」
最後に夕夏が椅子に座り将和が手を合わせた。
「頂きます」
『頂きます』
そして三好家の朝の朝食が始まるのである。なお、今日の献立は麦飯、味噌汁(豆腐とネギ)、目玉焼き、梅干し一つである。将和は味噌汁に口を付けつつ目玉焼きを麦飯に載せて少しだけ割り黄身を出しつつ醤油をサラサラっと投下、空かさずぐちゃぐちゃに掻き回してそのまま食べるのである。
「お父さん、今日は帰ってくるの?」
「ん、あぁ。今日は船には乗らないからね」
「わぁ、じゃあ遊ぼうね」
「私も私も」
「僕も僕も」
「………」
ターニャの次女であるアンナは喜び将和に微笑む。将和の言葉を聞いたシルヴィアの長女オリヴィア、グレイスの長男和将が声を上げ、レティシアの長女ジャンヌは無言だったが顔をブンブンと頷いていた。
「こら、遊ぶのは良いけど食べている時は声を荒げないようにね」
『は~い』
アナスタシアの言葉に子ども達はそう言い食事を再開するのである。そして朝食後、将和達は準備をして仕事先に向かう。
「グレイスとシルヴィアは?」
「横須賀空での試験飛行だな」
「艦戦の試作機が出来たみたいですからね」
この時、中島飛行機が新型の試作機開発に成功しその一号機と二号機をグレイスとシルヴィアの二人が担当する事になっていた。当初は外人というのもあり海軍航空隊から警戒はされていたが将和の愛人+ww1のベテランパイロットだと判り掌クルーをして特殊枠としてそれぞれ大尉と中尉の階級を貰い勤務していた。ちなみに新型機とは史実の九〇式艦戦であり工業力が上がっていた事もあって史実より早くに登場していたのだ。
なお、この機は八九式艦戦として採用されるのである。
「急降下爆撃機は無いのか?」
「それはドイツかなぁ」
「(´・ω・`)」
ズイッとハンナが話に入ってきたが将和の言葉に肩を落とすのである。なお、レティシアは軍を退役し今はフランス料理(地方料理)を三好家に作りつつ将和のメイド二号になっている。ちなみにメイド三号は麗蓮(屋敷内の護衛担当でもある)である。
「それでマサカズは今日は?」
「あぁ。陸さんが軽装甲車を完成させたらしいからそれの見学だな」
グレイスの問いに将和はそう答え迎えの車で歩兵学校戦車隊が駐屯する千葉の陸軍歩兵学校に向かうのである。
「やぁ三好少将」
「やぁ東條さん」
戦車格納庫に案内されると東條や杉山らが将和を出迎えた。
「新型の軽装甲車が出来たと聞きましたよ」
「試作のですがね」
東條はそう言って合図をして格納庫の扉が開く。奥には一両の軽装甲車が鎮座していた。
「これは……って九二式……ですよね?」
「その通り」
将和の言葉に杉山はニヤリと笑う。鎮座していたのは史実では九二式軽装甲車と呼ばれていた軽装甲車だった。
「と言っても違うとすれば装甲とエンジンくらいだ」
「何ミリに?」
「25ミリだ。史実チハと同等だな。エンジンは甲式四型の水冷300馬力のをデチューンした」
「へぇ、速度は?」
「フハハハ。何と55キロときたもんだ」
ガハハハと笑う東條と杉山である。
「ほぅ、それは凄いな」
「本当は九五式相当を作りたかったが……まぁ予算がすこーし足りなかった」
「まぁ世界恐慌始まったからな……それでエンジン関係はどうするんだ? 前回と同じくガソリンでいくのか?」
「一応両方を視野に考えている」
「まぁ前回のと比べたら+三倍は向上してるからな工業力」
なお、史実日本からすれば現時点で約七倍の工業力を持っている三周目である。
「取り敢えずはこれで機甲科を発展だよ」
「期待してるぞ」
そして日本の政治はというと、何とか水際対策をしていた。史実では1929年2月に金本位制に復帰して正貨を流出させていたが前回と同じく復帰はしない継続をしていたので流失は防げていた。
また、生糸の輸出先も主はアメリカだったが世界恐慌が起きる前年の1928年頃からイギリス、フランス、シベリア等に振り分けており若干の損失は出ていたがそれでも史実と比べたらまだマシな方である。
なお、昭和農業恐慌も若干ながら(生糸)発生していたが台湾等からの米流入は防がれており米価下落はしていなかったので豊作でも取り敢えずの問題は無かった。だが翌年は冷害による大凶作による被害も予想されていたが水稲農林1号が1928年に育成され耐冷性を持つ事が確認された事で東北・北海道地方では農林1号が史実より早くに投入されていたので然したる被害も無かったのである。
また、蔵相の高橋是清による積極的な歳出拡大も史実と同じく行われるのである。
そして1930年1月21日、イギリス首相であるラムゼイ・マクドナルドの提唱によりイギリスのロンドンにて列強海軍の補助艦艇保有量の制限を主な目的とした国際会議が開かれた。ロンドン海軍軍縮会議である。
1922年に締結したジュネーブ海軍軍縮条約は主に戦艦と空母の制限であり巡洋艦以下の補助艦艇の建造数に関しては無制限だった。主力艦艇を制限したのに補助艦艇を増やされては厄介である。特に米英は日本を注視していた。この結果として日米英は条約内で可能な限り高性能な条約型巡洋艦の建造に踏み切る事になる。
日本では『古鷹』型『青葉』型『妙高』型等が条約型巡洋艦である。実は1927年に第二次ジュネーブ海軍軍縮会議にて補助艦艇の制限について討議されていたが英米の主張が対立した事により決裂に終わっていた経緯があった。その後の予備交渉で英米の進展があったので開催する運びとなったのだ。(ただ、英米の進展が僅か数日で片が付いたので不審な点はあった)
日本は代表団の首席全権に原総理、副首席に斎藤博外務省情報局長、海軍担当顧問として軍事参議官の岡田啓介大将、そして将和が前回と同じく参加していた。(また、シルヴィアとグレイスも里帰りをするために同行していた)
『万が一があるのでジュネーブ同様に軍縮内容は筆談で』
将和が記入した紙を見た原達は無言で頷いた。なお、米英は日本に宛がわれた部屋には予想通り盗聴器を仕掛けており軍縮以外しか話さない日本側に相当な苦労をした。
「軍縮の内容を全く話さないぞ」
「クソッタレ。盗聴器を仕掛けられていると踏んでいやがるな」
「これでは交渉が上手くいかない恐れがあるな……」
盗聴していた者達はそう呟く。というよりも英米は学習能力が無いのかと将和は後日そうインタビューしていた。
とまぁ大体は気付いていると思うが第二次ジュネーブ時にイギリスからアメリカへ接触があったのだ。
「日本を抑えるしかない」
元々イギリスはそうする気は無かった。しかし、ww1に発生したヴェルダンでの一件を日本の同盟国であるイギリスにフランスはねちねちと愚痴を言って仕舞いにはカネをもせびるようになってきた。フランスの態度にイギリスは当初無視していたがフランスがイギリスの植民地であるオーストラリア等に色々と吹き込んでいたようで反日感情が下から突き上げられていたのだ。
そのため、イギリスは方針をやむを得ず転換し
アメリカに接触してきたのだ。アメリカはイギリスが接触してきた事にチャンスと捉え内密に共同作戦を取る事にしたのだ。だが日本が前回と同じく軍縮以外の事を話すので両国は頭を抱えるばかりだった。
そして初日の会議にて原は発言をする。
「日本は対英米七割を希望する」
日本代表団の盗聴に失敗していた英米は日本の主張に内心、安堵と舌打ちをしていた。
(七割か。もう少し削れるか……?)
(くそ、予め分かっていたら対策は取れるのに……)
マクドナルド首相とスティムソン国務長官はその思いを口に出さずに交渉を続けた。そして将和はというと発言をする事はなかった。一応代表団入りをしている将和だが特に際立って発言する事は無いので大人しくしていた。
そして初日の会議が終わると出てきた将和は記者達に詰め寄られた。
「リア・アドミラルミヨシ!! 久しぶりのイギリスの地を踏んだ気持ちは!!」
「前回来た時より風景が変わってなくて良かった。変わっていたら迷子になりそうだったよ」
「リア・アドミラルミヨシ!! 今回の軍縮の気持ちを一つ!!」
「リア・アドミラルミヨシ!!」
「リア・アドミラルミヨシ!!」
「リア・アドミラルミヨシ!!」
外国の記者達に囲まれた将和は出来る限りの取材に答えるが時間が来たのでその場を離れようとする。その時、将和の視界に一人の子どもと一人の女性が映ったのである。
「………マサカズ……」
記者達に囲まれた将和を見てわざわざアメリカから駆けつけたアメリカ人がいた。
シャーロット・ウィルソン(愛称はシャーリー)。かつて将和と交友だったラッセル・ウィルソンの娘だった。将和を確認したシャーリーは気付けば大粒の涙を流していた。
「ヴっ……ヴェっ……マサカズゥ……」
「お姉ちゃん泣きすぎ……」
「だ、だって漸くマサカズに会えたんだぞ……しかもシェリルの一族はスペイン風邪で早くに亡くなったからシェリルにも会えずじまいだし……」
「それはそうだけど……」
「しかも、ちゃっかりマサカズの周囲には愛人が増えてると思うし……まぁそれは良いんだけど」
「それは良いの?」
「だってマサカズだし? それにマサカズの夜は激しいから腰が抜けるし……」
頬を赤らめてイヤンイヤンと身体をくねるシャーリーにセシルは溜め息を吐く。
「でも肝心のお兄さんに記憶があればいいけど……」
「大丈夫だろ。だって私とセシルにもあったし、ならマサカズにも記憶はあるだろ」
アッハッハッハと笑うシャーリーだがそれは将和を信頼して故の発言である。
「ヨッシャ。というわけで感動の再会といこうか!!」
「どうするの?」
「無論、突撃あるのみ!! 『CHARGER』ィィィィィィィィィィィィィィ!!」
シャーリーはそう言って囲む記者達に向かって突撃を開始したのであるがそれを見てセシルは再び溜め息を吐くのであった。
「ちょっと退きなさいよ!!」
「五月蝿いぞ!!」
「てかバストでかいな」
「誰だ!? セクハラで訴えるぞ!!」
「リア・アドミラルミヨシ!! 一言を!!」
シャーリーは記者達の波に揉まれながら将和らに近づこうとするが記者達に阻まれて将和の近くまで行く事が出来ない。
「こんのぉぉぉぉぉ!!」
シャーリーは力ずくで将和の元に近づくが、代表団は用意されていた馬車に乗り込もうとしていた。
「ヤバ……すぅ………………リア・アドミラルミヨシィィィィィィィィ!!」
咄嗟にシャーリーは叫んだ。その声は将和の元にも届いて思わず振り返った。
「……?」
「おい将和、早く行くぞ」
「あ、あぁ。すぐに行き――」
将和をサポートするために渡英した長谷川清に促されて乗り込もうとした時、シャーリーは再び叫んだ。
「あの!! ラッセル・ウィルソンを知っていますか!?」
シャーリーの言葉に将和は動きを止めて振り返った。
「ラッセルだと……?(そうか……来たかシャーリー……)」
将和はシャーリーをまじまじと見つつ久しぶりに出会えた愛しい人に微笑みシャーリーにこう告げた。
「……わかった。取材を受けよう。だが今は時間がない。後で日本使節団のところに来たまえ」
「将和!!」
「すぐ行くって!!……君の名前は?」
「シャーリー……シャーロット・ウィルソンです!」
「良かろう。ではシャーリー、また後で。あと、来る時に後ろで君を待っているお嬢さんにも一緒に通してあげるようにしておくから、連れて来たまえ。それではな」
将和はそう言ってシャーリーにウインクをし馬車に乗り込みその場を後にした。
「相変わらず若い女性には甘いな」
「ばっか。お前じゃあるまいし。てかあの子は違うさ」
「じゃあなんだ?」
「……あの子は私の古い戦友の家族だろう(それと未来の愛人だな)」
隣に座る長谷川に将和は言う。なお、愛人の事は言わない事にしたのである。
「というかあれ、シャーリーちゃんだろ?」
「感動の再会なんだから余韻に浸らしてくれよ」
「お前が言うな」
将和はそう言うのであった。そしてシャーリーはと言うと……。
「……ヒヤッホォォォウ!! 単独インタビューとマサカズからウインクを貰ったぜぇぇぇぇ!!」
「……多分お兄さん、記憶があるんだろうなぁ……」
大喜びをするシャーリーを横目にセシルはシェリルにそう言うのであった。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m




