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第三話:ローポリは計算され尽くした技術の結晶!

全編完結済み。連続投稿になりますのでこちらは第三話となりますのでご注意をお願いします

私としては是が非でもこの平穏な日々を護るためにも婚約自体を回避したいのだけれど、御本人にお逢いしてその人となりを知るまではとジュリアが言うのでお会いすることにした。


比喩ではなくシャンネ()とジュリアは一心同体


私の決断がジュリアの人生になる


「御姉様行ってらっしゃいませ」

弟のクリスが玄関で見送ってくれる


私が十才、クリスが八才、言葉遣いも貴族らしくなったけどまだまだかわいい、最近は抱きついてきてくれなくなったのが少し寂しいと私達は夢の中で話し合ったりもしている



お父様に連れられ謁見の間ではなく王城の中にある庭園の四阿あずまやで王子をお待ちする


「まもなく殿下が来られます。殿下の許しが出るまで頭を垂れお待ち下さい」


この日のためにアンや使用人たちが目一杯気合を入れて私を着飾ってくれた。気持ちはありがたいのだけれどコルセットでギュウギュウだし頭を下げているだけでしんどい早く来てくれないかしら、そんな事を思いながら耐えていると頭の中にクスクスと笑い声が聴こえる

(意識だけで苦しくないからってひどいわ!)


(え!シャンネ私の声が聴こえるの?)


今まで私達は夢の中でしか話すことは出来なかった、これはゲームが始まった?本編は入学からだけどこのシーンがゲーム内でも流れるからジュリアも出てこれるようになったのかもしれない


(こうやって夢の中以外でもシャンネとお話ができるなんて嬉しい!)


(私もよ、これからはいつでも一緒ね)


辛いだけの時間もこうやってジュリアと話せるだけでとても幸せな時間に変わる。五年近く一緒にいるのに夢の中でしか会えなったジュリアとこうやって会話を交わせるのが嬉しい


「面を上げろ」


いつの間にか王子が来ていたみたいお父様と一緒に顔を上げ…すぐに俯いた


「どうした?」


「これはこれは、どうやら我が娘は少々照れ屋なところがありまして」

お父様がフォローを入れていくれているが

 

(怖い、怖い怖い怖い)

(ねぇ…シャンネ、あれは『人』なの?)

ジュリアの声も震えている


間近で見た殿下はゲームのイベントそのままにローポリ…いえローポリとは計算し尽くされた技術の結晶のはずよ!愚弄するにも程がある、テクスチャも雑な上にズレてあれはもう人の原型を留めていない!不気味の谷も裸足で逃げ出すレベルよ


「フッ、仕方あるまい私の美貌を間近で見るのだからな」

勝手に納得している。人を見かけで判断してはいけないとは私も思うけど比喩じゃなくて次元が違うのよ!


「そなたの噂は聞いておるぞ、使用人や領民に公爵令嬢の身分を笠に随分と酷い事を強いるらしいじゃないか」


「殿下、それはシャンネの幼き頃の過ちでございます。我が娘は改心しその罪を償うべく努力を」


「どうだか…大方私との縁談にの為に芝居を打っているだけじゃないのか?まあ我の嫁になりたいと思う気持ちはわからんでもないが」


足を組みフッと髪をかきあげながら嘲笑してくる殿下


人の話を遮る、噂で人を判断する、自意識過剰

(…)

 

「いかに殿下と言えどもお戯れが過ぎますぞ」

お父様も顔には出さないが怒ってくれているのが救い


「着飾ってはいるが顔色も悪く病弱そうだ、そんな身体で予の子を産めるのか?これは『政略結婚』だ最低限の勤めも果たせぬのらば意味がないでわないか」


解っている。私(達)は貴族として生まれたからには自由な結婚など無い、それでも結婚した後からでも愛を育めるよう努力し合うもののはず、お父様とお母様が正にそうだ。


解っていてもあからさまに「物」として扱われて平気なわけじゃない。



悲しい、やるせない気持ちが溢れてくる泣いてはいけないと思っていても涙が溢れて零れ落ちそうになる


(シャンネ、帰りましょう)


(でも…)


(ごめんなさい、私が逢ってみてからと言ってしまったからシャンネに辛い思いをさせてしまった)


(私の人生は貴方ジュリアの人生でもあるもの、ジュリアは間違ってないわ)


(いいえ、貴方シャンネが私を想ってくれるように私もシャンネを想ってる。だから無理をしないで)


ジュリアの気持ちが温かくて別の意味で泣きそう


(ね、帰りましょう)


(ジュリア…ありがとう)


ジュリアの後押しのお陰で私も覚悟を決める


「殿下、申し訳有りません。殿下の言われる様に私は昔粗暴で今はこの様に体の具合も良くありません。殿下の望まれるお子も産めぬかもしれません。このお話は辞退せせていただきとうございます」


「は?まさか貴様は予の申し出を断るつもりか?」


「そうでございます」


信じられない物を見たといった様子の殿下は腹を立て


「ここまでの侮辱を受けたの初めてだとっとと出ていくが良い!」


「申し訳ございません」


来たときの歓迎とは逆に帰りは案内もなくお父様と二人だけで城を後に馬車に乗り込む



「おと…うさま…申し訳ありません…」


馬車に乗ると同時に今まで我慢していた涙が溢れ堰を切って流れ落ちる


「良いのだ」

そう一言だけ呟きお父様は優しく抱きしめ続けてくれた。私は泣きつかれて眠ってしまい目が覚めるとお母様のお部屋に居て、お母様が私を抱きしめたまま添い寝をしてくれていた。私もお母様を抱きしめていてその日は朝まで一緒に眠った


 

「奥様、お嬢様、朝にございます」

メイド長のテネに起こされ


「お母様、おはようございます」


「おはようシャンネ」

お母様は昨日のことなにもを聞かずにもう一度私を抱きしめる


家の中の誰も『昨日』の事には触れず、まるで昨日の事は無かったように振る舞ってくれている。


でもアンや使用人たちの雰囲気がいつも以上に優しい気がする


(みんないい人たちね)


(おはようジュリア、昨日はありがとね)


それからは王家からの呼び出しもなく婚約の話も立ち消えになった様で、私達は平穏な日々が戻ってきた事に安堵をしていたのだけれど


廊下で見かけたアンと同僚がとても機嫌悪そうに仕事をしている。アンを含めて公爵家の使用人たちは普段そういった態度は見せない、気になったので声をかけたのだけど


「何でもございませんよお嬢様」


そう言って笑顔ではぐらかされてしまった。

(これはなにか隠しているわね)

(ジュリアもそう思う?)

(当たり前よ特にアンは私達が幼い頃から一緒にいるのよ気づかないわけ無いでしょう)

(そうよね)


私達はこっそりと使用人たちの休憩部屋の前に行き聞き耳を立てる


「全く!信じられないわ!シャンネお嬢様がそんな下品な振る舞いなんてするわけがないじゃない!」


「私も!今日お使いに出た肉屋でもお嬢様を誹謗する様な下世話な話をされたわ、頭に来たけど騒いだらあっちの思うつぼ、でも癪だから妻子持ちのくせに肉屋の店主が入れあげているお店の女の子の話を匂わせてやったら黙り込んだわ!」


どうやら私の良からぬ噂を振りまいている人間が居て彼女たちが噂を潰して回ってくれているのね。


皆ありがとう大好きよ


噂の出処は…

(言わずもがなね)


私達はため息をつくのだった

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