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八十三話

 メモ帖を手にしながら道と森の境界線を進んでいく。

 離れた場所で戦闘班の人達がゴブリン討伐の遠征をしている為に、激しい戦闘音が届いてくるんだけど……掛け声とか切りかかる時の声が凄く大きい。彼等は今日も絶好調のようだ。

 そんな訳でゴブリンに対して、予想以上の囮役として大活躍してる彼等を背にしてのマッピング作業中。

 因みにそんな戦闘をしている人達は、全て男性で編成。お姉さんが女性の同行を一切許さなかったようだ。


「しかし、かなり離れたはずなのにまだまだ声とか届いてくるね」

「みゃん!」

「気合が入って良い事だって? まぁ、そうだね。あの状態なら万が一も無いだろうね。それにしても、この森も相当広そうだなぁ」


 進む方向を見れば側面は全て森だ。雀蜂の時みたいに、どこかで円形状になっている可能性もあるが、森全体が生命が感じられない状態の影響下の可能性もある。

 一応だけど、この不思議な森のコードネームとして協会は〝無の森〟とした。凄く安直な気もするけど、解りやすい。


「無の森と普通の森の境界線が森の中にあれば良いんだけど……現状そんな気配もなさそうだよね」


 偶に片足を森側に入れると、その気配の違いが感じられる。これは、雀蜂の時と同じだから調査は容易となる。

 しかし、このまま真っ直ぐいけばダンジョンの近くまで進むけど……その場合どうなってたっけ。


「たしか……真っ直ぐ進んだらT字に道が分かれてて、右に行くとダンジョンだったな」


 左へと向かえば違う町へと向かう事が出来るかも知れないが……今は別に良いとして、この道だけど元々は十字路だったはずだが、道が一つ森で埋まってしまったのかT字となった。

 これは二年の間に自然の驚異的な侵食の結果だろう。むしろ何故他の道が健在なのか……そっちのほうが不思議だ。

 とはいえ、問題はこのまま真っ直ぐ進んだとして、この〝無の森〟の影響があるのが道を挟んでになれば、とんでもなく広範囲になるので実に面倒な話だ。


「それにしても、イオは楽しそうだな」

「ミャンミャン」


 悠々と歩くイオ。まぁ、ゴブリンもイオを見た瞬間に去っていくから、強者の格付けみたいなものを感じて気分が良いのだろう。お陰で、邪魔をされることなく調査できるが……これなら、彼等の囮戦闘は必要だったのだろうか? うん、魔石回収がメインだと思っておけば気が楽になるか。

 まぁ、こっちはこっちでドンドン先へと進んでいこう。




 いつの間にかに戦闘音は聞こえなくなり、順調に調査を進めていくと、道がT字になってる場所へとたどり着いた。


「さて……前はこのまま右へと行ってダンジョンに向かったんだけど、今回は左に向かうわけだ。とはいえ、道沿いにこの〝無の森〟が変化してくれてると良いんだけど」


 そんな期待を胸に、左側へと足を踏み入れる。


「……よかった、道は〝無の森〟の影響下に無いみたいだ」

「ミャーン」


 念の為に道の右側も調査してみるが違和感なく普通の森だと発覚する。これなら道沿いに、また左側を調査して行けば良いだろう。

 その旨をメモ帖に図面と共に一文を添えてから調査を再開し、イオの先導で進んでいく。此処からは、右側の森に居るだろうモンスターの調査も必要だ。


 現状において解ってる事が、道やら川やらと何か変化がある所でモンスターの分布図が変わっている。

 なら、今進んでいる道の右側にいるモンスターは、ゴブリン以外の可能性が高い事になる。


「まぁ……ダンジョン側でって考えるとオーク辺りかな?」

「ニャン!」


 オークと言うワードに反応するイオ。少し涎が出ているな……オークの肉は食べさせた事が無いけど、本能的に美味しいものだと理解しているのだろうか?

 まぁ、本当にオークが出るのなら質の良い魔石に肉と、かなりの収穫となるだろうな。うん、オークであれと願っておこう。


 それにしても左側の〝無の森〟だが、その領域が道沿いに曲がってくれたとはいえ、まだまだ真っ直ぐ続いている。

 これまた前をみれば森が続いているので、左に曲がる道でも見つからない限り、まだまだその範囲が続いていくのだろうか。


「そうだとすると……次の村だか街だかを先に見つけてしまいそうだな」


 街を見つけた場合は……まぁ、前回と同じ対処だろう。とはいえ、村から距離がありすぎる場所だ。昔みたいに、バスやら電車が通ってるのであれば別だが……今はそんな物は無い。

 道の状況や戦闘を考えれば、常に走り続けれる人でも無い限り数日掛かるだろう。

 それなら、交流するメリットは現状において殆ど無い。あったとしても、お互い生きてて良かったね! ぐらいだ。


「まぁ、それでも十分なんだけどね……とりあえず、イオ何か居そう?」

「ミャン!」


 イオが右を見ながら軽く頷く。どうやら、何かのモンスターが此方を窺っているようだ。

 とはいえ、イオを見て窺う行動をする。それならば、ゴブリン以上だけどそれほど問題が無いモンスターと言ったところかな。


「どうする? 釣るか?」

「ミャン!」


 美味しそうな匂いがするから釣りたいっと……あー、オークが一番の有力候補だなこれは。

 

 鉄串を出そうとして、一旦やめる。釣るなら別に鉄串じゃなくても、そこ等辺にある石でいいだろう。

という事で、足元にある石をオークが潜んで居る場所に蹴り飛ばす!

 ゴン! と鈍い音が響いたと同時。オークが三匹ほど怒りの儘にその姿を現した。うん、上手くあたったのか一匹頭にたんこぶを作ってるね。


「さてイオ、お望みの釣りが成功だ。一気にいけるな?」

「ミャン!」


 鳴き声と共に一足飛び。その姿を追うことがオークには出来なかったのか、イオは瞬く間に一匹のオークを切裂いた。


「うわぁ……イオまた速くなってるな」


 ゴロンと落ちる首。ソレを目視した残りのオークは、何が起きたのか解らないようで驚愕の顔をしている。うん、それは隙だらけだと思うんだけどな?

 一匹のオークに向かって無造作に鉄串を投擲。落ちているオークの生首を凝視しているので、迫る鉄串にオークは気が付くことなくヘッドショットが決まる。

 それとほぼ同時にもう一匹のオークはイオの爪を受け、地面へと倒れこんだ。

 どうやら、イオを相手にすればゴブリンだろうがオークだろうが大差が無いようだ。


「とはいえ、出てきたのは三匹でノーマル種だからな」

「ミャン!」


 上異種が出てきても平気だよ! と鳴くイオを横にオークを解体して、バックパックへとしまっていく。ノーマル種とはいえ、三匹ともなれば結構な収穫だな。

 まぁ、肉に関しては帰るまでに、イオのお腹に結構な量が収納されるだろうが。そう考えると、もう少し量が欲しい気もしてくるから不思議だ。

 とはいえ、今回の目的は〝無の森〟の調査。オークの狩りはついでだから……イオさん、そんなにオークを探そうとしなくても良いんだよ?




 解体も終わらせて調査を再開してから数時間程。そろそろキャンプの用意が必要かな? と思いつつも、先へと進んでいると何やら街の跡地が見え出してきた。


「あら……やっぱり〝無の森〟の境界線の変化よりも先に街が見えてきちゃったか。さて、イオさんや、何か気配とかありそう?」

「ミャン」


 ふむ……今回の街はモンスターの気配も無いようだ。それなら、一晩休むなら丁度良いかもしれない。とはいえ、先ずはこの地にシェルターが在るかどうかを調べないとな。ただ、もしあるのならイオの存在は面倒になるかもしれない。


「ってことで、シェルターがあるか見てくるからさ、イオは街の周囲を警戒しておいてくれる?」

「ミャン!」


 元気よく任せて! と返事をしたと同時にダッシュをして行くイオ。……オークを狩って来たりしないよな? ちょっと心配だ。

 とはいえ、俺は俺で街の調査をしないとな。




 こつこつ、こんこん、壊れた建物を叩き、廃材をどかしながらシェルターが在りそうな場所を調査していく。

 どうやら綺麗に残っている建物は無いようで、もしシェルターがあるなら埋もれているだろう。通気口とか大丈夫かな? それまで埋まってたら……うん、考えたくは無いな。

 シェルターがあるとすれば、頑丈な建物の下に作っているはずだ。その建物を簡単に破壊する……か。ここもオーガクラスのが通ったのだろうか? そうだとするなら、かなり危険なモンスターが思った以上に多い可能性があるかもな。


「お……これがシェルターの入り口かな?」


 入り口っぽいものを掘り出した後、ノックをしてから返答を待つが……返事が返ってくる気配がない。


「警戒しているのか……それとも全滅なのか。どちらにせよ、相手は答える事が出来ないだろうから、前と同じでお手紙作戦で行くか」


 メモ帖を破ってから、お手紙を書いて前回と同じように貼り付けておく。

 どうせ、明日の朝には此処から移動だしな。返事が無いならまた上に全て投げてしまえば良い。


 後は、シェルターからの監視網で見えない部分にキャンプを張ってから、イオを呼び寄せる。

 夕飯はオークの肉をただ焼いて調味料を振り掛けるだけ。すごく簡単な物になるけど、イオは楽しそうに食べているから良しとしよう。

 その後は、イオと交互に警戒しながら就寝。とりあえず、明日からまた大移動をしながら調査だからな、ゆっくり休まねば。


 うん……イオが幸せそうな顔して、オークゥって寝言を言ってるよ。ミャンとしか鳴いてないけど、何と無くそんな感じがするよ。てか、寝るのはやい。

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