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八百六十四話

 あれよあれよという間に、周囲の話は一気に進んでいく。

 一体どの話が? と言うと、全ての事においてだ。


 俺の両親はあの酔っぱらい騒動で吹っ切れたのか、美波さんと一緒になってあーだこーだと日々作戦会議をしている。

 そしてそんな親達を爺様は生暖かい目でみており、ゆいはもしかして次は自分の番では? と戦々恐々としていたりする。……いやはや、まさか悪ノリをするのがゆいじゃなくて両親だったとは。コレは全く予想外だな。



 勿論だけど、そんな私事だけが動いている訳ではない、



 これは、伊勢にいる探索者がリークした情報なんだけど。


「残された武闘派というか過激派が動いたみたいだな。ある意味予想内といえば予想内だったけど」


 彼らがとった行動だけど、普通に考えたら何を思ってそんな事をした? って内容。

 ただ、追い詰められたからこそ、その普通なんてどこか遠くへ飛んでいってしまったのだろうな。


 彼らは、宗教関係なしに纏まるなんて事はせず、各々が独自に迷宮教の拠点へと襲撃を掛けたそうだ。

 ただまぁ……ほぼ同時だったのは偶然なんだろうけど。同じタイミングで生産などの内向きな仕事を行う人が消えたんだ。更に言うなら、女子供が一気に居なくなってしまったという事もある。

 そりゃ、色々な意味で追い詰めれるわな。というのは理解出来るんだけど……。


「まさかほぼ全ての武闘派が攻めに転じるとはなぁ」

「本当に脳筋だったって事だよね」


 面白い事に……いや、こんな事を面白い事なんていったら不謹慎だけど。でも面白い事に、彼らは、偶然にも、迷宮教の拠点を、完全に包囲しちゃったんだよなぁ。示し合わせていなかっただろうにね。ある意味ミラクルを起こしちゃったんだろうなぁ。


 ただこうなると、偶然にも多宗教連合状態になった彼らにも勝ち目が出てきた……ようにみえるけど、残念ながらそんな事はない。

 いやいや、どう考えても有利じゃね? って思う人も居るだろうけど、よく考えてみて欲しい。



 こうした拠点を包囲した場合、どういった意味合いで包囲戦を行うのか? ってのが重要で、考えられるのは大きく分けて二つのモノがある。



 一つ目。完全に包囲して、相手が音を上げるのを待つ。

 これは所謂、兵糧攻めというやつだな。

 結構な人が知っているんじゃないかな? 戦国時代に行われた城を包囲して相手を飢えさせる方法。包囲して、外から持ち込まれるだろう支援物資を全て阻止するなんて意味もあるんだけど……。



 有名な話だと、秀吉の鳥取城攻略がある。

 これは本当に地獄のような話で、秀吉は農民などを鳥取城に追いやって城の兵糧を一気に消費させた。まぁ、これだけなら良い。

 ただその後、当然食べるモノが無くなればどうなる? という話。うん、この世に畜生道と餓鬼道が顕現したと言っても良いんじゃないかな。

 城内で行われたのが、木や草や根などに牛に馬なども食尽くした後に何が起こったのか。まぁ考えたくもない話だけど、実際に行われてしまったのが……カニバリズムだったとか。


 何でそうなる前に降らなかったのか……と思わなくもないけど、そこはプライドやらなにやらがあったんだろうなぁ。ただ、それに農民なども巻き込むのはどうなんだろう? ってのは、現代人の考え方だろうか。



 さて、もう一つ有名な話をあげるなら、こちらは兵糧攻めと言って良いのか? と思わなくもないけど。これまた秀吉の北条攻め。

 小田原城を取り囲んで、連日連夜宴会までやったのだとかなんだとか。この場合は内通者を大量に作り、どんどん離反させていくための時間稼ぎな面もあったのだとか。

 実際、最終的には家族間で疑心暗鬼になりまくって自滅したみたいだし。



 とりあえず! 拠点を包囲して戦うという理由の一つがこの二つの話からわかるように、時間を掛けて真綿で絞め殺すような作戦という事。

 では今回の連合側の状況を考えて、この作戦が当てはまるのかと言うと……。


「ノーだよね。生産に携わっていた人がいなくなったから、追加での物資補給なんて無いだろうし」

「だな。彼らが戦うにしても、今回の一戦がなんとかって感じの物資しか無いと思う。で、今回確実に勝たないと先がない」


 兵糧攻めをした方が、逆に兵糧を無くしてしまうというなんともお粗末な話になってしまう。

 だから、偶然にも包囲する形になったからと言って、そんな長期戦を行うような真似はしないと思われる。



 そうなると必然的にもう一つの理由が浮上してくる。


「包囲圧殺。誰も逃さないよ! っていう殲滅戦だな」

「野戦でもないのに……」

「籠城している相手を攻めるのはかなりの戦力差が必要だからなぁ……」


 美咲さんが言うように、野戦であれば出来なくもない。

 鶴翼の陣を敷いて、相手を包み込むような動きで圧殺していくとか、島津の釣り野伏せとか。やり方は色々あるよね。まぁ、それには指揮官の統制能力がかなり高く、兵の練度がかなり必要なんだけど。


 籠城戦相手だとなぁ……ただただ無為に兵を消耗していく可能性が高いんだよな。

 まぁ、だからこそ歴史上では、兵糧攻めに水攻めやら火計なんて手法が取られていた訳なんだけど。


 ぶっちゃけ、このファンタジー化した世界では、兵糧攻め以外通用しないんだよなぁ。なにせ水攻めも火計も、全部魔法で対処できてしまうから。

 ソレこそいくらでもやり方はある。

 攻撃される前に結界術で結界を張っておくとか、火をつけられたら水魔法で鎮火するとか、鉄砲水が襲って来たら土魔法で迂回路を作ってしまう。と、方法は色々と考える事が出来るんだよね。

 それで、籠城している相手に短期決戦を仕掛けようと思ったら、水攻めや火計が一番なんだけど、ソレが通用しないと。うん、一体どうするんだ? って話になるんだけど、そこはもう人の数で押すか、奇襲か暗殺を仕掛けるしか無いというね。


「ただ、人の数で攻めるってのは無理だろうな」

「え? 何で? 拠点が包囲出来る人数が揃ってるんだよね?」

「揃ってはいるけど、足並みが揃ってないから」


 所詮は烏合の衆。

 ただ偶然にも寄せ集まっただけの人達。そんな人達だから、元々手を組もうと話していた状況と違う訳で……。

 ぶっちゃけ、様子見をする人が多くなるんだよなぁ。だって、誰かが先に突撃してくれたほうが、自分たちの被害が減って迷宮教の拠点を制圧するのが楽になるから。


「足の引っ張り合いが始まるだろうなぁ……で、最終的には」

「自分たちの兵糧が尽きそうになって、コレは不味いって感じで無謀な突撃?」

「そのパターンは大いにあるだろうなぁ」


 なので今回の包囲網。

 実は包囲した側にアドバンテージなんて欠片もない。むしろ、単独で攻めたほうが勝ち筋が有ったかもしれないと思えてしまうレベル。


「それに、今回の包囲している人達が、全て別の宗教ってのも問題だろうなぁ。しかも狂信者達だし」

「他の宗教は全て邪教って考えなんだよね」

「そうそう。だから、この戦いで自分たち以外は全員死ね! とすら考えてる」


 なんなら、少数の部隊をこっそりと動かして、他の陣営を暗殺していく奴らすら現れかねない。

 最初に倒すべき敵の拠点が目の前にあるのに、そんな敵の前でも争い合う可能性があるとか……もう救われんよね。


 一応だけど、同盟を組んでいる者たちも居るけどね? ただ、その同盟って過激派じゃなくて穏健派が色々と動いた結果だから……現状だと余り意味がないんだよな。



 さて、一体全体次のリークはどんな内容になるのやら。

 状況的に迷宮教だけが残ったなんてパターンもありそうなんだけどな。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!ヽ(=´▽`=)ノ



軽く兵糧攻めに関して書きましたが、これマジで調べると恐ろしいですよ?

気になる人は〝鳥取の渇え殺し〟などのワードでググってみると良いかもです。マジで地獄ですから。


因みに、城から開放された人達がご飯を食べて死んだなんて話もあるそうです。

何で食って死ぬの!? となると思いますが、これは医学的にありえる話で……リフィーディング症候群と言うモノが体内で起きているそうです。こちらも詳しい内容はググってみてください。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] 後がない分、物資尽き欠けてからの無謀な突撃の方がかえって攻撃力がしゃれにならず陥落の目もありますけどね(曹操軍による寿春攻めとか) 鳥取城の飢え殺しは城将吉川経家が旧吉川家(元春が乗っ取っ…
[一言] 兵糧責めにしようとした訳ではないけど結果そうなったのがフィリピンのバターン半島ですな。 東京軍事裁判で有罪となったけど、猫車も運用出来ない密林にどうやって食糧を運べと? 海も米軍の手で機雷原…
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