表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
872/889

八百五十六話

 久しぶりにやってきた大樹。

 俺は双葉とプルを連れて来たのだけど、その点に問題など一切なく、チビ達は「お前なら案内してやらんことも無い」と何やらツンデレ染みたことを言いながら大樹の下まで。


 そして大樹の下では大樹とチビ達の長に挨拶をした後、直ぐに大樹を登り始めていった。


「しっかし、やっぱりここから見える風景って壮観だよなぁ」

「遠くまで見えるの!!」

「ぷるぅ!」


 俺も強くなっているって事なのかな? 以前登った時よりも視力が強化されているのか、富士山などが更にはっきりと見える。

 なので前にも見た風景だけど全く違う景色に見える訳で、新鮮な感動を再び覚えた。


「身体能力も上がってるか。木登りも随分とスピードアップしてるな」

「一度登ったからというのもあるの」

「確かに。次に掴む場所とかは何となく覚えているからなぁ」


 ひょいひょいと手で枝などを掴んでいく。場所によっては一気にジャンプしてという場所も。ただこれは十分と言えるだけの空間がある時だけだな。枝などが邪魔をしてそんな横着が出来る場所はそう多くないし。


 因みに双葉とプルは……蔦や触手を上手く使っているので落ちる気配など全くない。むしろ、俺のペースに合わせていなければ、もっと早く上に移動出来ているんじゃないかなと思う。


「そうだ双葉。大樹に違和感がある場所とかあるか?」

「特に無いの!」


 そうか。それは良かった。


 念のためにではあるけど、以前に昆虫型のモンスターが大樹に寄生して成長したことが有ったからな。

 なので、こうして大樹を登るついでにチェックする事にしたんだけど……まぁ、何事も無いようで本当に良かった。




 かなりの高さまで大樹を登ると、急に体が反転する場所へと差し掛かる。

 重力が反転する為の現象だが、それが起こると見えている景色がガラッと変わって行く訳で……。


 今まで見えていた空は海へ、陸地が空に見えるという。俺達が住んでいた場所は空の向こうにあり、目視できない状態になってるんだよなぁ。実に不思議だよな。


「おっと……しっかり掴んでおかないとな」


 反転したことで大樹から放り投げられそうになるのだけど、しっかりと枝を掴んでいれば問題は無い。まぁ、足が離れてしまうために、懸垂でもするのか? という体制にはなってしまうけど。


「にょあぁぁぁ! ブランコな状態になったの!」

「ぷるるぅぅ!!」


 どうやら双葉達は結構先に蔦や触手を伸ばしていたようで、反転したと同時に一気にバンジージャンプな状態へ。そしてそこから、蔦などが伸び切った状態になるまで落ちて行き、今はぷらーんぷらーんと空中で揺られている。


「蔦や触手を伸ばして大樹をしっかりと掴めよ?」

「わかったの! このまま宙吊りはちょっと辛いの」

「ぷるぅ!」


 にょろりと蔦や触手を伸ばし大樹の幹へ巻き付いた後、双葉達は器用に大樹の幹へと移動していった。

 人が同じことをしようと思ったら、ロープとかを引っ張りながらの移動になるんだけど、双葉達がやるとなぁ……蔦や触手を短くするだけで良いから、スススーと自動で移動しているように見えるんだよね。


「さて、登るのは楽だけど降りるのは大変だからな」


 行きは良い良い帰りは怖い……っと、これはまだ行きなんだけどな。

 木登りは登る時よりも、降りる時の方が気を付けないといけない。そもそも、足場を探す為に下を確認する必要があるからな。さり気なくではあるが恐怖心が襲ってくる状況でもある。


 その点双葉達はなんとも横着な真似を……。


 バンジーに味を占めたのか、下の状況を確認してはバンジーで移動。お陰で双葉達の移動速度が上がっていたりする。


 ……てか、なんで俺は丁寧に降りているんだ?

 双葉達の行動を見ていると、ふつふつとそんな気持ちが胸の奥から沸いてきた。


 これ、別に飛び降りてもいいなら俺でも出来る方法があるよな。


「てな訳で、レッツ紐無しバンジー!」


 とぅ! と、手を離して一気に自由落下。

 下の状況を確認しつつ枝などが迫って来たら、それらへ接触する前にマナシールドを展開しつつ風魔法を使い疑似空中ジャンプ。

 落下の勢いを殺して大樹の幹を掴み、無事に落下移動を成功させた。


「ふぉぉ! 双葉達と同じなの!」

「ぷるぷる!」

「いや、まったく同じではないけどな」


 落下しながらの移動という意味では同じだが、俺の方は紐がないからな。バンジーと言うよりもスカイダイビングなんだよなぁ。パラシュートも無いけど。



 とまぁ、そんな横着をしつつ大樹を降りて行く。


 漸く……と言うには早く海へと着水。一応海水ではある為に、双葉達には話をしていた手順で行動をしてもらう。


「双葉とプルは言っていた様に。じゃないと、海水だからな……双葉に万が一がある」

「ぷる!」

「あいあいさーなの!」


 言っていた事。それは、双葉の全身をプルが覆うという事だ。

 見た目はなんともと言った感じではある。何せプルが双葉を捕食しようとしているように見えるからな。ただ、プルにはそんなつもりが無いので、こうぷるぷるとしたゼリーの中に双葉が居るといった感じだろうか。


「しっかし、この状態で息も出来るってのがすごいよな」

「プルちゃんのお陰なの!」

「ぷりゅん♪」


 双葉の言葉にテレをみせているプル。……ってか実に分かりやすい。何せプルの色が微妙に桜色を帯びているからな。感情が色で現れるとか、プルは単純というか可愛いよなぁ。


 さてさて、ここからは水の中を移動する事になる。

 なので俺は水中戦用の装備を魔法鞄から取り出して装備して行く。念のためにウォルも召喚して頭上に乗っておいてもらう。


「って事でウォル宜しく」

「わふっ!」


 これで水中の対策は完璧だ。

 移動に関しては、双葉と一緒に水中スクーターをしっかりと掴んでおけば良い。


「そしたら、奥へと向かいますか」

「ゴーゴー! なの!」


 水中スクーターを起動させ、ゆっくりと水中へと潜っていく。目指すは〝ニーズヘッグ〟が居るだろう根の部分。

 おそらくだけど、途中でモンスターの襲撃はないハズだ。何せ、大樹は不思議な障壁で雑魚は近寄れないし、そもそも〝ニーズヘッグ〟の気配で大物すら近寄ろうと思わないハズだから。

 なので比較的安全な水中移動になると思うけど……一応警戒はしておかないとな。


 もしも戦闘になったらだけど。これは、大樹の傍と言う事もあって下手な武装が使えないんだよなぁ。

 魚雷とか爆雷とか、結構範囲が広いから気を付けないと大樹を傷つけてしまう。となると、銛とかがメインウェポンになるかなぁ……ちょっと火力不足な気がするよな。

 大樹を傷つけるとか……〝ニーズヘッグ〟の怒りを買いそうで恐ろしいよな。うん、戦闘に関しては徹底的に注意をしないと。

 ただ、やっぱり戦闘にならないのが一番だから、大樹へとお祈りをしておこう。戦闘になりませんように……っと。



 そんな感じで、俺達は海深くへと進んでいく。

 本当にこの奥には一体何があるんだろうな? 潜水艇が落ちて来たと言うのもあるけど、そもそも此処って宇宙じゃないの? という話でもあるし。


 大樹の根がある場所の向こう側。

 以前は調べる必要なんてないかなぁなんて思ってたけど、少しは気になってはいた。

 それが潜水艇の登場で気になるなんてレベルではなくなっている。ただ……問題は〝ニーズヘッグ〟がどう出るかだよな。

 大樹の根を彼は齧っている訳では無く守っているみたいだし。もしかしたら、根の向こう側ってとても大切な何かがあるかもしれない。そうなると、俺達が調べる事に対して拒絶する可能性だってある。


 出来れば穏便にお話が出来る事を願うよ。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

宜しければ下記のリンクもお目を通して頂ければ幸いです

新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] しかしこの樹、意地悪い性質持ってなくて良かったな実際。 仮に、もし俺が此処を創ったならば ・侵入時の物資と出口は統一 ・以下の条件について全ての記録と記憶はリタイア、若しくは達成時に抹消さ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ