七十四話
装備を身につけてから使い勝手を試してみる。
オーガとの戦いで破壊された装備もあるから一新する事にした。
「とはいえ、動きやすさ重視だからな」
「動いた時に音が出るのもよくないしね」
行動を共にする機会が多い美咲さんも、ついでという事で防具を更新している。その為に、この場で軽く打ち合いをしながら、装備のチェックだ。
「手甲は問題なさそうだな。足回りも……蹴りの邪魔にならないな。問題は……やっぱり、胴体部分が今までより少し重いって所かな?」
「まぁ、其れでも軽装備の部類だし、随分と軽いとは思うよ」
跳ねてみたり、転がってみたり以外にも、普段は絶対そんなポーズとかしない、と思われる行動もしつつ、何処かに動きを阻害する事が無いかをみるけど……うん、やっぱり重くなった分だけ少し動きが鈍い。
「まぁ、慣れるまでは仕方ないって感じかな」
「そうだね。っと、そういえば、武器はどうなったの?」
「そっちはまだかな。短すぎず長すぎずとなるとね」
それに、オーガの事を考えれば現状の素材では厳しい。ゴリラの素材を使えば良さそうな気もするけど……あれ、特性が打撃らしいからなぁ。
オーガの素材は、オーガの魔石がないから……その性能はゴリラセットに比べて落ちるし。
因みに、防具は防水加工をしたゴリラの素材を使ってる。濡れなければ、防御力がとんでもない奴等だったからね。
「打撃系だけなら、ゴリラセットでいいんだけどなぁ……まぁ、そうなると斬ったり突いたりが、通用する敵に弱いからな」
「剣鉈強化したし、ハンマーを別口で作る?」
「あーポールウェポンが便利すぎたな。向きをかえるだけで武器チェンジしてるような物だし」
「スコップもだけどね。……多機能もたせると基本大変なはずだけどなぁ」
うん、スコップは素晴しいものだ。
穴を掘ったり、フライパンにしたり、突いたり、斬ったり、打撃を食らわせたり、盾にもなるからな。
とはいえ、武器として使うには……武器として作られた物と同じ素材を使った時、どうしても一段落ちる。便利だけど、結局は予備として持ってれば便利といった所か。バールやらツルハシやらも同じ理由で武器には出来ないな。
「まぁ、新調したから当分はポールウェポンで頑張るよ」
「私は弓がメインだから良いけど。イオちゃんとの連携は気をつけてね」
皆そこが気になってるよね。横で戦えないから、イオが全力を出せてないもんな。奇襲か別々での戦闘になるからな。
とりあえず、武器防具に関しては現状これで良いだろう。
後は、協会に出向いて如何するかを聞かないとな。
「さて、二人には長距離調査をお願いしたいと思います」
「えっと、行き成りですね」
協会に入った瞬間に、品川お姉さんからの指令だ。
内容が長距離調査って言ってるけど、恐らく避難所付近を調べて来いって事だよね、とりあえず話を進めないと。
「何処を重点的に調べれば?」
「白河君達も解ってる通り、私達には魔石が足りません。やはり、あのダンジョンが必要になります」
「まぁ……武器強化も現状だと限界ですしね」
「その通りね。そしてオーガなんて化け物と戦闘になった……装備が整っていないのに」
言葉にすると、本当よく生きて返ってこれたな。とはいえ、調べに行く方向はオーガが居た方向なんだけど……どうするんだろう?
「あの時は逃げきれないメンバーが居た為に、白河君が怪我をしたと分析してます。ならば、何時もの三人で警戒しつつ行ってもらえば、調査なら出来るのではと判断しました」
「なるほど……確かに戦闘を回避し調査だけにすれば出来そうですね」
足の速さやらもあるけど、あの時は恐慌状態に入っちゃった人いたからな。まぁ、その人は現状だと猛反省して、村周囲の警戒からやり直してるみたいだけどね。
とはいえ、戦闘をしていなければ……オーガ相手に逃げ切れたか? と、言われたら逃げれただろうな。気がつかれる前に魔法で全力ダッシュすれば良いし。あの時は戦闘後にワンモアでの戦闘で、怪我をしたうえに色々試したから、色々と枯渇してたんだよな。
「あぁ……豆柴に関しては如何します?」
「豆柴は、固定カメラでチェックしつつ、偶に信頼できる人に回収を頼んでるから大丈夫よ」
「なるほど、ではシェルター付近の調査が進んでないと」
「そうね。厳しい話だけど、レベルが足らないって状態ね。あの時のメンバーも一から鍛えなおしだって言って、熊や川を渡った所に出る猿を相手に訓練してるわ」
なるほど、訓練に勤しんでるのか……まぁ、オーガを見て潰れなかっただけ良かったんだろうな。
しかし、その結果が調査速度が遅れていると。まぁ、怪我して養生してた人間が、如何こう言える話ではないけど……少しは調査しようよ。
まぁ、村周囲から雀蜂の巣跡地の周囲は、それほどオーバースペックなモンスターは入って来て無いらしいけど。豆柴以外はだけど。
「装備の準備は良さそうね……後はこっちで支給品の準備とかあるから」
「それでは、明日から出発ですかね?」
「……そうなるわね。明日の朝にでも又来て頂戴」
やっと明日から復帰だな。とりあえず必要になりそうな物を書き出してから、要請書を出しておかないとな。
「それじゃ、美咲さんも明日からまたよろしく」
「わかったよ。こちらこそよろしくね」
さて、村から出るとなると……数日ほど離れるかもしれないからな、妹達の説得しないとなぁ。
怪我してからというもの、二人からの心配が凄いからな。
「ま……何とかなるか」
「結弥君、如何したの?」
「いやね、妹達の説得が大変そうだなとか思っただけ」
「怪我しちゃったからね……うん、仕方ない」
最悪、イオをだしに話を逸らせばいけるはずだ。イオも村を離れるからな……愛でない訳が無い! ……筈だ。
とりあえず、調査時にゴリラが出ても対処は問題ない。オーガだな……美咲さんと話をして、幾つかパターンを決めておかないと。あれだな、熊と出会った距離での行動指標とか、あんな感じのを決めておかないと。
シェルターに関しても如何するべきか、モンスターが居なければ……接触もありか? まだ前回で決めた事は撤回されて無いからな。
モンスターも居なくなったから外に出てるかもしれないし、その場合は挨拶程度の接触はしておくか。
幾つかの可能性を考えながら家に帰ると、当然の様に妹達の突撃を食らう。
その後は、明日から村を出る事を説明および説得だけど……予想通り、二人とも心配と不安という事を拳に乗せてくる。
……何で説得が模擬戦になってるんだろう!?
「お兄ちゃん、これが当たったら絶対行かせないからね!」
「だから、協会から頼まれた仕事だって!」
「兄さん! 怪我が完全に治ったかの調査だから! 避けないで!」
「いや、その調査なら避けてでしょ!」
じゃれてくる猫みたいだ。……そんな事を口にしたら、攻めが激しくなりそうだが。
まぁ、この程度で不安が飛ぶなら悪くないか。うん、相手を少ししてからイオの所に連れて行けば良いだろう。
三十分ほど二人の相手をしたら、二人共満足したのかニコニコとイオの所へ。
まぁ……何も言うまい。二人からの応援メッセージだとでも思っておこう。うん、イオへの態度と全く違うのは……気にしない。
さり気無く美咲さんに、「お兄ちゃんをお願いします」なんて、声を合わせて言ってたのはきっと幻聴だ。
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