八百二十七話
AIの成長について、美咲さんと話をした内容だが、実はモンスター達の時に起きた問題だったりする。……と言うか、ぶっちゃけ今でも問題にしている人達が居る。
「協会や拠点の上層部的には既に解決済みの話なんだけどなぁ」
「だよね。今問題にしている人達はちょっとアレな感じだよね」
アレな感じ。口に出したらちょっとと思うような言葉になるけど、言ってしまえば〝理解出来ない人達〟とか〝あたおかな人達〟なんてワードになると思う。
以前に起きた問題はと言うと、やっぱり凶悪だったモンスター達を受け入れて良いのか? なんて話が基本だった。
だからこそ、イオは最初の方こそ村の外で生活をしていたし、村がイオを受け入れた後も他の拠点ではゆっくりと時間を掛けて慣れさせていった。
そのお陰か、今では拠点内に居るモンスター達はしっかりと受け入れられている。
「ただなぁ。その受け入れられたのがってか、受け入れ過ぎちゃった人達が問題なんだよなぁ」
「モンスター愛が異常なだけなら良いけど、あれはちょっと違う感じだと思うよ?」
何が問題なのか。それは、とある集団が徒党を組んで「モンスターの権利を! 我々にもモンスターと共に暮らせるような環境を!」と訴えている。
ば・か・か! と叫びたくなるような内容だ。
何の為にテイマーや探索者用の許可証があると思っているんだ。
テイマーも探索者も、どちらもモンスターの〝強さ〟を理解し、それと正しく付き合えると判断されたからこそ免許や許可を受け取る事が出来る。
だからモンスター達と共に生活したいのであれば、それらの資格を取れ! と言う話なのだけど……この集団はテイマー資格に受かる事が出来ないのか、ただただ権利だけを叫んでいたりする。
「平和になったなんて思うけど、ちょっと行き過ぎているよね」
「協会やテイマー達が管理しているからこそ安全だっていうのにな」
モンスターの交配から子育てまで、協会は親モンスター達と共に協力して行っている。
最初の内は警戒心をバリバリと出していたモンスター達だったけど、今では人の手を受け入れており、中には進んで「協力してくれ」と寄ってくる個体すらいる。
それもそのはずで、安全な空間による安全なお産。これがどれだけ大きいかを理解しないモンスター達は居ない。……出産時は本当に危険だと言うのは前にも話した事が有ったっけ? 沢山の他モンスターに狙われるし、そもそも子供を産むという行為自体が命懸けだ。
その部分をすべて人がフォローしているからな。命が危ない母体や子供も、回復魔法やらポーションなどで的確にその命を救って行っている。そのお陰で、出産時の死亡率は自然に任せていた時に比べるとかなり減っているだろう。
そして子育て。
この時から人に慣れさせる事によって、人は敵では無い。寧ろ良き隣人や友であるという事を認識させていく。
だからこそ、新しく生まれて来た世代はかなり人間寄りのモンスターが多いのだけど……。
「彼等はその苦労を知らないんだよなぁ……」
「可愛い子供時代から里親に出すべきだ! なんて言っているしね」
子供時代が可愛いのは分かるが、その時に躾を間違えたら大変な事になるでは済まされない。だってモンスターだぞ? それこそ、人がモンスター化した〝モンスターペアレント〟だの〝モンスタークレーマー〟なんて可愛いレベルになる。何せその牙が当たり前のように人に向かって行くのだから。
「崩壊前の犬でも、普通に人をかみ殺すなんて話があったぐらいなのにな……少しでも頭を回転させたら理解出来る話だろうに」
「説明してるみたいだけど、それでも「そんなのは愛情でなんとかなる!」の一点張りなんだって」
愛情だけで何とかなる訳ないだろ! と言いたい。
こちとら、イオ・双葉・風に颯と天にプルまで面倒を見て来たんだぞ? 今でこそ楽というか自由にさせられているけど、最初の内は結構気を使っていたんだよな。
イオの時なんて……イオの小屋に近づく子供達から目を離さない様にと、周りの大人達と協力していたしな。
「そもそも力が違い過ぎるからな。イオとかはじゃれているつもりで軽く肉球を押し付けただけだとしても、ぽきっと首の骨を折るぐらいは出来るしな」
「そう考えると、本当に皆手加減が上手くなったよね」
手加減の練習。どれだけ付き合ったと思う? それはもう、懇々とイオと特訓した。
それこそ、最初の内は殴り合いか? と思うレベルだったりもしたしな。……イオの肉球を拳で受け止めていたんだよ。
ただ、その時は既にイオは大きかったからな。力加減と言うのはイオにとって本当に大変だったと言えた。
しかし協会では、その訓練を生まれてすぐから行う事で随分とスムーズに進んでいる。更に言うなら、親モンスターも手伝ってくれる訳だし。
「あれはただ可愛いから欲しいっていう駄々っ子だと思うよ。テイマーじゃない人は赤ちゃんモンスターとか、遠目で見る事は出来るけど触れる事って出来ないしね」
「本当に資格を取れと言いたい」
結局、この手の話は愚痴だけになってしまう。
ロボットやAIの事でそんな問題が起きていた事を思い出したけど、彼等の脳内は一体どんなお花が詰まっているのだろうか。
「ゆいちゃんも大変だよね。彼等から槍玉に挙げられているでしょ?」
「あー……本人は完全にスルーしているけどな。話題を振っても「試験も受からない人達でしょう? ただの負け犬の遠吠えじゃん。あ、そんな言い方をしたら犬に失礼かな」てな事を言っていたしな」
「辛辣過ぎじゃないかなぁ」
辛辣。確かに辛辣な言い方だな。
うん、ゆいも立派になってしまったものだ……って、本当に何度そう思えば良いのだろう?
「そんな感じだから、テイマー達も余り問題にはしていないみたいだな。偶に名誉棄損な事を言われるみたいだけど、相手にするだけ無駄って扱い」
「相手にされないとか……余計、頭に血が昇って無いかな?」
「かもしれないな。協会側も事実説明だけをして後はスルーだし」
ネット上でよくあった〝嵐はスルー対象〟と全く同じ扱い。
実際の話、荒らしている様に見えて全く荒らされていないからな。ただ壊れたスピーカーがうるさいと言ったレベルなんだけど、それを不快に思う人は居る訳で。
「近隣住人と場外戦が起きているんだよなぁ……」
「協会が対処するような内容でも無いからね。警察の人が厳重注意しに行っているみたいだけど」
この話は協会やテイマーが関わっているから、そちらで何とかしてくれと思うかもしれないが、協会もテイマー達もしっかりと声明を出しているし、説明もしっかりとしている。なので義務はしっかりと果たしているのだけど。
それを聞き入れないクレーマーが居ると言うだけで。
「おかしいよなー……イオの時は危険だから! って外に追いやった人達が、今では俺達にも育てさせろ! って言っているんだから」
「世の中の移り変わりって本当にどうなるか分からないよね」
これも時代の変化か……と言ってしまえばソレだけなんだけどな。
ただそれでも、もう少しは話を聞いたり、モンスターの知識を付けようよって思っちゃうよな。まぁ、そういった事をしないから資格試験に受からないんだろうけど。
それに、この手の問題は探索者の罰則みたいにできないのも辛い。何せ、力を振りかざしている訳でも無いからな。言葉を使って抗議をしているだけだし。
本当、あの開いた口にゴブリン肉を叩き込む事が出来たら楽なのになって思うよ。それをやったら、やった側がアウトになるので実にもどかしいのだが、犯罪者になりたくないから仕方ないよな。
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AIの話からモンスター達の話へ。
えぇ、実は裏でちょっとした問題は起きてますよと言う話です。とは言え、その問題もその時によって内容が変わっているモノでして。
今は自由に育てさせろ! が主流の様です。……ペット感覚に思っちゃっているんだろうなぁ。そして大抵そう言った人は、ペットが大きくなった時に捨てるなり違う人にあげちゃうなりする人が居るんですよね。最後まで面倒を見ろ! と言いたい。




