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八百二十二話

 久しぶりにあったソラは目の下に大きな隈を作っていた。


「ソラお前……もしかして、友人達の猛攻に耐え切れなくなったのか?」


 俺は思わずそう聞いてしまった。何せソラ達が一番頭を抱えているだろう話は、彼のクラスメイト達による結婚のプレゼンだから。

 善意から来る行為なので邪険にする訳にもいかず、何時もヌルリと話題を回避していると聞いていたが……まさか回避出来なくなったのか? と思ってしまったんだ。


「違う違う。ほら、研究所で色々とやってたのは知ってると思うけど、それが後少しで完成って所まで来てたから思わず数日間徹夜しちゃったんだよね」


 あぁ、まだ公式に発表していない為に〝色々〟と言葉を暈したか。

 研究所でソラがやっている事といえば、やっぱり〝ゲート〟の事だろう。拠点間を一瞬にして移動出来るようになるソレは、確かに公の場で簡単に口に出せる内容ではない。

 もしそんな物が有るとすれば、沢山の人から「早く完成を!」と突き上げを食らってしまう。……一体どれだけの技術力や魔力が必要になるかも知らずに。そして、完成が遅くなればなるだけグチグチと文句を言われかねない。


 それだけ便利で皆が求めている技術だと言う事の現れでもあるのだけど。


 だってそうだろう? 物資の移動が楽になるのは既に俺が魔法でやっているから、俺自身が一番良く分かっている。

 ただそれ以外にも、故郷を離れて戻れない人は沢山いる。それこそ俺の父さんみたいに、会社に出社していた為に違うシェルターへと逃げなければならなかった人とかだな。

 そして、そんな人達の殆どは戦闘が出来ないタイプや研究員では無い人達。なので、輸送用の車両は基本的に使えない。

 車両がまだまだ足らないと言うのもあるけど、優先順位としては研究者や交渉に行く外交官が優先されるからな。後は防衛にも使うからね……早々動かせないんだ。



 そんな訳で久しぶりに会ったソラと会話をする為に、俺達は会話の内容的に他の人に聞かれない為にも人の居ない場所へと移動する事にした。



 移動した後は気になっていた事をソラに聞いてみる事にする。完成と言ってもまだまだ実験段階と言う話なのか、実用段階になったのかなどなど、色々とその段階次第では意味合いが異なって来るからな。


「しかし、完成させたとしても、ソレを置く場所とかエネルギー源が問題だよな?」

「そうなるね。軍事基地とか空港みたいに少し隔離した場所を用意して、エネルギー源は……本当にどうしようかって感じかな」

「省エネ化が厳しそう?」

「だね、入り口と出口両方にエネルギー源が必要だから。まぁ出口側は受信するだけだからそこまで必要無いけど」


 入り口側の消費エネルギーが問題か。

 まぁ処理の殆どを入り口側でやっているから当たり前なんだろうけどね。出口とラインを繋いで、門を開き、物を送り出す。そして遠ければ遠い程、必要とするエネルギーが必要になる。……下手をしたら、場所次第では幾つかゲートを経由した方が軽いなんて事もあるだろうって話だ。


「ゲートの材質をもっとよく出来ればッて思うんだけど、素材がたらないんだよ」

「素材って何が必要なんだ?」

「いつものアレだよ。〝神鋼〟が全く足りてない」


 納得しか出来ない。


 今は沢山取れるミスリルを使ってゲートを作ったらしい。……正直、少し前を考えたらミスリルが大量に確保出来ると言うのも恐ろしい話なんだけどね。

 ただ、ミスリル以外のオリハルコンなどのファンタジー鉱石は数が足らない。そして多少余っていたとしても使う事は出来ない。


「素で使うにはもったい無いからね。〝神鋼〟にしてから使うべきって皆考えているよ」


 他の足らない素材が手に入ったら、直ぐに合金に出来る様にと必ずストックしてしまう。

 そのままでも高性能と言える素材であることに違いは無いけど、やはり〝神鋼〟は別格な訳で……その元になるのだからともったいない精神が発動してしまうらしい。


 ただ、同じく素材になるミスリルだけど、こちらは溢れる程あるから逆に使えと推奨しているらしい。


「とりあえずアレかな……専用の港を作り、他の拠点間との運用を調査して、不具合やら改良点の洗い出しかなぁ」

「完成したとは言え先が長そうだな」

「まぁね……ただ、一度運用を開始してしまえば、後は割とスムーズにいくと思うよ」


 そんな物なのだろうか? まだまだ壁とかが有りそうな気もするんだけどなぁ。


「例えばだけど、転移事故の可能性とかは考えてないのか? ほらよくあるじゃん〝壁の中に居る〟とか」

「君がそれを言う? 自分でも空間を移動する魔法を使っているじゃないか……それならある程度は分かるんじゃないかな」

「あー……まぁ、しっかりと座標とか映像を認識していればそんな問題なんて無いってのは分かるけど」

「ならわかるよね? ユウもやっているカメラを使ったリアルタイムでの状況確認。アレをゲートにも使っているんだよ」

「あぁなるほど……確かにそれなら事故が起きる可能性は無いのか?」


 でもカメラが止まったりしたらどうするんだろうか。もしそんな状況が起きてしまったら、正しい情報がゲートに入力されず、それこそゲートと人の融合なんて事が起きるかもしれない。


「そう言う時は緊急停止かな。ゲートにはカメラからの映像が途絶えたら使えなくなるようになるよう設定されているよ」

「それ、転移中の人とか物が有ったらどうするんだ?」

「転移前の映像を参照にしての転移だから、その人や物は大丈夫だよ。問題は人が飛んだ後、出口付近に人が残っているかどうかとかだし」


 あぁ、確かに人が飛んだ後すぐに他の人が飛んだら問題か。

 人と人の融合が行われてしまうかもしれないもんな。だからこそ、カメラでの状況確認な訳か。



 しかし、話の内容からして、どうやら成功と言うのは実験段階が終了したって感じみたいだな。

 此処から実際に運用して、コストダウンを狙っていく訳だけど……ぶっちゃけ、話を聞く限りだと初動のコストは逆に上がりそうな気がするけどな。何せ〝神鋼〟が必要になるって訳だし。

 まぁそれでも、長期間運用していればその内逆転現象が起きるんだろうけどね。ミスリルで作ったゲートの消費エネルギーはスルーが出来ないレベルらしいし。


「てか、神鋼でのゲートは作ったって事なのか?」

「いや、今のところは理論値。だからそっちの実際に作って実験をしたいんだけど……」

「量が足らないって事か」


 ファンタジー鉱石かぁ。取れる場所は知っているけど、実際に確保しに行こうと思ったら大変だ。だから今は、高難易度ダンジョンで偶に敵からのドロップや宝箱の中身に期待するしかない。


 取りに行ける場所……本当にどうしようもない場所なんだよなぁ。


 一ヶ所は我らが〝化身〟の社の中。前は〝化身〟と同類と言える〝ロード〟に渡す鎧の為と言う理由があったから大丈夫だったけど、今回は人の世の事だから流石に頼る訳にはいかない。

 前にも行ったけど、境界線が曖昧になって、その内なんでも〝化身〟から分けてもらえば良いなんて傲慢な考えになる可能性があるからな。って事で、ここは絶対に手を出してはいけない場所。


 もう一つの場所が湖のダンジョンにある水中から行く洞窟。

 ただ、このダンジョンは現在立ち入り禁止指定の場所。更にもし入る事が出来ても水中のモンスターと戦うのが大変すぎる。採算に対して犠牲が多く出過ぎる可能性が高いんだよね。もしくは大赤字による兵器大放出祭り。


 他に沢山取れそうな場所は、現状だと確認されていない。ランダム要素に掛けるしかないと言う状況。


「必要量が集まるまで時間が掛かりそうだなぁ」

「ま、何とかミスリルでの省エネ化も頑張ってみるけどね」


 あまり期待は出来ないかなぁ……と、ソラは遠い目をしている。あぁ、知識や技術的に限界のところまで来ているのか。


 ただ、エネルギー問題があるとはいえ実用段階まで来たと言う事で、今後は移動が楽になりそうだな。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!



久しぶりなソラ君です。

彼の研究もひと段落突きそうですね。とは言え、まだまだ先は長そうですが。

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