七百九十九話
山だ! 川だ! ダンジョンだぁ!! と、探索者達が騒いでいる。
夏場のキャンプと言う訳では無いが、新しく開拓した場所と言うのは探索者と言う事もあって盛り上がるモノがあるらしい。
さて、何故こんな事になっているのかだが、それは想像以上に早いペースで道が出来上がったから。
それはもう、本当にすさまじい勢いで山の中に道が出来上がってしまったため、想定していたよりも数日早く三河へ到着。それも、恐らく人が住んで居るだろう場所まで。うん、そう豊川と呼ばれていた場所の近くだ。
探索者達は一体どんな道を作っていたのか?
昔あった一号線が有った場所に道を作って行ったと言う事に、俺は道が出来た後気が付いた。と言うか、爺様達に教えて貰った。
上空から出来た道の地図を見た爺様達が、一言「あれ? これ一号線じゃないかの?」と言ったんだよね。で、古い地図を持ち出して見てみると、そのコースはぴったりと一致。いやはや、こんな偶然ある? と思ったぐらいだ。
そんな訳で、ワイバーンとの闘いを行う前にまずは現地の人達がどんな生活をしているのか、接触は可能なのかと言う調査がまずは入る事になるだろう。
「とは言え、少し気になる事が有るんだよなぁ」
「気になる事? そっちって何か問題がある土地だっけ?」
「問題があると言うより、ほらここ最近は交流団の地元は宗教戦争を仕掛けて来ている奴等とかいるだろう? だからつい考えちゃんだよ。だって豊川っていったらさ……」
「あぁ! お稲荷さんがあったよね!!」
そうそう。豊川稲荷と言う神社というなのお寺がある。うん、豊川稲荷って曹洞宗の寺院だったりするんだよな。
そんな訳で、日本には三大稲荷なんてものがあるんだけど、当確と言えるのは伏見稲荷だけ。豊川稲荷はお寺と言う事もあって、その三大稲荷に入ったり外されたりしていたんだとか……まぁ、コレは爺様達に聞いた話だから微妙な知識だけども。昔ならウィキとかで調べる事が出来たのに。
まぁ、恐らくだけど……よくあるお稲荷さんがある地元の推し合戦みたいなもんじゃないかな? と思わなくもない。とりあえず、伏見は総本山だからここだけは当確って事で見たいな感じで。
「とまぁ、そんなお稲荷さんがある場所だから……また厄介な信者とかいるんじゃね? と思わなくも無いんだよなぁ」
「お稲荷さんって言ったら、祟りの話とかもあったよね」
以前であれば鼻で笑って吹き飛ばすような話だけど、この魔力によって神々の模倣体が居た現実があれば話は別だ。
一応彼等はその身を挺して、次元の壁を修復する事とで役割を果たした……となっているが、残っている模倣体が居てもおかしくない。
ただその模倣体が何をしているかまでは把握が出来ていないし、彼等の生き様? を見た俺達からしてみれば、余り邪推などしたくはない。
とは言え、色々逸話があるお稲荷さんだからなぁ……。
仏教系がベースのお稲荷さんだと、主神も主神だしな。荼枳尼天っていう人食いの夜叉様。うん、食べないでくださいお願いします! って拝み倒せと言う事だろうか。
一応、大黒天に調伏されたって話があったけど、それでも「死んだ人の心臓なら食べていいよー」と言った話らしいからさ。いやいや! 死者だからってそれはどうなの!? と思わなくもないけどな。
「まぁ、神様と人間って立ち位置を、人間と動物に置き換えたらおかしな話ではないんだけど」
「人にそんな事を!! と思うのは人だからだもんね。人よりも上の存在だったら「だから何?」ってなっちゃうだろうし」
うんうん。あの魔王とかがそんな感じだった。
模倣体達であれば、神話の垣根を越えて人に味方……と言うか、世界の維持の為にと頑張ってくれていた事を良く知っているんだけどな。
ただ、超常的存在と言うのはまだまだ不明な事が多い。〝ロード〟とか〝ニーズヘッグ〟とか。
何はともあれ、そう言った存在とは敵対しない方が良い。
ついでにいうと、俺はお稲荷さんの姿を確認していない。日本の主神様の模倣体は見る事が出来たんだけどね。……なんかノリのいいお姉ちゃんって感じだったけど。
それが余計、最近の宗教戦争も合わさって、少し近寄りがたいなぁなんて思えてしまう原因だったりする。うん、色々な事が合わさったコンボ技というやつだな。
ただ、悪いお方でない可能性も十分あるからな。
〝ロード〟だと人を知るのが楽しいと言った感じでフレンドリーに交流しているし、〝ニーズヘッグ〟の場合は空の海にある世界樹を守っていると言った感じだ。
〝模倣体〟は言わずもがな、〝化身〟の場合はウォルがベースだから村の人にとっても優しい。
そう言った事を考えると……やはり、諸悪の根源は人なのでは? なんて思わなくもない。今まさに伊勢付近で宗教戦争を仕掛けて来ているのは〝人〟な訳だし。
「案外神様も困ってたりしてね。『また自分の名前を旗に使ってる……』って感じで」
あぁ、そのパターンもありそうだ。
とは言え、超常的存在を複数見て感じた事だけど、彼等は意外にのほほんとしている。こう、時間の感覚が人と違うというか、死という概念が無い為なのかなのか、色々と気にしない存在。まぁ、スイッチさえ踏み抜かなければとつくのだろうけど。
だから、人が自分達の名前を掲げたとしても、『あぁ、またやっているなぁ。ちょっと面倒なんだよなぁ』ぐらいにしか思っていない可能性もある訳で。
「神話を読むよりもドロドロしてなかったからなぁ。神話だともっと、浮気だ! とか、女の嫉妬だ! みたいな雰囲気とかもあるのにな」
「それどこのギリシア神話? あんな話が現実に起きたら世界が崩壊しちゃうよ」
本当に、もし実物が居たとして……それが神話の通りならばと思うと思わず背筋が凍ってしまう。うん、この世界に現れたのが〝模倣体〟で良かった。
「しかし神様か……そう言えば、異世界の神ってどんな存在だろうな? ラノベや漫画だとよく出張って来るイメージがあるんだけど」
「あー……確かにそうかも。ゲームとかでも割と敵だったり味方だったりと、神様同士の争いが激しいなんて事もよくあるよね」
戦争の背後に異種族や宗教ありなんてのは基本だからなぁ。
人と人が祀る神。魔族と魔族が祀る神が敵対している。うん、本当によく見る話。ただ中には、祀る神が一緒だと言うのに、人と魔族が争っているパターンなんかもある。そして、その場合の神様と言うのは「なんてこったい……」と頭を抱えるだけの存在か、「もっとやれやれ!」と裏で両陣営を操っているなんてのも。
後者の場合は本当にろくでもない話なんだけど、大抵ラスボスとしてその神が敵対するんだよな。
「で、ソラ達の居た世界も、人と人以外が争っていた訳なんだけど、やっぱり神と邪神とかっていたのかね?」
「そこらへんの話は全く聞いた事が無かったよね。起きた出来事とかは聞いたけど」
まぁ、聞いたところで今後関わる事もない神様だろうけどな。何せ狭間の修復は終わったのだから、異世界から地球へのアクセスなどもう出来ない。なので、恐らくもう異世界に召喚されたり、異世界へと神隠しに遭う人は居ない。……と思われる。
「とりあえず、今は水野さん達からの報告待ちかなぁ。現地の人達がどんな感じなのかでも変わるだろうし」
「……お狐様に憑かれていたりしてね」
いやいや、そんな恐ろしい事は無いと思うけど。
ただ、熱心な信徒になっている可能性は……否定出来ないかなぁ。だってお稲荷さんと言えば、五穀豊穣と商売繁盛がベースのなんでもござれな神様だったハズだし。
だからこんな世界の状態だと……うーむ、無理な勧誘さえしてこなければと願わずにはいられないな。
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お稲荷さんと言う事で、稲荷寿司が食べたい(まて
因みに作者は狐は好きですよ。一度、キツネ村とか行ってみたいですねぇ(≧▽≦)
エキノコックス対策をしているそうなので、キツネに触れる事が出来るのだとか!! ちょっとうずうずしますねぇ。




