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七百九十六話

 協会は今、ワイバーンの巣へと向かう為に山道を整備している。

 しかしそれは、思った以上に難航している。……いや、していたと言った方が良いだろう。


 山の中には恐竜の群れが陣取っており、しかもとても賢い存在であった。あったのだが、彼等は一つの事を行った事で壊滅という結果に陥った。


 一体それは何か……。


「想像以上なほど冷気に弱かったとはなぁ」

「モンスターなのにと言うか、爬虫類がベースだからと言うか……でも、彼等もあそこまで大規模な冷却攻撃を行われるとは思っていなかったと思うよ」


 普通の魔法ではどうやっても無理な超が付くほど広範囲の冷却。だけどそれは、俺の魔法と研究所と多数の探索者によって可能にすることが出来た。


 手順は割と単純だ。

 俺が山の上にゲートを開く。そして研究者が作った道具を使い、それと合わせて探索者が氷系と水系と風系統の魔法を撃ちこむという簡単なお仕事。

 そしてその結果起きたのが、山頂から流れる流氷。荒れ狂うダイヤモンドダスト。到底、この愛知では見る事の出来ない風景を、探索者達の手によって作り上げたと言う訳だ。


 トロオドンをメインとしたラプトル達の巣と思われる場所は、ダイレクトに流氷が流れ込んだのかその殆どが機能を停止しており、流氷から逃れたモノもダイヤモンドダストを直撃。

 恐らく、彼等を輩出していただろうダンジョンもまた、入り口が氷で塞がってしまっているのではないだろうか? と言うのが協会の予想だ。


「てか、この発想をした人は悪魔かなにかか?」

「研究員の一人らしいけど、名前は聞いた事が無い人だったなぁ」


 モンスターの研究を行っている人らしいけど、正直そちらとはあまり関わりが無かった為に提案者の事は全く知らない。

 俺達が知っているのは、武器開発・魔法研究の人達が殆どだしな。なので、他の部門となるとね。


 しかし、モンスターの研究部門に所属する人だからこそ、こういった方法が思いついたのだろうか。

 個人的に、爬虫類型とは言えモンスターだから寒さに弱いなんて事は無いのでは? なんて思っていた部分もあったからな。多少弱くても、それは誤差の範囲だろうと。


 いや……でもこの流氷やダイヤモンドダストは誤差と言えるレベルでも無いか。爬虫類型でなくても、こんなのを食らったら大ダメージだよな。


 でもこの作戦には致命的な欠陥が有ったりもする。


「研究所が提供してくれた道具が使い捨てなんだよなぁ」

「しかも大量の魔石を使っているんだよね」

「たしか、少量とは言えミスリルも使っているって話だぞ」


 どんな道具か。それは、グレネードという魔石爆弾と、魔石による魔法ブーストに着目した研究者が「それなら、その両方を合わせたらもっと強くなるんじゃね?」という構想のもと作り上げたもの。

 魔法爆弾とでも言うべきなのだろうか。ブーストされた魔法を爆発させる? 爆発的に魔法をブーストさせる? まぁ、そんな割と単純な発想だった。

 そして、そんな研究者の考えは実に的確だったのか、材料さえあれば恐ろしいまでに魔法をブーストさせ、広範囲爆弾のような範囲と威力を手に入れる事が可能となった。


 ただし、美咲さんとの話に合ったように、コストを度外視すればと言う前提が付く。


 そう、この道具における最大の問題はコストだ。

 魔石もかなり質の良い物を大量に用意しなくてはいけない。そしてファンタジー鉱石も多少なりと必要となる。……そしてまた、それらの素材は完全に使い捨てでリサイクルが不可能となっている。


 そう、ミスリルさえもだ。


 この魔法を高威力にする為の道具を使うと、使用した素材は全て魔法発動時に巻き込まれ消滅してしまうと言う仕様。

 だからこその威力と言えるかもしれないが……流石にミスリルなどの貴重な素材を使い捨てに出来るほど余裕があるはずもなく。ぶっちゃけ、封印指定される技術だったりする。


 まぁ、今回は作ってしまった内の一つを、実験的に実践の場でも試すと言う事で使ってみたと言う訳なんだけど。


「性能だけを見れば、かなり便利な物ではあるんだよなぁ」

「性能だけはね……」


 戦果を見れば、その性能が異常なのは一目瞭然だ。

 当然だけど、水野さん達も目を丸くしてしまったレベル。……と、一応この攻撃を行う前に、彼等に対して警告をいれて避難をして貰っている為、仲間の被害は皆無だったりする。まぁ、肉体的な被害はだけど。

 うん、精神的には大ダメージが入ってるんだよね。ショックなのも分かる話ではあるんだけど。


 と言う訳で、直接戦闘を行っていた水野さん達だけど、再起動するまではいましばらく時間がかかりそうである。


 とまぁ、こんな感じで、ショックで立ち直れない人が出るほど、その性能はピカ一と言えるモノがある。もしこれでコストが安ければ……と、実に残念に思う道具だ。


「コストが下がったら下がったで、威力も一気に下がるんだろうけど」

「うーん、それでも使えるんじゃないかな? この威力を見た後だから物足りなく感じるかもだけど、正直な話、ここまでの威力って必要?」

「あー……確かに言われて見ればそうかも」


 個人で使う分にはそこまで必要無いような気もする。

 トロオドンの巣を一つ潰せるだけの威力があれば十分……と言うか、それはもう大戦果と言っても良いのだから。


 今回に関しては、コスト度外視の道具に加え、その場にいた探索者達が皆で魔法を使ったからこれだけの威力になった。……うん、皆ノリノリでやってくれたからな。

 逆に言えば、コストを安くして個人で使うとなると、ソコソコの威力になる魔法爆弾となるのではないだろうか。ただ、威力が下がり過ぎると、魔石を直接使ったブーストと何が違うの? と言う話にはなるだろうけど。


 そんな訳で、この新しい道具はまだまだ改良する必要があると言う事になるかな。


 とは言え、何やらこの成果に研究員の皆さんは大喚起と言った感じなんだけどね。中には「もっと威力を上げるには……」なんて言っている人も居るけど、そこそんなに威力は必要ありませんから。


「あ、でもこんな事をしたら山の中の植物って全滅じゃないか? 冷気で枯れたりしていそうなんだけど」

「モンスターな植物達も居るらしいから、そっちが全滅してくれる分には良いんだけどね」


 そういえば、ダンジョンの中身はどんな感じなんだろうな。

 そのうちアタックする事もあるだろうけど、やっぱり恐竜系のダンジョンなのかな? そうなると、一体どんなものがドロップされるのだろうか。……化石とか? いやいや、そんな物は必要ないよな。

 とは言え、古代の種子とかもらっても、それはそれで微妙だし。


「てか、恐竜って美味しいのかね?」

「そこ!? まぁ、ワニとか蛇みたいな感じなら食べられるんじゃないかなぁ?」

「完全に凍結しているなら、上手く解体したら食肉としてもゲット出来るか……でも、血とかも一緒に固まってるんだよなぁ」


 流氷にどっぷりとつかっていたり、ダイヤモンドダストに巻かれていたりと、恐竜達は瞬間冷凍に近い形で凍っているものも多いと思われる。なので、寄生虫とかの心配は無いかな。まぁ、モンスターに寄生虫が居るかどうか微妙ではあるけど。あぁでも生食はしないし、どのみち焼くから大丈夫か。


「漫画肉。それも輪切りバージョンとか出来るかねぇ」

「それ、前にワイバーンかドラゴンの尻尾でやらなかったっけ?」

「あれそうだったっけ……まぁ、以前にやっていたとしても、またやりたくなるのが漫画肉だから」


 とりあえず、今は恐竜の肉に思いを馳せるか。

 ん? 以前食べたんじゃないかって? もう、随分前の事だから既にどんなものだったか忘れてるんだよなぁ。てか、食べた記憶すら……。

 何せここ数年色々な事が一気に起き過ぎていて、印象がどんどんと上書きされて言っているから……とりあえず、食べたら思い出すかもな。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] 戦略級の威力と効果範囲なんて通常の探索は勿論、殆どの戦場ですら不要ですからね。現実の核兵器だって戦略核は使いづらすぎて戦術核なんてのが作られたくらいですし。 ただ核兵器つながりで思いつきまし…
[一言] 黄金の鎧な水瓶の人と青銅の鎧な白鳥の人の師弟コンビの技を再現したと。 そのうちドラゴンな人やペガサスな人の技も再現して下さい。
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