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七百九十四話

 一般生活用のにと作って貰った装備を着用し、俺は双葉達の仕事っぷりを見る傍ら自分の仕事もこなしている。

 一体どんな装備なのか? 戦闘時は軽装備の防具についたAIとゴーグルを利用し、色々な方法を収集しているのだけど、村の中ではそのような装備をする必要が無い。……まぁ、装備を常に着用していたら気持ちが休まらないしな。

 ただそれでも、ある程度の情報収集は必要なのと、ここぞ! と言うタイミングで支援砲撃が出来ればと言う思いから、普段着に見える装備も用意して貰ったという訳だ。

 そしてその装備というのが、ただの眼鏡に見える物とAIのコアを仕込んであるタクティカルベスト。因みにこのベストも、普段着として使える様に見える作りになっている。

 ミリオタも絶賛するんじゃないかな? さりげなく小型の魔法鞄がポケットに仕込まれている仕様だしね。後、さりげなく防御力も高かったりする。……普段の装備からしてみれば、紙よりマシと言った程度の装甲だけど。


 ただ……戦闘用ではないと言う事で眼鏡の性能はぐっと落ちている為に、映し出されるレーダーや現地の映像は粗い。とは言え、確認出来れば良いや程度だからそれでも十分な性能ではあるのだけど。


 そんな訳で、今俺は眼鏡をレーダーモードにし、山の中でどの様な動きがあるのかをチェックしている。……双葉による子供達のお遊戯のやり取りを見ながら。


「そこはもう少し間を空けると良いの。こう、「そしてお兄さんは言いました……「今が攻め時だ!」と」こんな感じなの」

「むーおねえちゃんむずかしーよー」

「そうなの? ならこうするの、「言いました」の後に1度手でリズムをとるの、こうやって足にぽんってやるの」


 ……一体双葉は何をしているんだ。

 語り部の子に対して色々と教えているのは分かるが……それ、幼稚園レベルの子に求める事か? なんだろう。双葉が熱血過ぎる気がする。


 ただまぁ……これを双葉に仕込んだのって、うちの妹達なんだよなぁ。アニメやら漫画やら劇やらを色々と見せたりもしていたし。

 双葉が来た頃なんて、着せ替え人形にしていたこと以外にも、人形劇をやって見せたりとかもしてたみたいだしなぁ。しかも、美咲さんも一緒になってやっていたとか。


 双葉が来た頃の事を思い出しながら、ちらりと美咲さんの方へと視線を向けて見た。すると美咲さんは、「あはは……」と乾いた笑いを見せながら双葉達の事を見守っている。


「美咲さん達仕込み過ぎじゃない?」


 思わずそんな美咲さんを見て、俺は彼女に対してそう呟いてしまった。


「あ、あのさ……ほら、あの当時は今よりも娯楽が少なかったからと言うかなんというか……」

「やり過ぎたって思いはある訳だ」

「ま、まぁね。でも! ほら、双葉ちゃん輝いてるよ!!」


 まぁ、確かに双葉は実に楽しそう。そして、今のところは子供達もまた楽しそうだから良いけど……これが、とんでもない特訓にでもなるようなら、双葉に対して「やりすぎないように!」と正さなければならないだろう。


 それにしても娯楽か……。

 確かにあの当時は今ほど発達もしていなかったな。遊べる施設も、ボーリングやらカラオケなどは毎日解放されていた訳では無いし、一般用のスマホもまだ無かった。店だって今みたいに沢山あると言う訳でも無かったし。……あぁ、確かに娯楽施設どころか、色々と行ける場所自体が少なかったか。

 やるとして……アスレか果物狩りぐらいと言った感じだったっけか。そりゃ、家で出来る事を色々追求してしまうな。そして、その結果が今の双葉と言う事だな。


「双葉が妙に決めポーズとか芝居がかったセリフを吐くのは可愛いから良いけどなぁ」


 子供がやるから可愛い。

 しかし、いくらファンタジーな世界になったとは言え、今の俺達がやるのはやはり〝厨二病〟扱いされてしまうだろう。人の認識はそんな簡単には変わらないという訳だな。実際に俺も、双葉の様なことをやれと言われたら恥ずかしいしな。

 ただ、世の中にはノリノリでやっている人も居るみたいだけど。とあるセリフを改造し、「魔力に変わって~」なんて言っている女の子みたいな男の子探索者も居るんだとか。


 とまぁ、それは良いとしてだ。


「思った以上に子供達の身体スペックがまた向上してないか?」

「ジャングルジムとか登るじゃなくて飛び乗るだもんね。雲梯は上を走り抜けるものみたいだし……最初に見た時はヒヤッとしたよ」


 ブランコも靴がどれだけ跳んだかじゃなくて、自分達がどれだけ遠くまで飛べたかなんて感じで競っているし……それ、君達の年齢でやる事じゃないからね? てか、俺達の知っている子供時代の時よりも、皆記録が良いんだよなぁ。あ、因みに鉄棒も似たような事をしている。

 とりあえず、どう考えてもハイスペックな子供達になってしまっているんだよな。……だというのに、本人達は〝普通〟のつもりでいる。これ、割と認識が不味いのでは?


「とは言え、これも時代の流れと言うか、世界の変質による効果とでも言うべきか」

「子供達を見る大人の方が混乱しちゃってるよね」


 よく食べて良く運動をする。それだけで能力が向上する。まぁ、それもそうなんだよな。実際にモンスター食によって体が強化されるのは検証済みの話。そしてまた、ダンジョンでとれた米などの食物も同じ効果がある。

 そして今、村の基本食はそれらを使っている。そりゃ、そんなもの食べて、沢山走り回れば……てか、イオと鬼ごっことかをしていれば強くもなるわな! と思わなくもない。


 大人でも効果が出ている話だ。それならもし体を作る時期にあたる子供が同じような食べ物で育てばどうなるだろう? ……あぁ、とっても恐ろしい話だ。


「ただ、食べる事が出来る量が量だからな……其処は大人に比べたらって話もあるんだけど」

「探索者ともなると、食べる量も一気に増えるからね」


 燃費の問題もあるからな。肉体的にも精神的にも、ダンジョンに潜ったり、拠点から出て狩りをするとなると相当なエネルギーを消費する。当然魔力もだ。

 なのでソレらを補うためにも、大量の食事が必要になる。……そして、食べれば食べるほど体は強化されて行く。とまぁ、ある意味強化のスパイラルに入ってしまうのが探索者。

 そんな訳で、強化される値をグラフにしたら子供達よりも、探索者の方がぐんぐんと伸びているという事になるんだけど……それは相手が探索者だから。


「普通に生活している人達に比べると、将来的には能力にぐっと差が出来そうだよなぁ」

「新世代到来って感じ? と言うよりも、某ロボットの言い方をするなら人類の革新?」

「古い人間は淘汰されるってか? まぁ、流石にこの時代を生き残った人達を、子供達が大人になった時に切り捨てるってのは考えたくないけどなぁ」

「そこは大丈夫だとは思うけどね。ほら、こうして保育士さんにも懐いているのを見ると……うん、可愛い」


 宇宙に出た事により人との繋がりが薄くなるなんて事が無いから大丈夫だとは思いたい。

 とは言え、現代社会の事を考えると……ぶっちゃけ、都会だと隣人との繋がりも薄くなって行ったのが高度成長期だ。まぁ、住む場所次第ではあるのだけど。


 うーん……これは、もう少し拠点全体で子供の面倒を見るべきなのだろうか? しかし、それはそれでとても大変なのもまた事実。

 もう少し他の探索者にも声を掛けてみるか? 子供好きな人なら、将来の探索者になるかもしれないという事で、色々手解きもしてくれるだろうし、戦いで消耗した精神も子供とモンスターの掛け合いを見れば癒えるはず。……まぁ、子供嫌いの人は無理だろうけど。


 やばい、ちょっと気晴らしに程度で双葉達を見に来たハズなのに、何やら重要な問題にぶち当たってしまった気がする。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!



村に残っていても出来る事はあるのです……と言うか、外に居ても中に居ても、何やら大変な事に気が付いてしまう主人公達なのでした。

普通は上が気に掛ける事だろう? まぁそうなんですけど、上は防衛をしつつさらなる発展に目を向けている為に忙しいのです。

社会保障? そんな物よりも、防衛・技術・公共事業が優先じゃ! なんて状況なのは……まぁ仕方ないですかね。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] 将来素早さ三倍の真っ赤な機体に乗って「連邦の新型は化け物か」とか「坊やだからさ」とか言うのですね。
[一言] 『宇宙に出る』=『地上から離れる』=『シェルターに避難する』と考えるとあながち間違ってない気が。 (しかも今は宇宙という概念すら存在しているのか怪しい宙海が広がっているからなぁ) まぁ、…
[一言] いきなり世代断裂ってことはないでしょうが、せいちょうした子供世代がその能力の高さゆえに人によっては全能感が天元突破してたり傲慢に能力至上主義的に見下す者がでてくるってのはあるでしょうね。まあ…
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