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七百九十三話

 ゲートが使えるようになったという事で、実は一つ仕事が舞い込んできた。当然だよな。だって、これほど便利な魔法は無いと言っても良い。

 距離も時間も関係ないんだ。人や物を運ぶには最高の魔法と言うのは言わずもがな。


 と言う訳で、三河の山への援軍や兵糧を送るのと戻って休む人達の為に、ゲートを一日数回開ける事となった。

 これによって、安全の確保が数段上がると言う訳だ。寝ている最中も周囲を警戒する必要がなくなった訳だしね。


 そんな訳で……山の攻略において、俺は自分が出るよりもこうした後方支援に回されたという事になる。


「ま、それでも援護射撃は出来るんだけどな」

「ゲートの悪用だよねぇ……被害が出る場所はモンスターしかいないから良いけど」


 今の俺が使える魔力量的に、ゲートを一日の間に山へと開く事が出来るのは六回程。まぁ、これは距離も関係あるから近ければ近い程魔力の消費が少なくて済むのだけど、今はそれは横に置いておくとして。


 六回開く内、二回は朝と夜に探索者さん達を送り迎えするのに使う。

 残りの四回だけど、半分は保険として取って置いておく。なので、今の俺なら二回は自由に使えると言う訳なんだけど、その二回を使ってモンスターに対し爆撃をしているという訳だ。


「ホークアイシステムとでも言おうか。風から映像を送って貰い、モンスターに対して銃によるスナイプやグレネードを投下する。風もまた攻撃が出来るけど。まぁ、単体で移動しているから自己防衛に徹してもらう方が良いわな」

「風ちゃん大活躍だよねぇ」


 一日二回の航空支援。ゲートを開いていられる時間は、約二分間なので攻撃を行うには十分な時間はある。そもそも、ターゲットを決めるのだって最初に映像を見て決めている訳だからな。ゲートは開いて直ぐ攻撃が出来るんだ。だから実際には数秒でも有れば十分。


 本当なら、画面とゲート越しにでもマルチロックランチャーによる攻撃が可能だったら良かったんだけどな。

 離れすぎているのか、他者のカメラを仲介している為か、ターゲットロックが上手くいかなかった。


「一瞬だけゲートを潜れば使えなくも無いだろうけど、そうしたらゲートを使っての攻撃って強みが減るからなぁ」


 ゲートを使って一方的に攻撃を行う。しかも、相手はゲートを潜る事がほぼ不可能。

 そしてまた、何とか此方の攻撃を掻い潜ってゲートにたどり着いたとしても……美咲さんのランスがお出迎えをして居るんだよなぁ……ゲートの目の前で。

 だからも敵が勢いよくゲートを潜って来たら、その勢いでランスにグサリと言う訳だ。しかも美咲さんは、アラクネアーマーを完全に展開しているから、ゲートを潜れるサイズの敵であれば当たり負ける事は無い。

 これは完璧な布陣と言っても良いと思う。


 だからこそ、わざわざゲートを潜って向こう側へと体を晒すのは、マルチロックランチャーが使えるというメリット以外は無い訳だ。




 そんな訳で、ゲートの活用によって一気に探索者達は山の攻略を進める事が出来るようになった。……と思ったんだけど。そうは問屋が卸さないらしい。


「これ、間違いなく何処かにダンジョンがあって、しかもモンスターを輩出してるよなぁ」

「倒しても倒しても、巣の周囲に居る恐竜が減らないよね」


 そうなんだよね。しかも、面倒な事に増えているのはトロオドン。

 仲間の声に真似た囁きなどで惑わされるなんて事は無いけど、あちらこちらから聞こえてくる〝誰かによく似た声〟と言うのは精神的に来るものがあるらしく、拠点へと帰ってきた彼等は体に傷などが無いモノの疲労困憊と言った感じだった。

 どうやらトロオドンも、今までのやり方だと人が釣られないと理解したのか、囁きによって正気度を下げる方針に変えてきたらしい。

 中には、聞くに堪えない声で「たす……けて……」を連呼してくる奴もいるのだとか。本当に厄介な敵である。


 風みたいな航空支援を増やす事が出来れば良いのだけど……実に残念な事だが、風レベルの飛行型モンスターは数が少ない。

 そして、そのレベルに近い飛行型モンスター達は既に仕事が割り振られていて、周辺地域のマッピングを行っているんだよね。だから、全く戦力的には空きが無い状況。


 ペガサス隊による攻撃と言う手段もまた取れない。と言うのも、既に防衛用の部隊以外は出払っているからだ。


「水野さんのチームもペガサスに乗れるけど……彼等がペガサスに乗っちゃったら、地上での戦力が一気に減るからなぁ」

「今は水野さん達を主軸にした形で攻めているんだよね。確かに残っている探索者の事を考えると、水野さんがリーダーとして指揮してくれた方が纏まりやすいのかな」


 今出せる戦力がペガサスや精霊とは契約していない人達しかいない。なので、そんな彼等を上手く纏めて戦っていく為にも、水野さんに飛んで貰う事が出来ない。

 丁度、重しが必要な時期の人達って事なんだよね。上位者が居ないと、自分が! 自分が! と、お互いの主張が激しくなってしまうというか。


 とは言え、そんな調子にのりやすい時期の人達を上手く使える水野さん。とても俺には出来そうもないなぁ……なんて思いながら情報を見せて貰っている。

 水野さんのトーク力と相手を乗せる能力が半端なく高いという事なんだと思うけど。本当に真似なんて出来ないわ。

 なのでこうして、後方支援に徹しているのが一番自分に合うなぁ。なんて思っていたりもする。


「さて、ホークアイシステムは……っと、丁度良い所にモンスターが固まってるな。しかも周囲に人が居ない」

「狙い目だね。じゃぁ、万が一の為にランスをセットしておくね」

「あいよ」


 狙いを定めてゲートを展開。そして、用意しておいたグレポンを手にして砲口をゲートの方へと向けた。


「よし、方向ヨシ! 弾も満タン。砲撃開始っと」


 グレポンのトリガーを引くと、スポーンスポーンと砲撃としては何とも間抜けた音が響くのだがけど、その威力は十分な物がある。

 ポンポンとグレネード弾がゲートを通って行く。すると、こちらに映し出している現地の映像からはグレネードが空中から突然現れ、モンスターが固まっている場所へと着弾して行った。


「本当なら焼夷弾を打ち込みたい処なんだけどね」

「山火事になっちゃうから……」

「だから炸裂弾にしてるじゃないか。冷凍弾でも硫酸弾でも良いんだけど、それだと後処理が大変そうだからなぁ」


 リロードしてから、再度グレポンからスポーンスポーンと音を響かせる。

 制限時間は二分間。その間になるべく大打撃を与えておく必要がある。なので、人が居無さそうな場所でモンスターが居る場所もついでに砲撃しておく。

 そんな感じで、山の地面に小さくはない穴を開けつつ支援砲撃をしているのだけども……今回はやっておくべき行為を一つ忘れてしまっていた。


『おぉぃ!! いきなり爆撃は心臓に悪いっすよ!?』


 突然通信が入り、その通信の主は水野さん。

 そして、通信をして来た理由は抗議の為……とまぁ、コレは当然の反応だ。何せ俺が報連相を忘れてしまっていたのだから。


「あ、水野さんから抗議が来た」

「結弥君……通達忘れてたでしょ」

「うん、ついモンスターの群れを見つけちゃったからなぁ……早くやらなきゃって思っちゃったよ。ってことで「水野さんごめんなさい」っと」

『次からは気を付けて欲しいっすよ? 本当に吃驚したっすから』


 これが俺が指揮系のポジションにつく事が出来ない理由の一つなんだよな。

 チャンスと思ったら直ぐに行動してしまう。それまでは慎重に行動しているつもりではあるんだけどね。でも、安全が確保されている状況だとやりたくなってしまうんだよな。

 とまぁ、幾らそんな事を挙げても良い訳にしかならんから、次からはもっと注意しないとだけどな。


 ただこれで、またモンスター側の戦力を減らす事が出来た訳なんだけど……これ、一体何時相手のモンスター供給は止まるんだろうな。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!



新しい戦い方を試しておりますが……主人公なのにそれで良いのか( ゜Д゜)?


因みに、某ゲーム風と言うか通信簿的なステータスの表示を現在の主人公でやるとこうなります。

五段階評価で上からA・B・C・D・Eとなっています。そしてSもありますが、こちらは人の領域超えてない? と疑問視されるレベルとでも考えてください。


知力B 政治D~C武力A~S(接近A・射撃A~S)カリスマB~A指揮D 魔法A~S(通常魔法A・精霊魔法S)


とまぁこんな感じ。射撃がA~Sとなっているのは、使う武器次第だからでしょうね。S級の判定を受ける武器なんですよね、アンチモンスターライフルとかマルチロックランチャー。

そして精霊魔法のSもまぁ、大体ウォルのお陰。

政治がD~Cなのは、本人の能力と言うより〝利用される側〟として。なので評価は落ちています。

カリスマ……これは相手次第で変わりますからね。勿論Aなのはテイムされたモンスター達の評価です。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] ゲートを使った必中射撃……宇宙戦艦ヤマトにでてきた火炎直撃砲を思い出しますねえ(おっさん並感)
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