七百九十二話
他の事はどうなったか。
それは、現状目立った進展が無いと言うのが実情だろうか。進んではいると思うのだけど、敵が敵だからなぁ……。
色々と対策をとって対処するも、敵がタケノコみたいにわらわらと補給されている……と言うのが、交流団の故郷で起きている事。
此方は、俺達側からだと兵部さんと守口さんが出向している。そして、現地の人達と協力をしてバーサーカーな侍達を一斉確保したらしいけど。
「翌日には敵として新しい侍達が増えていたと……」
「戦力を温存してるのか、それとも暴走している人がバラバラなのか分からないよね」
普通なら戦力の逐次投入なんて愚の骨頂だ! と叫びたくなるが、彼等の場合はバーサーカーだ。バーサーカーともなれば、それこそ単騎で突っ込ませろ!! なんて言い出す奴がいてもおかしくない。
それに、戦術的にもゲリラ戦ともなればコレもまた話は別。兵力をあちらこちらにばらけさせ、小出しし、敵に対して常にストレスを与える。これを行うのが一番の目的なのだから。
そして、あの地の戦闘はゲリラを相手にしているようなモノ。それも複数の。まぁ、歴史にある一向一揆と似ていると言っても良いかな。
ただ一揆の場合なら食料が足らないわけだから、それならモンスターを食えと言いたいけど。食べるモンスター次第では、動物性たんぱく質以外にもビタミン・ミネラル……そして食物繊維の確保まで出来る存在が居るのだから。人間に必要な栄養素の殆どを確保出来るんだよな。
ただまぁ、そんな会話が出来る相手は表に出てこない。基本的に出て来るのは戦闘狂。彼等の場合は食料不足を大義名分に戦を仕掛けているだけだからな。
だから何とかして彼等の本拠地を見つけ、奥に隠れている人達に情報を伝えたりでもすれば……と思っているのだけど。如何せん、どうも彼等は隠れ里で生活しているらしく、今だその本拠地を発見出来ていない。
なので此方は全く進展が無いと言えてしまう状況だという訳だ。
「無駄な殺生をしたくないって方針を切り替えれば別なんだろうけどな……まぁ、そんな事できるハズがないもんな」
「無駄な殺生って……一体何をやったらそうなるのよ」
「ん? あー……ほら、あそこは山だろう? なら、森に火を放つか、山を土魔法や水魔法を使って崩すとか。まぁ、やりようは色々あるかなぁ」
ただ、そんな事をすれば全く関係のない相手にも被害が出る可能性もあるし、下手をすれば自滅に繋がりかねない。
こういった、自分にもダメージが入りかねないフィールド攻撃は切り札とかそう言ったレベルの話ではなく、本当の意味で最終手段なんだよな。
そんな訳で、現状攻めあぐねている場所ではあるが、防衛に関しては一切問題が無いと言うのも事実。なので、あまり心配するような事も無いかな。
現地の人達はゲリラ戦を仕掛けられているというのに、全くストレスを感じていないみたいだしね。
さて、次の事柄は……まぁ、ぶっちゃけ他の人には関係のない話。
とは言え、俺達にとってみれば結構重要。というか、はっきり言って俺達は現状置いてけぼりにされている。
「ソラ達の結婚だけどさ……ソラ達も完全に空気扱いだよな」
「周りが気合を入れ過ぎだよねぇ」
気合を入れて動いているのはサキさんや桜井さんでは無い。というよりも、まだお付き合いを認めて貰った段階であり、結婚をする前提ではあるものの、まだまだ式などは未来の話だったハズなんだ。
だと言うのにも拘らず。
ソラ達のクラスメイト達が、「これは俺達のソラやサキに対する恩返しだ!」と言って、めっちゃ頑張っているんだよね。
確かに彼等は、ソラ達の頑張りでこっちの世界に戻って来れたわけだけども……本人達を空気にしてどうするんだ。
まぁ、こっちもある意味バーサーカー状態って事なんだよねぇ。まぁ、人を幸せにするために行っている発狂なんだけど。ただ言える事は「先走り過ぎ」と言う事なんだよな。
とは言え、本人達が実に楽しそうだから止めるに止められないという。
とある女性は「私がサキのウェディングドレスも白無垢も作るから!」と言い、男子たちを手足のように使いながら、貴重な素材を確保しに行かせているとか。……まぁ、男子たちも「お任せあれ!」と嬉々として動いているそうなんだけどね。
そして、一組の男女ペアが居るんだけど、こちらもまた「料理は俺達に任せろ!」「ケーキは私がやるわ!」と言っている、そしてまた、彼等も男子たちを(以下略
ソラ達は彼等に対して「お父さんに交際を認めて貰ったって言っただけのハズなんだけどなぁ……」と、実に何とも言えない表情をしながら語っていた。
うん、正直何と言って声を掛けて良いのか分からなかったよ。
因みにサキさんはと言うと、そんなクラスメイトの女子達に、あれやこれやと着せ替え人形にされたりしているらしい。後、どういったプランで式を行うか! なんて、サキさんに話をしながら、サキさんを半ば放置で大いに盛り上がっているのだとか。……主役というのはそんなモノなのだろうか?
そして桜井さんはと言うと……なんだか哀愁が漂う気配を醸し出していた。
そしてソラと一緒になって「あれ、おかしいなぁ……」なんて言いながら、酒場でお酒を飲んでいる姿が目撃されているのだとか。
「ソラと桜井さんが仲良くなっているから、その事だけは良かったんだろうけどなぁ。しっかし、なんで結婚するなんて誤解が生まれたのやら」
「あれじゃない? 〝お父さんに認められた〟って言葉を聞いたからとか」
「あぁ……確かに婚約したと言っても良い状況ではあるからなぁ」
ソラとサキさんって婚約しましたってだけの状態なんだよ。だから、まだまだ流れがあると言うのに……このまま一気にゴールインしてしまうのだろうか。
ただ、この事は完全に俺と美咲さんもノータッチ……と言うか、触れる事すら出来ない状態だから、状況を見守るしか出来ない。
出来る事が有るとすれば、桜井さんやソラから色々と話を聞いてあげることぐらいだろうな。
さて、最後に確認するべき事。
それは自分達の状況だろうか。とは言っても、今後どうなるか? という話は上次第と言うのは〝ロード〟や〝三河側〟の話でした。なので、これは全く違う確認内容。
「さて、現状の俺達なんだけど……俺の方は、ソラや〝ロード〟の協力もあって時空間魔法をかなり使いこなせるようになったかな」
「え……何時の間にそんな事に?」
「そりゃ、こっそりと訓練していたからなぁ」
魔法を使った時の魔力消費のカットやら転移の安定化などなど。出来る事が実はかなり増えている。
「まぁ、魔力消費を減らす事が出来たとは言っても、やっぱり魔力を大量に食うのは変わらないけどね」
「それでも実践に使えるようになったって事だよね? 以前はマナブレードに付与ぐらいしか出来なかったと思うけど……」
「その付与もめっちゃ魔力を使ってたけどな。それもかなりコストダウンしたかな。あ、あとゲートを作れるようになった」
「え……ゲートってあのゲート?」
ゲートもしくはポータルとでも言えば良いだろうか。
まぁ、皆で潜って違う場所へと転移出来る奴だな。……これもまた魔力を大量に使うのだけど、その分効果は絶大。
そしてこのゲートなんだけど、実はワープと同じで転移先をしっかりと認識していないといけない。それこそ詳細なイメージが出来ていないと不味い。
イメージに誤差があったらどうなるか? ま、とあるゲームで訓練されている人ならすぐわかる話で、いわゆる〝壁の中にいる〟状態になる。
ただ、これって実はかなり簡単にクリアできる課題だった。
そもそも、俺達には高性能なAIが付いている。そしてそれぞれの頭装備には色々なデータが見える様な機能がついている訳だ。
だから、遠くの位置のイメージが出来ない? そんなの関係ない。だって、そこの映像を、俺の場合はゴーグルかな。それに映して貰えばなんの誤差も無くゲートが作れるという訳だ。うん、現代技術超便利。
ソラが言うには、異世界だと失敗する人が絶えなかったのだとか。そして、ソラの場合は符術で作った使い捨ての使い魔みたいなものをカメラとして使っていたそうだ。
そんな訳で、俺達の方はと言うと……ぶっちゃけ、こっそりと戦力アップが出来ていましたって事だね。いやぁ、ゲートは色々と使い道が合って楽しみだ。
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と言う事で、さりげなく結弥の能力が向上していました。
全く……〝ロード〟は一体なんて事をしてくれたんだ(まて




