七百九十一話
色々と沢山の事が起きたので、ここ最近の出来事を纏めてみようと思う。
先ずは何といっても〝ロード〟の事だろうか。
彼は鎧を着用し人の世に紛れる事が可能となった。なんでも掲示板では〝鎧の旦那〟と言う名で有名なんだとか。また、スライムも大量に連れているという事で、そのごっつい見た目とのギャップが良いと言う人も多いらしい。
とは言え中身は〝ショゴス・ロード〟と、いわゆる神話生物である。ちょっと彼の気に触れる様なことでもやってしまえば……一体どうなるのやら。
人に対して興味があり友好的な関係を築けているとは言え、フレンドリー過ぎて無礼な真似をしたりする者が現れるなんて事にでもなればと、少し気が気では無い村や協会の上層部達。
これはどうしたら良いものか? と頭を悩ませた結果……何を思ったのか、彼等は〝ロード〟の事を〝やんごとなきお方〟というお触れをこっそりと、しかし迅速に村中へと伝わる様にお達しをしたらしい。
その結果。
今村の中では〝ロード〟とスライムに対して、ペコリと会釈をする者達で溢れている。挨拶は礼儀だからね。
スライムに対しても? と思う所があるが、スライムもまた〝ロード〟のお供と言う事で無礼を働いたらいけない相手ということらしい。
因みに、この状況に対して〝ロード〟自身は、頭にはてなマークを浮かべている。しかしそれは会釈の意味が分からないからでは無い。
『何故スライムにも?』
ただその一言に限るらしい。まぁ、裏でそう言った情報が出回っているなど彼は知らない事だからな。
とは言え、彼等も礼儀正しくしてくれるのは気分が悪いわけでも無いらしく、スライム達はそんな会釈の真似をしてペコリーンと地面に伏せて見せたりしている。……何というか、形容しがたい動きにしか見えないから、何をしているのか聞くまでそれが会釈だとは分からなかったけどな。
なのでスライムの動きを見た人達も、それが会釈などとは思っていないだろうね。とは言え、挨拶をしたらスライム達はこの動きを必ず行うので、挨拶返しだとは気が付いている様な気もするのだけど……どうなんだろう。
ただ、そんなお触れなど子供達とスライムには何ら関係など無い。公園やアスレなどで彼等は以前と同じように仲良くしている。
この光景に子供の保護者達は最初こそ子供を咎めようとしたのだが、スライム達が自主的にやっているという事や〝ロード〟の願いもあって、今では誰もが子供とスライム達の遊びを楽しく見守ると言う形に落ち着いた。
「〝ロード〟の件はもう大丈夫かな」
「村であれば現状滅多な事にもならない気もするよね。でも、念の為に誰かが傍にいる必要があるんじゃない?」
「んー……でも〝ロード〟もそろそろ自分達だけの目で見たいってのもあるだろうしなぁ」
とまぁ、これがちょっと面倒な話ではある。
ぶっちゃけ、現状友好的とは言えそれはこうして彼の傍に俺達が居るからという面もある。しかしそれは、〝人側〟からの〝ロード〟に対する監視という面もある。果たしてその監視を解いても良い物なのか? と頭が痛い話。
しかし、このままべったりと張り付いていれば、当然だけど〝ロード〟も監視と言う事に気が付くだろう。そうなったら、それが今度は爆弾になりかねない。……まぁ、監視の目的は〝ロード〟に対してではなくて、彼に接触する相手を牽制する為なんだけどね。ただそんな事など〝ロード〟には関係のない話だからな。
なので今、協会や村の上層部は俺達を一旦〝ロード〟から外すかどうかを検討中らしい。
「とまぁ、現状はそんな感じか……後は上が決定した内容を待つだけかな」
「外すとなったら次どうするかが気になるけどね。今の所移動先も無いから結局村で防衛待機になりそうじゃない?」
個人的にはもうそうなってくれても良いと思っているけどね。ただ、そうとは言えない進展もあったりする訳で……。
動きが有った場所があり、その場所と言うのが三河の山越えだろうか。
あそこは元ゲーム実況者でもある水野さんが調査をしていた場所だ。そして、山の中で出て来たモンスターと言うのが……実に面倒なラプトル系だったそうで。あ、後……昔の本を読んだ人なら知っている人もいるんじゃないかな? もし恐竜が滅んでいなかったらなんてIFな話。
そこに彼等がそのまま進化していたら〝恐竜人間〟になっていたのでは? なんて言われていた存在が居る。トロオドンの事だ。一応こいつもラプトル系。
そういえば、恐竜人間の事は〝ディノサウロイド〟って呼ばれていたっけ。……なんて話を薄く覚えている。
あ、因みに〝ディノサウロイド〟って名前を覚えたのは、色々なアニメやゲームに出て来たから。ほら有名なゲッ●ーロ●とか、ク●ノ・●リガーとかに出て来たんだよね。他にもあったけど。
まぁそんな恐竜人間の事は良いとして、何が言いたいのかと言うと、そんなトロオドンもまた山の中にいたらしい。
そしてまた、そんなトロオドンの攻撃は多彩というか、なんともずるいというか……。
トロオドンの攻撃方法その1。
人の声を真似る。一度聞いた声を覚える事が出来るのか、それとも捕食した相手の声を獲得出来るのか、それは全く分かっていないのだけど、彼等は人の声を真似て発する事が出来る。
そしてそんな声を使い「たす……けて……」とか、「モンスターが出たぁ!」と言うのだとか。悪夢過ぎる。
パーティーで行動していると、仲間の声に似せながらかく乱を企んで来た事もあるらしい。まぁ、この件はパーティー内だと専用の通信機を使ってコンタクトをとっているので、惑わされるなどと言った事は無いのだけど。
トロオドンの攻撃方法その2。
異様な集団行動。まぁ、これは他のラプトル系の奴等も使っているんだけど、それが更に洗礼されたモノとなっているそうだ。
やっぱり知能がトロオドンは他の奴等よりも発達しているという事なのかな。
トロオドンの攻撃方法その3。
擬態するんだよね……木などに上手く紛れ込むというか。
別に体の色が変わったとか、大きくなったり小さくなったりしたとかそう言う訳ではない。本当に体の色に合わせた場所に隠れるみたいなんだ。……魔力も微妙に隠しているみたいだから、察知するのが相当難しいらしい。
そんなトロオドンを山中で戦うのだから、かなりの労力が必要らしい。まさに一進一退と言ったところなんだとか。まぁ、水野さんは二歩進んで一歩下がっている状態だ! と言っているそうだけど。ま、彼等の能力を考えたら一歩ずつは確実に進んでいると思われる。
何せその証拠に……どうやらトロオドンの巣を見つけたという報告が有ったのだとか。
「まぁ、それが罠の可能性もあるって話らしいけど」
「人間になったかもなんていう相手がベースのモンスターだからありえるって事?」
「そう考えているみたい。だから、もしかしたらそっちの援軍に呼ばれるかもって話が、あちらこちらで出ているみたい」
山を越える為には、そして山に道を作るにはどうしても安全の確保が必要。そして、その安全の確保の為に道の近くには奴等が出ない様にする必要があると言う事で、巣の排除は必須行為である……トンネルは掘らないのかな? と思わなくも無いが、この世界で穴を掘って行くと言うのも怖い話だしな。空は海だし。
そして、もしそんな大規模な山狩りを行うとなれば……きっと俺や美咲さんも呼ばれる可能性が出て来るんじゃないかな? 丁度と言ったらあれだけど〝ロード〟の件が良い感じでお役目を終える事になりそうだし。
しっかし……山の中は本当に魔境らしい。
トロオドン以外にも、小さく飛行可能な鳥系のモンスターもいるそうだし……なんなら大型の何かも遠くにいたのだとか。ただその大型種は近づいてこないし、近づきたくてもラプトルが邪魔だから調べる事が不可能なのだとか。
まぁ……山はまだまだ問題だらけって事だよな。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!m(_ _"m)ペコーン
小さい頃、SF関連なのか恐竜関連の本を読んだときに、恐竜人間と言う絵姿を見て衝撃を受けました。なんじゃこいつわ!! と、少し恐怖を覚えた記憶があります(´;ω;`)
そして、ゲームやらアニメで……彼等は大抵の場合敵対する存在。あの凶悪な見た目ですからねぇ。適役としては丁度良いのでしょうけど。




