六十一話
日が昇ってから食事や準備を済ませてから、巣があった所での調査を始める。
「爆破したのは上の部分か、下部の破損は最初に穴をあけた部分か」
周囲の警戒に雀蜂型モンスターの解体、巣の調査を分担してやっていく。
俺とイオは巣を調査しながら、未だ生きている雀蜂が居た時のために警戒。
「ミャー」
イオがカリカリと巣の下部に対して爪を使って削っている。どうしたんだろうか? 生きている奴でもいるのか。とりあえず手伝うか。
懐かしのスコップを取り出して、巣が崩壊しない様に破壊していく。
「ふむ、ある程度開いたけど、生きている奴等はいないか……イオ、ここに何かあるのか?」
「ミャン!」
もちろん! と鳴きながら、イオはさらに奥まで削っていく。
雀蜂の死骸を外に出しながら巣の奥へと進んでいくと、巣の奥にはゴロゴロと白骨化した骨が出てくる。
「ミャー……」
「これは、イオの仲間か?」
「ニャン」
様々な種族の骨が混ざっているが、イオはその中から的確にイオの仲間の骨を選別してる。
骨の中にはウルフや猪に熊以外にも人だった物もあるようで、何処からか人を攫って来たという事だろうか。
「考えるのは後にして、今はイオの仲間の骨を纏めて回収後に村の近くに墓地でも作ってやるか。あぁイオ、ついでに人の骨も選別してもらって良いか?」
「ミャン」
イオの了承を貰った後は、雀蜂の死骸を全部外に出して巣の内部に脅威がない事を確認し、解体メンバーの周囲で警戒に入る。
「白河君、イオ君が見つけた物って……」
「あぁ……奴等の餌になってしまった被害者やモンスターですね」
「ちらりと見えていたが、やはりそうか」
入谷のお兄さんは大体を察したのか、見つかった人の遺骨を埋葬するから集めて欲しいと言われる。
まぁ俺としても、その心算で遺骨を集めていたから異論はないかな。
「人の遺骨も選別してますが、イオの仲間のも同じように埋葬しても良いですか?」
「そうだね、イオ君は仲間だし良いと思うよ」
そんな話をしている間に、イオは遺骨の選別が終わったのか「ミャァ!」と、終わった事を告げながら此方へと擦り寄ってきた。
「お……終わったのか、イオありがとうな」
一仕事終えたイオに対して、ご褒美の肉をあげながら撫でておく。
「さて、入谷さんこの後はどうしましょうか? 防衛に混ざっても良いと思いますけど、周囲の調査も必要かと思いますが」
「そうだね……うん、白河君とイオ君は他に巣や他にモンスターが居ないか調べてくれるかい?」
「了解です」
そんな訳でイオと共に周囲の調査を開始する。
「さてと、イオはモンスターが居そうな気配がある方向はあるか?」
「ミャン! ミャン!」
イオは顔を二箇所に向けながら鳴き声をあげた。ふむ、恐らく二箇所にモンスターの気配があるという事か。
さてと、その二箇所は制圧した巣からみて、村と反対側の方向と川側の反対方向か。
まぁ恐らくだけど、巣のテリトリーが広がった事を考えればその二箇所も巣の可能性が高いかな。
「今はテリトリー外だから大丈夫だろうけど……少し進めば奴等の領域か。どっちにしろ巣であれば制圧しないとだし、調べに行くか」
先ずは、村と反対側の方向へと進んでいくと、やはりと言うべきか周囲の雰囲気が変わる。
その感じは雀蜂型のテリトリーに入った時と同じ感じで、このまま進んだら雀蜂に遭遇するかも知れないな。
「イオ……何か音はするか? 具体的に言うなら羽音とか」
「ニャン」
イオには音が聞こえているようだ。羽音が遠くから聞こえると言うかのように鳴きながら首を振る。
やはり、雀蜂の巣の可能性が高いとなれば、もってきた双眼鏡でイオが向いている方向を見る。
「……二匹、いや三匹か? 雀蜂が移動してるな……恐らくあのちらりと見えるのは巣かな?」
こちら側の調査はもう良いだろう、雀蜂の巣があるだろうという事は確認出来ている。雀蜂たちが此方に気がつく前に、川と反対側の調査に行く。
もう一つの調査をしにいくと其処には雀蜂の巣では無いようで、其処に居たモンスターはウルフだった。ウルフ型ではあったが、今までの大きさのやつらとは違い……そのサイズが小さすぎる。まるで豆柴と言ったところだろうか? とりあえず今その豆柴は悠々と寝ている。
「……こういう場合、小さいからと言って警戒を解かない方が良いか」
「ミャン」
当然とイオが鳴く。やはりあの子犬っぽいのは見た目と一切違うという事だろうな。
「できれば……戦闘はしたくないな。ゆっくり後退するか」
「ニャー」
そう決断すると、其のまま豆柴が起きないようにキャンプ地へと戻って行く。
戻った後は全員が解体等が終わったのか、全員が荷物を集めたり次の行動の為に準備をしている。
「おや? 白河君もどったかい?」
「はい、とりあえずと言った感じですけど。」
入谷のお兄さん以外にも人を集めてから、モンスターが二箇所に居る事、一箇所はもう一つ巣が在ると言う事、もう一箇所は豆柴っぽいウルフだが、その気配が異常と言える事。それらを、詳細に伝える。
「なるほど……その豆柴ウルフは、寝ていたんだよね?」
「そうですね、寝ていても気配が凄かった訳ですが」
「おいおい……それは寝ている時に奇襲は出来るのか?」
「……無理でしょうね」
対策について話をしていく。雀蜂の巣に関しては同じ方法で対処できるから良いだろう。
だが、豆柴に関しては如何したら良いのか解らない。ただ解っている事は、雀蜂の二箇所に巣が在るというのに悠々と寝ていられるレベルという事だろうか。
色々なモンスターを襲い糧としていた、雀蜂達が手を出さずに放置しているという事が、下手に手を出してはいけないという事になるだろう。
「とりあえず、雀蜂の巣は制圧するとして……豆柴については放置する方が良さそうだね」
「イオも戦闘するのを避けようとしましたからね、とりあえずはまだ道具残ってますし今夜にも巣への奇襲しますか?」
「俺達はそれで良いぞ」
今夜も奇襲をするようだ、まぁ雀蜂達に数を増やされるよりマシだろうな。
全員が少しでも雀蜂達に時間を与える危険性を理解しているからか、巣の襲撃に対して同意をした。
まぁ巣に対してやる事は変わらないという事でさっくりと討伐が完了する。違いがあるとすれば、慣れた為か多少だが時間を短縮出来たことだろうか。
再び日が昇ってから巣の解体など同じ事を繰り返してから、村へと帰還する。
さてはて……問題は一つ解決したとはいえ、さらに面倒そうな豆柴ウルフなんてモノが確認出来たとは……如何したものかな? とりあえず、今はゆっくりとしておこう。ニ連続での巣攻略で結構疲労したからな。
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