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五十八話

 イオと出合った場所の近くまで到着したけど、テリトリーの範囲広がってる。


「ミャー……」

「あぁそうだな、蜂達が増えてるのかもな」


 イオも気がついている様で、心配そうに警戒しろと鳴いてくる。

 ぽんぽんとイオを軽く構っておく。うん、にゃんにゃんとイオが嬉しそうだ。もふもふとする感触は俺も楽しいし、気分を変更するには丁度良い。


「さて蜂のテリトリーに入らないように、森の中を移動するか」

「ニャン!」


 索敵能力が高いイオが先を進みながら森の中を調査していく。

 しかし、本当に他のモンスターが居ない、蜂型モンスターが自らの餌にする為に狩りをして、周囲のモンスターが数を減らしすぎてるんだろうな。結果テリトリーが広がっている。


「やっぱり早めに何とかしないと、あいつ等が村の近くまでテリトリーを広げるのも時間の問題だろうな」


 進んでいくと川がある場所までたどり着いた。蜂のテリトリーはまだ続いているけど……これ川の向こう側にも続いているかもしれないな。


「そういえば、上流側の川の向こう側って猿が出るようになっていたな」

「ミャン!」


 現状であれば川の中にモンスターは居ないから渡ることはできるかもな。さて……どうしようか。


「イオどうする、向こう側行くか? 一応蜂のテリトリーについて説明はしないといけないけど、調査という点で言うなら向こう側を見るのもありだからな」

「ミャー! ミャンミャン!」


 イオは行く気みたいだな。まぁ蜂と猿のパワーバランス等の情報も少しは欲しいから行ってみるか。




 川をイオと共に飛び越えて反対側へと移動する。蜂のテリトリーはというと、少し円形状に狭くなっている感じではあるが川を越えても範囲があるのか。


「さてイオ、蜂のテリトリーは続いてるみたいだけど他に敵は居るか?」

「……ニャー」


 イオが鳴きながら首を横に振る。ふむ、側には居ないという事になるのか。となると、猿は蜂より立場が低いって事か? まぁ両者とも群れるから、空を飛べる蜂の方が有利なのかもしれないな。


「あのサイズの蜂なら、毒針じゃなくても針を受けた時点で既に致命傷になりかねないしな」


 周囲の調査をすると、見たことの無い植物等もあるようでサンプル回収もやって行く。


「イオ、食べても大丈夫そうな物とかあるか?」

「ミャー!」


 ふむ、この木の果物は食べれるという事かな? 見た目が林檎に似てる。よし、回収をして婆様に渡しておくか。


 少し遠い部分からグルルと音が聞こえる。イオが警戒を特にしてない所を見ると問題ない相手か。

 ガサリとボスウルフとPウルフの群れがその姿をみせるが、イオを見た瞬間にゆっくりと下がっていく。


「やっぱイオは強者なんだよなぁ。低層のウルフ程度なら群れても逃げ出すか」


 それにしても、此処でボスとPウルフの群れが出るのか……どんな分布図になっているのやら。

 蜂のテリトリーも全体が円形になっているのか少しずつではあるが、その境界線の方向がどんどんと変わって行っている。川を挟んでからはその差が激しく解りやすい。


「ミャァ!」


 少し考えていたら、イオが叫んでウルフの群れが一目散に去っていく。


「戦闘がなくて楽だけどね。折角のPウルフ素材だったから少し欲しかったかも」

「ミャ! ……ニャー」


 そういえばそうだった! とイオが反応。うん、かわいいやつだなぁ。次からは気をつけるよという感じで擦り寄ってくるので、撫でておく。あれ? イオってゆいと同じタイプか?


 それにしても、猿を見ない。これは上流と下流で何処かに領域があるのか、それとも蜂を警戒して出て来てないのか。


「ただこれは、新しく道を作るのは大変そうだな。川を渡らなきゃいけないし、渡った先の植生等も違うから調べることが多すぎるか」


 これも要会議の案件だろうな。はぁ……本当に想像以上の状況になってるって事か。


「さて、イオこのまま上流に向かうか? それとも下流側に蜂のテリトリー避けながら進む?」


 こういう迷った時は野生の勘に頼るのが一番だろう。

 イオの反応は上流に行く方側を選んでいる。ふむ、村の一番の危険がスズメバチ型のモンスターなら、次点は猿だからそちらを調べたいのだろう。


「了解。じゃぁ猿の調査をしようか」


 川の横を上流へと足を進めていく。偶にウルフが遠くから様子を見ているようだが、イオの存在があるため襲ってこない。襲ってくれれば素材集めになるというのに。

 植生サンプルは既に回収しているから、他にもないか調べつつだが大差がないようだな。


「ミャ……」


 そんな中、イオが反応する。猿共が出てきたのか? イオの顔が少し斜め上を睨みながら警戒している。


「武器は……片手ずつに剣鉈と鉄串にしておくか。森の中だからポールウェポンは使いにくいし、先ずは遠距離攻撃と保険に剣鉈か」


 イオの少し後ろに陣取り警戒しながら進んでいくと、木の上にチラチラと動く何かが目視できるようになってくる。うん、猿だろうな。


「イオ……先制いけるか?」

「ミャン」


 小声でやり取りをする。敵が何処に居るか既にわかっているみたいで、突撃はいけるようだ。それなら、まずは隠れているみたいで隠れ切れてない奴から狙う。


「いけ!」


 鉄串の狙撃で木の上に居る猿の頭を狙撃する。周囲の猿もバレテナイと思っていたのか、突然の攻撃に驚いているようだ。

 その隙にイオが突撃をして木の上の猿を強襲。その動きはまるでNINJAだな……猿よりも木の上での機動能力高くないか?


「負けてられないか、次!」


 森の中だろうが魔法との併用なら、其処まで問題など無い。圧縮した風や水玉で猿の顔や手足を攻撃。攻撃を喰らった猿達は木の上から落ちるから、木の上が逆に危険な状態に。


「落ちてきたら、問題なく剣鉈で攻撃出来る範囲になるからな!」


 猿達を落としては斬る、突く、蹴り飛ばす! イオの機動戦闘と合さって一気に猿達の数が減っていき、遠くにいた猿達は撤退を選択していく奴等もでてきている。

 しかし猿型モンスターは、その身体能力は猪や熊ほどではない。まぁ木の上から一方的に攻撃できると考えると、状況次第では猿の方が有利って事か。


「ダンジョンと違って、逃げるモンスターが外では増えてるか。やっぱりダンジョンにはモンスターを正常に判断させない何かがあるって事か?」

「ミャン!」


 戻ってきたイオが、まるでその通りだ! と言わんばかりに鳴く。


「ふむ……イオもダンジョンから出たから色々自分で判断出来るようになったと?」

「ミャンニャン!」


 尻尾を振りながら首を縦に振るイオ。あー……これは確定か、でもモンスターはダンジョンで生まれるのも居る訳だし。謎が深まっていくか。

 とりあえず、色々と情報が大量に手に入ってきたし、一度村に戻らないとな。

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