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五十四話

 狩り探索狩り探索と、壁の外側で単独行動中。

 ダンジョンでマッピングしてた時よりも楽かもしれないな、電波の入らないスマホのカメラ機能で周囲を撮影しながら、目印を付けつつの探索をする。

 問題はモンスターの縄張りか、狩り過ぎて空白地帯が出来れば何が其処に来るか解らない。とは言ってもモンスターだから狩らないといけない。まぁ村の近くに新しいダンジョンが出来てなかった事は幸いと言った所だろうな。


「んー……やっぱり普通の動物は数が少ないか」


 鳥も獣も虫ですらその数が減っている、やはりモンスター達がその生活圏を完全に奪っている。


「しかしそうなると、植物とかの受粉とかどうなってるんだろう? ダンジョンでは見なかったけど、虫型のモンスターが何処かに居るのかな」


 崩壊前に見ていた情報サイトでは虫型のダンジョンも存在してたみたいだった。大抵のモンスターはその行動が似ている獣等と大差がないとなると、虫型もサイズや凶暴性は違っていても花蜜を集めたりして、受粉の手伝いをしているかもしれない。


「モンスターが蔓延ってるから、今更生態系の事を言っても仕方ないけどさ、植物が無くなると人にとっても厳しいからな」


 まぁ植物もその形を変えているかもしれないから、今までとは違い余裕もあるのでサンプル回収もしていく。

 虫関連も見つけたら回収出来たら良いけれど、見ないよなぁ……何処にいるのやら。




 森を抜けて川のチェック。まぁあのピラニア型モンスターはダンジョンから出れないだろうけれど、水辺は重要と言えるので調査だ。ワニ型なら出てくる可能性もあるかもしれないからな。


「先ずは、網を投げ入れてっと」


 後は引っ張りあげる、中身は魚が一杯だ。その種類はシェルターに潜る前に見た生態と同じだ。


「ふむ……変わりはないけど、網で捕ったにしては数が少ない?」


 魚もモンスター達に捕食されているって事か、熊型も居る訳だから当然か。

 という事であれば、水辺に長居するのは危険だな。出来れば長時間監視したい気もするけど、婆様に古い監視カメラの改良を頼むか。エネルギー問題さえ解決すれば後は設置して後で記録を見れば良い。有線型や無線型もあるけど……距離的に無理、そっちは改良が出来たら村の外に設置だろうな。


「まぁその分エネルギー問題が大変に為るけどね。施設やら道具やらでも使うからな」


 従来の発電機は使い物にならない。

 まず燃料がない、ガソリン・灯油・軽油等の燃料は、二年のシェルター暮らしで使い切った。ガスについてもだ。

 風力発電を造る。うん風なんて吹いたり吹かなかったりでランダム性が高すぎて使い物にならないよ。

 水力発電は……川まで遠いし、川自体そんなにでかいタイプじゃない。

 太陽光発電も無理だ。そんな広い土地がある訳じゃないし、遮蔽物が多くて日射量が足らない。まぁ広い土地があっても、果樹園やら農業用に回す方が先だ。


「まぁ魔石からのエネルギー抽出が唯一の選択肢なんだよね」


 魔石も問題はある。モンスターを討伐しないと手に入らないという事。やはり早いとこダンジョンまで行ける様にして、魔石を大量入手できるようにするべきだろうな。


「さてと、そんな思考をしててもモンスターは待ってくれない」


 どうやら少し先で、猪と熊が戦闘中だ。ここは……スルーではなく、華麗に横殴りするべきだろう。

 とは言え、タイミングが重要だ。熊型のサイズは全員で討伐したサイズと大差がない。猪も其れに抵抗できるだけのサイズはある。


「現状でもお互いに良いダメージはいってるから皮素材は諦めるとして、一気に終わらせたいとなると」


 もう少し奴等の殴り合いを見ておくべきだろうな、ただ長時間放置しすぎるとウルフとかも来る可能性もある。


「所々怪我をしてるから、其処を鉄串で狙撃かな。香辛料爆弾も香辛料が安価で購入が出来なくなったから、村で使うと決めたタイミング以外では簡単には使えないし」


 だから、香辛料系の爆弾は前みたいに大量には持ち歩いていない。完全に緊急時用だ。


 タイミングを計ってる間にも二匹のモンスターと戦闘は続いている。猪の武器である鼻の部分で熊の腹に突撃。熊がそれを受けながらも覆い被るように猪にプレス攻撃。熊を背に乗せ暴れる猪にもう放さない! といった感じでがっしりと爪を食い込ませる熊。


「うん……プロレスかな? とは言えそろそろ良いタイミングになりそうだな」


 勢い良く猪を熊が持ち上げ……持ち上げた!? 其のまま地面に叩きつけ! 猪が仰向けでピクピクしている……今だ!

 素早く貫通タイプの鉄串を二本、熊の目と腹の傷口に狙撃! 熊は気が猪に向かい過ぎていたのか、両方とも突き刺さった。目へのダメージは当然だが、怪我をしている部分も前の時と違い深く突き刺さっているからダメージも大きい。



「よし、次行くぞ!」


 熊が片目をやられて怯んでいる隙に、連続で鉄串の射撃。

 猪がダメージを与えた場所を的確に狙っていけば、鉄串だけでも倒せるかも知れない。問題はその猪が復活するかどうかだろうな。


「そう言うわけで、長時間戦闘する心算は無いから止めは接近するしかないか」


 ポールウェポンを手に持ちクルリと回す……斧部分が前に来るように位置調整をする。

 魔法で何時もの補助をした後、一足飛びで熊の目を潰した方に飛び込んでからギロチンアタック! 蓄積されたダメージの為に首の後ろのガードが弱まっていたからか、熊の頭は綺麗に落ちた。

 後は猪だ……と言ってもまだ復活してないな。仰向けだからお腹が確りと見えている。


「心臓はこの辺りだよな」


 さくっと穂先の部分でひと突き。ビクンと一瞬動いた後、そのまま動かなくなる。


「さて、素材が大きいから血抜きとかも大変そうだ」


 まぁ持ち帰ってから村でやるのが一番だろうな。という事で、何時もの様にマジックバックパックに収納。


「それにしても、このバックパックも常に改良されていってるから、輸送が楽になっていくな」


 婆様達研究開発班に感謝だね。それにしても、容量今どうなってるんだろうか? 最近ぽんと渡されて説明うけた記憶がないけど。


 まぁ、収納は出来たから村への帰還だ。探索と警戒をしながらだけどね。まぁ帰宅時に良いものでもあればラッキーだ。




 何事もなく村に着く、モンスターも何か面白そうな物も一切なかった。実に残念だ。

 跳ね橋を下ろしてもらわず、飛び越えての入村。戦闘班は皆同じ事をしているから村の人も慣れたものだ。


 村の一角に協会出張所みたいな所が建設されていて、戦闘班は此処でやり取りをしている。当然、俺も手に入れた物資やらは此処でやり取りをしている。そして、戦闘班のリーダーである品川さんは慣れた作業で受付も兼任。


「お帰りなさい、今日もお疲れ様」

「ただいまです。今日は猪と熊がありますよ」

「でかしたわ! 計算上だと魔石の数が足らなくなりそうだから助かるわ」

「あー……やっぱり魔石足らないですよね」


 戦闘班の武器防具だけでも結構消費してるからなぁ。足らなくもなるか。


「どのぐらい足りません?」

「そうね……ゴブリンの魔石換算でも三桁は足らないわね。このまま村の開発が進めば……はぁ頭が痛いわ」

「……少しダンジョンに行くタイミングを前倒しにしますか?」

「そうなると、村の防衛が心配になるのよね」


 まぁそうだろうな、村の護衛が現状戦闘班にとって一番の仕事だ。探索等も村の防衛を適切にやる為に操作してる訳だし。


「村の防衛の為には魔石が必要と。無いものねだりですね」

「それに、ダンジョンまでの道のりが安全とは限らないからね。戦闘班の足なら走れば一時間以内で到着できるとは思うけど」

「熊型以上のが居ないとも限らないですからね」

「そう言うわけで、当分の間は慎重に行くわよ。白河君も……周辺のモンスターを為るべく上手く調整して狩って来て頂戴ね」

「了解です」


 ダンジョンまでは未だ行けないか、となれば少し探索範囲を広げる選択肢も考えるか。周囲の安全確保のためのマッピングといえば問題ないだろうしな。




 家に帰宅する。ボロボロにされてた家も復元されていて、前みたいな生活が出来る。ただ以前と違うのは母さんとゆりの存在がこの家にも在ると言う事だ。まぁシェルター生活では一緒に居たから、感覚としてはそれの延長だ。


「ただいまー、今日は肉と果物を貰ってきたよ」

「「「おかえりなさい」」」

「おかえりじゃ、量から見て今日も大物を狩って来たのかの?」


 そんな風に一日の出来事を皆で話し合い。

 妹二人に話を聞くと学校ぽい物が再建され、勉強は皆やっているみたいだ。ただ、内容にモンスターについて、解体方法、護身術などもやっているみたい。

 母さんも他の人と混ざって、裁縫やら料理やらと忙しく動いている。

 外に出たとは言え、地下暮らしを其のまま延長してるって事だ。まぁ今はそうしないと行けない状況。


「そういえば爺様はどうしてたの?」

「ふむ、弓を持って櫓の上からモンスターを射抜いておったぞ」


 爺様が弓を使ってたんだ……まぁ直接殴りに行ってないから良いのかな。


「お兄ちゃん! 久しぶりにあれやろうあれ!」

「あぁ……あの部屋も再建したんだっけ」

「あ、私もやる!」


 うん……どうやらこの後は妹二人とスーパーボール部屋で遊びになるようだな。


「おじゃましまーす」


 あ……美咲さんが顔を出しに来た。どうやら一人追加だ。

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