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五十一話

 目の前にはモンスターの熊。二百五十センチとヒグマクラスとモンスターの熊としてはノーマル系。

 品川のお姉さんが前に話してたけど、モンスターは基本大きくなるのはノーマルやその上位で、特殊な攻撃は特に無い。ただ、普通の獣と行動が同じ所もあれば違う所もある。

 問題があるのは特徴があるモンスター。ウルフなら遭遇した事があるポイズンウルフがソレに当たる。まぁ他にも居るみたいだけど、まだであった事が無いからデータでしか見たことが無い。

 この熊も同じで大きくなっただけの様だ。手が長くなったりサイズが極端に小さくなったり、毛の色がものすごく特徴的という事が無い。


「ノーマル系でサイズも熊型モンスターとしては平均以下とは言っても、獰猛な事には変わらないからな。美咲さんや他の人は極力接近しない様にね」

「私は弓での援護に徹するよ」

「そうそう、こっちは横からウルフやら来ないか警戒しながら、撤退援護に回るからな」

「一番面倒なの任せるのも気になるけどねー、君に任せるのが一番良いから頼んだよ!」


 その場に居た人が其々のやる事を明確にした後、行動に移りだす。

 熊はというと、此方を警戒しながら前足で地面を削ってる、突進でもしてくる気か? モンスターの場合だと威嚇突進が無いって資料でみたからな。

 とはいえだ、今は撤退中で後ろには非戦闘員や彼等の護衛が居る。


「……はぁ、この立ち位置じゃ回避出来ないな。さてどうしたものか」


 急速で思考を巡らせて、答えを探る。此方が少しでも動いたら突進してくるだろうから、片手を鉄串やら魔石やらに回す暇は無いとなれば、現状アイテムの切り替えは無理だ。そうなると手にしているポールウェポンがメイン武器、後は美咲さんの援護と……魔法か。

 しかし魔法を使うにしても、風や水での窒息は時間が掛かる。水玉を顔面にぶつけるか? まぁダメージは無いが嫌がりそうではあるが……此処は土魔法かな。


「相手が動かないか……人が多いから何処から狙うか探ってる? それとも援軍待ちか? まぁ先制攻撃は貰うとしますか」


 美咲さんに合図を送ってから、土魔法でピンポン玉サイズの石の塊を作り上げる。


「さて……鉄串よりは弱いけど、牽制攻撃には十分だろ!」


 熊の顔面に向かって、石礫を射出。読みやすい弾道だ、熊も軽く避けた後に此方を睨み突進してくる。


「まぁ挑発したから当然突進してくるよね。でも次弾の用意は当然やるよね」


 最初の一発とは違い、牽制後すぐに野球ボールサイズの石を十個ほど生成してある。

 勢い良く突っ込んできた熊の顔面に向かって面制圧射出! これ、避けれるわけ無いよね、突進してきてる訳だし。

 案の定、熊は首を左右に振り避けようとするが、一個二個避けた程度で回避しきれる訳も無く、鼻頭やら耳やらにヒット。顔面以外にも手やら胴体に当ったのもあるが、そちらはノーダメージだな。


「やっぱり猪系以外の動物には顔面狙いが現状は正解か。モンスターだから変化すれば変わるかもしれないけど、今はその特性のままみたいだからありがたいね」


 熊の足が止った瞬間に、美咲さんの援護射撃が入る。矢は……パウダーボムだな、誰だよ! 彼女の矢にソレを着けたのは……うん、爺様だった気がする。たしか、援護ならこういうやり方が有効じゃ! とか言いながら数人で矢の魔改造したな。


「とはいえ、熊も鼻頭にダメージ受けた後に刺激系の粉は辛いみたいだな」


 熊が腕を振り回しながら誰も近寄らせないようにしてる。ふむ……迂闊に近寄れないか、大型化してるからパワーの上がり方が大きいだろう、下手に近寄ったらワンパンでダウンもありえる。


「まぁ、そうならそうでやり様があるけどね」


 貫通型鉄串を手に投擲を開始。美咲さんや他の戦闘班数名も弓による援護射撃。


「……うん、結構厳しいか。魔法併用した鉄串なら半分ぐらい刺さってるけど、矢は全部弾かれてるな。実に毛深い熊だ」

「ちょっと矢の種類変えるよ!」


 お? 美咲さんも矢が通じないとみて種類を変えるか……しかし毒矢だと更に刺さらない、当然毒鉄串もだ。さて、こっちは貫通鉄串でじわじわと削るしかないか。


 其のまま鉄串を投擲していると、第二段の矢が熊を襲撃。当然弾かれるわけだが……あぁ、鏃が分銅に変わってる。弾かれるなら打撃攻撃にした訳か。中にはお代わりパウダーの矢も飛んで行ってる。

 これなら……窒息魔法いけるか? 婆様の弟子が言ってたアレを試すか。


「たしか、どうせ即座に酸欠で倒せないなら一酸化炭素でパフォーマンスを低下させた方が良いんじゃない? って話だったな」


 どうせこの熊の体力はまだまだ減らない。なら長期戦でも良いようにするべきだ。

 オマケとして、足元も泥に変えておこう。安定と安心の足場悪化だ。


「援護班手を休めないで射続けて! 建築班は慌てずシェルターに! 警戒と護衛は現状位置!」


 品川のお姉さんの指示を飛ばしながら建築班の誘導。入谷のお兄さんは援護班で、打撃型の矢が顔面に当たった時のみ有効と解ると、顔を狙撃するように矢を射るように指揮している。


「さて、鉄串も撃ちつくしたし、魔石爆弾で一気に仕留めたいけど、魔石は貴重品だからな」


 魔石の用途が多すぎるから、切り札として使うのも厳しい。今回であれば使わなくても時間を掛ければ良いだろうし。


「このまま魔法で弱体化させながら、前衛での警戒かな? あぁそうだ、泥の所にお約束のマキビシを撒いておきますか」


 ワイヤーで纏められてるマキビシを投擲しておく。ふむ、やる事がなくなったな。


「グォォォォォォォォ!」


 一方的にやられてイラついたのか、熊が二足歩行モードで手を振り回しながら叫ぶと、そのまま前に倒れ込み……矢の攻撃も無視するかのように走り出した。


「だけどさ……目を瞑った状態でその足場を走ったら危ないよ?」


 一酸化炭素でスペックダウンしたからだろうか、上手く走り出す事が出来なかった所に足場の泥沼だ。熊がつるりと前足滑らせて、勢い良くマキビシを体中に突き刺しながら転がってくる。


「やっぱり足場の悪化は大正義だな」


 マキビシワイヤーで雁字搦めになった熊が、一メートルほど先でじたばたと転がっている。

 くるくるとポールウェポンを回しながら接近。首を刈る事ができるか解らないから先ずは……。


「これで終わってくれよ!」


 くるりと回してハンマー部分を下に向けた後、全力での振り下ろし! 狙いはそれず熊の頭部にヒットする。

 手に伝わる感触で、熊の討伐が完了した事を理解したけど残心は忘れないのは基本だ。


「ふぅ……討伐完了かな」


 少し時間を置いてから宣言する。それと同時に後ろから歓声が上がった。


「よっしゃー! お疲れ様!」

「熊だー! 熊鍋だぁぁぁぁぁぁ!」

「先に撤退した中の奴等に教えてこなきゃ! ちょっといってくる!」


 うん、弓とは言え全員で狩りをしたような物だからな。熊型モンスターと割りと大物狩りに参加して勝てばこうなるか。


「結弥君お疲れ様」

「あいよ。美咲さんもナイス援護、あのタイミングでパウダー使うとはね」

「ありがと、あれの後に暴れた時はびっくりしたけど」

「遠距離重視の戦闘訓練になったし良いんじゃない? 全員の援護連携にもなったみたいだし」


 品川さんか入谷さんの判断だろうね、援護射撃は美咲さん以外予定になかったからな。熊相手に撤収する人を気にしながら接近戦をやりたくなかったから良かった。


「あらそう? それなら支援射撃を選択して良かったわ」

「品川さん、そうですね。正直な話をするなら接近はしたくなかったので良かったです」

「初手からあんな戦い方するんだもの、何と無くそうじゃないかと思ったわ」


 ばれてる、まぁ色々な人を見てきたから解るのかな。


「それにしても、分銅型の鏃を用意してるなんて思わなかったですよ」

「それは僕だね。石川のお婆さんが色々用意してくれてたから、もって来てて良かったよ」

「入谷のお兄さんでしたか」


 この人もまた柔軟性が前より増してるような気がするな。


「さて、とりあえず……皆で解体だな!」


 お兄さんの一言で、戦闘班のメンバーが集まって熊の解体をしていく。

 さて……熊の素材は久しぶりだから良い物が作れるといいんだけどな。そこ等辺は婆様頼みだね。


 とはいえ、現状は壁建築の初日だ。……初日に熊が来たのはどう考えるべきかな。早めに来て倒せたと考えた方が気は楽ではあるんだけどね。

 まぁ確りと休んで明日からも壁建築を全力で護衛しないとな。

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[一言] 人類滅亡とかそういう壮大なストーリー苦手なんだよなー ここに来て話数毎のタイトルが無いのが悔やまれる、続きを読むかどうかの判断が出来ないので暫く離脱して気が向いたら読みます
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