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四話

「なぁ……何でゆりがこうなってんだよ?」


 目の前で眠ってるゆり、別に死んでるわけじゃないが大怪我をしてる。ダンジョンに行ったのは知ってるけど、結果がこれでは。


「僕言ったよね? どれだけ危険かって、浮かれすぎかって? 無視した結果じゃないか!」


 頭を抱えてる両親に叫ぶ、叫んでも意味が無いのは解ってるけど言わずにいれない。


「お前がもっと真剣に注意してくれればよかっただろ!」

「何度も言っただろうが! それをなんだ? 皆が言ってるから? TVでそう言ってたから? ふざけんな! 僕のせいにして棚に上げるな! 全ての責任はあんた達だろ!」


 此処で沢山の言葉を並べても仕方ない。意味が無いそれでも……言わないと気がすまない。現状ゆりの右腕が戻ってくる事が無いから……



――時は少し巻き戻って――



 事の始まりは、夏休みに入った日。ダンジョンの入り口には高校生以上の学生で賑わっていた。聞こえてくるのはボス倒せるかな? や、レアアイテムGETできるかな? と言った何とも皮算用的な事。


「これ、大丈夫なんですかね?」

「あー……今日は開始時間からずっとこんな感じだよ」

「怪我人や行方不明者が出ないと良いですね」

「分かって言ってるだろ? 今日から数日に掛けては、慣れてる探索者には気を配ってもらえる様にしてるからな。待機組も作られてるはずだ」

「はぁ……それって報酬でるんです?」

「もちろん、そうしないとな。やっぱり二階層や三階層で稼ぐ人にはね……」


 とは言えダンジョンだ絶対はないだろう。ダンジョンは此処だけじゃないし。


「とりあえず、白河君も少しは気に掛けてくれ。君はこのダンジョンの三階層でソロをしてる位だからな」

「そうですね、行き帰りにでも注意しておきますよ」


 という訳で、一階層から三階層まで順番に進む。ボス狩り美味しいです! まぁ敵が変わる事は無いから戦闘も何時も通り。とは言え遭遇戦やこの先の階層で出る敵の事を考えて、ガチバトルを挟んで訓練。内容は課題の武器チェンジを重点的に。後は如何に接触を減らすかだけど、何故かと言ったらこの先のモンスターの、血やら毛やらに猛毒が無いと限らないから。徹底的に回避プレイの訓練! 返り血の一滴すら浴びないようにする。


 三階層のボスルームは、ハメ技無しは未だ怖いから爆弾を使用。微妙とは言え毒持ち三匹相手はね……対毒性を何てよくサブカルでは見るけど、ステータスとか確認出来ないこの状況で耐性入手にチャレンジするのもねぇ? と言う事で、徹底的に安全策で行きます!


 周回でのソロでのボス討伐ボーナス(個人的にそう言ってるだけ)は無いようで、代わりに色々素材を収集。最初に毒犬のサンプルの採取をした時は咄嗟にやったんだけど、試してみたいと思ってたのはモンスターの解体をした時にどうなるか? って事で、まぁサンプルを入手した時点で分かる様に消える事は無い。

 また、壁を壊した時も同じで、欠片の確保が出来た事で予想してたとは言え、こうも単純に出来る事を、国や協会って知ってるのかな? 何か消えたのだけ確認した後は、ドロップ品が落ちるの見てるだろうから知らないかも? 検証する人でも居れば別だろうけど。

 ドロップ品と言えば、本とモノクルに関しては未だ手を出してない。残りのダッシュって事で更に穴が無いか確認したり、ゆりに念押ししたり、ゆいを可愛がったりで時間が無かったから。まぁこの学生ラッシュが終われば幾らでも確認できるだろう? だといいな!


 三階層ボスを倒したら、ショートカットから二階層入り口へ行き。階段を上っていく。どうもこの階段不思議空間の様で、逆行するとボス部屋前のドアから出ることになる。そのドアは閉めると消えるようで……実に不思議システムだ。


 一階層ボス部屋前から出口に向かってテクテクと歩んでいく。特に人の気配が無いけど、学生探索者は帰ったのかな? まぁ初心者探索者なんか特にだけど、二時間三時間と潜れるわけが無い。一時間も探索が出来るのであれば良い方だと思う。現状すでに三時間程経っているしね。


「おや? こっちから今日は帰ってきたのかい?」

「ええ、一応気にかけてくれって言われてましたから」

「あぁ、其の事何だけど……学生さん達を見なかったかい?」

「ボス部屋前から最短ルートで着ましたけど、一人も居ませんでしたよ?」

「そうか……まだ帰ってない子達が居てね」

「うぇ……ちょっと走ってみてきます。手続きを」

「すまん、頼んだ」


 ダンジョンに再度入って、マップを片手に猛ダッシュ。道行く学生じゃないパーティーにも声を掛けて手伝ってもらう。

 走る、走る、水分を補給してまた走る。もしかしたら、ゆりも来ているかもしれないと思うと走らずにいられない。

 無いかもしれないけど、一階層のボスを叩きのめしてから二階層に。二階層入り口で休憩している人たちが居るから話しかける。


「すみません! ここ学生達きませんでしたか!?」

「え? 学生は見てないけど……どうしたの?」

「入り口のお兄さんに聞いたんですけど、三時間経ってるのにまだ帰ってきてない学生が居るそうなんです」

「まじか!? 初探索なんてそんなにも潜れないだろ……でも、二階層になんか来れないんじゃ?」

「万が一です。一階層に関しては他の人に声を掛けて手伝ってもらってます」

「そうか……二階層の探索で良いんだな? 俺達も手伝おう」


 顔をよく合わせる探索者は多いわけで、快く皆承諾してくれる。良い人達だらけだ。

 二階層でも、途中であった探索中の人達にも声を掛けて走り回る。焦りがミスを起こしかねないけど、ソレでも間に合うかもしれないと言う期待が足を前に出させる。


「あ……みつけた」


 妹じゃないけど、学生を発見。五名ほど居るが全員がぐったりとして動いてない。


「おい! 大丈夫か? 生きてるなら目を開けろ!」

「う……あ……」

「よし、生きてるな。警戒はこっちがやるから、体調整えておけ」

「あ……あぁ……」


 五人とも生きてはいる、怪我はまぁ欠損等が無いから大丈夫だろうが……どうしたものか。大きな声でも出して人を呼ぶか? 一人じゃ怪我人を五人、護衛しながらは厳しいだろうし。救援は途中で声を掛けて来たから、その内来るかもしれないけど……


「意識はあるな? 生きて帰りたいなら黙って聞けよ? 協会は現状を認識してる。他の人達も今救援活動をしてるから、此処に来るメンバーも居るはずだ。今は一人だから此処から動けないが、どの道すぐは少しでも回復しないと行動できないだろうし、おとなしく休憩しててくれ」


 了解をしたのか、首を縦に振る五人を視界の端で確認してから警戒。あちらこちらから足音や戦闘音が聞こえると言う事は、救援組が頑張っているのだろう。

 暫くして、救援組と合流してから五人を任せる。その後あまり人が行ってない可能性がある所を廻って救助活動。二階層マップを網羅した後。一階層に戻り同じく全てを駆け巡る。時間にして三時間程、疲労がピークだ。ゆりは見つからなかった……来てなかったのか? それとももう帰ったのだろうか?


「お疲れ様……大変だったね。」

「いえいえ、まさか二階層に行き成り行ってる人が居るとは思いもし無かったですよ」

「ボスの情報とか、パターン? って言えば良いのかな? そいつがネットに上がってるからね。人数が揃ってれば倒せなくは無いのが一階層のボスだからね」

「ある意味困った話ですね。お陰で二階層に突っ込んで帰れなくなってるんじゃぁ……」

「兎に角助かったよ……はぁ頭が痛いなぁ」

「とりあえず、受付のほうに行ってきますね。今日は本当……お疲れ様でした」

「君もゆっくり休むんだよ」


 お兄さんと会話を終えて受付、買取してもらう気にもならず後日持ってくると、話をしてから適当に切り上げる。あっちもこっちもてんやわんやで大変そうだ。お土産かって帰ろう。




 帰宅して玄関を開けると、飛び込む様にゆいが走ってくる。


「お兄ちゃん大変! お姉ちゃんが病院で! 病院に!」

「落ち着け! どこの病院だ!」


 ゆいが焦って支離滅裂な話をする。所々でキーワードを解読して病院に走って……



――冒頭につながり現在に至る――



 ゆりは僕が救援活動をしてる最中に病院に運ばれたらしい。組んでるメンバーが壊滅して逃亡をしている最中に……腕を奪われたそうだ。


「なぁ? 母さんは知ってたよな? 命を賭けた戦闘行為が如何に危険かって。目の前でみてたもんな? 熊に腕を持っていかれた黒木の小父さんをさ」

「そ……それは……」

「僕ずーーーーーーっと言ってたよね? 其の事も言ったよね? はぁ……どうするんだよ?」

「それは……ねぇ回復薬ってあるんでしょ? 如何にか手に入らないの?」

「入るわけ無いだろ! 回復薬を手に入れるには、五階層から十階層までで下級回復薬、十一から二十に中級、部位欠損が治せる上級に至っては二十一からだって話だ! 今、民間で最大深度は四階層! 警察が十九階層 自衛隊が二十三階層と自衛隊ぐらいしか手に入れれないんだよ!」

「それは……なんとか国に……」

「今日恐らくだけど、全てのダンジョンで同じ様なことになってるはずだよ。圧倒的に回復薬が足らないのに一般人に廻ってくるわけが無いだろ!」

「そんなの知らないわよ! ゆりはどうなるのよ!」

「二人とも! 此処病院だよ! とりあえず落ち着こうよ!」


 ゆいの制止を受け深呼吸……かなり頭にきてた様だ。

 話は一旦終わらせて、僕とゆいは帰宅してゆりの着替えなどを用意する事に。


 ゆりの部屋に入る。ゆいに下着や着替えを準備してもらってる間に、適当に読んだり出来そうな暇つぶし品をチョイス。




 ふと視界の端にある物が目に入る……あぁ……攻略ノート、何でゴミ箱に入ってるかな?

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 学生が被害くらうのは分かるけど、大人の被害はどうなの? 同じだよね?なんで騒がれてないのか疑問
[一言] 朝寝ぼけてて妹二人いるのを認識できず、キャラ紹介の所で気付きました。いらぬお節介で間違って第五部のみ誤字報告してしまいました。すみませぬ。
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