三十六話
ちょっとしたお出かけ回です。妹ちゃんのたーん!
ゆいやゆりを連れて都心に来ている、まぁ都心といっても東京じゃなくて中京大都市圏って言われてる所だが。
しかしゆりに関しては大怪我をしたのに、外を堂々と歩けるほどまでに心身共に回復してるなんて……僕の妹はどっちも自慢できるよね。
現状であれば、此処まで怪我をしたのなら入院しているか病院と自宅の往復だけが外出だ。怪我もそうだしトラウマもある、さらに言うのであれば世間の目だ。この年頃の学生が欠損するほどの怪我をしているのを見たのなら、大抵の人はダンジョンで無謀をしたんだ等という目でみる。
同情? 侮蔑? 腫れ物扱い? どの様なものにしても、受ける側は良い感情にならない。だからこそ僕はゆりが凄いと思うんだ。
今日のお出かけの件だって本当ならゆりは連れてくるつもりは無かったよ、でも本人が行きたいと言い出したんだ、悩みに悩みまくった末に同行する事にしたんだけどね。
「お兄ちゃん大きな人形さんがいるよ!」
「兄さん、あれって確か季節とかで着替えするんだよね?」
「ゆりはよく知ってるな、あれだけ大きな人形の服だからいろんな人の目に入るだろうな」
宣伝効果が如何程のモノか解らないけど、間違いなく人は目にするからな。少しでも可愛い服だ等と思えば勝ちなんだろう。
まぁ、ゆいもゆりも色んな服を見たりしてるから……ホイホイされたのだろうか? しっかし服って高いな! この値段って物価が上がる前でも十分に高いんじゃないか? 流石都心という事なのかな? 地元なら……うん、漱石さんが三人いれば買えるんだよ? 物価が上がる前なら一人だったかな?
まぁ何かを購入する訳でもなくうろうろする、今日ここに来た目的は色々あるけどその一つが現状の都心ってどうなってるんだろう? と思ったのと、妹達の都心デビュー。二人は地元で歩き回る事はあっても都心に来たこと無かったからね。
しかし……人が随分と少なくなってるな、当然なんだけど外国からの観光客は全く居ないよね、前来たときは結構いたと思ったんだけど。後は国内でも移動する人は減ってるんだろうな。高速を走る車が、トラックと自衛隊や警察の車両ぐらいしか見なくなったって聞いたことがあるよ。
「兄さん人多いね」
都心に来た事が無かった二人にはこれでも多く感じるんだな。まぁ減ったとは言え地元の駅周辺と比べるとねぇ……うん地元がんばれ?
「うーん、お兄ちゃん開いてないお店屋さんも一杯あるよ? お休みさんなのかな?」
ゆいも感じるぐらいか、都心に来て一番びっくりしている事だよそれ。まさか閉店している店が結構あるなんて思っても無かった。ダンジョンショックだ! なんて言ってるのを聞いたことあったけど、都心でそれを目にするなんてなぁ。
思った以上にダンジョンと言うのは影響力が高かったのか、まぁダンジョンに潜りに来ている大人が沢山いる時点でという事かな?
二人を連れて名物? の地下に突入、さぁ心を強く持たねば。此処って……迷路ダンジョンだよね! どう考えても! 案内板みても迷う自信があるよ! まぁでも美味しいお店とか有ったりするからな、さぁ潜るぞ! ダンジョンアタックだ!
「兄さんなんでそんなに気合いれてるの?」
「お兄ちゃんお顔さんが少し怖いよ?」
……妹達に気を使われてしまったか。
本屋を見て、お菓子を見て、服を見て、ご飯食べて、お菓子を見て、案内板を見て、お菓子を食べて、案内版をみて、デザートを食べて、案内板を見て……うん、何処だ此処?
いやいやいやいや! 地下街なのは解ってるよ! ただ、道がわからん! これも二人がフリーダムに動きすぎた。まぁ初見で色々と楽しそうだったから、ついつい後ろから着いて行くだけにしたのもダメだったが。可愛いは時として悪魔だった! そして此処の地下街は迷路ダンジョンなのは間違いがなかった! 寧ろダンジョンより手強い! 精神的ダメージが常に入ってるよ!
「お兄ちゃん、美味しそうなお菓子さんがあるよ!」
「兄さん、可愛いアクセサリーが売ってるよ!」
迷子になった事すら気がつかずに楽しげな二人を横に……こっそりと店員さんに道を聞きながら、ダンジョン攻略……じゃない、駅方面に脱出を試みるしかないな。
何とか中心部の駅へと脱出して、爺様達に頼まれた物を買いに行く。僕一人であれば駅裏側の電化製品売ってる量販店に行くんだけどな、新しいパソコンが見たいよ。
そういえば、パソコンってOSの問題が出たんだよね、国産での開発を再開したみたいだけど、まだまだ普及はしてない。海外とのやり取りが無くなったから、窓とかのOSを常に使うのは問題だそうだけど、一応インターネットだけは繋がってるのでダウンロード販売はされている。ただ国外のお金のやり取りって今もされてるけど……意味有るのかな?
国とかはそのうちインターネットも繋がらなくなるんじゃないか? って思ってるみたいで、積極的にOSの開発に力を入れてる。まぁ売ってるソフトが窓対応なのが多いのも問題なんだろうな。
こうして何時もとは違う環境に身を置くと色々な物が再確認や発見が出来るな。ゆいとゆりの可愛さとか、ダンジョンの弊害とか、妹二人の暴走癖とか、人の流れが減った事とか、妹二人の可愛さとか。
まぁ色々あるけど時代が少しずつ逆行するかも知れないね、物の品質は上がっていくんだろうけど。
さて、爺様に頼まれた物を買いに、双口屋に来たよ……うん、水羊羹のお値段たけぇ! 三個入りで三千円超えるって。
まぁでも石川の婆様の所や黒木夫妻やそれ以外にも買っていくから……凄い値段になるな。
「ん? 二人は抹茶あんと紅粒あんが欲しいの?」
二人の目が一つの和菓子を凝視してるな……これも有名なお菓子なんだっけか。
「まぁ今日は地下街で色々食べたから……うん、そんな目で見るな、言いたい事は今日じゃなく明日以降に食べろって事だよ」
懇願する目にやられる兄の図……うん、店員さんが微笑ましいなーってニコニコしてるよ! 生暖かい目だよ!
まぁ二人して飛んで喜んでるし……まぁいいか。
帰宅する電車に乗ると二人は疲れたのか寄り添って寝てるな。僕は寝ないようにしないと……降りる駅間違えるとか面倒だからね。
それにしても、ゆりを見る視線は気になったけど、本人は本当何処吹く風だったな。何かを感じて思ってるかもしれないけど、表に出さずなのか本当乗り越えたのかが解らない、これは父さんや母さんに言っておくべき事だろうな。
まぁゆいとのお出かけが楽しすぎて気がつかなかった、なんて話であれば一番楽ではあるが。
二人を起こしてから水羊羹を配った後は、爺様と今日有った事を一生懸命に話す妹達……うん、よっぽど楽しかったみたいでよかったよ。
「ふむ、駅地下はそんな風じゃったのか……迷わなかったのかの?」
「ん? ゆい迷わなかったよ!」
「そうだね、兄さんも普通にしてたしね」
僕は爺様に苦笑を送るだけだ、うん盛大に迷ってたなんて二人には言えないぞ。折角楽しんだのにショックを与えて如何するんだって話だ。
「ほうほう、そうかそうか迷わなかったのじゃな。あそこは迷路よりも恐ろしい場所じゃからのう、次に行く時があったら今回以上に気をつけるんじゃよ?」
「「はーい」」
うん、爺様は全てを察したようだな。上手い具合に二人を注意をしてくれている。それにしても……爺様も迷った事があるのかな? 何だかそんなニュアンスが含まれてた気がするよ。
二人が寝に入ってから、爺様に本題を話しておく。
「ふむダンジョンの影響が其処までの物であったか」
「びっくりしたよ、TV見た時に気になったから、都心に行ってみたけどさ」
「物価もまだまだ上がるかもしれんのう」
もし上がったら大問題だ、お土産の予算が足らなくなるかもしれない!
「お土産以上に色々問題が出るぞい?」
「……あはは、まぁ国が如何するかだからねぇ」
「そうじゃのう、出来る事といえばなるべく自給自足じゃな」
村の皆で……熊でも狩りに行くぞとか言い出しそうな雰囲気だな。ダンジョン産のお肉が食べれれば良いんだけど、そういえばワニのお肉の検査ってどうなったんだろ? 白くて澄み透ったお肉美味しそうだったなぁ。
とりあえず、こういった事は今から徹底的に対策しておいた方が良さそうだ。ダンジョンからモンスターが溢れて街を一つ破壊したのも此間あったんだしね。
最悪を想定して準備をしておけば……どんな状況下でも大丈夫って言えるよね。
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