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三十五話

今日は短めになってます

 今日は石川の婆様が用意した除草剤・Pウルフ毒バージョンを持って八層に来ているよ。

 因みにスパイに関しては、あの事件以来居なくなったよ? 時期が被ったから何とも言えないけど、支部長が手を打ってくれた結果だと良いんだけど、例のモンスターが溢れた場所だと言うのであれば……それは何とも言えない話になる。


「取り合えず、自由に動けるのは良いんだけどね」


 そういう訳で、八層で実験や素材回収が自由に出来るからね。うん、今日は溜まった分のストレスを開放しよう。

 まずは濃度が低いものからだ……ある程度遠くに投げてから時間を待つ。

 うん、草は枯れるけど範囲が狭いかな? まぁまだサンプルはあるからどんどん試そう!


 少しずつ濃度を上げていく、最初のサンプルでは魔法の範囲と大差がなかったな……次はどうだろうか、うーむ少しずつだけど範囲が広くなってる?


「サンプル一からサンプル三までは其処まで大差ないか」


 中々に面白い結果になってはきたな、濃度が濃ければ範囲が広くなっていく。やはり草はモンスターなんだろうか? まぁそこ等辺は婆様が調査してくれるかな?


「さてはて、そろそろ本命かな?」


 高濃度の出番だ……どうなるかな? 取り合えず投げてみようか。

 ……うーん範囲は広くなったけど、思った程ではない? むむ、投げつけるじゃダメなのかな。

 

「よし、どうせ試すんだ魔法も使ってみようか!」


 高濃度除草剤を水魔法で噴射する、さっきよりは範囲が広がったけど……濃度が薄くなったか。

 風魔法で次は行こう……風に薬を乗せて霧状に散布する。


「お? おぉ、これは良い感じかな?」


 やはり除草剤は散布するに限るって事かな。よしよし、これは攻略法が見えてきたかも? 風魔法に乗せて高濃度を散布する、ただ問題は何処にゴールがあるかだろうね。

 取り合えずはこれぐらいだろうか? 検証結果をメモして婆様に相談だな。


 


 ダンジョンから出ると、やっぱりスパイは居ないようだ。お兄さんも不思議に思っているみたいで、周囲を警戒しているみたいだ、恐らく本命が全力で隠れてると思ってるのだろう。


「白河君お疲れ様、何か今日は静かだね」

「そうみたいですね、まぁ何時も通り行動できるから良いんですけどね」

「彼等も切り上げたのか、それとも完全に隠れれる人と交代したのか……まぁこの付近には居ないようだけどね」


 隙の無いチェックかな? 他にもスパイを探してる人が居るんだろうな。

 お姉さんとも話したけれど、理由は解らないようだ。確認が取れない以上まだ警戒はするべきとの事。


「支部長もね、色々と本部に連絡取ってるみたいなのよ」

「情報待ちですね」


 ただ、協会側はある程度は知っている気がする。きっと、まだ公表できない何かがあるんだろうな、今は流れに身を任せるかな。


「白河君も解ってるとは思うけどまだ警戒しておいてね」

「了解です、まだまだ気は抜けないですね」


 とりあえず協会ではこれぐらいだろうか? 今回は支部長さんも居ないみたいだしね、後は帰るだけかな。


 


 石川の婆様に今日の結果を話したんだけど、婆様的にも予想通りだったようだ。


「濃縮度は最後のやつでいいんじゃな? そうなると素材が結構かかるのじゃが、使いきって良いのかの?」

「それに関してはとりに行くから大丈夫だよ」

「ならば造って置くかの、明後日にでも取りに来るとよいぞ」


 よしこれで八層での下準備は大丈夫かな? 後は徹底的に回復系の魔本を読み解いておこう。

 ゆいや爺様との時間は大切だからね、ダンジョンの事は横に置いておく。日常というものを実感しないとダンジョンなんて潜れないよね。




――ダンジョン協会本部――


 緊急会議という名目で各支部から支部長達が本部へと集まっていた。


「自衛隊が動いたお陰で何とかモンスター達は討伐できたが、国から調査が入る可能性がある」

「本部長、それは……国が協会に干渉すると言う事ですか?」

「そういう事になるな、今回の件は被害が甚大過ぎた。夏のあの事件の時とは違った意味でな」


 騒然となる者と静かにしている者が確りと別れるが、それが何を意味するのかは直ぐ解る事になる。


「ところで照山支部長はどうしたんですか?」

「そういえば、まだ来てませんな」


 一向にその姿を見せない照山支部長、誰も彼の所在を知っている者は居ないようで、全員がお前は知っているのだろう? と声を掛け合っている。そんな中、本部長のみが静かにその状況を見守っていた。

 見守ってはいたのだがそんな時間を長く続ける本部長では無く、彼は一喝をし全員が一斉に口を閉じ本部長に注目した。


「彼はあのダンジョンの暴走で行方不明になっている」


 音が消える、行方不明は死を確認出来ないという遠まわしの表現だ。それはすなわち、照山支部長が亡くなっている可能性がある事に他ならない。


「ヒッ、それは……本当の事ですか?」

「石鷹支部長、私が嘘をついているとでも?」

「ッ!? いえ……そのような事は」


 本部長の睨みで彼は息を飲み込み席へと座る。いや座る事しか出来なかった、それだけ本部長の存在感は強すぎた。


「さて彼の事は今はいい、それよりもだ君達は大丈夫だろうな? 調査がはいるぞ」

「……なぜ国は査察に入る事を明言しているのですか?」

「簡単な話だ、既にもう動いている」

「な!?」


 反応は二つ。驚いた者と平常運転の者だ。


「まぁ今の反応を見れば大体解るがな? 国は最早止まらぬぞ」

「しかし! 不意打ちではないですか」

「今回の調査が何故突然行なわれるかなど分かり切っているだろう?」


 黙る石鷹支部長。もはや彼には後が無い状態だ。繋がっている政治家からも既に縁を切られているだろう。彼等の逃げ足が速いのは昔から変わらない。


 そしてウルフダンジョンにスパイを出していたのも、照山だったのだろう。スパイが居なくなったのは、事件が起きて慌てて帰ったと言う所だろうか?

 結弥の悪い予感は当たってしまったが、コレで結弥の周りはまた静かになる。そういった意味では一安心だと兵部支部長は安堵した。

 しかしまた協会は激動の時に入る、沢山の人達の席が空き人手が足らなくなるだろう。

 膿を出しきったとしても、本部長達の悩みは尽きそうにない。

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