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二十六話

 美咲さんの監修だけど、うん、前言ったことがかなり改善されているな。一体どんな訓練したんだろ?


「随分と動きが改善されてるけど何かしたの?」

「本当? よかったぁ。あのね、お父さんと叔父さんが昔やってた遊びを体験してみたんだよ」

「……遊びで動きがよくなるって如何いう事?」

「四方が壁の場所で、スーパーボールを大量に壁にぶつけてから、ひたすら避ける遊び」


 なんという遊びを……でも想像してみたら、うん、ある意味凄いな。音を聞き分けて、瞬間瞬間に視界内の小さなボールを見逃さないようにしつつ、視界外まで気を配らないと避けれない。


「全然上手くいかなくてね……十個以上スーパーボールが飛び交うとね、もう何が何だか状態だったかな」


 は? 九個までは避けれるって事? 少しやっただけで? ダンジョン攻略によるブーストが入ってても可笑しいレベルじゃないかな? 美咲さんまだ君って二層でしょ。


「白河君のアドバイスのお陰だよ、ありがとう!」

「あ、あぁうん。まぁ生存率を上げていけるから、どんどんやって行っても良いかもしれないね」


 遊んで学べる方法があったなんて……僕もやってみようかな? とりあえずブースト分考えてボール二十個ほど買っておこう。六層の編隊も二十匹以上いたしね。


「そろそろ三匹編成が来たら一人でやってみる?」

「大丈夫かな? 二匹でもまだびくびくしながらだけど」

「深呼吸してから、萎縮しなければ大丈夫だよ」


 まぁ面白い回避訓練をしてるんだから、三体なんて問題ないと思うんだけどね。おっと丁度良いタイミングで三匹来たな。


「美咲さん、来たよ」

「う、うん……すぅはぁ……」


 ふむふむ、深呼吸したからか良い感じに集中してるな。


「……ふっ!」


 最初は石の投擲か。倒しきれなかったけど、一匹の足がとまったな。まぁ激辛パウダーボムは今回禁止してるから使えない、代わりに投石というわけだ。

 美咲さんはっと、距離を詰めるために一気に加速して、力いっぱいスコップで……スコップを投げたぁ!? スコップがボスウルフの体に激突して……あー、アレじゃボスウルフ当面動けなくなったな。


「えぃ!」


 残ってるDウルフが、ボスウルフへの意表をついた攻撃を気にして隙が出来てる間に、腰から鉈を取り出して一閃か……うん、実に綺麗な流れだ。

 そのままの勢いでボスウルフに接近……して再度一閃! あぁでもボスウルフも根性でよけたか。これはボスウルフが天晴れだな。石をぶつけたもう一匹のDウルフには……美咲さん、忘れずにしっかり警戒してるな。


「とぅ!」


 しかしなんというか、気合いれて打ち込んでるんだろうけど……何とも気が抜けそうな言い方だなぁ。

 それでも確りと相手を捉えて打ち込んでる。うん、ボスウルフを先に仕留めたか、後は消化試合だな。




「はい、お疲れ様」

「ありがとう! どうだったかな?」

「激辛ボム禁止してたから少し梃子摺るかな? って思ってたけど、全然大丈夫だったね」

「そっか、よかったー」


 嬉しさの余り踊りだしそうだけど……それはだめだ。


「はいストップ。ここが何処か理解してるよね?」

「あ……まだ危険地帯だったね、ごめんなさい」

「先に進めば戦闘後は安全なんてモノは無くなるからね。五階層まではまだいいけど、今から感覚は先を見据えておいた方が良いよ。ここの感覚で潜れば大怪我をするのは間違いないから」

「うん、解ったよ」


 理由を確りと説明すれば理解してくれるのは楽だね。なかには理由を説明しても、感情や自分の利益を優先して話を聞かない人もいるみたいだし?


「さて、どんどん行こうか。適度な休息とりつつだけど」

「はい! 師匠!」

「その手のネタはいいから、行くぞ! 馬鹿弟子!」


 うん、敢えて乗ってみた。まぁ少しぐらいはね、常に張り詰めてても駄目だし。美咲さんも嬉しそうににこにこしてるな。




 数回の戦闘をこなしてからダンジョンをでたんだけど……何が引き寄せたのか、半分近くはボスウルフ付きの三匹編成だった。まぁ腕を上げるには全部それでもいいんだけど、稀ってなんだろう?


「ふあー! 外にでたー! 今日もありがとうございました!」

「うん、美咲さんもお疲れ様。動きを見て思ったけど、もう少ししたら三層へチャレンジしても大丈夫じゃないかな?」


 実際はもう大丈夫だとは思うけど、今すぐは駄目だ。理由は二つ、本人に自信が無い事とそう簡単にぽんぽんと次の階層に行ってしまった場合……変な自信というか慢心が生まれかねないから。


「そうかな? まだまだだと思うんだけど……三匹相手してる時なんか、皆の動きについていけそうに無いよ?」


 やっぱり自信がない、これは僕が爺様に感じてる感覚と同じなんだろうな。相手のほうが色々経験してる大人なんだから、自分と比べる事は間違ってるのにね。これ、僕が爺様に言われた事だけど。


「ま、駄目なところは駄目って確り言うから、今はある程度レベルアップしたと思えば良いよ」

「そうかな? うん、ありがとう」


 こういった探索をしたりする時、恐怖や臆病は最大の武器だ、慎重なほどいい。だけどいざという時に動けないのは駄目、だから少しは自信をつけておきたい。最低限これぐらいは出来るという自信を。とはいえ、少しずつだな。


「それじゃ、帰ろうか」

「うん、今日は妹さんにお土産買って帰らないの?」

「まだ考えてなかったな」

「そうなんだ、出すのが間に合ってよかった。はいこれ! 何時ものお礼には少ないかもだけど」

「およ? 大きい紙袋?」

「うん、お父さんと一緒に選んだんだ! 手作りも考えたんだけど行き成りそれはどうかと思って」

「そっか、うんありがとう」

「多分大丈夫だとおもうけど、鬼まんじゅうと豆大福だよ」

「っ!? ありがとう、うちの爺様が特に好きなんだよなぁ。僕は断然鬼まんじゅう派だけど」

「そうなんだ! 私もだよ。あのもちっとした感触にサツマイモが……」


 鬼まんじゅうの話で帰宅時間を全て費やした! と言っても過言じゃないレベルで話に花をさかせた。美味しいおまんじゅうが全て悪い! そう美味しいは正義で悪なんだ!


 家に帰ったら、爺様と特訓した後に皆で夕飯を食べた後に貰ったお菓子を堪能。


「ワシは断然豆大福じゃの」

「ゆいは、えっとえっと……どっちもすき!」


 楽しく会話をしつつ、同じ店の商品なのでどっちが上か! なんて言い合いを爺様としつつ、ゆいが美味しそうに両方もきゅもきゅする姿で和んだよ。だからどちらが此の店の主力商品か議論は、父さん達が来た時に持ち越しだ。


 ちなみに、藤野さんと桜井さんへのメールのやり取りは至って普通だったりする。むしろ業務報告? きっと美咲さんが見てる前でしかあの手の態度取らないんだろうな。理由はわからん! まぁ、そういうものだと思っておこう。

 此間は干し芋と干し柿送ってきてくれたし、あの人たちは本当言葉が足らないと思うよ! 違う言葉は多いのにね。それにしても今のご時勢干し物って、凄く値上がりしてるはずなんだけどどうしたんだろう? 

 しかし問題の〝神隠し〟か……ダンジョン系のスレには遺跡みたいなダンジョンも在るみたいって書かれてたし、何でも良いから情報が出てきたら良いんだけど。

 ……まぁ今はどうしようもないけどね、さてと解読でもしながら横になろうかな。何だかこの魔本読んで思ったのは、これ絶対火魔法の可能性は無いな……実に残念だ!




 七層の探索、とりあえずは色々試さないとって事で、先ずはウルフかゴブリンを探そうかな、川は少し後だ。


「ゴブリンどこだー? ウルフでもいいぞー」


 うん、言ってて寂しいよね? まぁ聞こえて出てきたら儲け物だ。それに出てきてもらわないと、計画が狂うよ。


「さてはて……ウルフ発見! よし、これでいけるな」


 ウルフの数は三匹とお手ごろな数。種類もPウルフが一匹でDウルフが二匹と……これ周囲に隠れたりしてないよな? チェック入りマース! って事で双眼鏡で確認だ。


「周辺は大丈夫そうだから、いざ双眼鏡! ……うーん、あれボスウルフとPウルフが居る? 距離的に……釣りかな?」


 五匹編成で別部隊用意してたみたいだ、モンスター同士でもやり合ってるみたいだからな。こういった行動も取るようになるんだろうね。


「まぁそれでも五匹だ……何時も通りに前の三匹を狙撃した後、あの二匹を逆に釣り出そう。あの位置は目視できたけど狙撃はできない距離だしな」


 射程内ぎりぎりではあるが、恐らく避けられるだろうそんな距離だ。まぁ方針は決まった、いざ! 狙撃開始!

 左右左っと連続して鉄串を投げる。ツーストライク! もう一匹は……ヘッドショットは外したか。でも避け切れなかったのか、腰付近に刺さってるよ。あれなら脅威はないな。


「さて、この状況で出てこないのかな? 静観してる?」


 ボスとPウルフが出てこない……まさか気がついてない? 嫌々そんなはずないよね? だって三匹の事見てたし。

 目を凝らしてみても……動いてる様子がないな。少し危ないけど双眼鏡を使うか? いや、先ずは自分の周囲の確認か。


「ふむ……周囲には何も居ない。動いてる気配もなさそう。どうなってるんだ?」


 とりあえず安全は確認したから双眼鏡でチラっと確認してみる……あれ? 居ない?


「おかしい……別の群れだったのか? の割には三匹の事をみてたよな?」


 えっとこれって……まさか違うとは思いたいけど、逃げた? 群れのボスが積極的に? そういう事ってありなの?


「ま……まぁ何はともあれ、目的は達成したからいいか」


 残ってるPウルフに止めを刺してから、周囲の安全を確保して解体。


「血の匂いが凄いから早くしないとな。戻ってこないとは思うけど……違う群れとか来るかもだし」


 必要になる分だけ確保してから川に向かって移動、さて実験のお時間です。まずは、Dウルフのお肉ブロックを川中央付近に投げ入れる。投石と違うから水柱が立つような事はしない。


「……おーおー、魚の群れが一気にお肉食い散らかしてるな、やっぱピラニア系だったのか」


 これは川を渡れそうに無いな。渡ろうと思ったら何か方法か安全地帯でもあるんだろうか?

 さて、今度はワニ共だ。Dウルフの肉を川縁へ転がす……うん。がぶりと行ったね。幾つか転がしてみたけど、結構狭い範囲でワニが待機してるみたいだな。これ、川は超が付くほど危険地帯じゃん、如何しろっていうんだ。


「うーん……とりあえずPウルフのお肉で試してみるか」


 Dウルフの肉の時と同じように、Pウルフの肉を投げたり転がしたりしてみる。


「悪食なのかな? ペロッと食べちゃってるよ」


 毒だよ毒って……全く毒が通じてない? もしかして普段から関係なしにPウルフ食べちゃってるのかな? 毒耐性持ちってやつ?


「どうしようかこれ……割と詰んでる?」


 川だし、激辛パウダー爆弾は通用しないだろうな。他は? 狙撃はピラニア共は数が数だから意味が無い。ワニはその鱗で弾かれるか? 強化された鉄串ならあるいは……でもワニ一匹やった所で、他にも並んでらっしゃる上にピラニアが待ってる。

 大量の土や石で川をせき止めるか? どれだけの深さがあるか解らないし、ダンジョンの不思議、戻っていく地形で修復されるだろうから、せき止めるとか出来ないだろうな。

 次! 水牛作戦。大量のウルフやゴブリンを呼び寄せてから川に向かわせる。餌になってる間に渡る……渡れるのか? まぁこれは保留だな。そもそもどうやって沢山のモンスターをおびき寄せるんだ?

 筏とかを作ってそれに乗っていく……うん木材がない! 持って来たとしてもだ、ワニに潰されて川に落ちる結果になる未来しか見えないな。

 魔法は……水が良い感じかもしれないけど、初級じゃ出来る事なんて高が知れてる。焼け石に水ってやつだろう。


「ない! また手札がない! ガチバトルなんてしたくないし、出来るわけが無いのに!」


 現状手が無いのであれば増やすしかない! 王道といえば特訓でのレベルアップ。何時もので行くのであれば新兵器の開発。水の中で広範囲か……毒が効かないみたいだし要検討だな。後は……今解読中の魔本。これは完全に賭けだな、内容次第だ良いものだったらいいなぁ。


「とりあえず……ワニさんが陸地に上がっても確り動けるか確認してみるか」


 お肉に鉄串の形を釣り針状にした物を仕込んでワニを釣ってみる……糸は千切られないようにワイヤーだ。……よし! 食い付いた、もう少し待ってから……フィッシュ!

 思いっきり引っ張り出してワニを陸地に上げる。めっちゃ暴れるなこいつ! まぁ鉄串の釣り針が刺さってる上に無理矢理引っ張られるから当然だろうけど。


「よしよし! 陸地にあがったな、もっと引っ張ってから、川に戻れないようにっと!」


 川から離してワイヤーの反対側につけた鉄串を地面に突き刺す。抜けないよね?


「ふむふむ、陸地では余り行動能力が高くないタイプか。もがいてはいるけど、動く速度は遅い?」


 水中特化なのかな? とりあえず鉄串を色々な場所に投げつけてみよう。


「って事でシュート!」


 鱗は……傷つけたけど弾かれたか、強化されてるんだけどなぁ、魔法付きの鉄串で貫けなかったんだから、スコップや剣鉈も無理だろうしな。目は閉じて防いだようだ。瞼が鱗なのかな? お腹側や手の隙間とかも……硬いところしかないな、あーあのピラニア対策か? 残るは口の中か……もしくはお尻の……げふんげふん、口の中を狙うか……まずどうやって口を開けさせるかだな。


「とりあえず、ワイヤーを上下左右と振り回してみるか」


 うん、口は開けないけどワニの顔がぐるんぐるんと振り回されてる。肉を投げつけても今は開けないだろうしな、窒息魔法で行ってみるか。

 ……うん、あっけなく口あけたな、必死に息しようとしてる。だけど口にいれるのは空気じゃなくて鉄串です!


「ショット!」


 よし、鉄串が綺麗に口の中へ! ……すっごい暴れてるけど、口から血を大量に流してるな。あっ動かなくなった。大丈夫かな? とりあえず水魔法で上から水の塊ぶつけてみるか。

 何度か水の塊や空気の塊をぶつけて安全を確認。結果ワニを一匹丸ごとゲット! 鱗とかの調査が出来るぞ。

 とはいっても、丸ごと一匹持って帰れる訳でもないので、使えそうな部位を解体して持って帰るよ。

 主に、爪・鱗・牙・魔石と肉や内臓も少々に血も持っていくか、毒耐性があったから調べればなにかわかるかも。

 実に良い素材をゲットできたし、今日はもう帰ろう。欲を言えばもう少し調べたい気もするけど……こういう時こそ帰るべきだ。爺様の教えだしね。さっさと帰宅して魔本の解読でもしよう。

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