二十三話
六層の攻略方法を考えては行き詰まり、ゆいや爺様と戯れて思考をクリアにし、美咲さんの監修をして違う発想が無いかを考え、学校で先生に注意されつつクラスメイトに追いかけられる……最後理不尽じゃないですかね?
そんな最中、石川の婆様から魔粉を利用した武器の試作品が出来たと連絡があった。
「婆様、試作品出来たって!」
「そうじゃよ複数作ったからの、どれが如何いう反応をするかや一番馴染む物を見てくれるといいぞい」
「では早速!」
ナイフをそれぞれ振るってみる。先ずは魔力を流さずに……うん、どれも悪くない。
次に魔力を通してみる……お? 前の時とは違って魔力が全体に行き渡っているな。
「婆様、一番と三番と八番が良い感じかも」
「ふむ……それぞれの配合じゃがな、一番は全てのモンスター素材をボスウルフのみにして、バランスよく配合したものじゃ、モンスター素材全てを一とすれば、魔粉・爪・牙・骨それぞれが二割五分ずつといった処じゃな」
「なるほど、バランスよくしたって事ですか、では三番は?」
「それは、魔粉と骨と爪を三割三分といった処じゃな、八番は爪を牙に変えた感じじゃ」
「して、何か違いはあったのかえ?」
「そうですね、一番は使いやすいと言う感じで特徴は無いけど総合的にアップしてるかな? 三番は切る事に特化してますね、あと八番は突きでしょうか?」
「なるほどのう……他に気になったものは?」
「五番が頑丈といった感じですかね? 柔軟性はあるのに凄く硬いって謎なんですけど」
「それは魔粉と骨を半分ずつにした物じゃな」
婆様と話していって素材それぞれの特性を割り出していく。どうやら、魔粉は純粋にパワーその物みたいだ、そして骨は魔粉のパワーを伝達する役割と硬化と柔軟を受け持っているようで、ハンマー等打撃武器や武器の柄とかに良さそう。爪は斬撃に牙は突き刺すといった行動に何らかの補正が掛かる。
なるほど、モンスター素材は面白いな。後はそれぞれのウルフの違いだが、Dウルフは基礎となる物だろう、ボスウルフがDウルフの上位互換。Pウルフは毒武器だが……その毒性は低いと言える、毒性強化ができれば強そうだ。
それぞれの素材はどうも一つのタイプで固めた方が良いみたい。Dウルフとボスウルフを混ぜたらボスウルフ品の劣化に、Pウルフとボスウルフを混ぜたら其々の性能や毒性が落ちていた。
「さて、試験検証もしてみたのじゃが、ゆーちゃんよどの武器にどのような風に混ぜるのじゃ?」
「そうですね……先ず剣鉈はバランスタイプで、鉄串はボスベースの牙仕様とPウルフベースの牙仕様を各十本ずつ。スコップは……バランスタイプ、防具の仕込み鉄板は骨で……後は数珠繋ぎのマキビシをPウルフの牙でお願いしていいですかね?」
「ふむ……そういえばまだスコップをつかうのかの?」
「今の所使い慣れてる万能武器って感じなので……其のうち切り替えないと行けないとは思いますが」
「ならば今なにか良いものを考えれば良い。素材は余ってるからの作らせるぞい、まぁ当分訓練が必要じゃろうから、スコップも作っておくから安心せい」
そうだな……あの草原なら大型武器が役に立つかも知れない。うーむ……だめだぱっとしない何が良いだろうか? 大型武器ならなるべくなぎ払えて……壊れにくくて……こう、通常サイズの武器は剣鉈が二本あるから……大量に切り払いができる。
「竜を狩る剣槍!」
「いや、それ使いにくいじゃろ……」
「使いにくいかなぁ? 良いと思ったんだけどそれならうーん……斧槍?」
「かわらんじゃろうに……まぁまず重さを調整した模造品でも作って試すのが良いじゃろうな」
「うん、ポールウェポン的なものをお願いします」
「了解じゃ、まずは何時も使ってる物を早急に用意しようかの」
「あ、後こう魔石を嵌めれる様にしてもらってもいい? 面白い事になりそうだし」
「ふむ……剣鉈を一本それで作ってみるかの? 武器が使えなくなったらあれじゃしな」
よし、これで武器の目処が立った。さらに言うなら僕に合うポールウェポンシリーズがあれば完璧だ。
他に道具か……投網? ないな、此方がパーティー組んでるなら有りかも知れないけど、水魔法ばらまいてからの液体窒素……だめだ、量が用意出来ないし、間違えて飲んじゃったら……ガクブルだ。
とりあえず……パウダー爆弾の強化を図ろう。素材なにがいいかな? まて……態々デバフじゃなくても良いんじゃないか? あれを水魔法で使えば……試す価値はありだな。
割と準備に時間が掛かったので、お姉さんに五層突破パーティーが居ないか聞いてみたんだけど。
「それがね? どうも他のパーティーと揉めてるみたいで……未だ時間が掛かりそうなのよ」
「合同攻略してるんですか?」
「一本道ですからねぇ。後半なんて休んでる時間以外攻めて来るんでしょ? 報酬やら何処のパーティーが最初にボスとやりあうかとか……もう大変な状況になってるみたい」
ふむ、まだ時間は大丈夫のようだ。これなら余裕をもって検証できるかもしれないが……良く考えたら僕がやらなくても、さっさとベテランパーティーが六層にきて情報収集分担してくれた方が楽なんじゃ? 言っても仕方ないか……。
そんな訳で六層へ、武器は魔粉強化のスコップ。長物武器はまだ練習と言う事で今回は持ってきていない。まぁ未だ作ってもないからね……爺様が「訓練じゃ!」って言って其々の武器を振るってるんだけどさ。この武器なら使って良いって許可が下りないんだよね。才能ないのかなぁ?
先ずは実験だ。其々の武器の感覚やら思った戦術の検証をする。武器は……問題がないな! いや問題が一つか。鉄串さん……貫通して何処か飛んで行かないでください、回収が大変なんです。って事で鉄串さんでの狙撃は多少上から斜め下に向かって撃つようにする。まぁ魔法で微妙な操作を……手間が少し増えたな。まぁ新しい魔法に入るんじゃないだろうか? 名前を付けるならホーミングショットだろうか? まぁホーミングと言うほど追尾するわけじゃないんだが……途中から回転速度と移動速度がブーストされるから……セカンドブーストショット? まぁ技名や魔法名叫ぶわけでもないし適当でいいか。
そして、水魔法の実験は大成功だ。ふふふ、これ他の人にばれたら……陰険だ! って言われそうだな。
魔石を嵌めた剣鉈だけど、嵌めたのは素材にあわせてボスウルフ。魔石無しのと比べると性能が一段上がっていた感じだった。これなら全ての武器に魔石装着もありかもしれないな。後は使っていって魔石がどうなるかだろう。
「さて、二桁部隊はっと……双眼鏡で確認できる位置にいるな……他の敵はっと」
よし、後は準備をするだけだ。先ずは、ある程度接近してから落とし穴を掘る! 多数戦闘の基本だね。しかもスコップをバージョンアップしたからか掘る速度が上がってる! すごいよ此のスコップ!
さて、下ごしらえは万全だ。後はっと……あいつ等を殲滅するのみ!
「しかし……どの手から行く? 鉄串? 水魔法? ふふふ、今回はカードが確りとあるぞ」
まぁ先ずは水魔法からだろうな、この魔法はちょっと特殊で触媒を使う。と言っても素材は六層でも大量に手に入れようと思ったら手にはいる物だ。
「さて……開幕のブラッドレインだ!」
六層で集めた血を二桁部隊のゴブリンに降らせる。威力なんて無いけどね……そのかわりに、キタキタ!
「さて、反対側からウルフの群れが来たぞ? まぁ群れといっても二桁とか居るわけじゃないけど」
それにしても、あの二桁の群れ数えたらとんでもないな、二十匹越えてないか?
そんなゴブリンに六匹単位のウルフが襲い掛かって、って六匹か当たり引いたな。少ないと二匹だからなぁ。ウルフの編成もボスウルフ一・Dウルフ三P・ウルフニかバランスが良いな。
「まぁこのまま静観しても、ウルフが殲滅されるだけだからな。僕も手をだすよ! 先ずは鉄串シュート!」
一匹単位なら上斜め下に打ち込むけど、今回は貫通狙いだ。直線でぶち込む!
「よし、悪くない結果だな、四発打ち込んで巻き込み合わせて五匹討伐の二匹怪我に毒か。まぁこっちにも気がついて攻めて来るよね!」
驚いたようだけど、復帰が早いな……リーダーを討ちもらしたのが痛いか。まぁ落とし穴もあるから此処で待ち受けよう。
「さてはて、こっちに向かってきたのは……なる程、ウルフの方は一匹につき二匹のゴブリンで戦うのか……五匹倒して二匹毒と怪我で、こっちに向かってきてるのがゴブリン五匹と、リーダーはあっちに居るのか。舐められてる? まぁ楽だから良いけど、毒と怪我の奴が待機してるから、合計二十五匹の部隊だったのか」
とはいえ、ゴブリン五匹なら何てことは無い、何時も通りだ。鉄串を手にもって挑発する。まぁソレで五匹やられてるから手元をみて警戒してるんだろうけど……足元お留守だよ?
「「「グガッ!?」」」
よしよし、三匹落ちた。足元お留守って言ったよね? 心の中でだけど。オマケでこのマキビシ数珠ワイヤーを穴の中にプレゼントしておこう。
「眼前には二匹だけだね。さて新生スコップで叩きのめしてあげるよ」
ゴブリンの突撃を避け、スコップで足元を掬い上げて……落とし穴にぽいっちょ! 一匹! 落とし穴の中ではゴブリン達がマキビシに刺さって叫んでるな。其処に一匹投下されたのだから……深くマキビシが絡みついているだろう。
「さて、残る一匹君……一対一での勝負だよ?」
「グギャ!」
通じてるのか? まぁ仲間がやられて怒って叫んでるだけかも知れない。まぁ一対一は六層で常にやってきた行為だ。遅れなど取るものか!
ゴブリンが持つ棍棒の動きに合わせてスコップを振るう。打ち合う、払う、流す、リズムに乗りつつ攻撃を防いでいく……ここだ! ゴブリンの棍棒を流した時に蹴りを入れる、所謂十六文キック。
「ガッ!?」
蹴りが来るなんて思ってなかったんだろうな、残念でした! 僕は足癖良くないよ? って事で、態勢を崩したゴブリンの首を狩る。
「ふう……穴の中はっと……うん死屍累々だね、放置でいいやこれ」
蠢いてはいるんだけど、其れだけだ。二メートル上から落ちたのと、マキビシ付きのワイヤーに絡まりまくってる事、追加のゴブリンプレスを喰らったのが止めだったのか、もはや穴から這い出て戦うなんて出来ないだろうな。
「なら後は……あっちの戦闘だね」
ウルフとゴブリン達の戦闘は……まぁ数の力かゴブリンが多少優勢だ。それでもまだ戦ってるのは基本的なスペックはウルフが上なのだろう。
「六匹の群れでよかったな……ゴブリンリーダーがウルフ達から意識を逸らせないみたいだよ」
残りのウルフは各一匹ずつか……対してゴブリンは、ボスと毒喰らって回復待ちの二匹と十二匹の兵隊だったのが、ボスと回復待ちの二匹と七匹のゴブリンか。
「しかし残念、此処で僕の横槍だよ」
確りと鉄串でゴブリンリーダーを狙う……まぁ簡単には当たらないだろうけど、二連射だ! まずは一発目! 時間差を置いての二発目!
リーダーを狙った凶弾は……まぁ一発目は避けるよね? でもそれは誘導だよ? よし、二発目が太腿に命中!
「ちなみにソレ毒の鉄串だよ? 驚いてこっち見てるけど余裕あるのかな?」
こちらに送った分隊が殲滅された上に、毒の鉄串を喰らって憤ってるみたいだけど、毒だよ? 動き阻害されてるんじゃないかな?
「ってことで、そろそろフィナーレに入ろうか?」
先ずは回復待ちの二匹をヘッドショット! 動かない敵ならば如何と言う事は無い。 次にリーダーに向かってダッシュ! からのスコップ突き! 見え見えの行動だから避けれると思ってるんだろう?
「残念でした! その鉄串ワイヤー付きでね……引っ張るとどうなるでしょうか!」
当然リーダーの足が思わぬ動きをして、転ぶ結果に。其処にスコップを突き入れる!
「良い旅路をって言ったところかな? まぁこれだけの部隊を率いてたんだ相当な相手だったんだろうね」
対策を徹底的に取らないと戦いにもならずに僕は行方不明扱いになってただろうね。
「さて、残りは消化試合といった所だけど……うん、ボスウルフとゴブリンが二匹残ってるだけだね」
どうやら、リーダーを奇襲した事によって戦線が崩壊し、めちゃくちゃな戦闘の結果がこの状態のようだ。
「さてと……ボスウルフさんはどうするのかな? 僕と戦うのかな?」
スコップを構えて威圧する。うん、人ならば壊滅的な状態で威圧されれば撤退するんだけど。
ゴブリンが空気を読まずに一匹ずつ別れて、ボスウルフと僕に突撃してくる。
「まぁ、ゴブリン一匹じゃぁ意味がないよね?」
カウンターを入れて叩き落す。後は踏みつけてからのスコップギロチン。目線はボスウルフ相手だ。
「グルルルルルルルル」
「やりあうのかな? まぁそれでも良いんだけど?」
ボスウルフと見つめあう事数秒、僕としては戦力差を埋める為に呼びつけた相手だし、今は態々倒す心算もないんだけど。
ボスウルフも何かを理解したのか、ゆっくり後ろに下がっていき……距離が出来たらターンして走り去っていった。
「まぁこれ以上の戦闘は疲労的にも、戦闘が無くて助かったのは僕の方でもあるんだけどね」
戦闘が終わり、ドロップ品を回収すると地面から大岩がせり出してきて……あれ? 下方に行ける階段だ……鍵が岩に引っかかってるよ。
どうやら、この二桁部隊がダンジョンボス的な扱いだったらしい。ボスがフィールドをうろつく形とは……五層までとは本当違うって事何だな。まぁいいか、七層開放して今日は帰ろう。
七層に降りると其処にはあら不思議、六層で目視していた川の近くまで飛ばされた様な景色だった! 降りたのか進んだのかどっちだよ!
誤字報告・ブクマ・評価ありがとうございます!




