表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/889

二十一話

 六層攻略……正直なんだこれ! と叫びたい。それもこれも、まずはマッピングが殆ど意味が無い、目印と言えるのが、入り口の大岩、遠くに見える川、太陽ぐらいだ。それ以外は見渡すだけの草原で……距離感が狂う。方向だけは川と太陽で何とかなるけど……太陽動いてるし、夜もあるのかな? とりあえず出口見つけてから、川と入り口の大岩との距離等で最短距離を計算するぐらいかな?

 次に敵について、ゴブリンと狼……狼もいたよ! まぁ同時に出てくることは無いけど……数がランダムすぎる。一度二桁単位の部隊を見た時は本気で音を出さずに後ずさりした。試練さんのズーフが言ってたダンジョンの本番は六層からってこういう事かって思ったよ。うん、間違いなく一層から五層はチュートリアルだ。


「これは本格的に範囲でどーん! ってのが必要になりそうだなぁ」


 そんな事を呟くも、実に虚しい気持ちになる。魔法は? 広範囲で高威力なんて初級では出来ない。射撃系武器? 銃は意味が無いとあった以上、現存する武器だとコンパウンドボウだろうけど……射程がどう考えても僕が投擲する射程と同じかそれに劣る。投げた方が良いんだよ! いろんな意味で! 魔法を併用する? 併用した所で、弾数のストック数やお手軽さを考えれば鉄串に軍配が上がるよ! 石ころ投擲は……残念ながら地面は土なので石がない。


「まぁ、ダンジョン産の良い素材が手に入れれば弓矢も強化されるんだろうけど……今は手に入らないからなぁ」


 溜息しか出ない話だよ。素材だ素材をよこせぇ! まぁゴブリンが居る以上相手も射撃武器を使ってくるかも知れないと想定しておいた方が良いだろうな。


「まぁいったいどうやって二桁以上の敵とやりあえるようにするかだよな」


 トラップ……うーん、トラップを作ろうにも、何もない場所だ。其れこそ草を結んで転ばせるとか、落とし穴に落すか、躓かせて転ばせる……あとはワイヤーとかロープを杭的な物で張って転ばせる……って転ばせる事が殆どじゃないか! 荷物的な事とかを考えれば仕方ないんだろうけど。まきびし用意しても回収が大変そうだしなぁ……まきびしに穴開けて糸で数珠繋ぎにするとか? まぁ数珠ほど玉同士を密着はさせないけど……まぁ回収だけは楽なはずだ。


「しかしこれといった決め手が無いな。一対多か」


 平原という広がった空間では、激辛パウダー爆弾も何処まで通じるか……喰らう敵と回避できる敵が出て来そうだよな。まぁ当分敵戦力が減るんだから使わない選択肢なんて無いんだけど。それでもストックが限られているから……使いどころを考えないといけない訳で。


「とりあえずは……五匹以下の場合は使わない方向で行こう」


 と方針を決める。現状は温存策しかないから、道具作ろうにも一度戻らないといけないからな。

 とりあえず今できる事は、魔法と落とし穴トラップと激辛パウダーボムぐらいだ。鉄串は回収してるけど、一度に使える数は限られてるからな……予備含めて二十本程持ってきてるけど、一度に使えるのなんてそう多くない。投げる方法を見直すか?


「壁や段差があればなぁ……平安京モンスターの術だとか道ランナーの術とか使えるのに……落とし穴で」


 落とし穴か……ガトリングガンは無いけど塹壕戦をしかける? 無いな、掘った穴は時間と共に勝手に修復されるダンジョンマジックがある。穴は大体三十分から一時間ぐらいで修復される計算だったな。サイズで微妙に違った感じか。


「とりあえず今はゴブリンとの戦闘経験だな……初回以来まだ六層来てから戦ってないんだよなぁ」


 六層に来てからの行動は先ず検証で、穴の修復時間や地面に刺した杭がどうなるか試したら、杭に関しては、目視できない距離で、ある程度時間がたったら消えた。次に遭遇したのモンスターがダンジョンウルフ。ゴブリンじゃないの! って衝撃的だったよ。其のままPウルフだったりと狼戦闘が三回ほど続いた後に、ゴブリン二桁部隊……から逃げ出したんだよなぁ。


「思わぬ出来事だらけに、思考の海を思いっきり泳いじゃったよ」


 とはいえ、人型相手の戦闘で耐性つけないと……まだ少し怖いからなぁ。


「っと……はぐれゴブリン発見。これより無音行動開始」


 っと、何言ってるんだろうね。相手は……ニ匹だな。なら片方は鉄串をぶち込んで開戦し、残りを接近でって……まずは周囲チェックだ。隠れたりある程度の距離に居ないか調べないと。

 チェックした所、二匹のみだな。よし、射程内まで進んで……撃ち抜く!


()っ!」


 得意になってきた、風を纏わせた鉄串投擲でゴブリンを後ろからヘッドショット!


「ガッ!?」


 もう一匹のゴブリンが驚いてるな。まぁ行き成り隣に居た奴が倒れたんだから当然だけど。隙だらけだよ?

 一気に接近してからゴブリンの醜悪な顔をスコップでフルスイング! ボールだったらカーンと綺麗な打撃音がしただろうな。

 ふっとばしたゴブリンは、おっとまだ動いてるか。頭殴られたのに復活が早い奴だ。ガーガーと煩いけど、何言ってるかわかんないよ!


「さて、思わぬ耐久力に吃驚だけど、立てただけだよね?」


 ま、こっちが何言ってるかも解らないだろうけどお互い様だ。

 スコップを構えて……再度接近、ゴブリンは頭を殴り飛ばした時、腕に持っていた棍棒を手放している。現状素手ならスコップを防ぐ手段は無いはず!


「秘技! 水纏突き!」


 どうと言う事は無い、ただスコップの先の部分が水で濡れてるだけだ。効果? 滑りやすくなったり血がその場で洗い流されるぐらいだ。

 ゴブリンは咄嗟にスコップの側面を殴ろうとしたけど、湾曲している部分な上に濡れている所だ。角度を調整した事によって、殴った手はするりと滑って残念な事になった所……そのままの勢いでスコップで突き刺す!


「……うっ」


 やっぱまだ慣れないけど、先日よりはマシか。突き刺したスコップをゴブリンを蹴って抜き、其のまま構えて残心と周囲警戒。


「吐きそうだけど、吐かなかったか……周りも大丈夫そうかな」


 モンスターの気配は無い。このゴブリン二匹が動く感じも無い。深呼吸をしようとして、血の臭いがするから止める。

 警戒していると、ゴブリン二匹が消えて魔石だけ残る。よし戦闘終了だ。

 まぁ此処まで警戒するのも、ウルフの奇襲があるからだ。アイツら鼻が良いから血の臭いを嗅ぎ付けるんだよなぁ。


「とりあえず、やっては行けそうだな。今日はもう少し戦闘していこう」


 双眼鏡片手に進路は川に向かってモンスターを探しつつ進んでいく。まぁ其れぐらいしか進む手段ないからな。

 

 それにしても此処までゴブリンとの接近戦等が辛いなら、鉄串つかって避けながらで良いんじゃないか? って気持ちも出てくるけど、接近戦闘しかできない状況下があるかもしれないと思うと……やるしかないんだよなぁ。安易に鉄串戦闘だけを選択できないのはソロの弱みだろうな。いやソロじゃなくてもある程度は出来る方が良いと思うけど。


 なんだかんだと思いながらもゴブリン部隊と数回遭遇し、それぞれが五匹以下の部隊だった。とりあえず鉄串と魔法で一匹だけ残して、一匹とは接近戦闘をするスタイル。五匹以下ならこれで十分渡り合えるみたいだ。何匹までこれ通じるかな?


「しかし川に向かって進んでるけど……まだまだ遠いなぁ、あれ幻覚じゃないだろうな?」


 そう、進めど進めど川に辿り着く事が無い。まるで五層の見えないゴールの変化版だな。ゴールは確認できるが距離が縮まらないか……五層経験してなかったら厳しいだろうな。


「一度戻って準備を……って!」


 口を塞ぐ、息も最小限にして体を低く音は出さない。


 ゴブリンの二桁部隊だと? 何故此処に……前に遭遇した時あいつ等は川を見て右手側に移動していたはずだ、何故左手側から現れた? 転移? それとも複数の二桁以上の部隊がいる? 早急に対処方法を見つけ出さないと……六層攻略どうにもならないぞ。

 じわじわと息を殺して後退していく。生きた心地がしない、違う意味で吐きそうだけど……吐いたら絶対ばれるよね!

 周囲にも気を配らないといけないし……きつすぎる。なんであの時ウルフをテイムできなかったのさ! まぁそんな事を思っても仕方ないけど。




「……はぁ、何とか死地から脱出できたのは良いけど、本当困ったね」


 色々なものが不足しすぎている。こんな時こそ火や土の魔法があれば! って思うんだけど手に入れたのは水と風なんだよなぁ……これで如何にかできるか? もう少し検証するか。


 ダンジョンを出て入り口お兄さんに挨拶。少し窺うような顔をしてるけど、まぁ何も言われる事もなく別れた。

 そしてお姉さんに魔石を買い取ってもらう。


「あら? 今日は此間よりも大丈夫そうだけど……疲れが酷そうね」

「あーそうですね、ゴブリンは何とかって感じですけど、……ちなみに六層にたどり着けそうなパーティーとかあります?」

「あらどうしたの? 誰かと組む気になった?」

「いえいえ現状どうなのかな、と。もし居そうならちょっとだけ情報を先出ししようかと」

「……何か有るのね? 君って情報が纏ってないと出したくないタイプなのにそういう言葉がでるって事は」

「まぁ……居ないのであればもう少し検証なりなんなりしたいんですけどね」

「そうね……今の所は居ないわよ。ただそうね……来週には解らないという感じかしら? 手ごたえを感じてるパーティーもあるそうよ」


 なるほど、来週か……其れまでに対策が取れれば良いんだけど、そうじゃなければ中途半端な情報だけど出さないといけないか。


「そういう事でしたら来週に」

「そうね、来週には教えてもらえると助かるわ」


 査定も終わり、良い金額を貰った後お土産をっと何を買って行こうか? 林檎は未だ残ってるしな。それに合いそうな……ヨーグルトでも買って行くか。




――ある場所の自衛隊――


「くそ! 残ってる人数はどんな感じだ!」

「我々を除き、一名です」

「半数か……何だこのダンジョンは!」


 自衛隊が新たに見つけたダンジョン。そのダンジョンには凶悪な敵が待ち構えていた。五層まではチュートリアルだからと、十層以上のダンジョン攻略をしていた班が選ばれ調査する事となったのだが……結果は最悪な事となった。


「何がチュートリアルだ! このダンジョンは二層から行き成り凶悪になるじゃないか!」

「副長……もしかしたら新たに出現したダンジョンはこの手のものがいくつかあるのでは?」

「他にもある可能性か……ふざけてやがる! とりあえず今は本部に連絡をして援軍と危険の可能性を報告だ!」

「は! 生存した隊員については如何なされますか?」

「とりあえず休息を取らせた後に報告書を提出させろ……後は援軍の到着を待つんだ。到着次第なにかヒントがないか一層を徹底的に調べ上げるぞ」


 新たなダンジョンでは、二層以降にトラップとモンスターが異常な程強化されていた。本来であればトラップは二層所か十層の段階でも未だでないはずだった、出るのは十五層以降だ。それだけでも、このダンジョンの二層は十五層以上の難易度であると判断できるだろう。

 モンスターに限っても似たような物で出現する数は少ない物の、二十層付近のボスモンスタークラスが十五層クラスのボスを二匹ほど連れてフィールドに出現した。

 最早ある程度ダンジョン慣れした人間を殺しに来ているダンジョンといえる。


「新しいダンジョンはとりあえず一般には公開できんな……」

「副長……そうですね、このまま公開しようものなら犠牲者があの事件以上になりかねません」

「そうだな……国土と国民を守るのが我々の仕事だからな。そうだ、犠牲になった隊員の遺留品はあったか?」

「ダンジョンに潜る前には必ず……遺書とタグを提出するようにしてるのは隊長だったじゃないですか」

「あぁそうだったな。遺族への連絡や保障と……遺体が残らないのは辛いな」


 何時もは厳しい副隊長であるが、この時ばかりは弱音を吐いていた。

 この班の隊長は後の事を副長に任せ殿を務めた、彼は恐らく戻ってこれないだろう。他の班のメンバーも恐らくは戻ってこない。


「徹底的にだ。徹底的に調べ上げて、彼らの墓に報告するぞ。俺達はやり遂げた、とな」


 仲間を失った事によってこの副長はダンジョンを徹底的に調べ上げ攻略する事を決める。其れが彼なりの復讐と仲間への弔意だった。

誤字報告にブクマと評価ありがとうございます! 小躍りしてます! 心がぴょんっと!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

宜しければ下記のリンクもお目を通して頂ければ幸いです

新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[良い点] 圧倒的な行動力とクラスメイトだとか周りをまるで気にしないサイコパス風味の主人公 [気になる点] 主人公が藤野家のストレスの捌け口になったこと 猟奇殺人鬼等のスタートが動物殺しだったりしま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ