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二十話

 石川の婆様に真空パック入れたままの六層の土と草を渡して成分を検査して貰う。それにしてもこんな辺鄙な所に何故あんな機材と弟子がいるのやら……


「ふむ、これがダンジョン産の土と草じゃな。成分調査でいいんじゃよな? ゆーちゃん」

「はいそれでお願いします」

「構わん構わん、研究者冥利に尽きるというやつじゃ。ほら! 弟子二号これを持ってとっとと調べてこんか!」


 何時もながらに弟子の扱いが……名前で呼んでもらえないのにどうしてあんなにも……嬉しそうなんだろうか? 全ての弟子達が同じ行動だけど、尻尾でもつけたらぶんぶんと振られてるんじゃなかろうか?


「前の石の時はなんの面白みも無い結果じゃったがのう」

「ダンジョン産なのに拍子抜けでしたよね」

「修復する壁の素材じゃのにのう……魔法じゃったか? あれが絡む何かを理解出来れば……」

「科学的なアプローチじゃ難しいですか」

「お手上げじゃな。ゆーちゃんが魔法を見せてくれねば眉唾ものじゃったわ。魔法についても、機材をつけて色々データを取ったのは良いが、何のデータも出んかったからのう」

「多少体温が上昇したとか、脳内物質が微妙な興奮状態になる程度でしたっけ?」

「そうじゃのう、運動している時のデータと大差なかったわい」


 石川の婆様は国家研究室かと言わんばかりの機材と其の為の部屋が用意されてて……本当何してた人なんだ婆様は?

 まぁそんな訳で、魔法についてもデータを取ってもらったんだけど、結果は不明で終わった。婆様曰く未確認の物質なのか電気信号的な物があるはずじゃとの事。探すの大変だよなぁ……でも婆様なら近いうちに発見出来そうなのは何故だろうな?


「そうそう魔粉じゃが、サブカルお決まりのアプローチじゃったか? 製鉄に混ぜて武器を作るでよかったかの? とりあえずナイフを作らせたんじゃが試してもらっても良いかの?」

「おー! 出来ましたか、ちょっと試してみますね」


 ナイフを受け取ってから裏庭で色々と試してみる……先ずは普通に切ったり突いたり……うん、普通のナイフよりもすごいぞ!

 次は……鉄串を飛ばした時の様に魔法を使う為の魔力チャージをって……なんだこれ、手元に爆発的な力を感じるのに、鉄串みたいに力が廻ってない。あ……だめだ、これ手元から震えだしてピシピシ言ってる。魔力とめなきゃ!


「婆様これ駄目だ。普通に使うなら良いんだけど、魔法併用しようとしたら自壊しかねない」

「ほう……例えるならどんな感じじゃ?」

「んー……ホースの口を絶対開かない蓋で止めて、其処に水を流してるような感じ? 耐え切れずパーンってなりそうだったよ」

「なるほどのう……しかし其れさえ解決すれば……」

「うん、とんでもない武器になりそう。使おうとした時の力を考えたら、鉄串の時と比較にならないレベルだった」


 うん、これを鉄串狙撃みたいな魔法と併用した時の効果を考えれば……其れこそ二倍や三倍の力になるかもしれない。それほど可能性を秘めている。


「さて、問題は手元で詰まるじゃったな……どうしたものかのう」

「とりあえずお決まりから試してみますか? 此処にDウルフ・Pウルフ・ボスウルフの骨と牙と爪がありますから……其のままくっ付けてみたり、粉にして魔粉と一緒に打ってみては?」

「ふむ……試してみるかの、また出来たらデータを取らせてもらうぞい?」

「もちろんです。むしろお願いします」


 後は全部任せておく。ダンジョン其の物がまるでサブカルチャーから飛び出してきたような産物なら、その素材の加工方法なども其れに沿って行うのが、先ず最初の手段だろうと言う事で……こういった素材から鉄を作ったり色んな所に素材くっ付けたりがお約束だよね。


「魔粉を撒いた畑とかはどうですか?」

「そっちはまだまだじゃ、取りあえず成長が早い物で試しては居るが、流石に竹などのテロ扱いされる物では出来んからのう……取りあえず今は豆類で試しておるわ。しばし待っておれ」

「まぁネズミか何かで食べれるかの試験もして行かないといけませんしね」

「そうじゃのう……魔粉がどんな作用を起こすか……機材でのデータ取りは行うつもりじゃが、宛にせん方がいいじゃろ」

「それらのデータを取る為にも魔石や魔法のメカニズムは解析したいですね」

「ばぁばも魔法を覚えれたらいいのじゃがな」


 魔本がどれだけ出るかによるだろうなぁ……被ったら提供したいけど、違ったら……自分で覚えたい! まぁ戦闘に直結して生存率が変るからね。属性の相性とかも有りそうだし……覚えれるなら全部覚えたいよ。


「さて、そろそろばぁばは弟子達の進展を見ながら研究じゃ、ゆーちゃん何かあれば呼び出すから、ゆっくり休んどくと良い」

「うん解ったよ。婆様ありがとうね」


 今日はダンジョンを休む日だからね、婆様も爺様に聞いたのか何かと心配してくれてるんだろうな。素直に言われたとおり休んでおこう。




 家に戻るとゆいがにこにこ顔で待ってる……なんじゃろな?


「お兄ちゃんお帰り! さぁアップルパイさんのお時間だよ!」

「気が早いな、もう食べる気か?」

「違うよ! 今から一緒にアップルパイさんを作るんだよ」


 まぁ解ってるんだけどね。ぶーたれたゆいは可愛いので、ついついってやつだ。うん、頭なでて誤魔化しておこう。


「えへへー、早く作ってお姉ちゃん達に渡さないと!」


 ふんす! とポーズを取って……カメラどこだ? しかしお姉ちゃんか、ゆりに会いたいんだろうな。しかし会いに行くのもどうなんだろう? 手紙では大丈夫そうだけど、精神的やら感情的に本当に大丈夫だろうか? 今回は作って送るだけにして、手紙で色々聞いた方が良いんじゃないだろうか? 爺様と相談するか……まぁ今は作るのが先だな!


 製作過程はカット! 今のご時勢作り方なんぞ調べたら大量に出てくるからな。まぁ少し言うならば、受け皿が深くて大量の林檎をぶち込み、クロス状に蓋を作った感じ。其れを二個作った訳で。


「お爺ちゃん! アップルパイさん出来たよ!」

「ほう、出来たか。どれ紅茶でも入れて食べるかの」


 抹茶でも良いと思うんだけどな。まぁ紅茶を用意して来よう。


「良く出来ておる。ゆいがんばったのう」

「えへへー、お兄ちゃんと一緒にだよ!」

「そうかそうか、美味しいのう。これはゆり達も喜ぶじゃろ」

「そうかな! 何時もって行くの?」


 あー……やっぱ其の話題がでたかぁ、さて如何した物か……


「ゆー坊難しい顔をしておるのう」

「あー……爺様、まぁあれだよ。今会いに行ってもいいのか? ってね」

「手紙を読んでる限りなら問題ないんじゃがのう……確かに実際顔を合わせたらか、杞憂ならいいんじゃがな」

「えっとえっと……まだ色々大変さんなの?」


 あーゆいが悲しそうな顔してる。とりあえず頭を撫でながらお話だな。


「そうだね、ゆりは大怪我しただろう? 色々と頭と心がバラバラになってるんだ。其れで少しでも心を休ませてるんだよ」

「お姉ちゃん……」

「うん、心配なのは解るけどね。僕やゆいが普通に暮してる事すら煩わしくなる可能性もある。そういった色々な事が沢山重なった結果で、爺様の所で僕とゆいは生活してるだろう?」

「うん、ゆいにもそれは解るよ」

「まだまだ、ゆりが大丈夫ってなってるかどうか解らないから、とりあえずそういった事も含めてお話し合いが、父さんや母さんと必要かな? って話なんだ」


 まぁ全て語らずとも、病院のあの場にゆいは居たから解ってるんだろうな。これだけ会えない時間は初めてだし寂しいのだろう。


「父さんと母さんを電話で何処かに呼び出すから、其の時にパイを渡そうか」

「お父さんとお母さんには会えるの?」

「そうだね、向こうに時間があればだけどね」

「うん! えっと何のお話しようかな!」


 よし、少しだけ笑顔が戻った。しかし見えないところで我慢してるんだろうなぁ。今回が切っ掛けになれば良いんだけど。


「爺様、これで良かったのかな?」

「まぁいいじゃろ。ゆりの実態を手紙でしか知りようが無いからの。先ずは両親に会ってはベストじゃろうて。あの二人であれば、もう大丈夫じゃろ」

「だと良いんだけど」


 爺様には何か見えてるのかな? 僕は両親に会うのもまだ不安だよ、最後が最後だったからね。まぁ父さんの方であれば会話は出来ると思うんだけど。


「とりあえずじゃ、両親への連絡はしておくから準備をして置くといいぞ」

「わかった、ゆいと準備してくるよ」


 爺様があれこれと手を尽くしたお陰で、アップルパイを持って両親と再会できた。二人は時間を作ってきてくれたようだ。


「二人とも……久しぶりだな、元気だったか?」

「僕とゆいはね。父さんと母さんも、元気だった?」

「ゆいはいっつも元気だよ!」


 ゆいが笑顔で母さんに抱きついているな……母さんは泣きそうだ。


「ゆい……よかった、病気になったりしてない?」

「うん! ただ、お爺ちゃんもお兄ちゃんも厳しいんだよ! 危険だとか体調管理がとか!」

「まぁ! でもそれはゆいが大切だからよ?」

「うん……わかってるんだよ、でももうちょっとこう!」


 なにやら告げ口をされている気分だ。でも二人とも楽しそう、泣き笑いしてるよ。


「不安だったんだ、今回会っても大丈夫かって。杞憂でよかったよ」

「まぁ……あのような別れ方をすればな、結弥の考えも解らなくも無い。今まで徹底的に距離を取ってたのはそういう事だろう?」

「気がついてたんだ」

「当たり前だ。どうやって病院まで来て毎回会えなかったり、家まで来ずに宅配で全部済ませて気がつかないわけがないだろう」

「そっか……まぁでも良かったよ。爺様に背中を押してもらえて」

「私も良かったと思ってるよ。あの二人の楽しそうな姿を見ればな」


 父さんとの話はスムーズに進んだ、其れこそ吃驚する程に。実際、今までは余り話をしない人だと思ってたんだけどな……こんな風に一杯話をする人だったんだ父さんって。


「そうだ、今後について何だけど」

「何かあったか? 問題があったのなら聞くぞ?」

「いや問題じゃなくて、ゆりの事だよ。ゆいがね寂しがってるんだけど、今まで会いたいって言わないんだ」

「ゆいも我慢してるか。結弥が心配してるのはゆりの精神状況だろう?」

「うん、僕等と会って変な反応したりしないかとかもね」


 父さんが難しそうな顔をしている。色々思う所があったりするんだろうか? 母さんが不安そうな顔でこっちをチラッと見たな。まぁ直ぐにゆいに向き合って笑顔で会話をしてるけど。空気読んだか、なんだか最後にあった母さんとイメージが全然違うよ。


「そうだな、少し母さんと話をしてからゆりの様子をみて判断しよう。決まり次第連絡でいいか?」

「わかった、なるべく早いと助かるかな? ゆいだけでもゆりと話が出来れば良いんだけどね」

「そうか……そうだな。元々二人はすごく仲が良かったからな。無理が無い程度にゆりにも聞いてみるさ」


 よしこれで一歩どころか二歩は前進できたな。まぁこうスムーズに行くと僕は拒否しすぎてたんだと思う。結果だけ見ればなんだけど、それでもね。


「なぁ結弥……お前は……」

「ん? どうしたの父さん?」

「……いや、義父さんや周囲の皆とは上手くいってるのかと思ってな」


 何か言おうとして止めたみたいだけど……なんだろう? 気になることがあるのかな? でも止めたって事はまだ言え無い事? 其のうち話してくれるのかな。まぁ今は乗っかっておこう。


「うん、皆優しいよ。ゆいなんてお姫様扱いだよ! もう少し限度って物を……」

「いやいや、結弥もお姫様扱いしてるだろう?」

「え? 大切な妹だよ? お姫様じゃないよ」

「いや……うんまぁでも皆に可愛がってもらってるならよかったよ」

「そうだね、爺様が居たからかもしれないけど、排他的じゃなくてよかったよ」


 何かすごく言いたそうな目をしてるけど! 絶対気にしないし言わせない! ゆいは可愛いから正義なんだ!


「そろそろ時間だな……母さんと話をしなくて良かったのか?」

「一言二言なら話したから……謝られただけだったけどね。今は其れでいいんじゃないかな? ゆいと話をしていた方が母さんの精神にもいいんじゃない?」

「いやいや、母さんなら大丈夫だぞ? 今回は私と結弥で色々先の話をするから引いてくれたんだろう。次は確りと話をするといい」

「うん、そうだねっとゆい! あれ渡して」

「はーい! これ、お兄ちゃんとゆいで作ったんだよ! お姉ちゃんと食べてね!」


 ゆいが母さんにアップルパイを渡してって……母さん泣きそうな顔我慢してるよ。


「あれを見れば解るだろう? もう母さんは大丈夫だ」


 確かに父さんの言う通りだな。はぁ……僕は心配性すぎるんだろうな。


「さて、母さん帰るぞ? ゆりにアップルパイを渡してやらないと」

「あ……はい! 結弥、ゆいそれじゃまたね?」

「はい、母さんも元気で」

「お父さんお母さんまたね!」


 其の後はゆいと母さんが別れを惜しむように何度も振り返って手を振ってた。何というか……ゆりと会う時もこんな感じで話が出来たら良いな。

誤字報告にブクマや評価ありがとうございます!

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 弟子まで居るのか。謎のおばーさまですね。 〉石川の婆様に真空パック入れたままの六層の土と草を渡して成分を検査して貰う。それにしてもこんな辺鄙な所に何故あんな機材と弟子がいるのやら……
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