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百八十八話

 目の前では左から右へ、右から左へとハンマーの形をした振り子が行ったり来たり。

 道を進む人を叩き落す。そういった構造であるのは間違いなく、それが結構奥のほうまで続いており、しかもかなり動きがバラバラだ。


「アスレチック第二段とでも言った所かな。まぁ、これはタイミングゲーな感じだけど」


 動きを見ていれば、このタイミングで進めば良い。そんな瞬間が見えてくるんだけど……まさかそんな簡単な話じゃないだろう。

 それに上空に集まってきている鳥達も気になる。何せ、集まるだけ集まって一向に襲ってくる気配が無い。

 こうなると嫌なパターンしか思いつかない。アスレ挑戦中に鳥が襲ってくる……高確率でその流れだろうなと思うが、出来るならアスレに挑戦する前か終った後にして欲しい。


「まぁ、恐らくスタート地点と思われる手前に居ても襲ってこないから、間違いなく挑戦する前の襲撃は無いか」


 さて、どうやって攻略して行くかな。

 目視できる範囲で確認出来る物は、振り子による叩き落し。落された後は、どうやら戻ってこれる様にはなっているみたいだけど、落下によるダメージや下にモンスターが居る可能性も考えて、再チャレンジは難しいと考えた方が良い。


 兎に角落ちない事なんだけど、この振り子の攻略か。

 先ほども感じた行けるタイミングは有るけど……罠じゃないか? と言う疑問はある。

 それに、振り子ゾーンの先が見えないのも不気味だ。


「他にルートは無いから、ここを進むしかないけど……本当何を考えてこんなの用意したんだか」


 まぁ、失敗が即死に繋がらない分まだ良心的かもしれないけど。

 それこそ、殺意全開で設置するなら、ハンマーじゃなくギロチンの振り子にしたり、落ちた先は針山だったりするだろうからな。


「ま、考えていても、待っていても状況は動かなかったし……そろそろ行くか」


 スタート前の地点で少し様子をみたけど、鳥達にも振り子の動きにも変化は無かったからな。間違いなく、ここを進めって事なんだろう。

 なので、此処を攻略して状況を動かさないとな。……これ自体が罠な気もするけど、まぁ仕方ないだろうし、まずは振り子を駆け抜けるとしようか。




 状況に変化が起きないかと待っている間に、振り子の動きはしっかりと見ていた。なので、走り抜けるには何の問題も無く、恐らく半分程の地点まで何事も無く進む事が出来た。


「妨害も無し、変化も無し、今の所は順調だけど……そろそろ何か有るだろ」


 下手に止るよりも、スピードをキープして走った方が振り子を抜ける事が出来る。まぁ、前半はそれで済んだが、後半戦で同じ難易度のはずが無い。

 そして、その予想が正しかった様で、振り子の速度が急に上がったり下がったりと、規則性が崩れた。


「おっと! これ、どうしろってんだ!」


 少しでも足を止めると、振り子が急に加速して殴りに来る。それを避けるタイミングで前後両方の振り子も、叩き落せるタイミングを狙い動き出して来た。


 対抗策が無い。間違いなく叩き落される未来しか見えない状況だ。


 だが、本当に対抗策が無いのだろうか。攻略させる気が無いのなら、それこそ振り子なんぞ用意しなくても、ゴールまでの道を無くせば良い。

 だとすれば、何か方法があるはずだ。襲ってくる振り子のハンマーを横目に、思考を加速させていく。

 答えは単純で、ただ避ければ良い。問題は進んでも後退しても避けた先にハンマーが来ている事。

 それなら、俺の足の速さで更に先か後ろに行く事が出来るだろうか……うん、無理だ。距離的に届かない。

 それ以外の方法……って、別に前後じゃなくても良いじゃないか。


「双葉! 蔦の準備だけ頼む!」


 念のために双葉に蔦を出させておいてから、上へと飛ぶ!

 うん、単純だよな。避ける場所がないなら、ハンマーに乗れば良いじゃないか。そんな考えから、振り子のハンマーを飛び越え、その上へと着地。

 ただ、振りによる勢いで飛ばされそうになる。だから、ここで双葉の蔦をハンマーに絡ませて、飛ばされないように固定しておく。


「ふぅ……何とかなったけど、この後どうするかね」


 ブンブンと行き来するハンマーの上で、どう先に進むかを考える。

 恐らくこの先も、同じようなタイミングでハンマーが行き来するだろう。

 その度、ハンマーの上に飛び乗っても良いけど、同じ方法が通用するだろうか? 前後が駄目なら上か横ぐらいなら、思いつきやすいと思う。下もあるけど、穴を掘ってるタイミングは無かったからな。

 となれば、その対策を取らない? いやいや、むしろ此処で攻略方法見つけた! そう思わせて、そこで叩き落す方法があるはずだ。むしろ、俺なら間違いなくそんな作り方をする。


「となると……できるだけ素早く抜けた方が良いか」


 ハンマーに乗ってる時間が長ければ長いほど、厄介な事になるような気がする。それなら、勢いをつけて行くのが一番良いだろう。

 具体的には、ハンマーに飛び乗った瞬間にジャンプで道へと飛び移り、其処からダッシュ。


「まぁ、そっちも危険な気はするけど……安全地帯と思う場所の方が、この場合は駄目な予感がするからな」


 一種の賭けだ。ただ、どちらの勝率が上かと考えたら走り抜けるだろう。そう考えて兎に角突っ走る。

 ハンマーに飛び乗り、すぐに道に飛び移る。そしてダッシュを繰り返し、残り三分の一だという場所で、鳥が急降下攻撃を開始し出した。


「鳥の奴等此処で来るのかよ!」


 ハンマーに飛び移る難易度が一気に上がった。飛ぼうとすると、鳥の襲撃が来るからだ。とは言え、飛ばない訳にも行かない。

 なので、ジャンプをしながら鳥の襲撃にあわせてハンドガンを撃ち、鳥に弾丸を避けさせて鳥の移動コースを逸らしたり、双葉に蔦の鞭で叩き落してもらったり、最終的には盾で鳥をガード。

 鳥の襲撃を防ぎながらの移動はかなり面倒だが、これ以上何かあっても対策を考えてる暇なんて無いしな。




 かなり強行突破な気もするけど、ゴールまでは後少しの距離だったので一気に駆け抜けた。

 その際に、ハンマーが体に一瞬触れた時があり、冷や汗を流したのは仕方ないだろう。まぁ、双葉に当たらずに済んで良かったが。

 他にも、双葉の蔦をハンマーに括りつけて、ターザンの様に移動した時もあった。その時は、逃げる位置が道の横……落下するポイントしかなかった。

 なので飛び降りつつ、双葉の蔦をハンマーに括りつけ、リカバリーをした訳だ。うん、この時も割りと焦ったな。


 まぁ、危機一髪的な状況が有ったとは言え、振り子ゾーンをクリア出来た事に代わりは無い。


「さて、次は何かなって様子見できるほど、安全な状況じゃないんだよな!」


 振り子ゾーンを抜けたというのに、鳥の襲撃が収まらない。道も広いわけじゃないので防ぐので手一杯だ。

 これはあれか? 鳥に襲われたくなければ、先に駆け抜けろという事だろうか。

 先を確認しながら進めないのは辛いが、ここで防戦していてもどうしようもない。何せ上空をみれば、鳥を叩き落したとしても、直に補充されている。うん、この光景見たこと有るなぁ……主に、二十三層辺りで。なので、ここは前へと進むのが正解だろう。


 鳥に追われながら前へ前へと進むと、巨大なブランコみたいな物が、幾つも並んでいる場所へとたどり着いた。

 ただ、並んでいると言っても、横並びに為っている訳じゃなく縦並び。ブランコであるなら揺れる方向へと、並んでいる状態だ。

 まぁ、こんな場所でブランコに乗って遊ぶ……何て事は無いので、これはあの上を飛び移って行けって事だろう。


「ただ、これもよく有るパターンだろうな。飛び乗ったら、足場が落ちる奴」


 足場が落ちる前に次に飛び移れっと、まぁ、よくあるヤツ何だけど。ここでの違いと言えば、後ろから鳥が襲ってくる事だろうな。

 襲われながら、次へ次へと飛び移らなければいけない。牛若丸でもやれって言う事か?

 ただ、今考えてる余裕など無い。何故なら後ろから追って来る鳥達の勢いが減る事が無いから。そして、この状態で俺が立ち止まっていたら……このブランコの橋が鳥によって破壊され、道が無くなるかもしれない。


「はぁ……進むしかないよな!」


 しかしだ、これパーティーだと如何するんだろうか? もしかしたらブランコの橋は自動で修復されるかも知れないが……まぁ、それを見るのは此処をクリアした後に、後ろを振り返れば解るだろうな。


 意を決して、ブランコの橋へと飛び移る。当然だが、後ろから鳥が襲撃を掛けて来る。

 ただ、その襲撃……ブランコのロープや足場を狙っている。そして狙われてる足場だが、飛び移った後一~二秒秒経つと崩れて落ちて行った。余り余裕が無いようだ。

 と言う事は、鳥を迎撃して居るタイミングなど無いって事だな。まぁ、双葉に任せれば叩き落すぐらいは出来そうだが、そもそも狙っている場所が俺達じゃないから、迎撃自体もやり難い状況ではある。


「ま、わき目も触れず飛び移って行けって事だな!」


 他事をする余裕が無い以上、次へ次へと飛ぶしかない。恐らく何処かで振り子ゾーンと同じく、何かしら変化が有るだろうけど、この状態で変化が起きたとして、その場で臨機応変にやるしかない。

 まぁ、考えられるパターンだと足場が落ちるタイミングが早くなるとか、次の足場までの距離が長くなるとかだろうけど。

 それぐらいなら、割と如何にでもなる。なので今は鳥に追いつかれる前に進むしかない。




 そんな感じで移動をして行くと、残り三分の一辺り。そして、ついに変化が現れてしまった。

 なんと、鳥の動きが加速し、直接俺達を狙うようにもなった。


 着地や飛ぶ瞬間、それとジャンプ中に鳥の襲撃を受ける。

 普通に考えれば実に厄介な行動だが、残念ながら俺には双葉が居る訳で……蔦による迎撃がロープや足場を狙われるよりも、かなり楽になる。

 ビシ! バシ! と言う音を背中越しに聞きながら、次へ次へと飛び移り、難なくゴールへとたどり着いた。

 うん、これなら振り子ゾーンの方が面倒だったかも知れない。


 本来ならば、このブランコゾーンは考える時間を奪って、焦らせつつ攻略させるという物だったのだろう。

 当然だが、そんな状況下になればミスが増える。

 だが、俺は鳥の迎撃を双葉に任せる事によって、移動する事だけに集中出来た。結果、物凄く楽に攻略できる内容だったという訳だ。


 そこで、ふと後ろを見てみる。挑戦する前に思った事だが、落ちた足場が復活するかどうかだ。

 少し見て居ると、最初の足場の方から少しずつではあるが、復活してきている。と言う事は、時間制で復活するパターンなんだろうな。

 攻略速度から考えて……足場が落ちてから復活するまで十分程だろうか? まぁ、どちらにしても復活するという事は、パーティーで来ようが、再チャレンジするにしても、一回でお終いという訳じゃないって事だな。


「まぁ、パーティーの場合一人挑戦した後、次の人がやるには結構待たないといけないのが難点か」


 これは、ニ十層以降は本当にパーティーで来る人達にストレスを与える。そんな造りになってるな。

 まぁ、そこら辺は情報を提供するので、みんなで頑張って考えて欲しい所だな。


「さて、次はどんな感じかな? 一旦鳥の襲撃も収まってるから、少し休憩しつつ次を見てみるか」


 恐らく此処が休憩ポイントなんだろうな。それなら、しっかりと休ませて貰ってから次へと挑ませてもらうとしようかな。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


因みに、振り子ゾーンにおいて後半のハンマーは、そのまま乗りっぱなしだと足場にしているハンマーが回転を始め、落される仕様だったりします。まぁ、主人公の場合ですと、双葉の蔦があるので耐えれたりしますが、鳥に襲われもするので……判断としては、無謀だけど無謀じゃなかったといった感じでしょうか。

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