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一話

 ダンジョン一般公開が一年後と決定した。学校でも家でも、どうやったら冒険が出来るか大金が手に入るか等の会話が日常と化してる。

 実に莫迦げた話だと思う。怪我で済めばまだ良い、ただ戦闘行為をして何故死なないと思っているのか不思議で仕方ない。数年前に家族揃って爺様の知り合い達と一緒に山に行った時に熊と遭遇して、爺様の近所に住んでるおじさんが、皆を庇って片腕を無くしたというのに。あの時の恐怖を忘れているのだろうか? まぁおじさんは腕一本で済んで良かったと、豪快に笑いながら熊鍋を食べていたが……それでも忘れてはいけない事実のはずだ。

 ソレなのに、ゆい以外の家族はダンジョン危険説を言う僕のことを煙たがっている。最初の内は笑いながら大丈夫だと会話をしていたけれど、今では家で会話なんて殆ど無い。有っても、夢が無いだのチャレンジ精神が無いだのと、其処には安全に対する考えが一切なく日々TVで垂れ流す夢物語そのままの内容しか言わない。

 学校も似たようなもので、武器や防具は如何するのか? 魔法は有るのか? などの会話が休憩時間に飛び交う。学校でも危険が有るんじゃないかと話を振ってみたが、予想通りの対応が返ってきた。楽しい会話の邪魔をするなってやつだ。そもそも最初に使う武器は、自衛隊スコップか消防斧だろう……っと話が明後日に。


「ねぇ聞いた? 学生へのダンジョン開放は高校生からで、しかも、夏休み入ってからだって」

「まじかー……大人への開放は四月入ってすぐだろ? まぁ高校生の俺らは入れるのか」

「スタートダッシュできねーじゃねーか! 大人はずるいな!」


 原則は夏休みに入ってからだが、当然穴はある。あるのだが言う必要はないだろうな。浮かれてるこいつ等が、ダンジョンに入れるってだけで突入したら大怪我を負う筈。大人達の結果を待った方が良い。


「しかしダンジョン一般公開まで後一ヶ月かー、直ぐには入れないけどネットで報告とかあるだろうから楽しみだな!」

「誰か動画とか投稿しないかなー」

「よっぽどの目立ちたがり屋か莫迦でも無い限り上げないんじゃね? スタートダッシュして秘匿するだろーなぁ、稼げるネタだし」

「なんだよそれーやっぱ大人はズリーよ」

「いやいや俺等も普通に隠すだろ、まぁ莫迦が出るのを期待しようぜ、板やSNSなら騒がしくなるはずだしな」


 会話は踊る、僕は隅で空気になる。まぁ水を差すなって言われるだけだしね。本当大丈夫なのだろうか? 主に頭が。完全に思考停止してるじゃないか。



閑話休題(それはさておき)



 家でも学校でもそんな調子、正直精神的にキツイ。片方の妹ゆりはどっぷりだが、もう一人のゆいはまだ大丈夫。だから爺様に電話で連絡をして相談する。


「爺様、かくかくしかじかで、これこれうまうまだから如何にかならないかな? このままじゃいあいあくとぅるふになっちゃう」

「そうじゃのう……世間一般が同調してるからの、幾ら言っても聞かんじゃろうて」

「どうしようもないのかなぁ」

「なぁに、最悪ゆー坊とゆいちゃんはワシが面倒をみる。逃げ込んでくると良い」

「爺様……ありがとう」


 どうやら安全地帯を手に入れれたようだ。ゆいが洗脳されないように逆洗脳(しなくては)! 可愛い妹を守れるのは……シスコンじゃないよ!




 そんなこんなで、一ヶ月が経ちダンジョン一般公開された次の日。僕は今ダンジョンの中にいる。

 危険だって言ってたじゃないか? 当然危険だから来たに決まってる。関係が悪化してるとは言え、今までは仲が好かった妹の為だ。モンスターの特性やダンジョンの特性及びマッピング、出来る事はやって後悔しないようにしないと。当然裏技を使ってダンジョンに入れるようにしたよ! 内容は秘密……ではないが、まぁアルバイト的な? 許可? を得ただけだ。

 そんな僕の装備は、ヘルメットに安全靴に軍手と自衛隊スコップ(折りたたまない方)に防刃ベスト、ファウルカップもついてるよ! まぁ周りの人には不思議な目で見られたけど、何で皆、刀モドキや槍っぽいの持ってるんだろう。使いこなせるのだろうか?


 メモメモ、ダンジョン内は暗くて視界が……洞窟っぽい感じでじめじめしてる。横は三人から四人並んだら行動が阻害されかねないな。

 コンコンと壁を持ってきた鎚で叩いてみる、壁が欠けたようだ。落ちた欠片を拾って少しの間待機。壁が修復されていく。手で持った分の欠片は消えないが、地面に落ちたやつは消えた。何度か試すが結果は変わらない、メモしておこう。

 右手の法則に従ってマッピング、偶に他の人に会うが軽く挨拶だけしつつ距離を取りながら移動。まだ大丈夫だと思うけど所謂PK的なのが出るかもしれないからね。用心しないと。


 前方L字道……足音と何やら不思議な声? が聞こえる。コレは遂にモンスターとの遭遇だろうか? スコップを持つ手に力が入る。少しずつ前進してから間合いをL字路の曲がる少し前で停止。


 拾った石を壁に投げる! コーンという音と共にハッハッやガウと言った鳴き声? が聞こえる……三……

 足音が曲がった先から近づいてくる……二……

 曲がり角から犬っぽい顔が飛び出してくる……一!

 距離は取ってるから、犬モドキの飛び掛かりが空振りする。今! スコップを犬モドキの鼻頭に向かってフルスイング! 犬もどきは体勢を崩してるから気持ちよく鼻にスコップの側面がヒット!

 ギャン! と言う鳴き声と共に地面にぐったりする犬モドキ、ダンジョンのモンスターだから止めは刺さないと……気分は良くないが、このスコップは良く研いであるぞ! 

 犬の首に目掛けて突き刺すようにスコップで突く。生の感触が気持ち悪い。手を洗いたくなるな……


 こうして初戦闘が終わったけど、観察は続けなきゃ。モンスターの死体はどうなるのか? 少し待っていると壁を壊した時の欠片の様に消えていき……石っぽいものが残った、この石が魔石という物なのかな? 後で受付で聞けば良いか。

 とりあえず今の出来事をメモして、次は違う戦い方を試そう。ラノベとかだと調味料? とかまぁハメ技的な物とか色々あったはずだし。試すだけ試して良い方法探さないとね。戦いだのバトルだのと言うより狩りだ。自分の安全を確保して確実に仕留める方法を幾つか確立させないとね。

 後は、数回試しつつマッピングして帰ろう。戦闘ってかなり疲れるな。


 あの後何度かモンスターを倒した。どうやら犬モドキに調味料は有りらしい。爆竹を纏めた物はダメだった。音にビックリしていたという点では成功だけどダメージは無い。縄を使ったトラップは面白かった、よく躓いて転ぶ、まるでコントだったな。

 モンスターが落とした石はやっぱり魔石で良いらしい、買取価格は其れなりに小遣い程度にはなった。その内小遣い程度にもならないだろうけど。


 帰宅すると、妹のゆいが膨れっ面でお出迎え。なにかしたかな?


「お兄ちゃん何処行ってたの? 今日は勉強見てくれる約束だよ!」


 やらかした。これは謝り倒すしかないだろう。


「ごめん! ちょっと用事があって帰宅が遅くなった。未だ終わってないなら今から一緒にやろうか? 僕もまだ宿題とかあるし」

「むー……御用事さんがあったなら仕方ないか。次からは連絡はしてよね」

「了解、じゃぁ部屋で勉強しようか。今日は数学?」

「うんっと……歴史?」


 うん、ゆいとの会話で癒される。今の家族関係からしたら、唯一の聖域と言えるだろう。かわいい。

 宿題をさくっと終わらせ、ゆいの勉強を見ながらダンジョンでのメモをノートに起こす。まだ初日だから問題点など多すぎて、煮詰める事など先の話だ。一歩一歩やっていこう。


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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
まぁ周りの人には不思議な目で見られたけど、何で皆、刀モドキや槍っぽいの持ってるんだろう。使いこなせるのだろうか? ↑ 同感、素人が振り回すなら鈍器一択なんよね 剣道の有段者でも最初は刃引きした刀でない…
[一言] すみません勘違いで誤字報告しました。 申し訳ございません。 とても面白そうでわくわくしてます。 応援してます。
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