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百八十五話

 目晦ましのつもりでつかったスタングレネードが、思わぬ弱点の発覚に繋がり攻略スピードを上げる事が出来た……が、スタングレネードは消耗品。当然数に限りがある上に、試作品なので元々の数が少ない。

 なので、場の魔力を乱す為の魔法を使って、山羊を討伐するしかないのだが……スタングレネードとは違い、視覚と聴覚にダメージを与える魔法では無いから、当然だが戦闘時間はスタングレネードからの射撃より時間が掛かる。


「とは言え、普通に戦闘するよりも圧倒的に楽だよな」

「ん!」


 今もまた、魔力を乱して探知を難しくした瞬間に、双葉が蔦の鞭でピシピシと山羊を滅多打ちにしていて、それに合わせて、ハンドガンによる射撃を撃ち込めば、大抵の場合は山羊のモンスターを討伐出来る。中には一目散に逃げ出したり、わき目も触れず突進して来る山羊も居るのだが……まぁ、普通より時間が掛かる程度なので、其処まで問題では無い。

 ただ、この方法は魔力が十分にある場合のみ出来る。場の魔力を掻き乱すというある意味荒業なので、使用する魔力量もかなり多い。

 なので、ここで狩りをして魔石や素材を集めるのであれば、スタングレネードを大量に持ち込むか、魔力量の温存を考えて早めの帰還判断が必要になるだろうな。……これについても、しっかりとメモを取っておこう。


 まぁ、そんな事を考えてはいるが、試作品のスタングレネードはまだ余っている状態だし、魔力の残量に関しても、魔力を乱す事以外しておらず、戦闘自体はハンドガンと双葉の鞭なので、十分に温存して居ると言って良い。

 勿論、山羊と戦闘になった際に、山羊の数が危険水域と言える数……大体五匹以上居る場合は、迷わずスタングレネードを使って居る。まぁ、現状だと五匹以上と言う群れとやりあったのは一度のみ、どうやら其処までの群れになるのは少ないみたい。まぁ、戦ってないけど群れている状態は数回見ているので、稀という訳でも無いみたいだが。


 そんな感じで、基本的に戦闘にならないようなルートを選びつつ、どうしても避けられない時のみ戦いながら二十四層を進んで行く。

 鳥型モンスターは、俺達を狙うよりも山羊を優先して狙うようで、奴等と戦闘になると言う事が現状無い。

 俺がちょっかいを掛ければ、きっと攻めて来るんだろうけど、その場合だと山羊達も襲って来る可能性も有るので、当然だが手を出す事はしない。


「まぁ、山羊達も一定の距離を取ってれば、攻めてこないみたいだしな」


 恐らく自分達の範囲と言うのがあるのだろう。今も山羊とお互いに居る場所を認識しあってるけど、睨み合いになるだけで、攻めてくる気配は無い。

 進むルートが別だから、その山羊達とは睨み合いで終るだろうな。まぁ、上空に鳥が待機してるので、山羊達は鳥との戦闘になりそうだけど。


 情報収集が大量に出来たので、残っている情報はボスぐらいだ。まぁ、他に何か居なければだが。ただ、もし他に居るのであれば、既にその姿を見せていても良いはず。となれば、何かが居るとすればボス部屋だろう。




 順調に攻略が進みボスが居るであろう場所を発見。

 他の場所よりも広く、しかし地面の波打ち状態が更に酷くなっている。更には、所々亀裂が存在し、一歩間違えれば落ちてしまいそうな環境。

 そんな場所に、他の山羊よりも一回り……いや、それ以上の体格と角を持った山羊、恐らくあれが、この階層のボスなんだろう。


 とは言え、山羊の特性は此処に来るまでの間に、かなり調べ上げている。調べ上げてはいるが、あのボス山羊に通用するだろうか? 上位のモンスターだった場合、一切通用しなくなるなんて事は良くある事だ。

 兎に角。ここで気をつけるべきは、足場の悪さと亀裂による落下。それと、山羊は魔力を乱すのに弱いから、乱せば大丈夫という慢心かな。


 そして、双葉もやる気が十分だ。とは言え、今回双葉のやる事は補助を頼んである。

 双葉の蔦は、ミスって亀裂に落ちた時の命綱だからな。後はハンドガンのリロードをやってもらう予定。


「ま、気をつける事は確認したし、戦闘開始と行こうか」

「んー!」


 双葉のゴー! と言う合図と共に、ボス部屋へと突入。開戦だ! と、ハンドガンを乱射しておく。

 まぁ、当然だけど山羊は避けて来る。まぁ、ボス戦の際に、空間が広い場所なら、先制を取り戦闘の流れを自分で作らないと、防戦一方になりやすい。なので、ハンドガンによる牽制をしておいた。

 それに相手は山羊だ。この足場だと山羊であるボスの方が有利だ。まぁ、何とかする方法も無い訳じゃない……例えば、整地を行うとかがある。

 だけど、それをやってる際に攻撃されない訳が無い。防戦にしない為にも、場を有利にする為にも、後手は取れないって事だな。


 ただ、問題が有るとすれば俺がソロと言う事だろう。足場を整地するにしても、ソロだと時間が足らない。まぁ、やってる間に襲撃されるのは間違いが無い。なので、一気に足場を整地する案は早々に破棄。

 牽制射撃をした後は、盾を山羊に向けて突撃。その際、走りやすいように進む道のみ、土属性魔法で整えていく。こうすれば、使う魔力量も時間も少なくて済むからな。


「一対一だからな! 盾を顔の前で構えられたら辛いだろ!」


 突進しようにも助走がつけれないし、電撃の魔法を使おうにも、発動させる場所が角だ。角からの進路を封じれば、山羊が電撃を放った処で意味が無い。まぁ、魔法耐性が無い盾だと意味がないけど、持って来ている盾は魔法耐性が高いからな。

 そんな盾を、山羊の眼前で構えつつ、盾から少しだけ体を出して、剣鉈で突いて行く。チクチクと突きを続ける。まぁ、見た目は格好悪いが盾を使った戦い方なんて、大体こんなもんだろう。

 山羊が移動しようとするたび、こちらも合わせて動いて、常に正面をキープしながら、時折シールドプレスだ! っと、山羊の顔を盾で押さえつけつつ、横から剣鉈でチクチクと突く。


 まぁ、こんな戦い方をされれば、当然だが山羊側には苛立ちが募る。

 それを解消する為に、電撃魔法を放ったり、助走無しで突撃をしようとするが、その全て盾で防ぐ。

 体を捻って向きを変えようとする。すぐさまサイドステップで移動して、正面をキープ。

 俺を飛び越えようと、高く飛び上がろうとする。上から盾を使い押さえつけて飛び上がりを阻止する。


「ま、盾でお互い見えてないように見えるけど、魔力の流れやら双葉の蔦センサーのお陰で、行動がバレバレなんだよな」


 双葉に頼んだ補助の一つだ。命綱用の蔦とリロード用の蔦以外を、センサーとして張り巡らせておいた。

 思った以上に精度が高く、山羊が蔦に触れた場所で次の行動を読み取れるのか、その都度双葉から情報が流れてくる。

 教える方法が、蔦を使ってジェスチャーみたいな感じだけどな。まぁ、伝わるからよし。


 まぁ、一対一だから使える方法だろう。お互い視覚情報が殆ど無い状態での戦闘だからな。

 そして、この状態でスタングレネードを使ったらどうなるだろうか? お互い魔力探査も使えなくなる。それは、俺にとっても今使っている、目を一つ潰すようなものだが……。


「ボスは弱ってるけど、このままだと火力的に足らないからな。一気にやる為にはスタングレネードからのコンボかな」


 魔力探査が出来なくなる代わりに、相手の目と耳も潰せる。俺はと言うと、盾で目は保護できる。耳は……俺がスタングレネードを持った瞬間に、双葉が蔦を使って耳の保護を開始。うん、双葉の判断力がかなり上がってきている。

 準備が整ったので、一度山羊の頭を盾でプレスした後に、バックステップで少し距離を取り、俺と山羊の間にスタングレネードを投擲。直に盾で目の保護をする。


 スタングレネードが爆発し、少ししてからハンドガンを山羊に向けて全弾放出。確実に命中すると思われた弾丸だが、目と耳と魔力探査がやられたはずのボス山羊が全ての弾をスルリと回避した。


「……回避出来るのか? スタンしてないのは解ったが、流石に光で目はやられてるだろうし、耳もキーンと耳鳴りが起きてるはずなんだけどな」


 場の魔力は間違いなく乱れている。俺も双葉も上手く魔力探査が出来ないから間違い無い。この状態でボス山羊は魔力探査が出来るという可能性は……無いだろうな。

 となると、見えているのだろうか? あの光を防ぐ何かが有ったという事だろうか。とりあえず試してみる必要が有るだろう。


 ボス山羊の前で、斜め前に移動しながら顔がついてくるかを見る。そうすると、間違いなく顔の移動が俺を追っている。

 となれば、何かの方法で此方の位置を確認して居るのは間違いない。

 石を投げて、ボス山羊の横に音を立ててみる。どうやらこれには一切の反応が無い、少しでも聞こえているなら、多少なんらかのアクションを取るはずだ。となれば、今頃耳鳴りで音が一切聞こえてない状態だろう。なら、聴覚で判断している訳じゃないな。


「一番可能性が高いのは目を潰せなかったって事か」


 他に方法が有るだろうか? 触覚と言うか、風の流れを肌で感じるとか。

 双葉に視線から外れる場所で、蔦を振るってもらい風の流れを作ってもらう。……が、ボス山羊の反応が無い。

 それなら……双葉に蔦の鞭を振るってもらうか? 目視できる場所に向かって。


「双葉行けるか?」

「ん!」


 双葉の返事と共に、ヒュン! と、蔦の鞭がボス山羊の顔に振り下ろされる。

 あたりはしない軌道だが視界に鞭が入った為か、ボス山羊は慌てて回避行動を取った。


「よし、間違いないな! なんらかの方法で視覚だけは守ったんだな」


 間違いなくボス山羊の目は見えている。だが、他の器官はやられているとなれば話は早い。

 双葉に指示をして、蔦をボス山羊の後ろから蛇の様に狙わせる。後ろ足を絡め取る為だ。現状を魔力探査が出来ないから、あの蔦の動きは見えないはず。

 とは言え、ばれない可能性が高いだけ。なので、少しでも可能性を潰すために、俺はボス山羊の前へと出て、再び盾を使いプレッシャーを与えて行く。




 まぁ、後は楽な狩りだ。双葉の蔦がボス山羊の両後ろ足に絡み付いてから、ボス山羊を引っ張り上げ体制を崩し、その瞬間に散弾魔法とハンドガンによる連続射撃でハチの巣にした。

 流石に此処までやって、ボスとは言え生き残っているわけも無く、後は回収して終わりなのだが……一つ気になるとしたら、どうやってスタングレネードの目潰しを回避出来たかだな。

 ボス山羊を回収しながら、瞼やら目を見てみるが……答えになる様なモノは一切無い。


「んー……解らん。後は研究者に任せて精密調査して貰うしかないか? もう一度試すってのも手だろうけど、スタングレネードの残量的に厳しいからなぁ」

「んー? んん!!」

「……あー、ボス山羊も雷属性だから、眩しい光に強かった可能性か。まぁ、あるかもしれないな」


 双葉の蔦と体を使ったジェスチャーで何とか伝わった。しかし、双葉の言うとおり、ボス山羊にはそういった耐性があるかもしれないか。

 普通の山羊型モンスターには無かった耐性だけど……ボスだからな。まぁ、研究者の調査と、スタングレネードの量産がされた時に、検証という事で何度か試す必要がありそうな内容だ。


 そんな事を双葉と一緒に考えていると、次の階層へと続く階段と鍵にソロボーナスが出現。

 何時もの様に回収し、ボーナスを確認して行く。


「お? これは珍しく武器が出てきたな。前出たのは毒ナイフだったっけ」


 武器……まぁ、どうみても槍だ。とは言え、なんの効果も無い槍なんて事は無いよな。

 ただ、呪われた武器だ! 何て事があっても嫌だしな。特に山羊なボスを倒しだ出した武器だし? とりあえず、調査をして貰うのは必須だろう。

 

 さてさて、調べてもらう物とか気になる事がいっぱいだ。さっさと地上に戻って協会へ行くとしますか。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[気になる点] >視線に鞭が入った為に 視界に では?
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