百八十一話
ダンジョン攻略に集中しているので、関わった人達と余り遭遇する事が無い状況。
情報交換も基本的には、協会の伝言サービスを使ってやり取りをしている。
「おお、美咲さんは十五層攻略中か。影山さん達が十七層クリアしてたのか」
ソロボス攻略ボーナスの情報が出てからと言うものの、通常フィールドの道中はパーティーを組み、ボスのみソロという攻略方法が基本。
だが、それが割りと協会内でも問題になっていて、攻略速度は完全にソロをして居るよりも速いのだが、ボス戦をソロで攻略という事で、怪我人がそこそこ居るという現状だ。
まぁ、ボス攻略方法の情報が出回っているから、その損害も減っているのだが……。
因みに協会としての対応だが、ソロ攻略ボーナスが大きすぎるので、規制する事が難しいようだ。
何せ、規制しても勝手にやる人が出てくるという事で、協会上層部の会議でどうするか決まらない状況。
「まぁ、それでも順調に基準とかを決めているみたいだけどな」
その内に、完全に規制じゃなく許可制とかになるような話が出ている。
基準を決めて協会が許可を出す。それにより隠れて攻略する人を無くそうという事だろうな。
まぁ、それでも隠れてやる人は出てくるだろうけど……まぁ、正規に行える手段が在ると言う事で、その数も相当数減るだろう、と言うのが協会側の狙い。そして、無許可相手に厳しく取り締まれるという大義名分作りにもなる。
ただ、そうなる前にどんどん攻略しようという、そんな魂胆が探索者側に見え隠れしている。
「そのお陰で魔法覚えている人が増えたから、攻略スピードも上がっているか」
魔法の有無で攻略スピードもかなり違う。モンスターを狩る速度が上がれば、怪我をする可能性も減る。
魔道具などを作るのにも魔法があったほうが良い。という訳で、結局はソロボーナスを狙いたくなるんだよな。
まぁ、その考えが皆をボスソロ攻略へと導くわけだが。うん、実に本末転倒である。
「それにしても、美咲さんも影山さん達も、かなり魔法を覚えたみたいだな」
受け取った伝言を読んでいくと、美咲さんは解読した魔法が三つ、解読待ちの魔法が二つ。
影山さん達はパーティーで解読している魔法を分担して居るようで、初級魔法は網羅したようだ。一人につき、二つから三つの魔法を覚えているようで、かなり手札が増えたと書いてある。
ただ、どちらも中級や派生の魔本は出ていないようで、火力が足らなくなりそうだな。
「ただ、どちらも隠密系だから案外動きを間違えなければ、どうとにでもなるか」
ハンドガンの量産も始まったからな。彼等なら上手く扱えるんじゃないだろうか? 他にも、マナブレードの劣化版も量産化が決定しているみたいだ。
まぁ、劣化と言っても魔力消費を抑える為に、魔法爆破の機能を無くして、ブレードの刀身も長めの剣鉈と言った感じらしい。
とは言え、強力な武器が増えるのは良い事だしな。他にも色々と武器防具の強化を検討しているようなので、火力不足は武具で補えるだろうな。
「それに、魔本がドロップする階層になった訳だし、初級クラスなら皆に行き渡るかもな」
そんな訳で問題も沢山あるのだが、割とその問題解決に関して何とかなりそうな状況。
しかし、美咲さんも随分と進んできたものだな。攻略が止りそうになったら、声を掛けてくれと言ってはある。だけど、今の所ソロで頑張っているみたいだ。
まぁ、たまに遭遇する事が無い訳でも無いから、その時に色々聞いてみるのも良いだろう。
協会の伝言で他の人からの連絡を確認し、返信をお願いした後はダンジョン探索開始だ。
昨日一日、ゆっくりと休んだので体力は十分。まぁ、弾薬の体力は微妙なままだけど、それも補給の目途は立ちそうだしな。
「そんな訳で、二十四層攻略開始だけど。双葉大丈夫か?」
「……ん」
寝起きと言った感じで双葉が返事をした。出かける時はしっかりとおきて着いて行く! と、言っていたのだが、伝言確認に二十四層までの道のりの間に、少し眠ってしまっていたようだ。
まぁ、当分戦闘をするつもりはないので問題は無いだろう。少し双葉が覚醒するまでは、ゆっくりと調査中心とするかな。
そんな訳で足を踏み入れた二十四層は、二十一層から確認できた山羊達が居た場所。
足場の状況はちらっと見る限りだと、二十三層よりは随分とマシ。まぁ、地面が波打ってる状況は変わらない。ただ、横幅などは随分と広がったので、崖下に落ちるなんて事は無いだろう。
それよりも問題なのは……あの山羊の存在だろうな。
遠くから狙撃をして命中するかどうかの検証をしたが、その全てが避けられた結果がある。となると、射撃による攻撃は命中しないと思った方が良い。
しかし、接近して戦おうとすれば、あの迎撃された鳥と同じで、電撃による範囲攻撃が待っている。
「魔法の電撃か。散弾銃みたいに広がるタイプだったし、対策はかなり厳しいかな」
こちらも散弾魔法やら範囲魔法で撃ち合うにしても、魔法の射程は基本同じ。後はどちらが先に発動させて命中させるか……なんて、早打ち勝負になりかねない。
この場合、相打ちなんて結果もある。だとすれば、なるべく魔法の撃ち合いはやりたくない。
魔法が発動するより速く動いて、全力で奇襲をかけるか? それにはまず、此方が先に発見しなければいけないし、そもそも山羊の察知能力が異常だ。
「それに、俺の移動速度だと無理があるな」
移動しながら散弾を打ち込む。もしくは、急接近して切り裂く。どちらにしても、俺のスピードは空を自由に飛びまわってる鳥よりも速くない。
そして、あの山羊は待ちの姿勢ならば……高速で移動する鳥が持つ速さに、落下という勢いが付いた状態でもあるのに迎撃した。
間違いなく地面を駆ける程度の速度では、簡単に迎撃されるのが落ちだろう。
「一体如何いう戦い方で、このモンスターを討伐して行けばいいのやら」
回避と迎撃能力が高い。ただ硬いと言うより、なんとも攻略するのが大変な相手だろう。
最悪、オオトカゲより厄介な敵という前提で挑むべきだろうな。まぁ、オオトカゲと違い動き回るようなので、トラップを仕掛けると言う手も十分に使えそうな気はする。
トラップまであの探索能力で回避されたら、堪ったものではない。ふざけるな! と叫びたくなるだろうな。
「とりあえず、この階層に出るモンスターは既に二種類は割れてるか」
その二種類は鳥と山羊だ。そして、鳥は既に対策が出来ているので問題は無い。
まぁ、周囲を散策しつつ何か使える物でも無いか、特殊な空間でも無いか調べていくとしますか。
少し歩いて回ったが、特殊な空間は無かった。となると二十一層が特別だったのだろうか? まぁ、少し残念では有るけど、モンスター達について少々情報を手に入れた。
まず、上空を自由に飛びまわっている鳥だ。
どうやら、現状だと攻めてくる気配は無いので、此方からも手は出さない。ただ、数匹の鳥が山羊へと奇襲をしかけて……迎撃されている状況を見る事が出来た。
そして、驚異的な事実が発覚。崖向こうから見たときは確認出来なかったが、この山羊は草食動物じゃなかった。
山羊の皮を被った雑食で、迎撃した鳥の電気焼を美味しそうに咀嚼しているシーンを見てしまった。
まぁ、焼き鳥だからな。タレか塩で食べたい気はするけど……まさか、山羊が焼き鳥を食べるとは。
「となると……食べ物トラップが使えるか? 結構大食いみたいだし」
飛んで来た鳥を迎撃しては、常に喰らいついている。しかも、まだまだ食べれます! といった雰囲気で、空を飛ぶ鳥を眺めている。まぁ、距離的に魔法は届かないから、山羊側から先制攻撃を行う事は出来ないけど。
「ふむふむ……鳥に注意が行ってる事や、雑食で暴食ならではの食べ物トラップ。後はアンチモンスターライフルの狙撃に対して、迎撃は出来なかったけど避けて移動するんだったっけ」
割と良い感じに情報が集まって来たと思う。
それじゃ、色々と討伐の為に下準備をして行くとしようかな。電撃を放つ山羊型モンスターだ……きっと、良い素材に良い魔石なのは間違いないはず。
となると、必要になるのは鳥の肉か? まず鳥撃ちをやるとしても、攻撃が届く武器はアンチモンスターライフルしかない。……うん、弾薬がもったいないな。
しかし、この場所だと鳥は攻撃をして来ることは無い……と言うか、まず山羊に攻撃を仕掛けるだろう。
「少し移動が必要になるか」
なら、まずは移動して良い位置取りをしないとな。全て山羊達に鳥を取られかねない。
とりあえず、山羊がどれぐらいのスペックを持っているかも調べたいからな、一番いいのは鳥の生け捕りだろうけど、難しいだろうなぁ。
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