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百八十話

 ダンジョンから出てから睡眠をとり、朝になってから協会へ。

 羽ペンとカップなどの配達をお願いした後に、ダンジョンについてのメモを提出。ついでに弾丸の補充をお願いしておく。まぁ、弾薬が届けられるのは時間が掛かるだろうけどな。

 何時も通りと言うべきか、メモを提出した後に入谷さん達に呼ばれ、奥にある会議室へと案内された。


「おはようございます」

「白河君おはよう。聞いた方が良い部分もあるから呼ばせてもらったよ」

「今は詳しい纏めを協会にやって貰ってますからね。纏める分の時間を考えると話をするのは、其処まで時間は掛からないですし」


 軽く挨拶をしてから、メモを見ながら二十二層と二十三層の話をしていく。

 時々、二人の顔が何かを考え難しい顔になるが、気にした所で仕方ない。


「オオトカゲですか。二十二層に合計二体確認し、しかも片方は階層ボスで、通常のフィールドに存在した者よりも強かったと」

「戦闘をする環境も最悪でしたからね。なんの準備も出来ず……まぁ、パーティーで戦うのであれば、大丈夫でしょうけど、人数が揃うまでが大変かと」

「アスレチックだったか? なんで、ダンジョンにそんな物があるんだか」


 二十二層について、二人が頭を抱えたのはボス部屋のアスレチック。

 しかも最後の丸太の橋に関しては、丸太が一本のみなので一人ずつでしか進めない。一列になら行けるだろ? と思うかもしれないが、ここで投石という邪魔が入る。

 投石を防いだり避けたりすると、その振動等で丸太が動いたりする事がある。一人であれば耐える事も、動いたとしてもリカバリーが行えたりと何とかできる。

 だが、数人で丸太に乗った場合を考えれば、まぁお互いの存在が邪魔にしかならない。バランスが崩れまくる最悪な橋という訳だ。


「先に盾メンバーか回避を行える人を行かせるとしても、後衛のメンバーだと丸太を渡る事が大変そうですね」

「全ての探索者に小型でも良いから盾の使い方を仕込むしかないだろうな」


 元々が自衛官や警察官で、前に出てた人達はタワーシールドというか、ライオットシールドを使ってダンジョンに潜っていたので、別に問題は無い人が多い。だが、それ以外の人も居る訳で、探索時に魔法や弓をベースにしてた人達は、盾の使い方など知るわけが無い。

 当然だが、探索者の人達はそれ以上に盾など使ってきて居ない。まぁ、最近は盾使いと言う人も増えたようだが。

 因みに、俺は途中の段階で盾が居るんじゃないか? と思いつつ、機動性も欲しかったのでタワーシールドタイプじゃなく、カイトシールドを選んだ。円盾……サークルシールドでも良かったのだろうけど、盾の総面積的にカイトシールドにしておいた。


「まぁ、投石を弾けるだけで良いからな。カイトかサークルタイプの盾か、篭手あたりでの防ぎ方でいいか」

「投石を防ぐだけなら、魔法でどうにかなりませんかね?」

「ボス戦をする前に魔力を使ってどうする。渡ったら回復する時間すらないぞ」


 それが、あの二十二層ボス部屋の厭らしい所だよな。

 まぁ、それに関しては何か案がある訳じゃない。ここはパーティープレイの熟練者達に任せるべき話だ。

 二人がウンウンと悩んでるのを横目に、双葉と共に出されたお茶と茶菓子を堪能しておく。


「……おっと、少し熱中しすぎたようだな。とりあえず二十二層のボスに関しては、協会の裏手で少し試してみるとしよう」

「丸太橋と邪魔をする為の投石は……柔らかい何かを投げるとして、その先で戦闘訓練ですかね」

「ま、実際に色々と試してみれば見えてくる物もあるだろう。さぁ、次の話だ」


 次はと言うとオオトカゲについてだろうか。

 まぁ、こいつの特性は実に面倒で、奴の鱗が斬る・突く・魔法に強いと言うだけで、面倒な敵に仕上がっている。


「ただ、目・口・腹側の柔らかい皮なら十分にダメージが狙えると思いますよ」

「一応鱗を砕く事も可能のようだから、打撃が一番可能性はあるか」

「ひっくり返してしまうと言うのは? 白河君みたいなソロならまだしも、パーティーなら狙えるのではないですか?」

「難しいだろうな……話を聞く限りだと、それを狙うには爪か尻尾が相当邪魔になりそうだ。まぁ、データバンクに何か残ってるかも知れないから、後でデータのチェックをしておくとしよう」


 ボスとはいえ、二十二層に出現したモンスターだからな。何処かのダンジョンで、自衛隊の人達が討伐していた可能性は十分にある。

 それこそ、間違いなく爬虫類専門ダンジョンもあった事だし、間違いなく出てくるはずだ。

 しかし、このダンジョンって何が基準なのだろうか? 出て来たモンスターを考えるなら、特色など何も無い。

 ドロップで必ず魔石が出る、そんなダンジョンだったが……モンスターが消える前に、回収なり解体を始めれば丸々素材が手に入るからな。っと、それは良いとして、特性としては魔石がポロリするダンジョン。

 出現モンスターだけが、ランダムと言う設定なのかな? まぁ、それにしては虫関連が出て来ないけど。まぁ、何時か答えが解るかと良いけどな。


 そして、ダンジョンの謎がふと脳裏によぎっている間に、オオトカゲに関しての話が随分と進んだようだ。

 ただ、進んだと言っても、やる事は訓練と情報の調査だ。ただ、そのやり方を少し詰めたという感じかな。まぁ、部下に指示を飛ばして、データの調査を開始させている。そんな感じだ。


「さて、続いて二十三層だったね。と言うより、一気に二層進めたんだね」

「ちらっと二十三層を覗いたら、少し気になってしまいまして。それで、進んでみたら戻るよりも攻略してしまおう! と、思っちゃったんですよね」


 うん、その時点で既に判断ミスをしてたんだよな。二十二層を攻略した時点で戻っておけば良かった。まぁ、今そう思っても仕方ないけど……なぜかあの時は、勢いに任せちゃったんだよな。

 まぁ、それは横に置いておくとして、二十三層に関しては、もう足場の悪さが全てを物語っている。


「人が二人並んで通れない。ただ一人で歩くなら、それなりにスペースがある足場ですか」


 確かに、壁に張り付いて移動する必要は無い。多少横幅はある。ただ……石ころが転がっていたり、地面が波打っていたりと、非常に安定性が無い。

 あの足場で、避けると言った行動は取れない。そう思った方がいいだろうな。


「避けれない、なのに重装備には辛い足場ですか。崩れる可能性も考えられると?」

「そうですね。実際に崩れそうな場所を数回確認しましたよ」

「ここでも盾の出番という訳か。出てくるモンスターはカエルと鳥だったな。トカゲが居なくて良かったと言った所か」


 あんな場所でオオトカゲに遭遇したら最悪だ。まぁ、そのオオトカゲも、自重で足場を崩して落ちかねないけど。

 まぁ、二十三層には居ないオオトカゲは良いとしてだ。問題は鳥についてだろう。


「空からの襲撃は、面攻撃で防げるんでしたっけ」

「鳥自体防御力は低いので。速さと回避能力の高さが問題ですが、その回避能力も鳥に向かう直線的な攻撃に対してですから」

「散弾に弱いという訳だな。他にも、爆破などの範囲系も良さそうだな」

「まぁ、戦闘する場所的に爆破は問題が多いと思いますけどね」


 もし、爆破の衝撃が崖に届いた場合、足場が崩れたり、頭上から落石があったりと、大変な事に為りかねないからな。やらない方が良い攻撃方法だ。

 同じ理由で中級範囲の風魔法を使わなかった。使えば、鳥達を一箇所に集めるなんて事も出来ただろうけど、その風の強さで頭上の石とかを巻き込み……これまた、落石なんて事になる可能性もあって、避けるべき方法だな。


「まぁ、俺は此処で多分判断ミスしてるんですよ……ボス部屋に入る前にボスに攻撃をしてると思うんですよね」

「その結果、鳥の襲撃数が異常事態になったと? ただ、この方法は魔石を集めたい時には良さそうですね」

「追い込まれ漁とでも言うべきか? 終りが有るのが解らなければ辛そうだけどな」

「そこは、最悪別に出口を作って、襲撃を受けてる入り口に蓋をするつもりでしたから」

「なるほど、そうすれば最悪撤退は出来ますね」


 とは言え、攻略するつもりなら俺と同じ事をする必要は無いはずだ。正規の方法で攻めれば、あそこまで時間が掛かる事も無かっただろう。

 しかし、魔石漁として使うか。中々面白い事に目をつけたなぁ……俺なんて、この方法は失敗だとしか思ってなかったのに。

 ただ、そう聞くとこの戦闘方法。割と美味しい話ではある。何せ二十三層のモンスターが出す魔石だ。質が実に良い。それが量産できるとなれば……相当な儲けである。


「まぁ、ダンジョン攻略が常に命大事に重視……ってのも、また別だなと思いましたよ」

「そもそも、そんな上空まで届く攻撃方法が有るって事自体が、ダンジョン側には異常状態だったんじゃないか?」


 まぁ、異常状態では有るだろうな。もし、ネットゲームみたいに運営会社があるとすれば、速攻で修正案件だろうな。

 臨時メンテナンスが入って、メンテナンス延長のコンボ待ったなしだろう。

 まぁ、ダンジョンにそういった修正をするシステムがあるかどうか……少し気になるけど、もし次同じ方法を試した時に、今回みたいな事にならなければ何かあるんだろうな。……試すか?


「まぁ、今回の一番気になった部分は此処ら辺だな」

「少し試してみたい事が幾つかある内容でしたけどね」


 試すか……もしかして追い込まれ漁かな? それともオオトカゲの方だろうか。まぁ、二十三層のカエルの横穴を使う狩りもオオトカゲに関しても、現状は俺しか出来ないけど。潜ってる階層的に。

 とは言え、皆が進んでいる階層も順調のようで、街側のメンバーだと一番深いのは二十層をクリア。村側だと、十七層をクリアしたようだ。

 ゴーレム狩りや採掘などで時間を使って居る事を考えると、かなりのハイペースじゃないだろうか。

 まぁ、二十二層からパーティープレイを妨害するようになるから、そこで一旦ペースが落ちるかもな。


「そうだ、弾薬補給の件お願いします。一応要望書は書いておきましたけど」

「弾も製造の安定を目指してる途中だからね……少し時間は掛かると思うけど頼んでみるよ」

「ハンドガンも量産体制に入ったみたいだしな。弾が足らないだと話にならんからなぁ」


 弾薬は消耗品だから、量産の為に色々とやってみるみたいだ。

 まぁ、ハンドガン自体が研究者達の浪漫の為に、研究開発されたような物だからな。弾が後回しになってたのも仕方が無い。

 思った以上にハンドガンが使える武器だったので、量産化の話まで短時間で一気に進んでしまった。だから、弾の製造が追いつかない状況ってわけだ。


 とは言えだ、ダンジョンの探索をする為に絶対必要な武器と言う訳でもないし、一応まだ弾薬は余っている。まぁ、早々撃てはしないが。

 二十四層を覗きに行くぐらいは出来るかな? 恐らく……二十四層か二十五層が二十一層時に見えてた、崖を挟んで反対側に当たる部分のはずだ。

 報告も終ったし今日一日ゆっくりして、明日か明後日にでも確認しに行くとしよう。

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