百七十八話
今日は短めです。
二十三層へと足を踏み入れると、そこは崖にある狭い道で、足場が悪いなんて言うレベルじゃない。
さてさて、蔦を命綱にするとしても上に登っていく訳じゃない。それに、ルート的にみえれば歩いていけって言われてるような感じだしな。
「しかし、これを進んで行ったとして、どうやってモンスターと戦えば良いんだろうな」
下手に戦えば下に落ちていく運命しか見えない。
ただ、二十一層の時に見た反対側の山の部分では無いようだ。周囲を見渡した感じから言うと、その見えた所より低い場所だろうな。
まぁ、落ちないように進めば良いだろう。ただ、どんなモンスターが居るかが問題だよな。
とりあえずオオトカゲが出てくるような事は無いだろうな。この足場だと横幅が足らない……まぁ、壁に貼り付けるならば、存在して居る可能性もあるが、まぁ低いだろう。
カエルなら居る可能性はある。穴の中から飛び出てくるパターンは特に注意しないとな。
二十一層より低い場所という事で、山羊が居るかどうかはなぞだが、鳥なら居る可能性は高い。二十一層の時点でも遠出して攻めて来たからな。
さて、それじゃ時間もあるし少し探索をしてみるとしますか。
落ちないように足元に注意しながら、道なりに崖を進んで行く。
出てくるだろうモンスターの予想から、壁に穴が存在するか、上空からの奇襲がないかも気をつけてはいるけど、やはり足元への注意に意識が行ってしまう。
まぁ、双葉が蔦をレーダーにして上空を警戒してくれているけど、自分でも注意するべきだからな。敵を確認する為の目は多いほうが良い。ただ、双葉が居なかったら思った以上に大変だったな。
「しかし、二十一層以降というか、二十二層からはパーティーでの探索が本当辛いな」
「んー?」
「足場とか狭いだろう? 俺と双葉なら問題ないけどな。人間が複数だった場合は、動きが制限されて時間が掛かったりと大変なんだよ」
「……ん!」
疑問に思った双葉はなんとか納得できたようだ。まぁ、双葉は常にバックパックの双葉ゾーンだからな。小さいサイズの自分との違いが、最初は思いつかなかったんだろう。
それにしても、どんな理由でこんなマップを作ったのか。難易度がこれ以上に高いダンジョンとか有るみたいだし、其処だとこれの比じゃないって事だよな?
まぁ、言える事はあれだ……重装備お断りマップだな。フルプレートの人とか居たけど……彼等の装備状況じゃアスレチックマップや此処は辛いだろう。
そんな風に、周囲の状況を確認しながら情報をメモして行く。
「さて、注意するべき点はこんな所かな。時間的にも問題ないし、どんどん進むとするか」
まぁ、アスレチックマップと同じで双葉が居るとはいえ、移動だけなら実質ソロの俺からしてみれば問題は無いからな。
それにしても……道なりに進んでみると、視線の先に横穴を発見。ただ、その大きさからしてカエルの穴だろう。
となると、もぐら叩きをするか釣り出した後に崖の下に落す。そうするのが良いかもしれないな。
そう言う訳で、双葉の蔦を使って釣り出して貰い、崖の下へとカエルを落して行く。
そのついでに、横穴を探ってカエルの鉱石を回収も忘れない。
そんな事をしながら進んでいくと、落下させたカエルに飛び込む陰を確認した。
「……鳥か?」
高度からダイブをして、釣り落したカエルを捕獲しに行ったか。やはりと言うか、鳥型モンスターも襲撃する場所って事だな。
しかし、カエルを釣りだして落としていれば、鳥のターゲットが此方に向く可能性も低そうだ。
「だけど、あの鳥型モンスターの魔石や素材も欲しいよな」
「……ん!」
「ふむ……釣り出したカエルを餌に、鳥も釣る気か」
面白い提案だ。双葉もやる気が充満しているし……チャレンジしてみるとするか。
カエルの横穴に蔦を突っ込みカエルを釣り出した後、今度は蔦を振り回してカエルを落す事をせず、蔦を食らいつかせたままにして、崖の下へと飛ばす。
が、確実に鳥が襲撃するという訳でも無い。そう言う場合は、カエルから蔦を外して落下させる。
まぁ、蔦をつけたままだと、空中でブラブラとする不自然なカエルだからな。そんなのに食らいつくか解らないから、餌にするカエルはトレードだ。
そんな感じで鳥釣りを数回チャレンジしていたら、とうとう鳥がカエルへと襲撃を開始した。
此処までは成功だ。だが問題は別で……カエルを捕獲する時、鳥はその爪で掴み飛び去ろうとした。
結果、蔦引きになったが、引っ張られた鳥はすぐさまカエルを諦めて、掴んでいたカエルを放してしまった。
「……鳥の釣りは無理そうだな」
「んー……」
直接襲撃してくれれば、面攻撃という対策があるから問題ない。とはいえ、釣れたらカエルと鳥を同時に対処できるから、楽だったと言うのにな。
まぁ、出来ないモノは仕方ない。それに、こんな足場で狩りをするのは余りしたくない。さっさと進んでクリアしてしまった方が良い階層だろうな。
そんな訳で、カエルを排除しながら、鳥のターゲットが此方を向かないようにしつつ。それでも、向かってきた鳥に対しては、散弾魔法を使って対処して進んで行く。
足場が足場なので、素材の回収は大変だが仕方ない。撃ち落した鳥が崖の下に落ちていくのを見守るのは、何とも言えないが。
此処で戻るのもあれなので、もうクリアしてしまおう! という事で、撤退する事無く道を進んで行く。
だが、ボス部屋と言える様な場所が無く、見えてきたのは鳥の群れだ。
「……鳥撃ちでもすれば良いのか?」
「ん!」
蔦を振り回しながら、鳥に攻撃をしようとする双葉。だが、此処からだと距離が足らないぞ。
まぁ、この足場であれだけの鳥の群れとなれば、普通は大変だろう。やっぱりコンセプトみたいなものがあったら、ここはパーティーキラー的なモノなんだろうな。
俺の攻略方法は余り情報としての価値は低そうだ。とは言え、それは散弾系の魔法が無ければだが。
範囲魔法でも良いのだけど、散弾魔法の方が余裕だ。
何せ、中級範囲魔法の使い勝手は大変だ。発動させてから止めて、次を発動させる。これは割りとロスタイムがある。
だが、散弾魔法なら連射がしやすい。まぁ、中級範囲よりも散弾魔法は範囲が狭いが。
そして、散弾魔法は……自衛隊産の魔法だ。ダンジョンがあった世界では無かった魔法。となると、散弾魔法が無い世界だと割と大変だろうな。
探索者たちで中級魔法を使えるなら……それこそ、散弾魔法を全員で撃つなんて方法もある。やっぱり、俺の戦闘は参考にならないな。
まぁ、俺は散弾魔法を数人で撃つなんて出来ないからな。だけど、双葉も居る。
となれば、散弾魔法とハンドガンの組み合わせに、接近して来た奴は双葉の蔦による鞭で倒してもらえば良いだろう。
鞭も直線による攻撃じゃないからな。あの鳥には有効なはずだ。
「それじゃ、殲滅戦といきますか……素材回収出来無さそうだけど」
「んー……」
双葉も実に残念そうな返事をする。まぁ、恐らくだけどこのマップ自体、魔石の回収なんてさせる気がダンジョン側に無いのかもしれない。
回収しながら戦おうとか……まず無理な話だからな。もしくは、何か道具でもあるのかもしれないな。
あるとしたらなんだろう……トリモチ棒とか、捕獲用ネットとか? まぁ、今更そんなもの用意できる訳も無いし、もしそう言うのを作るとしても、この情報を得てから協会上層部が決める事だ。
なので今は、予定通りの方法で鳥の殲滅を行うとしよう。うん、勿体無いけどな。
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大量の鳥って怖いですよね。それが、猛禽類となれば……がくぶるです。




