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百七十三話

 そういえば……と振り返ってみる。ダンジョン内のモンスターに試してみてくれと渡された、アンチモンスターライフルだが、その弾薬の数はそう多くは無い。

 二十一層で三発使ったからな……そもそも、ハンドガンの弾の方をメインに作っていると言うのもあって、ライフル弾を作れる余裕なんて無い。

 そう言う訳で、現状だと弾を頂戴と言った所で、すぐに送られてくるなんて事は無い。手元にある弾薬を上手く使ってくれと言う状態だ。

 そして、残りの弾薬はと言うと……。


「最初に渡されたのが二十発だから、残り十七発なんだよなぁ……」


 威力が高い……いや、高すぎるので切り札にと残しておきたい。だが、いくらか試さないと解らない事もある。

 そうなると、何発残すか? と言う話になる訳だが、次の補充が何時になるか解らないという現状だからな。


「最低でも十発は残しておいた方が良いか」


 二メートルサイズのカエルオブジェクトに三発使った事を考えると、ボス部屋で面倒な相手ならば、数発使う事を考えた方が良い。

 それに、何時ラフレシアもどきが出たフィールドに遭遇するかも解らないとなれば、正直十発でも足らない気はする。

 だが、それは銃メインで行く場合だ。他の手段に魔法もあれば、マナブレードの魔法爆発なんて切り札もある状態。まぁ、マナブレードになると接近しないといけないけど。


 二十一層の時は、ライフル弾の数を知っていたが試したくて使ってしまった。そのお陰で、ある程度はライフルの性能を掴めた部分もあるのだけど。

 まぁ、新しく渡されて、嬉々として使うとか子供か! と、言われそうな話ではあるが、試作武器を試すのも仕事だからな。使わずしてどうすると言う事にしておこう。


「遠距離射撃に試すのは、七発って事で良いか」


 崖を挟んで反対側の山がある場所まで、三キロ以上は離れている。

 普通のスナイパーライフルだと厳しい距離だが、モンスターが出る前の記録でも、三キロメートル前後の狙撃をしたと言う話はある。

 そして、俺が使うのはアンチモンスターライフルと、性能が異常な事になった銃。

 それならば、狙えないなどと言う事は無いだろう。問題が有るとすれば……。


「風やら重力の計算か……そんな技術は身につけてないからなぁ」


 狙撃をするのに必要な技術だが、そんなもの学ぶような環境には無かった。

 村に居た熊撃ちをする人ですら、キロメートル単位の狙撃をするなんて話はしてなかったしな。

 まぁ、試してみるしかないだろう。七発もあれば……少しは上手く行くようになると思いたい。




 そんな訳で、二十一層の入り口。山岳側での狙撃チャレンジだ。

 相変わらず、崖を挟んだ反対側では山羊と鳥のにらみ合いなどが行われている。


「……鳥撃ちが出来たらパーフェクトなんだろうけど」


 ただし、あの鳥は直線的な攻撃を避けれるスペックを持っている。

 アンチモンスターライフルの速度まで避けれるとは思わないが、距離がある場合は余裕で回避できるだろう。そして、至近距離ならばアンチモンスターライフルを使うまでも無い。

 もし、使うタイミングが有るとすれば……昔からよくある獲物を獲る瞬間だろう。


「ただ、このマップの場合。どう考えても獲物と思われる山羊の方が強いし、その山羊が居るまでの距離が遠すぎる」


 襲う瞬間を狙って撃ったところで、山羊が先に迎撃しているか、こちらの銃弾が届く前に何処かへ飛び去っているだろう。

 もし狙って狙撃できる人が居れば、未来予知が出来る人じゃないだろうか?


「ま、今回の狙撃対象は山羊だからな……さてさて、どうなるかな」


 比較的しっかりした足場に陣取り狙撃準備。

 使うライフル弾は七発。ライフル用のニ脚を取り付け、地面に伏せて狙撃体勢。


「それじゃ、一発目を撃ちますか」


 スコープを覗いて山羊型モンスターの胴体にクロスヘアを合わせて……トリガーを引く。

 ドォン! と発砲音がしてから数秒後。銃弾が山羊が居た場所から少し離れた位置に着弾。


「……まぁ、一発で命中できる訳無いよな」


 と言いつつも、これは山羊が動かずに居た状態での話だ。

 さらに、今の着弾音で山羊達は吃驚して移動をしてしまった。……これが実験で良かったと言う話だな。

 討伐やら素材の為だとすれば、この掠りもしない射撃と言うのは駄目すぎるし、敵次第では、この銃撃で襲ってくるような奴も居る。まぁ、今回の山羊は逃げに徹していたけど。

 まぁ、この距離で反撃に出れるのは現状だと、鳥型モンスターぐらいだろうけどな。


「それじゃ、違う相手を狙っていきますか」


 今の射撃の感じだと、思ったほど風やら重力の影響は受けないみたいだ。

 モンスター素材などを利用しているからだろうか? まぁ、原因は解らないけど、これは俺みたいな狙撃初心者にはありがたい話だ。


 そんな訳で、次の山羊を狙っていく。

 多少の修正をしてから、再びスコープを覗いてトリガーを引く。

 今度は山羊の足の近くで、地面が銃弾により抉れた。その衝撃で山羊が吃驚して一目散に逃げようとし、足を踏み外して転げて行ったが……まぁ、銃弾が当たってないので失敗だ。


「ふむ……これも命中せずか」


 まぁ、三キロ射撃だ。むしろ順調に行ってる事の方がとんでもない話である。

 とは言え、プロと言われる人がこの銃を使えば、既に山羊を撃ち抜いているだろうな。まぁ、銃の威力で後ろに飛ばされているかもしれないが。

 

「さて、次だな次」


 三発目の射撃体勢へと入る。

 今度こそは! と思いつつ、山羊を狙いながらトリガーを引く。

 だが、今度の山羊はトリガーを引いた瞬間に動き出し、弾丸が命中する事が無かった。


「くっそ! あそこで動き出すのかよ!」


 まるで狙われている事が解ったかのような移動だ。動物的勘でも働いたのだろうか? そういえば、鳥に狙われた時も、行き成り反撃に出てたような気がする。

 襲われるまで違う所を見てたはずだったのに、反撃が出来たとなれば……何か危機察知能力でもあるのかもしれない。


「となると……狙撃で当てるのは厳しいか?」


 とは言え、まだ三発だ。検証数としては少ない。

 それに、一発目と二発目の時は気がついてすら居なかったじゃないか。……直接命中するパターンのみ気がつく可能性もあるけど。

 とりあえず、其れを調べる為にも四発目撃ってみるか。


 再び動いてない山羊を見つけ、そいつにクロスヘアを合わせてからトリガーを引く。

 今度の弾も三発目と同じで、避けられなければ命中するコースだ。だが、山羊型モンスターが何かを察知したのか、一瞬だけ此方を見た後、ひょいっという感じでジャンプをして、その場から移動をし銃弾を回避した。


「……間違いなく感づいてるな。と言う事は、遠距離で命中する攻撃に反応する何かを持ってるって事か?」


 だとすれば……接近戦を狙うのが良いモンスターと言う事になるけど、それを仕掛ければ、あの拡散電撃魔法が待っている。

 遠距離も近距離も厳しいモンスターと言う事になる訳だ。良く出来てるな。


 まぁ、対策が無い訳じゃない。

 それこそ、中距離戦闘を仕掛ける。まぁ、相手の電撃魔法も中距離だから、この場合は中距離魔法合戦になる。


 障害物を大量に用意して、トラップ戦闘をやる。まぁ、何時ものって感じの戦法だな。

 これに遠距離射撃を合わせて、追い込み漁みたいな手段を取れば、割と楽に攻略は出来るだろう。

 ただ……この場合だと、時間がかかって仕方ないと言う話になる。


「遠距離射撃が中てれる方法があれば良いんだけど」


 残り三発。間違いなく山羊型モンスターを狙うのは意味が無いだろうと思う。やれば弾の無駄遣いだ。

 だが、何か方法が無いだろうか。


「そういえば、今までは止ってた山羊しか狙ってなかったな」


 動いていれば、違う場所に気が行って銃弾に気がつかないかもしれない。

 色々なパターンも見たいから試してみるのも良いだろう。


「なら、動いてるパターンも調べてみるか……あー、後あれだな山羊も横向きの奴しか狙ってなかったから、後ろからのパターンも試してみたいな」


 まぁ、どちらも難易度は上がるのだけど。後ろから場合は狙撃できる面積が狭くなるし、動いていれば当然だが予測射撃が必要だからな。しかも……着弾まで数秒掛かる射撃だ。予測より予知能力が欲しいレベルだ。


「残り三発は失敗前提だし、データを取れれば良いだろうな」


 そんな訳で残りの三発……対象を探して撃ってみよう。

 まず見つかったのは……後ろを見せている奴か。しかし、一気に狙いが着けにくくなった。うん、横向きの面積ってかなり大きかったんだな。

 とは言え、試してみないわけには行かない。という事で……射撃!


 発射された弾丸が、山羊の背中付近に命中する弾道で飛んでいく……が、やはり山羊がソレに気がつき、ぴょん! と跳ねて、弾丸を避ける。うん、まぁこれは予想通りだ。


「後ろも駄目っと……なら、間違いなく正面も無理だろうな。上空からも鳥の奇襲を防いだ事から無理だろうし、下からならいけるか?」


 兎にも角にも、停止中の山羊相手には死角が無いという事で良さそうだ。

 それなら、動いている奴だな……残り二発の弾丸で確認出来れば良いけど。


 山肌をぴょんぴょんと移動する山羊達を見つけたので、そいつらを狙う。

 とは言え、予測射撃ともなると……難易度は一気に上がる訳で。


「……やべぇ、山羊の次に飛ぶ位置が解らん」


 短く飛んだり、思いっきり飛んだりと本当にバラバラだ。これが、三キロメートル……いや、一キロでも厳しいか。まぁ、数百メートルクラスなら、まだ狙えただろう。

 だが、発射して数秒掛かる狙撃となると……うん、無理。


「結論! 山羊に狙撃は無理でした!」


 まだ、平地を走っているなら……狙えるかもだけどな。起伏が激しい所だと予測がマジで辛い。

 さっき思ったショートやロングジャンプ以外にも、急停止や急移動に方向転換も多すぎて、予測なんて出来ないからな。

 これなら、まだ鳥を狙う方が楽かもしれないな。っと、とりあえずコレで遠距離射撃のテストは終ろう。


 一応成果は出た。

 三キロメートル先の的に当てようと思えば中てれる。ただし山羊は無理。そして、狙撃初心者でも使える武器だと言う点などだ。

 さてさて、それじゃ……少し残念な結果になったけど、ダンジョン攻略に戻るとしますか。

ブックマーク・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。


因みに、世界最長のスナイピングはカナダ軍の特殊部隊で三千四百五十メートルだそうですよ。着弾まで約十秒とか……はんぱねぇ。

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