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百七十話

 トンネルを進みながら、蛙型モンスターを狩りつつ、巣穴だろう場所に溜め込んだ鉱石を回収して行く。

 

 蛙狩りは比較的簡単すぎると言っても良かった。と言うか、やり方だけ考えれば、この蛙型モンスターが如何に間抜けなのかと言うレベルだ。

 その内容が、蛙が潜んでいる穴へと、双葉が蔦を侵入させる。そして、蛙の前で蔦を暴れさせる。この時、蛙を蔦で叩いて気絶させる事もあるが、大抵の蛙は目の前で動かれる蔦を餌か何かだと思うのか、丸呑みしようとする。

 蛙が蔦に食らいつけば後は簡単だ、蔦ごと蛙を引っ張り出して、出てきたところを剣鉈で切裂く。


 ただ、一つ気になる事がある。どうやら、トンネルの奥へと進むほど、この蛙と蛙の鉱石はサイズが大きくなっている。


「最初は小学校の頃にみたドッジボールぐらいだったのにな」


 だったはずなのだが、現状の蛙は既に最初の二倍以上のサイズになっている。

 規格で差が少しあるが、ドッジボールのサイズは直径が大体二十センチ前後だったはずだ。それの二倍以上……四十から五十センチサイズの蛙が出るようになって来ている。


 当然、蔦で釣るのもどんどん大変になって来ていて、最初の内は双葉のみでも釣り上げる事はできたが、現状だと俺が片手で蔦を一緒に引っ張っている。

 そうしないと蛙の暴れ方が激しいのか、まったく穴から出て来ない。

 まぁ、咥えた蔦を開放すれば、暴れる必要も無いのにと思うんだけどな。どうやら、食い意地でも張っているのだろう。全く蔦を放す気配すらない。


「このまま進むと、何処までこいつ等は大きくなるんだろうな」

「……ん!」


 体全体を使って、これぐらい! と、双葉が表現しているけど……うん、もう既にそのサイズは出てるからな?

 とは言え、蛙がこのまま巨大化していけば、今の戦い方はその内使えなくなるだろうな。

 

「まぁ、面倒なサイズになれば、引っ張り出さなくても、出入り口塞いでしまえば良いか」


 出てきた奴だけ狩ってから、その穴にある鉱石を回収すれば良い。

 釣りをするなら、簡単に引き出せる方が無駄な体力を使わなくて良いしな。

 なので、最初の内にやっていたように、穴を丁寧に埋めておけば問題はないだろう。……まぁ、五十センチ台の穴を塞ぐのも、ある意味労力を使うわけだけどな。




 釣りに時間がかかるサイズになってからは、釣りをしない方針に切り替え、出てきた蛙型モンスターのみを狩りながら進んで来たが、現状は双葉と一緒に休憩中だ。


 しかし、どんどんと大きくなる蛙型のモンスター。そのサイズは既に一メートルクラスになって居て、可愛げなど一切無い姿だ。

 そして、実に重そうである。脚力も異常なのだろう……全身で体当たりを仕掛けて来た時には、少し吃驚した。

 避ける事は出来たのだが、勢いと威力共に砲弾と言っても良いかもしれない。何せ、飛び掛かって来た速さが、風を切る音が聞こえると錯覚したレベル。しかも、避けた後にそのカエルがぶつかった壁が、綺麗に抉れている状態だ。

 とは言え、壁を抉ったカエルは見事なまでに壁に埋まり、動けない状態になったので止めを刺すのは楽だった。実に間抜けなカエルだが……その身体能力自体は脅威には違いない。


 それに、このトンネルが何処まで続いているのかと言うのも問題だ。

 まだまだ続くようなら、それだけ蛙型モンスターは巨大化する可能性が高い。となると、二メートルや三メートルクラスの蛙が出現するなんて事も……。


「出来ればその前に、トンネルを脱出したいな」

「ん!」


 そうだね! と双葉が返答をしたが……その、蛙の鉱石を大切そうに抱えながら言ってもなぁ。

 まぁ、一メートルクラスの蛙型モンスターの穴から出てきた鉱石は、握り拳ぐらいのサイズだ。元々が親指の爪ぐらいのサイズだったのだから、相当大きくなっている。

 そして、含まれている魔力もそのサイズに見合っただけはあり、その魔力が心地よいのか、双葉はそれはもう嬉しそうに抱えている状態だ。


 そんな双葉を、バックパックの双葉スペースに戻し、休憩を終えて攻略を再開する。


 とは言え、居るモンスターは現状だと蛙のみだ。それに、枝分かれした道が有るが……それらは全てが、蛙のお宿に通じるトンネル。

 元々はサイズ的に、人間が通れる道じゃなかったが、今は一メートルサイズの蛙が使うトンネルだ。進もうと思えば十分進めるサイズのトンネルだろう。


「まぁ、進んだとしても蛙が待ち構えてるだけなんだろうけど」


 隠し部屋とかが有る可能性は有るだろう。だけど、こんな狭い通路よりも、更に狭い蛙用の通路で戦闘なんてしたくない。

 なので、そちらの道は全てスルーだ。


 隠し要素を全て切り捨てる。その判断をして進んで行くと……何という事でしょう。

 休憩したポイントから数十メートルの場所に、ボス部屋と思われる場所への扉が出現した。


「……後少しで着いてたか。 休憩するタイミング失敗したなぁ」

「ん」


 何時も俺が双葉にやるように、その小さい手で頭を撫でてくる。

 双葉に慰められると言う、なんとも言い難い状況だが……まぁ、嘆いていても仕方ないので、ボス攻略の準備をして行く。


「此処まで蛙しか居なかったからな。恐らく此処のボスも巨大な蛙か……魔法を使ってくる蛙だろうな」


 チラっと扉を少しだけ開けて、中の様子を見てみるが……思った以上に暗い。

 懐中電灯で中を照らしてみるものの、結構な広さがあるらしく、全てをチェックするには無理があるようだ。


「それに……ボスの姿は確認出来なかったか」


 突入してから解るタイプなのか、それともただ奥の方に潜んでいるのか……どちらにしても、姿が見えない以上は、対策を考えようにも難しい話だ。


 となると、先手を取られる可能性を考えて、盾は必須だろうな。後、遠距離に居た時は魔法と銃があるから良いとして、問題は双葉か。


「双葉は此処で待ってるか?」

「んー!」


 やる気満々に、「いくのー!」と手を上げながら訴えてくる。


「まぁ、そうなるか……それじゃ、絶対離れるなよ?」

「ん!」


 しゅるしゅると蔦を使い、双葉が入るための鞄を再び作り上げる。

 それを、俺が背負う状態。まるでイオと同じ扱いを受けているな。まぁ、こういったボス戦とかだと、バックパックは下ろして戦うから、双葉のスペースが無い状態だから仕方ないけど……これは、防具の改良を頼まないといけないか。


 まぁ、バックパックと同じ場所に双葉を待機させても良いのだけど、荷物の護衛になるだけで、双葉は戦いに参加できる訳じゃない。そうなると、双葉の希望通りでは無いという事で……苦肉の策だが、双葉製の鞄を背負う選択肢になる。

 とは言え、双葉の蔦も相当に強い。斬ろうと思っても中々斬れないし、衝撃にも強い作りだ。防御力の面でも悪い訳じゃなから、後は俺の立ち回り次第と言った所だろう。


 さて、戦闘前の準備と最終確認は終った。後は突入して……如何に先手を取れるか、もしくは相手の初手を防げるかだな。




――村にて――


「双葉ちゃん可愛かった! ゆいも欲しい!」

「いや、可愛いのは理解できるけど……モンスターだよ?」

「モンスターさんでも問題ないよ! あんなに仲良くできるんだもん!」


 結弥と双葉がダンジョンへと向かった後、妹達……いや、ゆいは自分も可愛いモンスターが欲しいと言い出した。

 そして、姉であるゆりは、それが如何に大変かを妹であるゆいに説くのだが……イオに続き双葉と言う、可愛いモンスターがニ匹も居ると言う状況だ。駄目や無理と言われても、何で? となるのは仕方ないだろう。


「あれは兄さんの特殊な運だから成功してるんだよ。私達がやろうとしても、怪我をするだけだよ」

「むー……ゆいも可愛いモンスターさんが欲しいよ?」


 チートな村人たちに囲まれ影に隠れがちだが、兄である結弥は村人並のチート能力こそ持っていなかったのだが、奇妙な運の持ち主ではあった。

 とは言え、其れがとんでもないと言うレベルでは無い。他の人よりも、くじ運が良かったりする程度。

 例を挙げるなら、何かのイベントの時など一等は無理だが、毎回二等から三等は必ず引いてくると言うレベル。


 だがそれも、ダンジョンがこの世界に出てくる前までの話。

 結弥はダンジョンに潜り、レベルを上げたとでも判断した方が良いのだろう。その幸運が舞い込む能力が上がっていた。


 それ自体、ソロでダンジョンに潜っても、何故か致命的なミスをしなかった事から始まり、世界の崩壊後になると、更に運が良いとしか良いようがない状況が見られるようになった。

 イオとの遭遇。オーガに対して殿をした時に豆柴による助力。魔本や鉱石の入手から、今また一緒にいる双葉についてもだ。


「兄さんは、村の人ほどチートな身体能力とかなかったのにね」

「むー……でも、羨ましいんだよ! 可愛いモンスターさん!」


 そのチートな身体能力や技術なども、ダンジョンに潜り出した後、如何いう訳か開花し出している。

 自衛隊や警察の人達みたいに、厳しい訓練をして来た訳でもないのに、何故か今もソロでダンジョンにもぐり、既に二十一層をアタックしている。


「まぁ、兄さんの不思議って事で。それに、子狼なら村で育ててる最中でしょ? 許可が下りたら見に行けば良いじゃない」

「あ! 狼さんも居たね! うーん、狼さんも見たいけど、自分用のモンスターさんは欲しいよ?」

「……そこはあれだね。モンスターと仲良くなる方法が解ったら、教えてもらって初めてチャレンジじゃないかな?」

「うー……先は長いなぁ」


 このような会話が、妹達で行われていたが……実は妹達に限らず、村の中で双葉ブームが起こっており、どうやったらモンスターをテイム出来るのか! と、研究所に聴きに行く人が多数居たようだ。

 苦肉の策として、イオや双葉の人形を出したりと、視点をずらしに掛かってはいるが、可愛く動くモンスターと言うのは、色々な意味で衝撃が大きいらしい。


 そんな訳で、協会や研究所の上層部は、子狼の育成やモンスターのテイムについて、力を入れるのだが……それが芽吹くのはまだ先の話。


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