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百六十二話

少し遅れましたorz

 宝箱から出てきた中身をしっかりと調べていく。

 とは言っても、本以外の品は研究所にて調査して貰わないといけない。俺が理解できる事といえば、種と宝石に魔力が含まれている事だけだ。

 そもそも、アクセサリーやポーションはそういった代物だから除外するとして、種と宝石にも魔力が含まれているという情報は大きい。

 あの場所だと魔力を調べようにも、感覚が狂わされていた為に、宝石と種に魔力が含まれているか解らなかったが。

 今の環境下であれば、問題なく調べる事が出来る。という事で、持ち物チェックのついでに調べてみると、魔力を含んでいたと言う事が解った訳だ。


「それに、報告する事や色々情報を整理する事で頭がいっぱいだったからな。本当だったらあの場所を離れて直ぐやるべきだったんだけど……忘れてたわ」


 痛恨のミスと言った所だろう。

 もし、報告をする前にそれを察知していたのであれば、あの場で魔力を含んだ宝石と話を膨らませる事が出来た。

 そうなれば、笹田さんの返答も随分と変わっていただろう。

 とは言え、今から話に行っても仕方ないし、どうせ研究所で会話するのだから、後で報告書を回すとしておこう。


 次に魔本についてだ。

 これに関しては正直……誰に渡すか悩む話になる。何せ覚えてる初級魔法を中級まで開放できる本で、俺自身は既に覚えているから必要じゃない。


「研究材料にして貰っても良いけど、中級魔法って一気に戦力があがるからなぁ」


 これも丸投げ案件だろうか。……あえて残しておくのも手かもしれないけど、その場合は誰にの部分は爺様や妹か美咲さん辺りに渡せば良いって話だけど、何時が難しい話になる。

 何せ一人だけに渡すわけには行かないからな。となると……複数用意する必要が出てくる訳だ。

 さて、その場合は運よくまたあのようなフィールドと遭遇できるのか? とか、ランダムに出現する宝箱を見つけられるのか? と言う話になる。

 初級魔法の本と違い、遭遇率がかなり低いだろうからこそ……とっておきたい。


「よし、これは当分塩漬けにしておこう。何処かで必要になったら出せば良いしな!」


 うん、棚上げだ棚上げ! 悩んでも答えなんて出ないからな。

 それに、現状だと一番魔法関連を覚えておいて欲しいのは、爺様か美咲さんだろう。

 爺様は村と言うか家で一番強いからな。守りと言う点を見れば他の選択肢は無い。

 妹達は……まぁ、その内で良いと思う。今は魔法を覚えるよりも、逃げる為の基礎能力や判断力が先だし、初級魔法すら未だ手にして居ない。

 美咲さんは……なんだかんだと言っても、色々と教えたりした相手だからな。彼女も当初の目的を達成させる為にダンジョンに潜り続けている。最近初級魔法をしっかりと使えるようになったみたいだし、次のステップにと言うのも有りだろう。


 だからこそ、この中級の魔本は塩漬けだ。

 むしろ爺様以外に渡すならば、試練だ! とでも言って、テストをして、そのテストをクリアした人に報酬として渡しても良いかもしれないな。


「っと、宝箱の中身から出た物のチェックはこれぐらいかな」


 あのフィールドから出た宝箱の中身に関してはだが。まぁ、他の物と言えば、二十層のボーナスである首輪やら十九層からでたランタンぐらいだ。

 イオ便で研究所に送っても良かったけど、何と無く送るのを忘れてしまっていた。

 まぁ、ランタンに限っては出た瞬間に落胆したし、首輪に関してはイオに着けれるかな? と言う考えの方が大きかった。

 兎に角これらの品も、一度はチェックをして貰う必要はある。……一体どれだけ時間が掛かるのやら。


 そんな感じで、ドロップ品のチェックをしながら、村へと戻る準備をして行く。

 さてさて、それじゃイオの所へと行くとしますか。




 荷物を担ぎイオの元へと行くと、イオは植物少女の気配に気がついたのか、蔦の鞄を興味津々に見つめ出した。


「お? イオ解るか。新しいお友達だぞー」

「みゃん?」


 植物少女が入った鞄を、くんくんと嗅いだりしながら「何が居るのー?」と、調べようとしているが……。


「す……すやぁすやぁ」


 どうやら植物少女の方は、イオが格上だと理解しているのか、必死に寝たフリをしている。

 しかし「ん」としか発音しなかったのに、それ以外の発声が「すやぁ」とは……。


「大丈夫だぞ? イオは優しい猫だからな。君の事も守ってくれるぞ」

「ミャ!」

「……す……ん?」


 面通しをしないとあれなので、植物少女に大丈夫だと声をかけ、鞄の中から手に乗せて出してやる。

 そうすると、イオもまた「そうだよ!」と言わんばかりに、俺の発言を肯定する様に鳴いたので、そこで植物少女は寝たフリをやめて、イオと何らかの会話をしだした。


「ん?」

「みゃん」

「んー……ん!」

「みゃみゃ!!」


 ……一体何を話しているんだ。意思疎通が取れるとは言え、会話の内容までは理解できん。

 大体、その疎通の仕方も此方が話しかけて、その内容を肯定するか否定するかなどの簡単なやり取りだ。

 とは言え……こうしてモンスター同士? なら、なんらかの会話が可能の様だな。今の状況をみれば、間違いなく会話が成立しているように見える。

 こうなると、モンスター達の会話を通訳できる何かが欲しくなるけど……難しいだろうな。


 そんな風にイオ達のやり取りを見ながら考えてみると、かなり打ち解けたのか、いつの間にかに植物少女はイオの背に乗り、にゃんこライダー化していた。


「……写真に収めたい絵だな。スマホどこだったっけ」


 なんとも可愛い構図だったので、ついついスマホで写真を撮った。これは村に戻ったら妹達に見せびらかすとしよう。


「さて、それじゃイオ追いかけっこをって……どうした?」


 そろそろ出発だと思い、イオに声を掛けると植物少女が俺をじっと見ながら「私不満です!」と言う感じで、頬を膨らませている。

 しかし、今までのやり取りでなにか機嫌を損ねる事を何かしたか?


「うーん……何か有ったか? 意思の疎通は軽く出来るとは言え、言葉が理解できないのはこういう時辛いな」


 とりあえず、此方が質問してから、其れに対して返事をして貰っていくしかないのだが……。

 蔦の鞄に戻せと言う事かと聞けば、そうじゃないと返ってくる。

 お腹がすいたのかと問えば、それも違うらしい。どうも解らないので、とりあえず単純な質問から少しずつ絞るとするか。


「とりあえず、何か欲しいとかそう言う事か?」

「ん!」


 ふむ、これは肯定か。欲しい物がある……だけどそれは、食べ物でも水でもない。それなら、何があるのだろうか……植物少女は多分モンスターだ。となれば、欲しい物といえば人と違う何かと考えるとして……。


「魔力が欲しいとかか?」

「……ん」


 否定だけど、少し肯定? 微妙に曖昧な反応だ。となると、直接的な何かじゃなくて、間接的な物だろうか? 魔法を撃ち込むとか? いやいや、それは無いだろう。

 思考しながら植物少女を見ていると、イオが「ニャン!」と鳴き、植物少女は追従するように「ん! ん!」と、イオと植物少女自身を指差しながら、何かを訴えてくる。


「ん? イオが関係している?」

「みゃん!」


 ふむ、この反応をみるからに、イオが関係していると言うよりは、イオは持ってるけど植物少女は持ってないって事か。

 しかし……イオが持ってるもの? こいつは物なんて何一つ持ってないぞ。っと、そもそも物じゃなくて魔力に関係する何かだったな。

 だが、魔法という点でみれば……イオは魔法を使う事が無いが、植物少女は蔦を操る魔法を使っていた。であれば、魔法が使いたい! 的な物じゃない。


「ニャー!!」

「どうしたイオ?」

「ミャ!」


 イオが鳴くので聞いてみると、「それだ!」と言う感じで応えてくる。それだってどれだよ……俺はイオに聞いただけだぞ? 「どうしたイオ?」って……ん? 魔力的なモノ? イオが持っていて植物少女に無いもの? で、この反応……。


「もしかして〝イオ〟そう言うことか?」

「ん!」


 今度は植物少女が「それ!」と反応する。

 あぁ……そういえばそうだ、イオには〝イオ〟と呼んで、植物少女には〝君〟だの〝この子〟だのと、名前をつけていなかった。


「名前が欲しかったのか」

「んー!」


 「欲しい!」と言う感じで、両手をブンブンと振り回しながら肯定。……色々と有ったから忘れてたな。

 しかし名付けか。確かに、個を確定させるものだから魔力的にも意味がある。魔法名などがいい例だろう。

 あれは、魔法名を言えば色々とスキップして、発動時間を短縮させる事が出来るからな。

 ただ、モンスターという事で種族名という訳にも行かないだろう。それこそ、この娘の種族はまだ良くわかってないが、ドリアートとかマンドレイクとかアルラウネと言う感じだろうけど、それを名前にする訳にもいかない。


「さてさて、名前……名前……」


 名前を連呼すると、植物少女がキラキラとした視線を送り、イオもまた楽しげに尻尾を振りながら待っている。

 イオの場合は……たしか、出会った頃はイリオモテヤマネコに似ていたから、イリオモテのイとオを取ってイオにしたんだよな。

 となると、ドリ? アル? いや、なんか女の子っぽい感じが無いな。


 じっと植物少女を見ながら視覚的情報をベースにしようと試みてみる。緑色の髪。頭の葉っぱ……緑……葉……そういえば、最初この娘が地面から出てきた時、ぴょこっと可愛らしく二枚葉が出現したんだっけ。


「それなら双葉か?」


 和名になるけど、悪くは無い……よな? 植物に関連してるし。

 ちらりと、イオと植物少女を見てみる。


「ん!」

「ミャミャン!」


 問題は無さそうだな! 良かった……正直名前をつけるの苦手何だよ。


「よし、それじゃこれから〝双葉〟だな」


 そう言うと、元気良く両手を挙げながら、頭の葉っぱをぴょこぴょこさせている。なるほど、名前の理由を理解しているみたいだな。

 ま、気に入ってもらったみたいだし良しとしよう。


 そんな感じで、双葉と言う名前になった植物少女は、イオに蔦で鞍を作りしっかりと体を固定してから、イオと共に爆走を開始した。


「って、待て! 先に突っ走るな!!」


 名前も決まった事で、追いかけっこが始まったらしい。……いやいや、イオに乗るとかずるいだろう! と言いたいが、双葉は小さいので俺が持つ鞄か、イオに乗るしかないから仕方ない。

 ただ、なぜゴーサインを出していないのに、イオ達はスタートをするのか! イオの方が身体能力が高いのに!


 はぁ……イオと双葉が楽しそうだし、まぁ良いか。

 とりあえず、イオを追いかけながら村へと猛ダッシュだな。

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