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百五十三話

 ミスリルっぽい銀の鉱石を見せた時のリアクションを楽しみに、協会内にある会議室へと案内され中に入ってみると、既に頭を抱えそうな感じの入谷さんと、かなりテンションが上がっているであろう様子の守口さんに、お客さんと思われる人が一人居た。


「えっと……お客さんでしょうか? 入っても良かったので?」

「おう! 問題無いぞ! と言うか、彼は君の事も待っていたからな。丁度良いタイミングだったという訳だ!」

「それなら良いのですけど」


 なるほど、どうやら俺に用事があるのか。しかし、この会議室で入谷さんと守口さんも必要な用事となると……なんだろう? 思いつかないな。

 とりあえず許可も得た訳だし、着席をして話を進めて行かないとだけど、まずはこの人が誰なのかを確認って……。


「あー、確か婆様の弟子で名前が確か……えっと……」

「はい、その弟子の笹田です。白河君お久しぶりですね」


 そうそう、婆様の所に押しかけてきた弟子の一人、笹田さんだ。

 この人は有名な大学で研究をしていたらしいけど、ダンジョンが出来た後になにやら、その研究室で周囲と口論になり、「こんな馬鹿げた研究などしていられるか! 師匠を探す旅に出る為に辞めさせてもらう!」と研究室を飛び出したらしい。

 一体どこの大学なのか聞いても、本人は「あんな研究室がある大学なんて、名前を言うだけでも穢れるから、聞かないほうが良い」と、物凄く嫌そうな顔で言う物だから、それ以来聞くのは皆が避けている。

 

 そんな笹田さんだが婆様の所に来てからは、それはもう輝きを取り戻したかのように、モンスターの素材や魔石を使った魔道具の開発を手掛けており、マナブレードの製作に関わった一人でもある。

 どうやら彼の研究におけるテーマは、〝浪漫と実用性の両立〟らしい。うん、まさにマナブレードはその集大成の一つだろう。


「で、笹田さんは何故ダンジョン前の拠点まで? 移動に時間をかけるぐらいなら研究だ! ってタイプでしょう?」

「そうなんだけど、今回は特別でね。君に検証を頼みたい武器が出来たから持って来たのさ」


 なるほど、新武器のテストをして欲しいって事か。確かに俺は研究所が作った試作品のテスターも兼ねてるからな。

 そのテストが理由で、毎日ダンジョンに潜れると言う口実を貰っている。現状だと、マナブレード位しか無かったけど、此処で新しい武器が来たわけか。


「それで、どんな武器ですか?」

「ククク……それはね……これだよ。開けて見てくれ」


 そう言いながら笹田さんは、机の上にゴトリと試作品の入った箱を置いた。

 んー……箱が小さい? って事は中身はナイフとかそんな感じのモノだろうか。そして、それを出したら入谷さんのお疲れモードの顔と、守口さんの子供のような笑みが増してるんだが……これは、中身を知ってるって事か。

 さて……何が飛び出てくるか。とりあえず開けてみてって!?


「これ! 銃じゃないですか!! 銃ってモンスターに通用しませんよね。どうしてこれが試作品なんですか!?」

「フフフ。いやね、前々から銃に関して、モンスターに通用すればどれだけ良いかと考えていてね。そして、今回白河君のお陰で実用できるレベルの銃を作り出せたのさ」

「えっと……どういう事ですか?」

「では、説明しようか。これは、〝黒い鉄〟製の対モンスター用拳銃。基礎設計の元とした銃は五十口径のデザートイーグルで装弾数は七発。だが、当然モンスターを相手にするという事で色々と違いはある。その中には、この銃はライフリングが無い事や、〝黒い鉄〟を使ってることにより、重量は相当上がっている事などがある。まぁ、従来の人であれば扱えない代物だが、探索者なら問題なく使える仕上りにしてある」


 うん、銃本体は色々と突っ込みを入れたい部分はあるけど、それは置いておくとしよう。次の弾丸の説明をしっかりと聞かないとな。


「次に弾の説明だが。これは二種類あり一つは〝モンスター素材〟を使用した弾で、従来の鉛にモンスター素材を混ぜて作った弾で、それなりの威力は出せると踏んでいる。次に〝黒い鉄〟と〝モンスター素材〟の

弾だ。これは鉛よりも重く、威力はかなり上がっている」

「……それだけじゃないですよね?」

「当然だ。何故銃にライフリングをしていないか。これは弾に少々ギミックを仕込んである。弾に小型の魔石を仕込み……まぁ、説明が面倒だから省くが、色々と弄って〝弾が自分で自転する〟特性を持たせた」


 銃弾は基本、ライフリングによって横回転をする。その回転で銃弾の飛距離やら安定性を増す訳だけど、銃弾が自分で回転するか……回転する力が弾丸自身にあるから、モンスターに当たった後も回転し続けるから、貫通力が増したりするのだろうか。


「まぁ、これまでの問題は……このモンスター素材の銃弾は、何故か従来の火薬じゃ飛ばなかった。理由は不明だがな。そこで、色々と考え爆発する素材は何か? と思った時に行き着いたのが魔石だ。そして、我々は魔石を粉にして武器に含ませている……ならば、その粉を爆薬として使えないか? と試したわけだ。結果……銃が壊れた」


 ……銃が壊れたって。魔粉の爆発力が予想以上に高かったって事か。しかしそれなら、魔粉の量を減らせば良い気もするけど、だめだったって事かな。


「もし、従来の火薬で成功していたとしてもだ……火薬の製造を考えれば、今の施設では到底量を作ることは出来ないから、将来的には行き詰っていただろう。そう言う意味では、魔粉に目をつけたのは良かったんだが……これの調整は相当大変でね。魔粉の量が多すぎれば銃が破壊され、減らせば弾丸は飛ばない。折角此処まで研究が進んでいたのに、数日前まで其処でストップしていたんだが……其処へ君が持ち込んだ〝黒い鉄〟だ」


 なるほど。あの鉱石なら魔力と強度の両方兼ね備えている。銃が壊れる理由が魔力によるものなら、間違いなく〝黒い鉄〟は最高の素材だろう。しかし、モンスター素材を混ぜた物質だと耐えれなかったのだろうか?


「あぁ、モンスター素材を混ぜた物だけだと、銃身が耐えれなかった。それこそ、数発撃てば崩壊していたな」

「そんな時に〝黒い鉄〟が登場して、完成させる事が出来たと言う訳ですか」

「その通り! 感謝しかないよ。とは言え、まだ試作の段階だし、〝黒い鉄〟自体もまだまだ足らない。正式に量産するには未だ先の話になる訳だが……」

「構わん! 〝黒い鉄〟は何とかするから、どんどん研究を進めるんだ! そして量産を!! 出来れば、サブマシンガンやアサルトライフルもだ!」

「っと、守口さんが終始この調子なんですよ。白河君……採掘に関してはどんな感じですか?」


 なるほど、守口さん達はダンジョンが出来る前だと、訓練は当然〝銃〟を使ってたわけだしな。弓を使うよりも、そちらが通用するなら変更したいに決まってるよな。

 しかし、ここで俺は彼等に対して残酷な現実を突きつけなきゃいけない訳か。採掘の環境は……二日以上二週間以内のサイクルで復活するだろうと。はぁ、気が重いけど話をして行くしかないか。


「えっとですね。〝黒い鉄〟に関してなんですけど……調査の結果が、他のフィールドにある物と違い、環境が戻るのに二日以上二週間以内の時間が掛かると思われます」

「……その、時間の幅が広いのは如何してだい?」

「俺が村に戻ってた期間がありましたから。こちらに戻ってきてから採掘した部分は、復活してませんでしたが、村に戻る前に採掘した分は掘れる状況になってましたから」

「なるほど……検証するにも、時間が空きすぎてると言う事か」

「はい、ですのでこれに関しては、少々時間が掛かるものと考えてもらった方が良いかと。それと同時に毎日採掘が出来ないと言う事ですので、予想されていた量は採掘できないと思われます」

「……これは、研究と開発の見直しが必要になるな。はぁ、師匠に話をするのが辛い」

「えっと……一筆書いておきますね?」


 婆様が、と言うより研究所全体が嘆いて騒ぐだろうからなぁ。採掘予定量の計算が全て狂う訳だからな。

 何せ、毎日復活で計算した時と二日後に復活……下手をしたら二週間後に復活となれば、当然その産出量の差が激しすぎる。かなり良い素材な訳だし、そうそう美味い話は無いって事だろう。


「となると、銃弾に〝黒い鉄〟を使用するのは控えた方が良いでしょうね。切り札的な感じで使うのが良さそうですけど……問題は、この二つの弾が何処まで通用するか」

「せめてオークぐらいは貫通して欲しいけどな……そうだ、白河は銃を扱ったことは?」

「……当然ですけど、実弾を扱ったことは無いですよ。まぁ、猟銃を使ってる所を見た事とかは有りますが」

「ふむ……従来の銃とは違うからアレだが、後で少し扱い方を手解きしておこう」

「それはありがたいのですけど、テスト自体もそちらでやった方が良いのでは?」


 実際、銃を扱ってきた人達だからな。試すなら間違いなく俺より良いと思うんだけど。

 現状だと肩書き的に俺がテスターだからと言う理由で、銃のテストも此方に回ってきている状況だ。


「あー……確かに、今すぐ、我々が、銃を使いたいと言うのはある……だがな、決まりごとを簡単に覆すのも問題がある。それに、銃が我々以外にも使える状況を作り出すほうが良いからな。それのテストでもあるという訳だ」

「村側のメンバーも使えれば……それこそ上手く行けば、あまり戦闘が得意でない人でも自衛手段が手に入りますからね」

「その場合だと、五十口径は威力が高すぎるだろうけどな。まぁ、そう言う訳だ。俺達の事は気にせず、どんどん使って改良点を上げてくれ」


 ……戦闘が出来る俺にそれを頼むのもどうかと思うが、まぁ、銃の扱いは初心者だからそこら辺も加味しているのだろう。

 とりあえず、言われたとおり銃に関しても色々試すとしてだ……問題となる代物を出さないといけない訳だが、ここに研究者の笹田さんが居るんだよなぁ。

 とりあえず、当たり障りない部分から提出して行くか。


「まぁ、ついでなのでダンジョンのメモが此方です。ニ十層は結構面倒な状況だと言うのは……これを見ていただければ、理解できると思います……それで重要な事なんですが、まず〝黒い鉄〟の採掘だけなら十九層の方が数は取れます」

「銃や盾の事を考えれば、二十より十九の方が良いのか? しかし、その言い方だとニ十層に何か有ったな?」

「えぇ……ニ十層にはこれがありました」


 拳大のミスリルっぽい銀の鉱石を取り出して机の上に置く。まぁ、見た目はただの銀色の鉱石だ。それだけならフーンと言った態度で終るだろう。

 だが、此処に居るメンバーは違う。入谷さんは協会に所属していたし、守口さんは元自衛隊。そして、笹田さんは浪漫を求める研究者だ。

 そんな三人がこの銀の鉱石を見れば、当然行き着く先は……。


「「「ミスリルか!!」」」


 まぁ、こういう反応になるよな。


「えっと、ミスリルかどうかは私には解りません。ただ、その銀の鉱石は〝黒い鉄〟よりも、魔力の含有量が多い特殊な鉱石なのは間違いないです」

「……三十層付近を潜ってる自衛隊のメンバーが、宝箱からこいつを出した事が有る。その鉱石は精鋭が使う剣にした訳だが、その切れ味・耐久度・魔法を使った時の威力の向上と、かなり凄まじい性能を秘めた物だと、報告が上がっていたのをデータベースで見た事が有るが……その時の写真にあった鉱石とこれはそっくりだ」

「協会にもそのデータは来てましたね。見つけ次第、国で買い上げるので直ぐ確保するようにと、その時に鉱石の名前を解り易く〝ミスリル〟とする、と書かれてましたね」

「ククク……これはこれは良いタイミングで此処に来たと言えるな。白河君、この鉱石は俺に扱わせてもらえないか? これがあれば、マナブレードも銃も思いのままに強化できる!」


 なにやら一人だけ暴走している気もするけど。なるほど、国としてもこの鉱石は発見していたのか。ただ、採掘じゃなく宝箱産だったって事か。

 しかも精鋭と言われた人達がその武器を使っていた。うん、その状況を見てみたかった気もする。

 とりあえず、この鉱石に関しては……笹田さんが確保したいと言っているが、入谷さんと守口さんに任せるとしよう。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


マナブレードに続き、出したかった武器をやっと出せました。

と言っても、銃は資源くい虫。まだまだ量産して配備するには問題の物です。ですが、その内……アンチマテリアルライフルのモンスター版みたいなのも出したいものです……浪漫ですよねぇ、アンマテ。

因みに、なぜデザートイーグルなのかというと……私が最初に買ったエアガンがデザートイーグルだったから(まて

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