表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/889

百五十一話

 崩落しそうな状況で、ニ十層を進んで行く。とは言っても、先ずは環境の調査をしたので、ある程度は問題が無い事が発覚してはいる。


 実際にやった事は単純で、遠くの位置に石を投げつけて見たり、十フィート棒を使い思いっきり天井を突いてみたり、殴りつけてみたりして、崩落が起きないかどうかを試した。

 その結果、天井や壁から突出ている石等が、グラリと揺れることも無かったので、多少の振動程度なら問題がないと判断できた訳だ。


 そして、実際に戦闘をしてみようと思った訳だが、どうやらゴーレムが存在している位置が遠く、近くに居るのは火ネズミと風オオコウモリだったので、そいつ等で色々と試す事にした。


「したんだけど……これは無いだろ」


 戦闘中に起きた事……火ネズミは相変わらずチョロチョロとする感じで、こちらは問題が無かった。

 問題と言うべきか、何とも言えなくなる行動を取ったのは、風オオコウモリだ。


 奴等の体はオオコウモリと言うぐらいで巨体だ。その巨体が……横幅が狭い坑道で自由自在に飛べるかと言うと……無理と断言できる。

 コウモリと言えば、闇夜の空を縦横無尽に飛ぶ……まぁ、それが正しい有り方だろうが。この坑道ではUターンなど出来るはずも無く……直進と言う突撃をした後、向きを変える為に天井にぶら下がったり、地面に降りたりしてからクルリと回れ右をして、向きを変更している。

 そして、其処からまた直進と言う突撃を仕掛けてくる。実に可愛いと言うべきか、滑稽と言うべきか……まぁ、そんな感じで間違いなく此処への配置は失策だろう! と言いたくなる様だ。

 結果、オオコウモリは俺にとってはただの移動する的。と言うか、もはや鴨や案山子と言っても良いだろう。


 とは言え懸案事項がなかった訳じゃない。

 一応モンスター達が使う魔法が壁や天井に当たり、それにより崩壊などが起こることは無かったのだが、奴等は火ネズミに風オオコウモリだ。

 起こりえる現象として、風に巻き上げられた埃などが火魔法で大爆発を起こす。これを危惧するのは当然だろう。


 一応だが、前に魔法のテストをした事があった。

 その時に、魔法で粉塵爆発が起こせるかどうか? と言う実験をした。

 結果だけ言うならば、科学型の魔法なら爆発を起こし、物語型の魔法だと爆破が起きる事は無かった。

 

 これにより、疑問点が生じたので物語型の魔法について色々と検証をしたのだが、その結果どうやら、何かの識別でダメージを与える物と、何の効果も無いものとが別れるがある事が発覚。

 粉塵爆破テストの際に、ばら撒かれた小麦粉が引火すらしなかった事を踏まえ、木やら岩などに魔法を打ち込んでみたが、傷すらつかない。

 善意の協力を探索者がしてくれたので、少し傷が出来る程度の魔法を撃ち込んでみるものの、彼にダメージが入る事は無かった。

 結果、どうやら敵対しているかどうかの判断を、何かがしているのでは? と、そんな結論がなされた訳だが、実際の所詳しくは解っていない。


 そう言う実験はしていたのだが、モンスターと俺は敵対していて、しかも風魔法と火魔法を使うモンスターのコラボだ。何かが起きても可笑しくはないだろう。

 そんな警戒をしていたのだが、彼等が大爆発を起こすことは無かったと言う点からみて、科学型の魔法をモンスターが使う事は無いと言うのは理解できた。

 それと同時に、風魔法と火魔法の合体技とかも、こいつ等は使わないようだ。まぁ、杖持ちオーク以上だと使う可能性が出てくるだろうけど。


「まぁ、合体魔法とか其処まで知恵が回るモンスターなら、その巨体で突撃を繰り返す訳が無いよな」


 勿論、オオコウモリの事だ。それこそ、この環境ならば撤退しながら、風魔法を打ち込めば良い訳だからな。

 そんな訳で、戦闘自体は問題なく終わらせる事ができたので、後はゴーレム相手にどうなるかだろう。


 魔法に関しても……敵の魔法より自分が使う魔法に注意するべきと言うのは、坑道フィールドとわかった十六層からなんら変更は無いしな。

 何せ、俺なら大爆発をさせる事も、土魔法で崩落を招く事もできるはずだ。……まぁ、面倒なゴーレム相手に崩落で生き埋めをして、足止めを狙うというのも出来そうではあるが。


「やめたほうが良いだろうな。何せただの石で埋める訳じゃないからな」


 ダンジョンを形成している石や土だからな。当然だが魔力を含んでいる素材という訳だ。それをゴーレムに降り注いで、ゴーレムが強化されました! 何て事になれば本末転倒だろう。

 

 後は、ゴーレムの石礫乱射も気をつけないといけないだろうな。火ネズミや風オオコウモリの魔法は、確かに壁や天井に当たっても、崩壊する所か揺るぎもしなかった。

 だが、ゴーレムのそれは、同じ場所に連続で攻撃を入れる事が出来る。となれば、ネズミやオオコウモリと同じと判断するのは危険だろう。


「とは言え、良い方法と言うのが中々無いからな……やっぱり、ゴーレムと戦う時は壁や天井の強化が必要か」


 土魔法で強化をしておけば、ゴーレムとの戦闘中ぐらいなら崩壊する事無く持ちこたえてくれるはずだ。

 まぁ、魔力が勿体無い気もするけど、保険と考えれば安いものだろう。

 兎に角、何がおきるか解らないから、徹底的に安全を確保して行く。これが大切だな。




 戦闘に関してある程度方針が決まったが、当然採掘に関しても順調に進めていく。

 ツルハシで壁を崩して行く訳だが、場所によっては大丈夫か? と心配になる場所も有る。

 そして、そんな場所ほど鉱石を手に入れれる量が多いのは、言うまでも無いだろう。


 そんな中、一際違う鉱石を見つける事が出来た。

 少量ではあるのだが、魔力含有量が異常な上に微妙に銀色をしている鉱石だ。


「これまた、研究者達が狂気に踊りそうな物が出たもんだ」


 魔力量が多く銀色の鉱石なんて言えば……ミスリルだろう。

 とは言え、鉱石の成分分析をしていないから何とも言えないが、婆様達に分析して貰い、銀もしくは銀に近いと解れば、間違いなくこいつの名称はミスリルになるはずだ。

 まぁ、異世界だとなんていう名前なのか解らないけどな。


「とは言え、ゴブリンやオークなんて奴が居るんだ……ミスリルで間違い無いと思うけどな」


 これで、魔力を含んだ鉄に魔力を含んだ銀っぽい物が採掘出来た訳だが……こうなると、期待したくなるのは、オリハルコンとかヒヒイロカネ等と言った物もあるんじゃないか? と言う事だろうな。

 むしろ、研究者達の方がその期待で目の色を輝かせそうだ。


 ただ、問題があるとすれば……このミスリル? の採掘量が、現状だと片手で持てる量しかないと言う事だ。

 このニ十層がどれぐらいの広さで、どれだけの量を採掘出来るか、まだ判明していないが……早々大量に入手可能になる訳は無いだろう。

 そして、黒い鉄に関しても復活のサイクルがまだ判明していない、ただ時間が掛かると言う事だけが解ってる状態だ。


「……もしかしたらだが、黒い鉄よりも、この銀色の鉱石の方が復活サイクルは長いかもしれないからな」


 そうなると、ますます入手出来る量は少なくなる。出来ればサイクルは同じであって欲しいと願うしかない。

 現状、黒い鉄ですらその採掘量が少なく、研究所からお願いが来てるからな……それに、坑道フィールドだけでみるから、此処はニ十層。

 今までのパターンで行くなら、二十一層からはまた環境が変わる可能性が高く、採掘が出来るマップがまた来るとは限らない。

 まぁ、中々美味しい状況になるとは限らないって事だな。むしろ、ニ十層でミスリルっぽい物が手に入っただけ、大きいと言う話じゃないだろうか。


 現状だと採掘に関しては、十九層ほど鉱石を掘ることはできないが、ミスリルっぽい銀色の鉱石が入手できる可能性がある。そんな感じの採掘結果がニ十層と言う状況だ。




 マッピングをしながら、モンスターを倒し採掘をして行くと、とうとうゴーレムが出る場所にたどり着いた。

 とは言え、ボスという訳じゃない。普通にフィールドに存在するやつだ。


「まぁ、この狭い横幅の通路で、乱射をするゴーレムだからな」


 面倒な状況なのは間違いないだろう。

 そして、ゴーレムの方も……まぁ、一本道なので俺の存在に気がつき、戦闘態勢を取ってくる。


「ま、状況的に一体しかいないってのは助かるけどな」


 むしろ、この狭さだとゴーレムが二体並ぶのは無理だろう。縦に並んだところで、前に居るゴーレムが邪魔に為るだけだから、居ても居なくても同じだしな。


「さて、それじゃ戦闘開始しますか!」


 まずは、土魔法を使い壁と天井の強化をしておく。これでゴーレムの流れ弾による崩落を防げるはずだ。

 次に前面に盾を構えながら、風魔法を盾に付与しておく。


「これで、石礫のダメージも軽減できるはず」


 準備が完了すると同時に、相手も攻撃準備が完了したのか石礫の乱射が始まった。

 体を低くして、盾に隠れるようにしながら前へと進んで行くのだが……。


「ちっ……やっぱりカイトシールドだと隙間があるから、全部を防ぐ事は難しいか」


 盾を避けて石礫が跳ねてくる。まぁ、風魔法で多少カバーはしているが、やはり全てを防ぐのは難しい。


「タワーシールドだと防げるけど……あれは邪魔でしかないからなぁ」


 自衛隊の人や警察の人達で前衛を努めてる人達は、タワーシールドを装備してるんだけどな。それは、後ろに居る人達が、安全に高火力をぶち込む為だ。


「俺には合わないけど……このゴーレムだったら相性良さそうだよな!」


 仕方が無いので、風魔法の散弾を打ち込みながら迎撃をして行く。

 できるなら、周囲の状況を考えて散弾は撃ちたくなかったのだが……盾を使っての接近が出来ないなら仕方ないだろう。


「まぁ、天井も壁も強化したんだ……俺の魔法で崩れるなんて事は無いと思いたい!」


 散弾の弾がぶつかって崩壊……まぁ、可能性が有るからやりたくは無かったんだよな。

 とは言え、このままだと長期戦になりかねないので、上手く散弾する方向を前に絞って迎撃をして行く。

 此処ら辺が魔法の良い所だろうな。広範囲から狭い範囲まで自由に出来るのは、本当に助かる話だ。


「ただ、これはこれで問題がない訳じゃないけどな! よっと! 風弾・散弾型!!」


 散弾を集中させる。そうすると当然威力が上がる訳で……下手をすれば、ゴーレムのコアを一発で撃ち砕いてしまうだろう。

 そうなると、魔石の回収が出来なくなる。かといって、コアを避けてなんて技術は無い。

 まず、ゴーレムのコアが何処にあるか解らないし、足や手や頭を狙って少しずつ削ろうと思っても、外れたり威力が強すぎて後方まで撃ってしまえば……それこそ、壁や天井の崩落が起きるかも知れない。


「だから、飛んでくる弾と胴体を狙うしかないよな!」


 そんな感じでゴーレムの体を削って行くと、ゴーレムの動きが停止する。


「……コアを傷つけたか? それとも……吹っ飛ばしたか」


 ゴーレムに近寄り調べてみる。


「……あちゃー。コアを半分抉ってるなこれは」


 綺麗にという訳ではないが、コアの半分程を散弾によって削り取ってしまっている。

 中にあるだろう魔石をみても、弓状に抉れた魔石。まぁ、目視で大体半分ほど残っていると確認はできるのだが……。


「仕方ないとはいえ……残念だよなぁ」


 本当……ゴーレム相手と言うのはいろんな意味で面倒だ。

 とは言え、ニ十層はいい資源が手に入りそうなフィールドである事は間違いないだろう。

 さて、後は……ニ十層のボスがどんな感じなのか、それが問題と言った所だろうな。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

宜しければ下記のリンクもお目を通して頂ければ幸いです

新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ