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百四十九話

 ダンジョンを出て、その足で協会へと移動。十九層でゴーレムなんて面倒なモンスターが出たのだから、報告は早い方が良い。何せ、守口さんの方針で十五層攻略中のメンバーが、ダンジョン攻略を中心とした行動をする事になったからな。

 そして、その理由である〝黒い鉄〟は、十九層だとかなり手に入る。となれば、採掘をベースとする場所は十九層になる可能性が高い。

 まぁ、ニ十層を詳しく調べてないので、そっちの方が採掘量は多いかもしれないが……ニ十層となれば、ゴーレムの出現量が増えるか、ゴーレムと一緒に何か違うモンスターが出るか、ゴーレム以上に面倒なモンスターが配置されてる可能性が高い。

 そう言う訳で、どちらにせよ最低でも倒すのが面倒なゴーレムが相手になる。だからこそ、この情報は必須で、その情報を元に色々と準備をする必要がある。

 なので、今すぐに報告に行くと言う判断をした訳だ。




 協会へと入り、すぐさま入谷さん達に情報の提供をする。まぁ、当然聞いた内容で彼等は頭を抱えているのだが。


「……はぁ、ゴーレムですか。また、面倒なモンスターが出てきましたね」

「あー……隊に居た時も、ゴーレムを相手にしている奴等からの話は聞いた事があったが、兎に角面倒くさいって愚痴ってたな」

「素材や魔石を無視すれば割と簡単なモンスターではあるんですけどね」


 足が速い訳じゃないからな。高火力の魔法をぶち込むか、打撃系武器で全てを殴り飛ばせば良い。

 しかし、魔石に魔力を送って暴走させ、爆破による攻撃を主体としていた彼等は、良質な魔石の入手が出来るゴーレム相手に、全てを粉砕すれば良い! などと言う攻略が出来るはずも無く……結果、面倒だがちまちまと攻撃をして、魔石を回収していたそうだ。


「それと、ボス部屋のゴーレムは三体出現してその全てが、体を形成している石を飛ばす攻撃をして来たんですよね……それも部屋に入った瞬間から」

「入り口嵌めかよ……昔やってたゲームの最高難易度を初見プレイでやった時を思い出すぜ」

「おや? そんなゲームが有ったんですか?」

「あー……四体ぐらいゴーレムっぽいのが出てきてな、全てが高速のロケットなパンチを飛ばしてきたんだよ。しかも、全方位ガードが出来て飛び掛りながら切りつけて来る、別のモンスターと同時にな」


 そのゲームだと、フィールド? ブロック? 移動をしながら最初の内は戦っていたようだ。確かに、十九層ボス部屋と状況は似ているかもしれない。

 ただ、十九層ボス部屋だとブロック移動による攻撃を喰らわない、そんな状況は無い。それと、接近戦を仕掛けてくる敵も居ない。

 まぁ、どっちにしても入り口に入って直ぐ遠距離攻撃を喰らうのは、初見殺しと言えるから面倒なのは変わらないけどな。


「まぁ、昔の思い出話は良いとしてだ。俺がゴーレムを倒してた奴等に話を聞いてた時に、そんな遠距離攻撃の話題は無かったんだが……何か違うのか?」

「ボス部屋とフィールドの違いぐらいでしょうかね? 白河君他に何かありましたか?」


 他……他といえば……あー! アレがあったか。ふと思い出したので、論より証拠と言う事で、実際の物を出しながら話を進めて行く。


「これなんですけどね。フィールドのゴーレムとボス部屋のゴーレムだと違ったんですよ」

「これは……魔石ですね。フィールド側が無色でボス部屋のが茶色ですか」

「あー、となるとボス部屋のは属性付きだった訳か」


 これもまた、頭の痛い理由だ。ボス部屋から魔石は一個しか入手出来なかった。だというのに、出てきたのは茶色の属性魔石。

 魔石が絶対、研究者達の目の色を変えるものだと解った以上、素材まで同じように、彼等の眼鏡に適う品であって欲しく無いと願うのは当然だと思う。


「……できればこの魔石は、研究所に送りたくないですね」

「今の所、ボスの三体のみだろう? 正直ゴーレムを周回するとか考えたく無いぞ」


 どうやら、入谷さんと守口さんも同じような考えに至ったようだ。三体同時に戦って、その全てから魔石を回収する。現状だと、どう考えても時間が掛かって仕方ない。

 だが、二体を粉砕して、一体からのみ回収する方法だと、掛ける時間は少なくて済むが、魔石は一個しか手に入らない。実に効率が悪すぎる。


 様々な技術の向上には、土の魔石も必要なのは理解できる。むしろ手に入るのであれば、率先して手に入れたい。

 しかし、その入手手段がゴーレム相手となると……。


「探索者側としては、ゴーレム相手に魔石を確保する戦い方はしたくない。ただ、色々な発展や向上を考えると魔石は必要。なら、ここは一番魔石を弄繰り回したい、研究者達にゴーレムの魔石を回収する良い道具を作ってもらうのが良いかと」

「はぁ、ここで道具に頼る……か。ゴーレム相手だと、魔法もオーバーキルになるか、余り意味が無いかのどちらかだしな」

「白河君の検証結果だと、土属性の魔法だとゴーレムが回復してしまうみたいですしね」

「ゴーレムの体を形成していた石も回収してきてるので、それを確りと検証してもらうべきでしょうね。道具以外にも何か良い方法が見つかるかもしれませんし」


 戦う側からしたら、高火力で吹き飛ばせば良いじゃないか。と、そんな判断になりやすいからな。上手く行けばゴーレムのコアを傷つける程度で済むけど、大体のパターンでコアごと粉砕してしまう。しかし、威力を抑えると、コアどころか体を形成している石すら吹き飛ばないから、本当に厄介なんだよ。

 結果、魔石が欲しかったら、飛ばしてくる石を迎撃して粉砕するという、持久戦を仕掛けるしか無い訳だ。


「しかし、坑道の形も面白い感じになってますね。これは採掘というか鉱石を発見しやすそうですね」

「そうですね。魔力で探索しなくても壁に鉱石が顔を見せているので、鉱石を探す為に広範囲を調べる必要は無かったですね。一応モンスター対策ってのもあるので、周囲の探索はある程度は必要ですけど」

「そういえば、新しい鉱石は有ったのか?」

「途中でボス部屋を見つけてしまったのと、バックパックの容量がやばかったので……まだ、探索仕切れてない部分がありますが、現状だと見てないですね」

「……そんなに採取出来たんですか?」

「かなりの量はあるかと。まぁ、ゴーレムの素材もありますから……そうですね。バックパックの三分の二が鉱石、三分の一がゴーレム素材って感じでしょうか?」


 ゴーレム素材がな……割と多いんだよね。普通に石材として使ったとしても優秀だろうけど、ゴーレムの体を形成してた素材だ。ただの石な訳が無い。

 村や街に拠点を守る壁を造る時のコンクリート素材にしたり、道路を整備する時にと建築材料として使った場合……かなりの強度を誇る素材になるんじゃないだろうか。

 風魔法で簡単に粉砕してしまったが、当然防御壁を作る時は、様々な素材を混ぜ合わせながら作るから、そう言った弱点もカバーできるはずだしな。

 そして、その研究をする為には大量の素材がいるだろう。と言う事で、結構な量を回収して来た訳だ。


「それに……俺達で自由に言う事を聞かせれる、そんなゴーレムとか作れたら面白そうじゃありません?」

「それはそれは、研究者さん達が浪漫だと没頭しそうですね」

「浪漫でもあるが、そういった物が作れたら防衛という観点からみても便利だな!」


 拠点の番人としてもだけど、重機としても優秀だろう。

 魔石にコアに体を形成していた石を調べ上げる事で、そういったモノが作れるなら是非とも作り上げてほしい。

 そして、何時かは直接人が乗り込める巨大なロボットも! うん、こっちはただの浪漫だな。

 とは言え、其処までとは言わなくても、輸送手段である車などでエンジン等を使わなくても良いかもしれない。

 魔力を流して、ゴーレムが直接タイヤを回したりすれば良いし、それこそ車にタイヤじゃなくて足でも良いんじゃないか? 現状だと、道路は無いに等しい。整備した所で、またモンスターに破壊される可能性も高い。

 それならば、多脚型の輸送車やキャタピラ式に車の車輪部分を変える必要がある。


「ただなぁ、村から此処まで来る道のデコボコや断裂をみると……」

「おや? 輸送手段について考えてるんですか?」

「あーはい。ゴーレムが作れたらって流れで色々と使い道があるなと思いまして。その中に車についても考えてみたんですよ」

「なる程、そこで道の最悪さに行き着いたわけか」

「戦車みたいなキャタピラでも……あの道は無理だろうなぁと」

「たしかにな。戦車に乗った所であの断裂は落ちるだけだな」


 まぁ、此処ら辺も案だけ出して、後は研究者にお願いするしかないだろうな。輸送手段さえ手に入れば安全とは言えないが、随分とマシな環境で戦闘を出来ない人を輸送出来る。例えば、研究や建築に協会職員などなど、移動しなくてはいけないのに、安全じゃない為に移動させれない人は多い。

 今だと、戦闘が出来る人が護衛に着いているが、万全という訳でも無いし、移動速度が遅い。

 そして、足が遅いと言う事は、それだけ危険度も増すと言う事だ。


「そこで、ゴーレムの利用方法ですか。これは研究者の方々に頑張ってもらわないといけませんね」

「今でも忙しいのにな。まぁ、本人達は楽しそうなんだがな」


 案を出せば間違いなく応えてくれるだろう。実際、盾に関しても素早い対応をしてくれたし。


「まぁ、ゴーレムと鉱石に関しては理解した。兎に角、十五層を攻略中のメンバーには確りと伝えておこう」

「お願いします。一応走り書きをしたメモは置いていきますので」

「村側のメンバーのお尻も叩かないといけませんかね。今の話から考えて、鉱石にゴーレム素材と色々と必要になりそうですし」


 確かに、上手く研究が進めば資材が足らなくなるだろう。特に鉱石の〝黒い鉄〟なんかは用途が有りすぎる。

 どれだけ十九層で回収出来たとは言え、村に街に各拠点をフォローしようと思ったら、焼け石に水程度だろう。


「話が結構飛んだ気もしますが、報告する事は以上ですけど大丈夫ですかね?」

「たしかに! 報告内容よりも、其処から先の話が面白すぎたな。まぁ、全ては研究者達に掛かってる話だったが。とりあえず俺からは特に無いぞ」

「そうですね。村側だと十九層はまだ先の話でしょうし、私の方も無いですね」

「ま、今の話を纏めて研究所へと素材と一緒に送りつけるとするか」

「それじゃ、ゴーレムの素材だけ別で提出しておきますね」

「お願いしますね。そうしてもらえると仕分けが楽ですから」


 それじゃ、協会から出て夕飯を食べたら、もう休むとしようかな。明日は、十九層のマップ埋めとニ十層の攻略と行きたいからな。




 それにしても、多脚ロボットとか本当に出来たら楽しそうだよね。タ●コマとか作れたらと思うとね、戦闘のサポートに良さそうだし!

 ただ、ター●ネー●ーみたいな状況は勘弁と言いたい。作った奴等に敵対されるとか、悲しみしかないからな。

 さてさて、婆様たち研究者は一体どういう物を作り上げてくるのか……今から結構楽しみだ。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


因みに、入谷さんといい守口さんといい、こう言った会話を楽しんでます。

書類仕事に追われる日々、出来れば自分もモンスターと戦いたいと願う守口さん。村に戻って、品川さんといちゃいちゃしたい入谷さん。

お互い結構ストレスを溜めているので、こう言った新しい事で頭を抱えはするが、そこから生まれる楽しげな未来の話で、活力を回復している……そんな感じです。


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