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十三話

 長い長いお説教が終わった後に、今後について話をしたのは数日前。話の内容は、彼女達は少し三人で慣らすと言う事で、ボス部屋に入る時にまた声をかけて貰う事になっている。仕事があるためか、土日がメインになるそうで、特に美咲さんの強化を集中的に行うそうだ。

 まぁお呼びじゃないよって事だよね。藤野父に重要危険人物? な判断をされてしまったからな……まぁ娘の近くに近い年頃の男子は全て警戒対象みたいだしな。


 そして今、僕はソロでダンジョン五層の情報を収集している。

 五層は……うわぁ、難易度一気に上がってるな。一層から四層まで出たモンスター達が五匹ランダム? 編成で襲ってくる。編成内容の集計取ってみたけど法則性解らない。

 全体的には更に道が広くなった感じ? モンスターが縦横無尽に動けるようにしてある感じがするなぁ。暗さは何時も通り、ジメジメも……四層で慣らしたとしても辛くない? もう少し難易度下げても良いのよ?


 精神を研ぎ澄ませて周囲を探りつつメモを取る。要対策事項だからな、特にソロやペアPTだと厳しい。何が一番辛いって、この階層はいってから分隊バックアタックがあるんだよ! なんだよ二匹分かれて後ろから急襲って! まぁ五匹確定編成だから、何処かに居るだろうって予想できるのが救いかな? まぁ其れでも道が広いから何処から来るかが解らないのだけれど。


 正面から四匹……ポイズンウルフ(協会発表ネーム)は一匹、後はダンジョンウルフ三匹でボスは無し。後一匹は何処でなんだろう? 先ず狙うのはポイズンウルフ……えぇい長い! Pウルフで十分だ! パウダーボムを投げた後に、突進からの突き! そのままの勢いを利用して、ダンジョンウルフ……Dウルフで! に上段からの叩きつけ! 一匹一発で倒せるようになった、進歩してるのを実感。残り二匹と隠れ一匹!


 一旦距離をとって睨みあい、うん仕切り直しだ。既に二匹居なくなってるけど。

 さてはて、カウンター中心でいくか……パウダーボムを使うか、使うとしたらタイミングが……無いか。まだもう一匹が何処にいるか解らない。此方から仕掛けるのは無理だな、カウンター狙うしかない。いや、其れでも……うん、手札が足らなさ過ぎる。

 体を揺らしながら、スコップを左右に移動させる。うん、猫じゃらしを追いかける猫みたいに顔が移動してるな……モンスターじゃなければ可愛いのに。

 タイミングを考える……一匹の位置が見つけれないなら、引きずり出せば良いじゃない! と言う事で、行動手順は決まったから後は如何攻めるかだ。


 ゆらゆらふりふり、相手もつられて首をふりふり。どれ位やっただろうか? スコップを地面に叩きつける!

 ガン! と言う音と共にDウルフ達がビクッとする。驚かせれた様だ! チャンス!

 即座にスコップを槍投げの要領で投擲! 微妙に固まったDウルフに突き刺さ……った! よし一匹!

 隠れていたモンスターがチャンスと言わんばかりに襲ってくる。之は釣りだぞ? 既に左手は腰にある剣鉈に手をかけているんだ……逆手で一気に抜き放って相手を斬りつける!

 音に出したらスパーン! だろうか? モンスターが振り下ろしてきた腕を切裂き傷を負わせた。よし、コレで炙り出した、後は二匹しか居ないなら楽だ! ちなみに隠れてたのはボスウルフ。ボスの癖に隠れやがって!

 ダッシュからの、ボスウルフスルー! 残念、狙いはスコップだ! 右手でスコップの取っ手を握り、モンスターに蹴りを入れながらスコップを抜く……そのままの勢いでもう一匹いるDウルフに叩きつけ!

 うん大振りすぎたか、避けられた。まぁ構わない、ボスウルフは腕を斬りつけたからか、動きが悪い。なら今は注意しながらも万全に動けるDウルフが先だ。


 剣鉈を収納して、スコップを両手で持つ。大きく息を吸ってから吐く。手負いの獣が恐ろしいのは基本だ。此処で逸って行動すれば思わぬ反撃を食らうかもしれない。爺様が言ってたからな! 気持ちを抑えるために深呼吸をしながらも、二匹とも視界に入れて警戒。


 グルルルルルルルル!


 「そんな風に唸っても、僕には意味がないよ? 確かに何度か戦闘してきたから結構疲労してるけどさ。其れでも、最後まで気を緩める心算も無ければ、脅しも効かないよ?」


 話が通じるのかどうかは解らない。其れでも何と無く声に出してしまった。うん、五層に来てから割りと面倒な戦闘が続いたからなのか、随分と心身ともに疲れているようだ?


「ま、其れでもいい加減休みたいからさ……そろそろお終いにしようか?」


 ストックしてあった石をDウルフに投げつける! よし、オーバーアクション気味に避けたな、ただ体勢を崩してるとは言え此処からダッシュしても体勢を立て直されてしまうだろう……なら!


「先ずは……ここだあああああああああああ!」


 足に傷を負って動きが悪いボスウルフ。Dウルフに突撃してる途中で方向を切り替えてからの……スコップ突き!

 怪我した足で無理矢理回避しようとした為か、突きは避けられたが完全に体勢をくずした。寧ろ体勢が崩れたからスコップが避けれたなこいつ。追い討ちだ!

 くるっとスコップを半回転させてから、体勢を崩してるボスウルフに向かって突き下ろし! ギロチンアタック!

 そのタイミングを狙ったのかDウルフが飛び掛ってくる。いやいや、其れも予測済みだよ! ギロチンアタックだからスコップはボスウルフには突き刺さっていない、だから、大きく捻って……Dウルフの顔面にフルスイング! ホームラン! にはならないか。


「ふぅ……何だかとっても疲れたんだよ」


 思わずそんな言葉が口から出たが、まだまだ十分動ける。動けないレベルの疲労になった、あの理不尽お説教はなんだったのだろうか? 恐るべし藤野父。

 しかし之は、まだ入り口入ってから少ししかマッピングが終わってないし、情報は厳しい。新兵器? 新防具? 何か手が欲しいなぁ。とりあえず今日はもう帰ろう。危険を冒してまで進む必要は無い。




 ダンジョンを出てドロップ品を売買する。ふむ……まだまだ魔石の値段は高いようだ。封鎖された上にダンジョンに入る人が減ったからなのか、需要に対して供給が少ないのだろう。しかし魔石は一体何に使ってるのだろうか? 聞いても教えてもらえなさそうだ。知って良い情報なら国か協会が既に出してるはずだ。


「あれ? 結弥君今から帰り?」

「美咲さん? 今日は一人みたいだけど如何したの?」

「結弥君は知らないのかな? あの時以来、協会が色々講習してるから受けたんだよ」

「あー……確かにそういうのは必要そうだよね」

「うん。でも結弥君うけてないよね?」

「そうだね、その情報すら協会からも聞いてないかな」

「きっと……必要ないと思われたんじゃないかな? ダンジョンの情報を逆に協会に上げてるほうだし?」


 国や協会も色々と手を打ってきているようだ。と言うよりもだ、何故今迄無かったのか……色々と手抜きしまくってたんだろうなぁ。


「そういえば、何時も甘味を買ってるみたいだけど甘いの好きなの?」

「妹にお土産。持って帰ると満面の笑みで喜ぶんだ。無いとぷーっと膨れて可愛いんだけどね」

「妹さんかー、私は兄弟姉妹居ないからちょっと羨ましいかな」

「色々とあるけど、賑やかで楽しいよ」


 何故か美咲さんと妹の事で会話が盛上った。はっ! 今背筋が……オジサマ二人の内どっちかが監視とかしてないだろうな? 学校では余り会話しないんだけどなぁ……まぁダンジョンの会話なんぞ出来る訳も無いが。……美咲さんは見た目も良いから話したらしたで男子が面倒な事になりそうだし、今の距離感が一番良い気がする。美咲様お願いします、学校では話しかけないでください!

 そんな思いは通じてないのか、にこにことしながら会話をする美咲さんと仲良く? 帰宅。他の人に見られてませんように。




「お兄ちゃんおかえりなさーい!」

「ただいまー! 今日はカスタードプリンとバニラアイス買って来たぞー」

「あいすさんとぷりんさん! どっちがいいかな! 悩んじゃうよ!!」

「ふっふっふ……ゆい君は甘いな」

「ふえぇ? 甘くないよ! 甘いのはぷりんさんとあいすさんだよ!」

「考え方が甘いと言ってるのだよ……之は夕飯のデザートに、先日取ってきた果物と……この、シロップを使って、プリン・ア・ラ・モードにするんだ!」

「お兄ちゃん、贅沢さんだよ! 贅沢さんはダメなんだよ! でも美味しそうなんだよ!」

「夕飯後のデザートだからな、今日は僕が許す。プリン・ア・ラ・モードを楽しむがよい!」

「わーい! あらもーどさんが待ち遠しいよ!」

「ま、其の前に宿題だけどな」

「あぁぁぁぁ、それは禁句なんだよぉ……」


 今日も今日とて妹がかわいい、そんな妹を微笑ましそうに見ている爺様……いつから其処に居たの?




――ゆりside――


「うー……やっぱ利き腕じゃないと文字が綺麗にかけない」

「ほら、ゆりちゃん頑張って」

「うん、お母さん。ごめんね? 付き合ってもらって」

「いいんです! お母さんが好きでやってるんだから」


 退院して以来、リハビリや利き腕でない方の使い方に苦戦しつつ特訓中。


「辛かったら休んで良いのよ?」

「大丈夫だよ、一日でも早く出来るようになりたいしね」

「そうはいっても、無理してるように見えるわよ?」

「うん、少し急ぎ足かもしれないけど、兄さんやゆいに会いたいからね」

「……そうね」


 あの日、兄さんのメモを読んでから私は如何するかを決めた。たぶんだけど、あの時必死に声に出そうとして出し切れなかった呟き。兄さんは聞こえなかったと思う。

 それでも、偶に兄さんはお見舞い品を持ってきてくれていたらしい。らしいと言うのも全部看護師さんが渡してくれていたから。どうしてもタイミングが合わず、顔を見ることが出来なかった。

 毎回付いてくるメモは私だけの心の中に仕舞ってある。メモは厳重封印だ。


「兄さんに会って、ありがとうとごめんなさいしないと……お爺ちゃんやゆいにも心配かけてごめんねって」

「そうね……私も御免なさいしないといけないわね」

「お母さんが?」

「えぇ、あなたが怪我をした日にね……おにいちゃんと大喧嘩しちゃったのよ。おにいちゃんの言う事が間違ってないのは今なら解るんだけど、あの時は感情的になりすぎてどうしてもね」

「そっか……じゃぁ一緒にがんばらないとね」


 お母さんも色々と思ってるみたい。色々と後悔や懺悔と言った気持ちが溢れてくるけど、今はやれるだけやらなきゃ。胸を張って会いに行くんだ! 兄さんもゆいもおじいちゃんも励ましメール送ってくれてるしね!

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
完結して随分経つから今更誤字報告もどうかと思うけど、誤字多くない? 明治の純文学じゃないんだから、之や如何とかを漢字にするのは不適切。 つもりは積もりだし、心算は間違い。 読めるけど一般的じゃないなぁ
[良い点] お父さんうるさすぎて面倒
[一言] まだ読み始めな程度ですが、主人公を際立たせるために他の人の頭を悪くしすぎでうんざりします。 この調子で最後まで続くんですかね。
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