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百四十四話

 村に帰還する事にしたので、バケツとコップについて手紙を書くのは止めにした。

 武具のメンテナンスなども、ダンジョン前拠点で協会にやってもらう方法と、イオの輸送で村に送るパターンがあるが、精度の高い調査やより質の高いメンテを頼もうと思ったら、村に頼むのが良い。

 ただ、村に頼むと当然時間がかかる。そうなるとダンジョンに潜る時間が減ると言う事に繋がる訳だ。


 そして、今回本来なら盾だけのメンテだったので、戻るつもりは無くイオ便に頼り、俺はそのまま盾無しでダンジョンに潜る予定だった。


「まぁ、予定が変わったからな」


 一刻も早く盾を完成させよう! と言う流れになり、魔法耐久テストの魔法を使う為に村へと戻る事を立候補した。


 そんな訳で、今はイオと早朝マラソンをし、村にあるイオハウスの前でイオと戯れている最中だ。


「まったく、イオは機嫌が良いね。そんなに追いかけっこは楽しかったか」

「ミャン!」


 ダンジョンに潜るようになってからは、イオがダンジョンに囚われる可能性があると言う事で、一緒に行動する機会が減ってたからな。

 少しでも一緒に行動できるのが、イオにとっては楽しくて仕方ないようだ。


「まぁ、いっぱい色々な人に構ってもらってるだろうに」

「ミャー」


 イオにとっては一匹になった後、最初に森で出会ったのが俺だからな。他の人とは違うんだろう。

 とは言え、イオも一匹で居て良い訳じゃない。何処かにイオと同じタイプのモンスターでも居たら良いんだけど……その内だけど、探しに行くってのもありだろうな。まぁ、今行ってるダンジョンに居ないだろうけど。

 そもそもだが、ダンジョンからモンスターを持ち出す方法ってあるのだろうか? テイム自体はダンジョン内で昔試したが、一度も成功した事が無い。

 テイム用の魔法があるなら別かもしれないが、イオ自体は別にそんな魔法を使ってテイムした訳じゃない。

 となると、一番可能性が高いのは、遠征しながら探すって事なんだろうな。


「……それが一番可能性が高いってどうなのよ。なーイオ。お前の仲間を増やしてやりたいのに」

「……ミャー」


 一人と一匹同時に、実に残念だという感じで話をする。……本当、何故話が伝わっているのか謎だけど、まぁ、通じてるから問題ない。


「色々とやる事が終わったら、遠征して探しに行こうな」

「ミャン!!」

「お、やる気が凄いな! さて、そろそろ俺は用事があるから行くけど、イオはどうするんだ?」

「ミャ!」


 ダンジョン前の拠点を見ながら一鳴き。なるほど、配達する物があるから移動するみたいだな。


「そっか、大丈夫だとは思うけど、気をつけろよ」

「ミャン!!」


 当然! と言った感じでイオは返事をした後、猛ダッシュで来た道を戻って行った。うん、やっぱり一緒にかけっこするよりも、イオ単独の方が速いな。


「さてさて、それじゃ婆様の所に行くとしますか」


 俺も俺で、予定をどんどん消化しに行かないとな。




 婆様達が居る研究所へと顔を出すと、其処は最早戦場と言わんばかりの状況だった。……思わずリターンしたくなるけど、持ってきた物とか盾の件があるからな、突撃するしかないか……はぁ。


「これってどんな状況?」

「あぁ、白河君か。君が送ってきた黒い鉱石がね……実に面白いんだよ!! あれ、もっと数は無いかい!?」

「あー……そんなに良い素材でしたか。採掘した甲斐がありましたね」

「良いなんてモノじゃないよ! 実に素晴しい……素晴しいのだが、数が足らないんだよ」


 なるほど、あの鉱石は其処まで研究者を狂わせる物だったか……ただ、この状況で盾を作れって用件を言わなくちゃいけないのか? 血走った目で研究者達が鉱石弄繰り回してるんだぞ?


「おや、結弥。ダンジョンから戻って来てたのじゃな。して、どのような用件じゃ?」

「婆様こんにちは。えっと……色々と調べて欲しい物と、入谷さん達からのお願い事がありまして……」

「ほう。ただ、この現状を見て言いにくいと言う事じゃな?」

「婆様の言うとおりです」

「ふむ……それなら、婆が直接聞くとするかのう。着いて来るがええ」


 婆様に言われて、奥にある婆様の研究室へと移動する。うん、この空間に長期間いるのは少し勘弁だから助かった。


「さて、お茶でものみながら話を聞くかの」

「えっと、先ずはこれなんだけど……」


 そう言いながら、バケツとコップを取り出して机の上へと置いていく。


「ふむ……バケツとコップじゃな。ただ、これを出したと言う事は、この二つはダンジョン産じゃな?」

「婆様正解。十七層と十八層ででた、ボスからのボーナス品。モニュメントの事も有ったし、何か特性? でも有るんじゃないかなとは思うんだけど」

「なるほどのう……とりあえず一つ目はこの二つを調べて欲しいと言う事じゃな」

「大変そうだから、頼んで良いかってのもあるんだけどね」

「かまわんかまわん。それに、この二つは後回しでもいいんじゃろ? 研究予定として置けば良かろうて」

「大丈夫かな。戦闘に直ぐ使えるような代物じゃなさそうだしね」


 まぁ、バケツとコップに関してはこんな感じだろうな。

 そもそも、バケツとコップだ……何か特性があったとしても、それがダンジョン内の戦闘で使えるだろうか? 例えば水を大量に吐き出すとか、温度を自由に変える事が出来るなんて特製があったとして、そんなのは魔法で全部どうにかなる。

 魔法だと自分の魔力を消費するから、魔道具のバケツやコップなら気にせず使えるんじゃないか。なんてのもあるが、容器の大きさを考えれば、それもどうなんだろうか? と言う疑問がある。

 まぁ、挙げたのは例えだから、何の答えにもならないけど、バケツやコップだぞ? これで、とんでもなく恐ろしい威力の何かを出す特性とか言われたら、なぜその形状にしたと言いたくなる。

 だから、この二つについては、これぐらいの内容で終らせても問題ないはずだ。


 さて次だな。今度は、火ネズミと風オオコウモリから回収した魔石を机の上に並べていく。同時にノーマル型の魔石もだ。


「次はこの魔石かな。こっちは同系列のノーマル型から取り出した魔石。で、こっちの二つは属性魔法を使ってきたタイプ」

「ほう! 赤色に緑色の魔石じゃな。ノーマル型は良く見る無色に近い魔石になるのう」

「赤色のやつは火の魔法を、緑色のやつは風の魔法を使ってきたモンスターからの入手かな」

「ふむ……赤は火で緑は風と決めるには実例が足らぬゆえ早急じゃろうが、そういった魔石が手に入ったのは大きいのう」

「毒ウルフの時も、魔石に毒の属性があったし。ここで火と風の魔石が手に入ったのは、かなり楽しみが増えたと思うんだよね」

「そうじゃのう……結弥が持ってきた、あの黒い鉱石もじゃが、かなりエネルギーや魔道具に革命が起きそうじゃよ」

「おー! それは良かった!」


 火と風の魔石の使い道を考えれば際限が無いだろう。

 それこそ、火の魔石ならば一般生活の点でいえば、コンロやお風呂に暖房と使い道がまだまだ出てくる。風の魔石だって送風機やら空気清浄機なんてのもあるだろう。

 それに、大規模なモノで考えれば、それこそ発電や鍛冶に使うと言ったモノだってある。


 今まではそれを、婆様達が創意工夫し無色の魔石を使い、無理矢理使える状況を作っていた。だから、エネルギー効率だけでみれば、かなりのロスがあり、それを研究者達は何度も嘆いていた。

 そして、そんな中手に入ったのが、この属性魔石たちだ。


「しかし、これはまた弟子共が狂喜乱舞しそうじゃのう」

「……あれ以上の修羅になるんですか?」

「あやつらは、それが楽しくて仕方ないみたいじゃからの」


 弟子について、そんな事を言っている婆様も、最早目が子供のように輝いているんだよな。少しでも早く、魔石を弄繰り回したい! そんな目だ。

 これは、早く用件をいって切り上げた方が良いだろうな……長引けば、機嫌が悪くなりかねない。

 ただ、次の話がな……機嫌悪くならないと良いけど。


「えっと、次が最後で、入谷さん達からの要望なんだけど、その属性魔石を出したモンスターが魔法を使ったのは言ったよね」

「そう言えば、魔法を使うといっておったのう……それに関係する事じゃな?」

「うん、まずはこの盾。これで相手の魔法を受けたから、不具合が起きてないかチェックして貰いたいのと、それと同時に魔法にも耐えれる盾を作って欲しいってお願いを聞いてきてる」

「対魔法用の盾じゃな……確かに必要になるじゃろうな」

「テストは俺が付き合うから、何とかならない?」

「ふむ……手が空いておる者がおらぬからのう……どれ、こっちで無理矢理仕事の調整をするかの」

「婆様ありがとう!!」


 良かった。機嫌が悪くなる事無く、入谷さん達の要望が通った。

 まぁ、彼等が面白いと言う素材を、大量に持ち込んじゃったからな……とは言え、盾の開発は早急に必要だ。婆様もそう判断して、さっさと誰かの仕事に割り当て……割り当てる? あぁ、そうか。婆様が盾を作るわけじゃないから、別に機嫌が変わる事は無いのか。


「さてどうかの? とりあえず、武具の開発をメインにやってる奴に話をつけておくからの。結弥は盾が出来るまで、家族に顔を見せておくといい」

「あーそうだね。それじゃ、お暇させてもらうよ。婆様、後は宜しくね」


 なんか、婆様に心を読まれた気がしなくも無いけど、仕事はしっかりとやってくれる人達だ。

 家にもどって妹達に捕まってる間に、さくっと作りあげてくれるに違いない。

 しかし、最後の「話をつけておく」ってのも、「話を〝押し〟つけておく」が正しい気がするのは、間違いないだろうなぁ。

 だって婆様……魔石を一時も放してなかったからな。




 さてさて、それじゃ呼び出しを待ちながら家で待機するとしようか。


「ただいまー!」

「あ! お兄ちゃんお帰り!」

「兄さん帰ってきたんだ! ちょっとこっち来て!!」


 うん……早速二人に捕まったな。爺様も笑ってるし……あー、アレはまた何か面白いことでも見つけたか? まぁ、良い時間つぶしでもあるし、楽しんで行くとしますか!

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