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百三十九話

 色々と魔法を試していると、時々現れる街から出向してる人達が合流して、大魔法研究会のようになりかなりの進展をした。

 浪漫が! とか、効率が! など時々言葉の殴り合いになったりはしたが、俺よりも先に魔法について研究し効率化を図っていた人達だ、ちょっとしたヒントが出るたびに、一気に魔改造されていく様は目を丸くするレベルだった。


「これは早くダンジョンで試してみたいわね」

「俺達は元々銃器を扱ってたからな、どうも思考がそっち寄りになってたからな」


 いやいや、それも十分凄いですよ! と思いつつも、村で日常生活をしていた時に使っていた道具からの発想は、割と思いつかなかったらしい。結構漫画やゲームでも使われてる、そんな道具とかだったりするんだけどな。

 とは言え、俺も早く試したい気持ちで一杯だったりする。実際、魔法をモンスター相手に使ってみないと解らない事は沢山あるから。


「とは言え、結構いい時間ですし、試すとしたら明日でしょうね」

「あー……もう夕日が見えてるな」


 日が落ち、空は朱色に染まっている。今からダンジョンに潜るとか……前、俺がやった集落に夜襲を仕掛ける様な事でもない限り、やらない方が良いだろう。

 ダンジョンの中の時間は外と同じだからな。森林地帯とかで深夜の狩りとか、自殺志願者か? と問いたくなるレベルだ。

 そう言う訳で、基本的に特別な理由が無い限りは、夜のダンジョン狩りは禁止とまでは言わないが、非推奨である事は間違いない。

 まぁ、野戦訓練の為に使ったりもしてるからね。その際は、しっかりと協会への報告義務がある。


「ま、お楽しみは取っておいてだ……今日は飲むぞ! 良い改造が出来た祝いだ!」


 俺は飲みは出来ないけど、明日が楽しみなのは同じだな。まぁ、しっかりと食べて明日に備えるとしますか。っと、その前にイオとの約束も果たさないと行けないか。




 イオとの約束を守り、その後は酒場で盛り上がってる魔法を共に改良した人達と合流し、夕飯を食べながら会話をして行く。

 話の内容は中々面白く為になるもので、精鋭と言われた人達が使っていたであろう、魔改造された派生系魔法の話を聞く事が出来た。


「え? それって、遊びすぎじゃないですか? 自分の魔法でスマホを充電してたとか」

「そうだな。その人もとんでも無い事を言ってたよ。出来るようになるまで、数台のスマホをぶっ壊したとか」

「……なんというか。スマホでやる前に違う物で訓練したら良かったのに」

「基本的に目的の為には一直線のやつだったからな。まぁ、その気質がアイツを精鋭クラスまでのし上げたんだろうけどな」


 どうやらそのスマホを壊してた人は、魔法の細かい操作が異常なレベルで上手かったらしく、密集する味方の中を、縫うようにしながら魔法をモンスターのみに中てると言う……まぁ、化け物と言いたくなるような技術を持っていたそうだ。


 自分に置き換えて想像してみる。彼等の隊列は隙間を殆ど埋めるようにしながら、盾を構えて進むタイプだ。

 上から魔法の玉をモンスターに降らせるならば、俺にもできると思う。だが、ダンジョンの中では上に魔法を作り落して攻撃する、そんな事が出来ない場所もある。

 そういう時に使うのが、小さく出来た隙間をするりと抜ける技法な訳だが……うん、どう考えても盾に阻まれる未来しか想像が出来ない。


「師匠になって欲しいレベルの人ですね。今は如何してるんでしょう?」

「さぁなぁ……その人は上級ダンジョンにアタックする部隊に編入されたからな。……あの時にやられたか、上手く生き延びれたか。まぁ、死んでるなんて想像は出来んけどな」

「たしかにな! 化物部隊に選ばれるだけあるからな。案外上手く時間だけ稼いで、ぎりぎりのラインで全員生存する道でも発見してるかもな!」


 ふむ、もし生きてるなら一度話をして見たい人達だ。まぁ、この付近には上級ダンジョンは存在しない。だとすると、生きていたとしても遭遇する可能性は殆どないか。少し残念だな。

 とは言っても、そういった精鋭部隊の魔法の使い方は、全てではないだろうが組織内では公開されていた訳だ。

 そして、その内容を教えてもらえたのは幸運と言える。これは、色々特訓するべき内容が増えたって事だな。


「おっし、飲みすぎて酔い潰れでもしたら明日に響くからな! ここらでお開きにするか!」

「良い時間ですしね。今日は色々教えていただきありがとうございました!」

「構わんよ。俺達としても中々収穫があったからな!」


 各自解散し、眠りにいく人、まだ飲む人、集まってゲームをする人達と様々だが……まだ残ってる人の中には明日試すと言ってたのに、大丈夫なのか心配になる人も居る。まぁ、きっと大丈夫なんだろうな。




 朝になりダンジョンへと向かう為に移動を開始する。

 その途中で、昨晩酒盛りをしていた部隊の人達を発見した。どうやら、飲みすぎで頭を抱えている人が居るな。

 その人は他のメンバーに説教をされているが、途中で「大丈夫だから」と言い、自分に回復魔法を掛けだした。


「なるほど……あれが回復魔法の悪い使い方か」


 様子をみていると、回復魔法を掛けた後は、二日酔による頭痛もとれたのか、足取りもしっかりとした状態に為っていた。まぁ、それでもパーティーメンバーのお怒りは収まらず、小言が続いていたのだが……。


 それにしても、本当に魔法は便利な能力だな。色々と制限やら条件等が必要だけど、それを解決すればかなり可能性が広がる。

 初級から中級を使えるようになった時が、正に制限の限定解除と言っても良いだろう。

 魔石のブーストは条件と言った所だろうか。まぁ、裏技に近い感じがするけど、こうした方法で可能性が広がる訳だ。


「さてさて、その結果を今から調べる訳だけどな」


 それじゃ、ダンジョンに潜って、早速魔法で狩りをして行くとしますか。




 ダンジョン十七層。ここも十六層と同じで坑道フィールドだ。

 広さや暗さは全く同じ条件と言える。現状だと違いが見当たらないので先ずは進んで行く事にしよう。


 進みながらも、忘れずに魔力での探索。壁の中に魔力を含んだ鉱石の反応があるか、モンスターがどこら辺に居るかを探っていく。

 ただ、十六層と同じ蝙蝠型のモンスターが居れば、この探索で此方が探っている事がばれるだろうけどな。


「ま、ばれたとしてもやらない選択肢ってのは無いけどな」


 ばれるなら、ばれる前提で作戦を立てれば良い。探索する側なら敵の位置を把握できるが、探索される側がそれで気が着く場合、探索をかけてくる方向がわかる程度だ。まぁ、その場合逆に探索をかければ良い訳だけど。

 それでも、詳細な位置が解る訳じゃない。それなら、罠も仕掛ける事だって出来る訳だ。


 そう言う訳で、探索はドンドン使っていく。

 そうすると、やはりと言うべきか、壁の中に魔力反応がある場所をいくつか察知。


「よし、鉱石だろうな。前回と同じで回収しながら進むとするか」


 今回は、壁を崩す為に作った魔物素材製のツルハシもしっかりと持って来ている。

 正直、土魔法を使って崩していけば早いのだが……魔力の消費を考えれば、今回は特にだが色々魔法を試す訳だから、魔力を温存しておきたい。なので、ツルハシが大活躍するという訳だ。


「このツルハシも、試してみたけど可笑しいレベルで掘削できるからな」


 重機か! と言いたく為るレベルで掘削できる能力を持ったツルハシだ。まぁ、使う人の身体能力で左右される部分も有るが、豆腐にスプーンを刺すかの様なレベルで掘削出来るとなれば、その異常性は解るだろう。


 そんなツルハシを携えて、掘削ポイントに移動していると、目の前に第一モンスターを発見。まぁ、出会ったのは十六層に出た巨大ネズミだが。


「まぁ、風の刃をぶち込んだ相手だしな。試すには丁度良いか」


 先ずは、街側の人達から教えてもらった銃弾魔法を試してみるとしよう。

 選択するのは風魔法。風を選ぶ理由は風の刃との差が解りやすいからだ。


「さてと、それじゃ……撃ち抜け! 風弾!」


 射出された風の弾が、目には見えない状態で、螺旋を起こしながら巨大ネズミの額に命中する。

 そして、圧縮された風の弾はネズミの頭の中でその圧縮を解き、爆発したかのように周囲に空気を解放した。


「わぉ……結構グロテスクだな」


 魔弾が貫通してしまえばそれだけだったんだろうけど。これは、マナブレードの魔法爆破を体内でやった形な訳だ。結果は巨大ネズミの頭が爆発四散してる。


「まぁ、使った感じだと、やっぱり風の刃よりもかなり使いやすいな」


 効果と良い、魔力効率と良い、比にならないレベルだろう。これは実に良い魔改造された魔法を教えて貰えたな。


 それにしても、ネズミなのに群れを作らず一匹ずつ出てくるのは何故だろうか。……これって、深く潜ったらネズミの大群が! ってフラグな予感がするな。奥に行く時は注意する必要がありそうだ。


 さて、次のモンスターが出てきたら他の魔法も試して行こうか。次は、俺が考えて試してた所に、皆の意見で魔改造された魔法を使ってみるか。


「っと、その前に鉱石掘りだな!」


 ガンガンとツルハシを振るって、鉱石を掘ってみる。どうやら、十六層で出てきた鉱石と同じ物のようだ。うーん……まだ、鉱石の種類に変化は無いって事かな? とは言え、数が多いに越した事は無いだろう。

 どんどん掘って、研究所に輸送していったほうが良いだろうな。


 掘っては進みを繰り返しダンジョンを潜っていくと、次のモンスターに遭遇。なにやら十六層と十七層の坑道フィールドは、モンスターの絶対数が少ないみたいだな。

 まぁ、十六層のボスが居た場所は集合してたけど……フィールド自体にでる通常モンスターの数は少なかった。……大ネズミしか居なかったしな。そして、十七層も同じのようで大ネズミがポツンと一匹、結構な距離の間隔で出てくるぐらいだ。


「ま、単発系魔法を試すには丁度良いんだけど」


 そんな訳で、今目の前に居る大ネズミにも風の魔法で試し撃ちをしてみる。比較するなら同じ属性で、風弾との比較も必要だからな。


「さてと、今回は切裂く系魔法だからな。風の刃と同系列だけど一味違うはず! 行け! 風戦輪!」


 風で造り上げたサークルソー。芝刈り機とか工具に使われてる丸鋸とでも言えば良いだろうか、それを元にし、魔力効率やら威力を皆で改造していった風の刃だ。

 回転した風の刃を、左右に移動させたり停止させたりと操作した後に、大ネズミ目かげて高速で飛ばして行く、スパーンと大ネズミを両断。そのままの勢いで壁に激突すると、ガガガガガと言う音と共に、壁を削りながら数メートル進んだ後、風の丸鋸はその姿を消した。


「おー……風の刃より威力が高いな」


 風の刃であれば、大ネズミを切裂きはしたが、その後を考えるともう一匹大ネズミが居た場合、その大ネズミは切裂く事が出来なかっただろう。

 だが風戦輪ならば、ある程度こちらの操作が可能である上に、威力は上だ。削れた壁を見れば解るように、何匹か居たとしても連続で切裂いて行く事も出来る。


「それにしても、弾丸といい丸鋸と言い……魔改造された魔法は凄まじいな」


 柴犬が使った魔法を考えて、恐らくモンスター達が居た元の世界だと、こんな感じで改造された魔法は無かったのだろうか? 例に挙げれる存在は少ないけど、ズーフといい柴犬といい神樹の所にいたチビ達といい、こういった改造された魔法を見た事があれば、使うかもしくはソレの警戒があっても良いはずだからな。


「となると、完全にこの世界オリジナルと言っても良い可能性があるか」


 もしかしたら、物語のように魔法は範囲が広く威力が高いほど良い魔法! なんて常識なのかもしれないな。

 とは言え此処は日本だ。小型化! 高性能化! は基本中の基本。大型化するにしても、小型化された物を大型にするパターンだろう。

 そうすれば、威力は楽しい事になるからな……その分色々と制御が大変そうだけど。


 とは言え、これで魔改造魔法がかなり実用的である事が確認出来たわけだ。

 それならば、次はボス相手にはどんな魔法を試してみるか……数が多いパターンと一匹で強い奴が出るパターンで、分けて考えて突入するとしますか。


「っと、その前に鉱石回収は終わらせておかないと」


 うん、資材は大切だからね。忘れないように集めておかないと。

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魔法の使い方強化に向けて、着実と進展中。

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