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百三十七話

 魔力反応があった鉱石が有る方向に向かい歩いていくと、オオコウモリのロケットにより散ったモンスター達の姿を発見した。


「なるほど……まぁ、こんな場所だから居るのは当然か」


 道の片隅に居たのは、キューキューと可愛らしい鳴き声を上げているネズミだ。

 ただ問題が有るとすれば、その姿は決してて可愛らしいというほどのサイズではなく、オオコウモリほどでは無いが、普通のサイズよりもでかいと言う事だな。

 例をあげるなら、侵略的外来種のヌートリアが近いだろうか? 見た目はもっと凶悪にした感じではあるけど。……あぁ、鳴き声は全く違うか。ヌートリアならグーだのギャーだのと言った感じだけど、こいつらの鳴き声はハツカネズミだな。


「まぁ、そんなでかいネズミが目の前で牙を剥いて威嚇してるんだよな」


 可愛い鳴き声で威嚇……ただし見た目はお察しくださいとか、すっごい損してるモンスターだな。いや、むしろ可愛い鳴き声がする! って近くに寄ったらガブッ! って事か? それだとすれば、なんて狡いモンスターなんだ。

 とは言え、もう姿は見てしまってるからな。しかも、敵意しかない顔だな。まぁ、こいつ等が地上で生活圏を広げていたら危険だから、しっかりとデータを取って周囲に知らせないと……女性や子供が犠牲になりかねないような鳴き声だからな。


「まぁ、ダンジョンならどの道テイムなんて出来ないみたいだし、討伐するだけなんだけどな」


 ただ、ネズミはすばしっこいからな。普通に接近戦をするよりも魔法戦を仕掛けてみるか。何せ色々と使える魔法は一気に増えたしな。


「とりあえず、ネズミの素早さを封じたいからな……やるなら〝氷〟かな」


 派生に属していた氷の魔法を中級レベルで使用してみる。

 やり方は単純に、足元を広範囲にわたって凍らせる。ただソレだけだ。


「さて、俺のいる場所は問題ないけど……他の場所だと滑るだろうな。ネズミ君は如何するのかな?」


 まぁ、予想通りの結果と言うべきか、ツルツルとした地面をその足でしっかりと掴む事が出来ていないのか、コロンと転がっている。

 ただ、こいつ等も鋭い爪を持っているからな。その内にその爪を氷に突き立て、しっかりと立てるようになるはずだ。

 だが、現状コロリと転がった姿は隙でしかない。


「ま、立て直す前に倒すに決まってるよな」


 とは言え、ネズミが居る位置までは凍っている地面だ。なので魔法を使って遠距離から仕留める。

 選択するのは、いつぞやに見た柴犬が使っていた風魔法。なぜ、風でオーガの首が飛ばせたのか疑問だけど、其処は魔力が色々と作用してるんだろう。

 そして、中級の風魔法で有れば、同じ事ができるはずだ。


「そう言う訳で……試させてもらうよ!」


 あの時柴犬が使った風魔法を其のままトレースして、ネズミに向かって風魔法を撃ちこむと、魔法によって作り出された風の刃が、転がり立ち上がる事の出来ないネズミの体を真っ二つにした。


「おー……正に魔法って感じだな。普通に考えたらありえない現象だよね」


 とは言え、使った感じからして効率が悪い気がする。確かにネズミを真っ二つに出来たけど、その後に壁にぶつかり軽く壁が削れた程度で終ったし、中級魔法という割りに範囲も狭い。


「これは、改善点が有りそうだな」


 魔法は何か型というか、パターンでも作ってみるか。その方が色々と便利そうだしな。色々試しながら、修正していくとしよう。


「さて、ネズミの素材か……肉は……食べたいと思えないよなぁ。とは言え、研究材料にはなりそうだし、持ち帰りはするけど」


 色々とネズミや蝙蝠ってイメージが悪いからな……病原菌とか毒だとか吸血だとかで。

 まぁ、自分達で食べないにしても、調査して大丈夫そうなら何かに使えるだろう。


「さて、この少し先に鉱石があるはず」


 戦闘と回収も終わったので、直ぐ側にあるだろう鉱石を掘る作業だ。

 とは言え、ツルハシは持って来ていないし、スコップで掘るのは……出来なくも無いが時間が掛かりそうだ。

 となれば、此処は土魔法でも使ってみるとするか。


 反応があった場所の壁に触れ、土魔法を行使していく。鉱石が眠ってるだろう場所に向かい、どんどんと壁に穴を空け出て来た石を使い、周囲を固めて地盤を強くしていく。

 まぁ、ダンジョンだから簡単には崩壊もしないだろうし、その内修復されるとは思うけど、保険の為にやっておくべきだ。

 そうして横穴を作って行くと、今までとは違った手ごたえを感じる。


「ビンゴ! これだな」


 周囲よりも黒く光る何か。恐らくこれが魔力の探査に引っ掛かった物だ。まぁ、鉱石に詳しい訳でもないので、俺が調査しても解らない代物だろうから、回収だけして次へと移動していく。


 その後、幾つか有った魔力探査に引っ掛かった場所で鉱石を回収。どうやら、違う種類の物は無いようで、全てがこの黒く光る鉱石のみだった。


「さて、鉱石探しはこれぐらいで良いかな。場所も、あのオオコウモリが逃げた場所の、裏側に着いたみたいだし」


 地図を作りながら来た道を考えれば、間違いなくグルリと反対側に回ってきているはずで、予想が正しいならば、この先はオオコウモリの群れが居るはず。

 そして、あの巨体が群れで戦えるフィールドと言えば、間違いなくかなり広い空間だろう。


「炭鉱で広い空間……ね。どこぞのゲームみたいに渓谷でも出来ているのか、地下水脈の流れが変わって空洞になってるのか……って考えちゃうけど、ダンジョンだからなぁ」


 何も無いのに、行き成り色々なものが生成されるからな。まぁ、ソレを言ったらゲームにある坑道内に出来る渓谷もなんだけど。

 さて、問題は群れを作っているだろうオオコウモリをどうやって倒すかだな。

 火魔法で一気に燃やすのはやっぱり無しだろうし、爆破も無しだろうな。


「うーん……モンスターの蝙蝠にセオリー通りは無理だからな」


 通常の蝙蝠なら、超音波をつかって周囲を探査しているが……こいつ等はモンスター。探査方法も超音波より、魔力を使ってる。

 何せ、こっちが魔力を探査するとあっちも同じようにやって来てるからな。ピン! って感じで一瞬だけ魔力の波がぶつかって来るんだよ。

 と言う事は、相手もこっちの探査に気が付いてはいるはず。なので、途中からオオコウモリ達が居る方向に向かっては、一切探査を仕掛けてない。あいつらも、こっちが使ってるのは知ってるから、最初の数回以外は、探ってこなかったからな。


「だから、俺が裏に回ってるのは気がついてないはず……だけどな」


 とはいえ、全く気が付いてないとも言い切れないから、初手で一気に沈めるべきだろう。

 そして、超音波を使ってない所を見ると、その手の攻撃で気絶させるってのは無理があるだろうな。まぁ、通用するかも知れないけど、今その手を選ぶのは最良じゃない。よくよくオオコウモリを調べて使えると解ってからだ。


 そして、灯りを消して真っ暗な中に居る。これもまた、灯りによって相手に位置をばらさない為。なので、視力を強化して暗い中でも見えるようにして行く。


「なるほど、やっぱりこいつ等は蝙蝠なんだな。全員逆さまでぶら下がってやがる。それと、裏に回った事には気づいてないのか。反対側を警戒してるな」


 慎重に来て良かった。これなら先制が確実に取れる。あいつ等も魔力探索をしないと言う事は、今の俺みたいに視力だか聴力だかの強化でもして、反対側を警戒してるんだろうな。

 さてと、相手は全て逆さでのぶら下がりと言う事は、接近戦は届かない。なら、鉄串か魔法と言う事に為る。そして、数が数だから先ずは魔法で数を減らしておくべきだろう。


「ま、そう言う訳で一気に巻き込む魔法をぶっ放しますか」


 ネズミから手に入れた魔石がある。これを使って、魔法にブーストを掛けて広範囲魔法を撃ちこむ! 選ぶのは風の中級! タイプはドーム系! 自衛隊の人達が上位オークにやっていたやつだ!


「巻き込んで封じ込めろ!」


 渦巻く風が、逆さになった蝙蝠達を吸い込んで行き、風のドーム内へと閉じ込めた。よし、確認できたオオコウモリは全てドーム内だ! 目視は出来ないが、魔力探査を掛けた感じからして、奴等は風のドーム内で洗濯機の中にある、洗濯物のようにグルグルと回っているな。時々、オオコウモリ同士や地面にぶつかったりして、ダメージも入っているみたいだ。


「とは言え、これって封鎖術みたいな物だから、倒しきれる訳じゃないんだよな」


 相手の足止めをする魔法。だからこそ、あの時のオーク戦闘でももう一人が攻撃力のある魔法で、ドーム内に魔法を打ち込んだ。

 であれば、次の手が必要な訳だ。そう言う訳で、ネズミから獲った魔石をもう一つ準備し、次の魔法に着手する。

 風のドームを一度消さないといけないが、消えた瞬間に範囲魔法を打ち込めば一気に倒せる筈だ。


「って事で……コイツでも食らってろ!!」


 威力重視の魔法。火や爆破以外そして、この地形を考えればこれしかないだろう!


「潰れてしまえ!!」


 天上から地面へと向かって伸びている巨大な石筍(せきじゅん)、こいつを中級土魔法を使い、オオコウモリ達に向かい落す!

 ガシャーーーーーーン! と、落ちて来た石筍(せきじゅん)は、下に纏っていたオオコウモリ達を貫き、潰し、飛び散った破片がショットガンの弾丸の様に降り注いでいった。


「……さて、生きている奴は居るかな?」


 念の為に、スコップを使って範囲ぎりぎりの位置に居た奴等を刺して行く。

 そんな作業をしていると、真ん中に居たであろうオオコウモリ達は、光の粒となり消え始めていき出した。


「やべえ! 回収しておかないと、研究材料が消えちゃう!」


 急いで数匹のオオコウモリを回収したが、倒した方法の所為で破片やらなにやらが邪魔となり、全てを回収する事が出来なかった。うん、少し倒し方をミスったかも知れない。

 とは言え、魔石だけはしっかりと残るのでその回収作業をしていると、次の階層へと進む扉が出現した。


「おおう……オオコウモリの群れがボスって事だったのか」


 と言う事は、ボス部屋への案内をボスの一匹がしてくれた事になる訳だ。まぁ、そのまま行けば集中攻撃を喰らって、ボス戦だ! なんていってられない状況になるんだろうけど。

 先ずはショートカットキーとボーナスを回収して、其のままショートカットの開放とボーナスの確認をしておく。


「む……魔本じゃないのか。まぁ、流石にぽんぽんと魔法が出るって事は無いか」


 手に入れたのは小瓶で、中になんらかの液体が入っている。


「んー……ポーションか毒か……まぁ、婆様行きだな」


 ポーションであれば良いのだけど、流石にこの階層で上級の可能性は低いはずだ。

 とは言え、ボーナスでその手の物が出てきた訳だ。であれば、従来ドロップすると言われた階層よりも、ボーナスで先に上級ポーションが手に入る可能性もあるかもしれない。


「少しテンションが上がってきたな」


 だが、今日は一度ダンジョンから出て、回収した物を研究室に送るべきだろう。これは早く調べて欲しいから、イオに頼むのがベストだろうな。

 さてさて、可能性は少ないけど上級である事を祈りながら、ダンジョンから出るとしますか。

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