百三十三話
案の定と言うべきか、自宅に戻ったら妹達に捕まり色々とお願い事を聞く事になった。まぁ、その内容は遊びという名の訓練だったり、ダンジョンやらオーク戦の話をして欲しいなど、家に居て出来る事だった。
魔本の解読をしている合間の良いリフレッシュにもなるので、俺としてもかなり良い時間の使い方だったりする。ずっと本を解読してたら、体を動かしたくなったりするからな。
「それじゃ、お兄ちゃんは十五層までクリアしたの?」
「そう言う事かな。もう少ししたら魔本やらポーションがドロップするようになるかもな」
「魔法! 皆が使えるようになると良いよね。兄さん、魔本手に入れたらどうするの?」
「被ってる魔法だったら、先ずは協会かな? 深く潜る人ほど必要だろうしね」
「えー……私も魔法使ってみたいー」
「そのうちな? 幾つか被ったら二人の分もキープできるだろうしな」
妹達にはそう言うけど、実際のドロップ率とかどうなんだろうな? かなり低いと思うんだけど。
実際、自衛隊や警察だった人達でも、使える魔法がバラバラだったり、それどころか魔法を覚えてない人だって居た。
だとすると、毎日のようにかなりの時間をかなりの人数で潜っていたとしても、全員に行き渡らないって事だからな。
其処から考えると、二人が魔本を手に出来るのはほぼ無理だろうし、手に出来てもかなり先の話だ。とは言え、その現実を今の二人に言うのもな……言ってしまえばそれこそ、自分達で探す! なんて、ゆいが言い出しかねない。
そう考えると、初回ソロ攻略ボーナスは本当にとんでもない話な訳だ。必ず何かが手に入る訳だからな。
振り返って考えると現状覚えてる魔法が、風・水・土・身体強化・回復だ。五層はズーフの試練で何も無かったけど、他の場所でも色々なアイテムが手に入ったな。
「そして、十一層から十五層のクリアで魔本が三冊、リングとモニュメントっと」
リングとモニュメントは調査依頼を婆様にだしている。今頃徹夜でテンションがブーストされまくった状態で、調査してるだろうなぁ……主に弟子の人達が。
後、魔本については一つ、何故思いつかなかったのだろう? と言う事を試す事にした。
所謂、写本と言うやつだ。それも四種類の方法で試してみる。
一つ目は、書かれている内容を其のままに。二つ目は、解読して翻訳した内容。あとの二つは、写す時に魔力を込めて文字を書いてみる方法だ。
お陰でその分の時間は掛かるものの、今まで解読した経験からか、解読自体は物凄く早く進んでいるので、思った以上に時間は使ってないかな。
そして、その写してる魔本は、途中段階だけど〝火〟の魔法みたいだ。……やっと四属性揃う訳だな。
「この火の魔本が出たのは、十一層だったな。後の二冊はなんだろう」
光と闇とかだったら、出来すぎというか中ニ病臭いというか……まぁ、魔法を使える時点でもはや中ニ病とかって話じゃないけどな。とはいえ、予想外の魔法が手に入ったりするからな、前だと身体能力強化とか回復とかが来た訳だし。
とはいっても、所謂四属性ゲットだぜ! って奴だよね。科学では否定された四大属性だけどな。とりあえず、浪漫溢れるって奴だし、実際手にしちゃった訳だから色々試してみないとな。
先ずは、魔法の火と水についての関係性とかも調べて行かないと。
魔法について本解読をしたり、妹達に付き合って体を動かしに模擬戦をしていると、婆様から連絡があったので研究室に来たんだが……目の前にはテンションが高すぎる人達が踊り狂っていた。
「えっと……これ、如何いう状況?」
「お、結弥来たのじゃな! これじゃこれ! これを見よ!」
そう言って渡された……グラフやら文字やらが羅列されたデータの紙束。
「これはじゃな! あのモニュメントを調査したデータなのじゃがな! どうもかなりの魔力を溜め込んでいるのじゃよ!」
「因みに言いますと、白河君に渡した新型武器マナブレードの……数十倍は魔力がありますね。あの、マナブレードですら、従来の武器に比べて数倍の魔力が込められているのですが」
良質な魔石やモンスター素材を使って作られた武器だ。現状だと最高の武器になる。
数値化するのは現状だと難しいが、例えば、何もモンスターや魔石を使って無いと当然だが、その数値はゼロになる。
そこで、モンスター素材や魔粉など武器を作るときに混ぜることにより、魔力の濃度を上げて強度やら切れ味を増している訳だが、当然使うモンスターの素材などでその濃度が変わり、ウルフ辺りの素材であれば、一から五付近の数値になる。
そして、マナブレードに関しては、オークキングの素材を使っているようで、最早その数値は百を超えるレベルらしい。だが、モニュメントはマナブレードの数十倍は溜め込めるのだから、そりゃ研究者の人達が皆踊り狂う訳だ。
「で、そのモニュメント如何するんです? 鋳潰して素材にでもするんですか?」
潰して武器を作れば、さぞとんでもない武器が出来るだろう。
「いやいや! それはまだ早いよ。このモニュメント自体にも何か効果が有るかも知れないからね。色々もっと試さないと!」
「なるほど、で、俺が呼ばれた理由は? ただ、その数値を見せる為だけじゃないですよね」
「その通り! 少し実験に手を貸して欲しくてね!!」
そう言われ、研究者の彼に着いて行く。
どうやら実験と言うのは、モニュメントを持って魔法を撃ったり、モニュメントの側に魔法を撃ったりしてみて欲しいみたいだ。
用意された部屋で、言われたとおりに魔法を使って言ってみる。うん……モニュメントを持って魔法を使った所で大差は無いみたいだな。
なにやら計測している人も、少し落ち込んだ顔をしているのを見ると、効果は無かったようだ。
次に、モニュメントに向かって軽く魔法を撃ってみる。
「ん? 何か変な感じだな」
風玉を軽く飛ばしてみるが、モニュメント付近だと魔法がモニュメントに吸われていく感じがする。
「お? おぉ!? これは!!!」
なにやら数値にでも反応があったのだろう。必死にメモを取っている。
そして、数回魔法をモニュメントに撃ってくれと言われたので、風以外にも水や土の魔法を使ってデータ取りの協力をした。
「ふぅ……白河君ありがとう!! このデータを元に色々と調査してみるよ! 他にも試してみたい事が出来たしね!」
「なんというか、力になれたようで良かったです」
「うんうん! これは……楽しみが増えたぞ!!」
ヒャッホーイ! と言わんばかりに、スキップしながら研究者仲間と色々話をしだした。うん、まぁ置いてきぼりだよね。俺は其処まで研究の内容を熟知してる訳じゃないし。
「すまんのう。結弥を放置して直ぐ議論し出すとは……」
「まぁ、それが研究者でしょう? 彼等のお陰でダンジョン攻略やらモンスター討伐が楽になってるのも事実ですし」
「そうじゃそうじゃ、結弥に頼まれて居った装備のチェックは終ったぞい。マナブレードに関しては少し調整に時間が掛かりそうじゃが、次ダンジョンに行くまでには何とかできそうじゃわい」
「おー、婆様ありがとう! 魔法爆破は強いんですけど一発ネタでしたし、継続で使う方がどうも使いにくかったので」
「ま、他にも色々とテストして欲しい物も開発しておるのじゃがな……あのモニュメントで遅れそうじゃの」
総出という訳じゃないが、殆どの人がモニュメントの研究に没頭しているみたいだ。
それほど魅力的な物なんだろうな。俺からみたら悪趣味なモニュメントなんだけど……。
「それじゃ、何か有ったらまた頼むからのう。リングの調査もあるしの」
「あー、そっちもお願いしますね」
さてさて、お手伝いも終ったし、魔本の解読の続きでもやりますかね。
〝火〟の魔本の写本と解読も順調に終り、残りの二冊も同じ手法を使い解読をした。なんと、残りの二つは、〝派生〟の魔本と〝中級〟の魔本。
実験をしてみると、全ての属性で中級魔法が使えるようになって居る上に、派生の方では氷だったり雷だったりと、中々に面白い結果になった。
ついでに火と水についての関係を調べてみると、よく物語りにある魔法みたいに弱点! のパターンもあれば、そうじゃないやり方もあるみたいで……多様すぎて頭がパンクしそうになる。
区分けするなら、物語系魔法と科学系魔法? もはや、何でもありだなと思わなくも無いけど、使い分ければ中々便利になるだろうね。これは、要調査だろうな。
「後は、この写本を如何するかだよな。とりあえず婆様達に渡すとしても、色々忙しそうだから後回しになりそうだけどな」
とりあえず、婆様に渡しておこう。別にこれで魔法が使えるようになる訳じゃないだろうけど、何か魔法についてヒントになれば良いしな。
そんな風にやる事をやっていたら、協会からの呼び出しがあった。
さてさて……一体なんの用事なんだろうね。近くに何か発見したとか、ダンジョンで何か起きたとかじゃなきゃいいけど。
ブックマーク・評価・観測・誤字報告ありがとうございます!!
因みに、写本しつつ何故この速度でできたか、魔法便利って事ですね。(始めの内は力が入りすぎてバキ! や、ビリ! 何て事も……)




