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百二十八話

 さてさて、今日からが本当の意味で、ダンジョン探索の再開と言った所だろうか。

 昨日まではの探索は、クリアしてきた階層に変化が無いかの調査だ。そして、十一層からは攻略などしてない場所になる。まぁ、十一層に関しては少しだけ情報を収集してあるけどね。


「たしか十一層は、木々に剣を持ったゴブリンにウルフが隠れて奇襲だったっけ」


 夜中の内に攻略ノートで復習をした内容を思い出しつつ、ダンジョンへ潜る準備をして行く。

 メモ帖に書かれてた内容からすると、石川の婆様が花関連を多めに取って来て欲しいと書いてあるけど……サンプルのデータを見る限りだと、現状であれば普通に地上にも咲いている花が沢山だ。


「ダンジョンオンリーの植物は無さそうだな。新しい物が無いか調べていく方が良いだろうけど、有るとしてももっと深い階層だよな」


 それに、婆様達ならもう既に調査済みだろうから、再度入手する必要も無いとは思う。まぁ、念の為に手紙に書いて、如何するかを聞いてみた方が良いだろうから、明日の便で村へと手紙を送ってもらうとするか。


 準備に関しては、草原と木々が在る場所と言う事で、メインに使う武器を剣鉈と盾にしておく。草原側ならポールウェポンはベストだけど、森林側であれば長物は邪魔。スコップならどちらでも使えそうだけどな。

 それに、再度ダンジョンへと潜ってからは、スコップを使ってるんだけどな。まぁ、ポールウェポンがバージョンアップして無いから仕方ない。それもこれも、研究班が新武器開発に勤しんでたからな。


「そのお陰で、新しい武器の道が見えたんだけどね。ポールウェポンの強化は流れちゃったんだよな」


 俺の武器だけに付きっ切りになって貰う訳にもいかない。当然、他の人の武器やら街からの発注だってある。まぁ、新武器のテスターってのも楽しいし、スコップと剣鉈と盾に関しては、バージョンアップされてるので問題は無い。

 そう言う訳で、ポールウェポンは現状だと倉庫行き。誰かに上げても良いんだけど、アレを使いこなせる人っているのかね? 俺も全然上手く使えてなかったと思うしな。

 

「さて、準備はこんなものかな。武器よし道具よし防具よし! それじゃ、朝食でも食べて最初の予定をこなしますか」


 ダンジョン前の拠点で割り当てられてる部屋をでて、食堂へ行き朝食を頂いた後、挨拶もそこそこにダンジョンへと向かう。




 ダンジョン前では、今からダンジョンへと潜ろうとする人達が列を作っている。


「なんと言うか、行列の出来るダンジョン? まぁ、割り込みとかが無いのは見ていて気が楽だけどな」

「そうですね。皆さん順番をしっかりと守ってくれて、協会側としては本当に助かりますよ」


 後ろから入谷さんが、行列の感想についての呟きに反応をして来た。まぁ、居るのは解ってたけど、行き成り声を掛けて来るとか、驚かせるつもりだったのか?


「入谷さんおはようございます。まぁ、行き成り背後からはどうかと思いますけど」

「あはは。白河君は気が付いてたじゃないですか、驚いてくれなくて少し残念ですよ」


 あぁ、やっぱりそういう積りで背後から声を掛けて来たのか。其れにしては気配が洩れてたから、凄く解り易かったんだけどな。


「おや? そんなに解りやすかったですか? 結構気配を消すのには自信が有ったのですけど。因みに、この行為って守口さん達もやってるんですよ。ほら、あそこを見てください」


 入谷さんが指を指した方向を言われるままに見てみると、守口さんを筆頭とした数名が、色々な場所で後ろから声を掛けていた。

 反応は様々で、驚く人や、逆に驚かせようとする人など……まぁ、実に多種多様と言った所だ。


「実はですね。こう言った場合だと皆さん割と気が緩みすぎてますので、ちょっとした抜き打ちテストって事で、お遊びがてらにやってるんですよ」

「それは……因みに驚いた人はどうなるんですか?」

「イオ君との鬼ごっこですかね。常に気を張れとは言いませんが、自分の周囲ぐらいは、直ぐ察知できる様になって貰う方が良いですから」


 無意識でも気配を察知しろって事かな。まぁ、ここはダンジョン前だし、気を緩め過ぎるのはどうなんだ? って話も有るからな。

 見ていて、失格と言われた人達は少しションボリとしている。まぁ、お昼過ぎからイオとの鬼ごっこだけで良いんだから、其処まで落ち込む必要は無いと思うけどね。


「そういえば、今日はズーフと会える日のはずですけど、姿とかって見ました?」

「いえ? 私も今此処に来たばかりですから。もし彼が居るとすれば、ダンジョンの入り口附近じゃないですかね?」

「前までは瘴気が有る部分に出てきてましたからね。瘴気が無くなった以上何処に出てきてくれるのやら」


 入谷さんと顔を合わせて、ズーフに付いての話をしていると、やはりと言うべきか、周囲の人達(主に研究班の人)も、今日になってズーフの姿を見た者は居ないようで、彼を探している人も居るようだ。

 探している……と言う事は、恐らくダンジョン入り口附近でも、ズーフは出現して居ないのだろうな。


「これは……やっぱり瘴気があったから、外に出て来れていたんですかね」

「そう見たほうがよさそうですね。さてさて、少し困りますね。お聞きしたい事が有ったのですけど」

「あー、俺も聞きたい事が有ったんですよね。これは、ダンジョン入り口に入っても居ないようだったら、五層に挑戦する人に頼んだ方がいいかも?」


 俺が五層まで行って会えれば良いんだけど、今まで五層のボス部屋では再会した事が無いんだよな。さて、どうしたものか。


「とりあえず、ダンジョンの中を探して見ますよ。とは言っても、入ってすぐと五層ぐらいしか探す場所はありませんけど」

「いえいえ、それで結構ですよ。もし会える場所を発見したら報告お願いしますね」


 そんな訳で、今日やる事が少しだけ増えた。とは言っても、直ぐ終わらせる事が出来る内容だけどな。




 ダンジョンに潜る列が進んで行き自分の番に為ったので、先ずは普通に一層の入り口に入り、ズーフが居るかどうかを探しつつ、声を出して呼んでみる。


「おーい。ズーフ聞こえるかー? 少し聞きたい事があるんだけど、ダンジョンの外に居ないから、何処に行けば会えるんだ?」


 ……うん、声が虚しく響くだけで終ったな。と言う事は、一層には脚を運んでないと言う事か。まぁ、もう少しだけ探したら五層へと向かうとしよう。

 と、意気込んだ物は良いものの、正面から人が数名此方へと向かって来た。どうやら、外に出るみたいだけど、ダンジョンを探索しなくて良いのだろうか。


「お? 白河じゃないか! ズーフと聞こえたから戻ってきてみたら、白河も探してたのか」

「影山さんお久しぶりですね。もしかして影山さん達も彼を探して?」

「おう、俺達は研究班がズーフに会えないからと、調査を頼まれてな」


 なるほど、確かに影山さん達は村で最初に作られた、調査部門のメンバーだからな。ズーフ捜索の人選としては完璧だ。

 それにしても、奥から戻って来たと言う事はだ。


「一層では見なかったんですね」

「あぁ、そう言う事だな。となると、五層に向かった方が良いのか、其れともダンジョンの外をもう一度探った方が良いか……悩ましい話だ」

「あー……それなら俺が五層に向かいますよ」

「良いのか? 白河は十一層に向かうんだろう?」

「五層に行ってボス部屋を覗いて来るだけですから。その後はどうせショートカットを使うだけですし、一度戻るぐらい時間的には誤差ですよ」

「そうか、なら俺達は一度外回りを調べてくるとしよう。瘴気があった範囲を考えれば……白河が戻って来るタイミングで、ダンジョン入り口辺りでの合流になりそうだな」


 まぁ、本当だったら五層からそのまま十一層に行く予定だったけど、報告を待っている人が居るなら、一度戻るべきだからな。それにしても、話を聞きたい人は結構多いみたいだな。

 ズーフが持っている情報は基本的に、異世界についての情報だ。その違いで色々と気になる点が研究班には多いのだろう。まぁ、俺も気になる点が一杯あるからな。研究する人達ならばもっと有って当然か。

 さて、五層でズーフと会えたら良いんだけど、どうなるやら。




 一度ダンジョンから出て、ショートカット側へと進む。此方側はどうも並んでいる人が居ない。

 恐らくだが、全員が一層からやり直している人が多いのだろう。その為に、ショートカット側には列が出来なかったんだろうな。


「ま、お陰で気楽に行ける訳だけど」


 ショートカット側の扉を開けて、一気に階段を降り五層ボスの扉を開ける。

 このボス部屋直行の扉は開けると、ボス部屋に入る扉の横に扉が出現するので、ボスに挑戦している人が居ても、一切問題が無いのは助かる。まぁ、ボス戦中に扉から出たら、気まずいだけだからな。


「さて……ズーフが居るかどうか、居てくれると良いんだけどな」


 ボスに挑戦している人が居ない様なので、扉を開けて椅子がある場所まで進んでいく。

 一度ズーフの試しをクリアしたからか、最初のような演出が無いのは少し残念だが。まぁ、一々あの演出があるのも、また微妙な話ではあるな。


 椅子までたどり着くと其処には願いが通じたのか、コボルトが椅子に座って此方を見ていた。


「ヤハリ来タカ。本来デアレバ、試練ヲクリアシタ者トハ、此処デ再会スル事ハ無イノダガ。今回ハ特例ガ認メラレタカラナ、マッテイタゾ人間……イヤ、白河ト言ッテイタナ」

「こんにちは。やっぱり五層で会うのは本来だと無理だったんですね」

「ソウダナ。トハ言エ、瘴気ノ件デ色々ト有ッタカラナ。一度ダケ許可サレタノダヨ」


 なるほど、ズーフはダンジョンの外へ瘴気の調査に出てた訳だし、其れが解決すればダンジョン外へと出れなくなる。が、その際に協力をしていた俺達と、色々と話をする必要がある為に、五層での再会を一度だけ許可されたのか。


「ただ、そうなると、今後はお互いの情報交換が出来ないと言う事で良いんですかね?」

「本来デアレバナ。正直色々ナ事ガ起リスギテ困ッテイル。ソノ内結論ガ出ルダロウガ、一応ハ今回デ最後ト言ウ事ニハナルナ」

「そうですか、少し残念ですが仕方ない話でしょうね。本来ならそういった機会すらない訳ですし」


 これなら、入谷さんや影山さん達が、聞きたいと言ってた事を聞いておけば良かったか。

 とは言え、過ぎたことは仕方ないし、ズーフ達側に結論が出れば変わるかもしれないからな。それに、最悪五層チャレンジをする人達に聞きたい事を頼めば良いし。

 とりあえず、今は俺の聞きたかった事を聞いておくべきか。


「あのですね。一つ聞いておきたい事が有るんですけど」

「フム、ドンナ内容ダ?」

「モンスターが一匹仲間に居るんですけど、そのモンスターはダンジョンに入っても大丈夫ですか?」

「……ソウカ、魔物ノ仲魔ヲ手ニシタカ。ソウダナ、ダンジョンニハ入レヌ方ガ良イダロウ。我ミタイナ存在デアレバ問題ハ無イガ、タダノ魔物デアレバ、ダンジョンニ呑マレ支配サレテシマウダロウナ」


 ふむ、ならイオは連れて来ない方が良いのか。それにしても、ダンジョンにはモンスターの意思を奪って、ダンジョン専用のモンスターに変化させる何かがあるのか。

 ん? 待てよ。そもそも、モンスターはどっちが先だ? 地球では確かに、ダンジョンからモンスターが地上へと出て、その出たモンスター達が増えた訳だから、ダンジョンが先なんだけど。


「フム。ダンジョンガ先カ魔物ガ先ナノカ。ソノ答エハ、ワカラヌナ。我等ヤ元ノ世界ノ人ガ、色々ナ情報ヲ残スヨウニナル前カラ、ダンジョント魔物ハ存在シテイタカラナ。神ノミゾ知ルト言ウヤツダ」


 ふむ、異世界には神様が実在するのか。となると、地球にはどうなんだろう? まぁ、もし居たとしても、完全に傍観者的な立ち居地だろうな。こんな状態になっても動いてないんだし。

 さてと、それじゃ聞きたい事も聞くべき事も聞いたから、後はこの情報を地上に戻って伝えないとな。

 ズーフとは、またそのうち会えるだろうし、今はお礼だけ言っておこう。

 

 それにしても、イオがダンジョンに入れないとなると色々と面倒だな。まぁ、イオと敵対はしたくないから、絶対にダンジョンへと入れないようにしないと。イオは、そのうち俺に着いて行きたいとか言い出しかねないからな、適度に外で一緒に暴れないと行けないか。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[気になる点] イオはダンジョンから出たら自我ができたって理解してたから入ろうとはしないと思う
[一言] 鳥が先か卵が先かみたいな話は意味ないよね(笑)
2021/02/08 00:42 退会済み
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