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百二十七話

 入谷さん達に、六層から十層までの情報を報告。

 変更点が無いので、説明に時間を掛ける事が無かった。まぁ、ノートを渡して「この情報のままですよ」で済むからな。

 それに情報も十層までしか無いので、守口さん達からすれば重要な情報と言う訳でもない。今後この情報が役に立つのは、新しくダンジョンに入る人達だろう。

 ただ、そんな人達でも訓練を先に行うと、村と街の上層部で話し合いをしたそうなので、五層までならば情報が無くても簡単にクリア出来るだろうな。まぁ、ノートを見れば時間短縮にはなるだろうけど。


 協会支部で報告した後は、武器をモンスター相手に使った感想と改良点の内容を纏めて、要望書を書き上げ、村の研究所に送ってもらう。

 手紙のやり取りをする為の、郵便局みたいな施設を作ったんだけど……現状だと、その手紙を持って村と街、それと各拠点を走り回ってるのはイオだ。

 まぁ、イオのスピードが異常と言う事もあるけど、イオならば朝に出発して昼前にダンジョン拠点に戻ってこれるからな。とは言っても、何時かはイオに頼らなくて良い方法を作らないと行けない訳で、その事についても結構な頻度で、話し合いが進められているみたい。


「まぁ、一番いいのはイオみたいなモンスターを、テイム出来る事なんだろうけどね」


 出来る事なら大きめの鳥型モンスターであれば完璧だろうな。空輸が出来れば、もっと行動範囲も広げれる事になる。

 まぁ、現状だと行動範囲を広げたら、人手不足になりそうだけど。開発が終り次第だけど、行動するなら前に〝神樹の森〟を調査してた時に見つけた、もう一つの街に行く事かな。

 その街に関しても、入谷さん達も気にしてるみたいだけど、現状だとオーク達の残党狩りや周囲の調査にダンジョンの件と、やる事が一杯で手を回せないらしい。


 とりあえず、ダンジョンから戻ってきてからの行動で、報告やら気になった点などはこんな所だろう。


「それにしても、随分とやりたい事は増えるね」

「確かにね。ダンジョンに潜れば魔石が手に入るから、色々と解決するだろうと思ってたけど、解決の目途が付いた分さらに課題が増えたからね」

「モンスターに対する戦力アップと、生活水準の向上を目標にしてたからね。でも、なんで行動範囲を広げる必要があるの?」

「あー、ほら其処は村にも街にもだけど、違う街とかに避難してる家族やら親戚と再会したい人もいれば、純粋に人手が欲しいって言う上層部の願望もあるから」


 俺の父親も会社へ出勤していたからな、避難したのならば違うシェルターに居るはずだしな。村に近い街には居なかったから、もし帰宅途中だったのなら二つ目の街に居るかもしれないな。


「それ以外にも、他のダンジョンやらモンスターの情報は、其処の協会の人達に聞いたほうが良いからね。……其れこそ、燃料やら香辛料のダンジョンだって在った訳だし。日本というか、村や街だけでは手に入らない物資を、調達も出来るかもしれないからね」


 足りない物は沢山あるからな。その為には、色々な場所まで進出しなければいけない。

 ただ、その為の問題として立ちふさがる壁が、整備された道が色々な理由で破壊された事と、モンスターが蔓延っている事だ。

 戦闘班を遠征させれば良いけど、遠征させればさせるだけ、防衛力やダンジョン探索要員が減るし、中継拠点を造ればその分の人員が必要。


「まぁ、そう言う訳で今もまだまだ上層部の人達はてんてこ舞いって状態だね。遠征した先の街が友好的なら良いけど、違ったら其れこそ無意味どころかマイナスだし」

「こんな状態なのに、協力し合えない人って居るの?」

「そりゃ居るでしょ。寧ろこんな状態だからこそ、自分が支配者になろうとかって、考える人だって出てくるかもね」


 ある意味、力こそ全て! と考える、お目出度い人が出てきても可笑しくない。そう、某世紀末漫画みたいに「ヒャッハー」とか言いながら、シェルター内で暴れている、元・探索者や自衛隊やら警察だった人達がいたとしても、まったく可笑しくない状況。

 俺達がお前らを守ってるんだぞ! なんて考える。うん、一歩間違えれば人はそっち側へと簡単に転がっていくからな。

 そう考えると、隣の街がそちら側に堕ちて無くて良かった。幾ら村の防衛システムが充実し出しているからと言っても、それはモンスター相手用で対人用じゃないからな。彼等がその気なら、簡単に制圧されていた未来もあったかもしれない。


「兎に角、今は地力を固めるのが優先だから。俺達はダンジョンにガンガン潜れ! って、話になると思うよ」

「……私は訓練優先で潜る事が出来無いんだけどね」

「其処はほら……イオ先生のお許しが出れば潜れるから」


 そういえば面白い事に、美咲さんのやっている訓練を見て、守口さん達の部下や村からダンジョンへと潜りに来た人達が参加してるんだよね。

 訓練の時間は、イオが仕事から帰って来て昼食を食べた後だ。イオとしては皆が遊んでくれるから凄く楽しそうだけど。

 守口さん曰く、「これほど探索と隠れる能力が身に付く訓練は無い!」だそうで、彼のお墨付きならばと皆が参加しだした。

 入谷さんと守口さんがその光景をみて、黒い笑みを見せつつ、なにやら話をしてたんだよな。少しだけ聞こえた内容が、「これで斥候要員が増える」とか「総員忍者侍計画」とか「これは、ダンジョンに入る前の研修として必須項目とするか」だとか。まぁ、全員が探索スキルを身につければ、生存率は上がるから異論は無いんだけど、言い方どうにかならないのかな。



 閑話休題(それはさておき)



 今日のやるべき事は終わったので、後は夕飯を食べて休むだけだ。

 装備のメンテナンスも自分で出来る範囲は終らせたので、これも問題は無い。まぁ、その内に村へと戻って、フルメンテナンスを頼まないといけないけど。

 今回、割と盾を酷使したからな。自分で見た限りだと問題は無いけど、何処かしら不具合が出てるかもしれない。うん、盾に乗ってボード代わりに使い、地面を滑ったりしたからなぁ。

 とりあえず、明日は十一層だ。っとその前にズーフと会って話をしないとな。イオがダンジョンに潜って良いかどうか聞かないと……と言うより、瘴気が無くなったしズーフって出て来れるのか? まぁ、明日になれば解るか。

 さてさて、明日の予定も決まったし、後は寝るとしますか。




――村では――


 ダンジョンに潜る事が可能となり、村では結構な人達がお祭り騒ぎになっていた。

 協会内では職員や戦闘班が、漸く最初の目標が到達出来たと、かなりの盛り上がりを見せている。


「これで魔石不足が解消するんだな!」

「そうね! それに、私達もダンジョンに潜って能力アップが出来るわよ!」

「それもあったな! 如何いう訳か、ダンジョンで戦闘したほうが、色々と成長する気がするんだよな!」


 モンスター、それもオークの強さで言うならダンジョン外の奴等の方が強かった。当然その分、倒した時の成長率はその固体で考えるなら上である。

 ただし、ダンジョン内は魔力の濃度が濃く、それは人にも作用する為か、ダンジョン内に居たほうが、人が戦闘した時、物を食べた時、モンスターを討伐した時など、その時に取り込む魔力や肉体の作用が格段に違う。

 結果、ダンジョン内だと、ダンジョンの外で同じモンスターを倒した時よりも、その能力向上は目に見えて違う。それこそ、ダンジョンの外で手に入る経験値を一だとするなら、ダンジョンの中なら三から十は有るだろう。

 多少ランダム性が大きいのは潜るダンジョンや、ダンジョンの中でも濃度の差があるからだ。


「は! 魔石が大量に手に入れば、俺達の武器も強化されるんだよな!」

「確かに、武器や防具は強化されるでしょうけど、確か私達が最後に潜った階層は一桁台のはずよ?」

「あー……最後にダンジョンで見た敵ってウルフだったような……」


 もしその階層で魔石を獲って来ても、日常品の燃料程度だ。まぁ、それが全く要らない訳ではないので、村としても獲ってきてもらえば大歓迎ではあるのだが。


「これは、一刻も早くダンジョンを潜って行かないと行けないわね」

「低い階層は、新しく潜る奴等に任せれば良いからな。とりあえず、目指せ十層と言った所か?」

「たしか……十層だとオークが出るはずよ」


 協会内において、元々ダンジョンに潜っていた人達が集まり、ダンジョンの攻略について話し合いをして行く。とは言え、彼等は村の防衛やら狩猟なども勤めているメンバーだ。当然ダンジョンに入り浸れる訳でもなく。


「貴方たち……ダンジョンも良いけど、周囲の調査や防衛も頼むわよ?」

「あ、別に忘れてた訳じゃないですよ!」

「そうそう! 俺達も強く為りたいからな! つい話が弾んだだけで!!」

「ふーん。まぁ、ダンジョンに潜るのは許可制というか、交替制にするからね? まぁ、今までも狩猟と警邏と休憩とって分けてる訳だし、其れにダンジョン探索が入るだけだから、良いわよね」

「まぁ、探索メインで出来ないのは辛いけど、仕方ないか」

「村やら拠点が襲われたら、潜ってても意味が無いからな」


 彼等の強化にはダンジョンに潜るのが最適なのだが、強くなる理由が無くなっては意味が無い。

 実際、一度彼等は様々な物を一気に失った。そして、漸く取り戻しつつある現状で、自分達が目を離している隙に、また失うのはかなりの恐怖である。

 その為に、ダンジョンに潜るという事以外の仕事を振られても、其れがどれだけ大切かを理解しているので、どれだけダンジョンに潜りたくても文句を言う人は居なかった。


「それじゃ、しっかりとダンジョンに潜るメンバーで書類作っておいてね。少し色々と調整する必要があるし、ダンジョンに行ってる人が誰か此方でも把握しないといけないから」


 品川がそう言うと、早速と言う感じで協会内に居た人達が動き出した。


「ふぅ……まったく。これから調整作業やら、魔石の使用計画やらでこっちは大変なんだけどね」


 そんな事を呟くも、品川もまた、目標の一つが到達できた事が嬉しくないはずも無く、その足取りはとても軽いもので、まるで空中を散歩するかのように自らの部屋へと向かって行った。


「品川の嬢ちゃん!! ダンジョンが開放されたんじゃろ! 研究班に回す魔石はどの程度になるんじゃ!!」


 勢い良く入り込んできた研究室の長である石川の声に、思わず軽かった足が止ってしまう品川。


「あぁ……まぁ、こうなるわよね。魔石が大量に手に入るとなれば、研究肌の人達が自重できる訳が無いか」


 これから品川の執務室では、二人の盛大な魔石争奪戦争が行なわれるだろう。

 とは言え、魔石不足も解消されるとなれば、其れもまた面白いかな? と考える品川の顔には笑みが浮んでいた。




 因みに、石川の顔はなんとしてでも魔石を大量にゲットしてやると、鬼気迫る表情であり、その顔を直視した品川が少し引いたのは言うまでも無い。

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