表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/889

百二十六話

 日が昇り朝食を食べた後に、美咲さんのリスキルモードを調べてみた。まぁ、調べる為に軽く運動をしてから、二人で模擬戦をやってみた訳だけど。


「あー……やっぱり魔力を無意識に使ってる感じだね。直ぐに疲れるのも調整が出来てないから、かなり無駄が有るみたい」

「うーん、自分では解らないんだけど、魔法が使えないのに魔力って使えるモノなの?」


 体に作用する魔法は、身体強化や回復などが有るのは確認している。というか、俺が使える。

 ただ、感覚的な物に関しては別の話で、一切その手の魔法を覚えてないが、ダンジョンに潜ったりモンスターを探ったりとしている内に、出来るようになっていた。

 最初の頃は、ダンジョンで拾った魔道具のモノクルを使ってたんだけど、少しずつ段階を踏んで色々と解るようになったんだよな。

 そして、美咲さんは第二段階辺りだろうか? 一番最初は魔力の察知。次に察知能力が強化される。まぁ、この強化段階が幾つか有った気もするけど、そのうちモノクルを使った時のように、見える状態になる。この段階だと状況によっては、嗅覚や聴覚で色々と知れるパターンもある。……まぁ、特例としては瘴気がある訳だけど、あれは魔力察知が出来なくても、見えるし聞こえるし臭いも理解できる実例だ。


「隠密行動の訓練を受けたからだろうね。前よりもモンスターを探す力が上がったんだよ。それで、無意識に魔力も使うようになったんじゃないかな」

「なるほど。でもあれだね……訓練のやり直しかな」


 美咲さんは当分の間、索敵の訓練を繰り返す事になるだろうな。ダンジョン内で疲労して倒れましたとか、笑い話にもならないからな。使いこなせるようになって貰わないと。


「まぁ、訓練はあれだよ。イオと鬼ごっこや隠れんぼでもすれば良いんじゃないかな?」

「……一切勝てる気がしないよ」


 そりゃそーだ。俺も勝てる気がしない。とは言え、イオとその手の遊びをすれば、かなりの訓練になるのは間違いが無い。……俺も偶にやってるからな。一度も勝った事なんて無いけど。

 まぁ、そう言う事なのでイオを呼び寄せて、美咲さんの訓練に付き合ってもらう。彼女はイオのお許しが出るまで、ダンジョン探索は禁止だな。

 それにしても、イオは遊んで貰えると理解したのか、凄く楽しそうだ。凄く機嫌が良さそうに尻尾を振り回しながら、美咲さんを追いかけて行った。

 ……ふむ、最初は鬼ごっこを選んだのか。きっと、美咲さんは森の中で、イオから奇襲を受け、肉球によるプニプニアタックに吃驚するに違いない。


「さてと、美咲さんに関してはイオに任せて良さそうだな」


 ま、そのうち自分の意思で調整できるようになる筈だ。そうしたら、ソナー探索の方法も教えるとしよう。両方使いこなせば、汎用性が高くなるからな。

 常時型は範囲を狭くして、奇襲を防ぐ為にしつつ、広範囲をソナー型で探るとか。まぁ、色々使い道はある。

 とは言っても、それはまだ先の話だ。美咲さんとの約束も完了した事だし、現状だと俺が手を貸す必要も無いから、俺はダンジョンの調査へと行くとしますか。




 ダンジョンの入り口。その横にあるショートカット用の扉を潜り、下へと続く階段を降りていく。

 昨日は五層まで調査を終えたから今日は六層からだ。

 六層の扉の前で、一度攻略ノートを開きデータを再度確認しておく。


「そうそう、六層はマッピングの意味が無かったんだったな。それで、ゴブリンが基本だけど狼も居たか。とりあえず進路は川の方に向かって歩けば、ゴブリンが二桁出る場所があるはずだから、そいつ等を倒すと次の階層へ行ける大岩が出現だったな」


 さてと、それじゃ一気に突っ走りますか。此処で確認するのはゴブリン達を倒した時に、次の階層への扉がでるかどうかだからな。


 草原を川に向かって一直線に走り、大量のモンスターが居る気配がする場所を探る。途中で出てきた奴等は全て無視だ。というか、ゴブリン程度じゃ追いつけないからな。途中で遭遇した狼に関しては、速度を落さずに走り、ゴブリンを見つけ次第なすりつけて行く。モンスタートレインをしながら、モンスター相手にMPK。……人間が居ないから出来る内容だな。


 そんな風に草原を突き抜けるが如く走っていくと、モンスターの群れがある場所を発見。

 即座にカイトシールドを握り、その群れへと飛び込んでいく。


「ちょっと、通りながら狩らせて貰いますよっと!」


 脚に身体能力強化の魔法を掛けて一気にスピードブースト。勢いに乗ったまま、盾を使ってゴブリン達を撥ね飛ばしていく。


「よくある、シールドチャージって奴かな。ま、これで一気に半分以下だな!」


 行き過ぎないよう適度な所でスピードダウンしつつ、カイトシールドからスコップへと装備を変更。

 シールドチャージをして来た道を少しズレつつ戻るように走りながら、スコップを振り抜きつつ、ゴブリンをホームランにして行く。


「あ……しまった、あそこまで飛ばしたら魔石回収出来ないじゃん」


 最後の一匹を気分良くホームランにした後に、失敗に気がついた。まぁ、ゴブリンの魔石なら……うん、多少なら問題ないはずだ。それに、今回は調査だからな! 大岩の階段も出てきたから問題ないない! ……はぁ、失敗したなぁ。


「とりあえず、此処も変化無しっと。七階層を調べますか」


 まぁ、落ち込んでても仕方ないので、気分を立て直して七階層を調べるか。


「たしか、七階層は……陸地にゴブリンと狼。川にワニとピラニアっぽい魚だったな。それで、川の向こうへと飛び越えたらクリアだったな」


 とりあえず此処での確認は、川にワニとピラニアモドキの確認。ソレとゴールが川の向こうに出現するかどうかだな。


 先ずは川まで進んで行き、ゴブリンの死骸を川に投げ込んでみる。そうすると、魚達がゴブリンの死骸に群がるように、集まって来た。

 次に、川岸にも死骸を投げてみると、ワニが川から飛び出してきて、ゴブリンの死骸に喰らい付くと、死骸を咥えたまま、川の中へと戻っていった。


「うん、モンスターに変化は無いな。そういえば、ワニもピラニアモドキも地上には進出してなかったな」


 こいつ等は、川が無いと進めなかったり、陸地は歩けるけどとんでもなく動きが遅い奴等だからな。ダンジョンから出なかったんじゃなく、出れなかったんだろうな。

 まぁ、そう言う訳でこいつ等の素材はダンジョン外には無いのだが……。


「態々狩って持ち返る必要も無いか。欲しいなら狩りに来たら良いだけだしな。今はスルーしておこう」


 そう言う訳で、念の為にゴブリンの死骸を利用して、ワニとピラニアを誘導しておく。まぁ、川を飛び越える訳だ。間違いなく飛び越えれるとは思うけど、何が有るか解らないからな。川に落ちても良いように、モンスター空白地帯を作っておかないとね。


「さて、じゃぁ助走つけて飛びますか」


 前の時は棒高跳びの要領で距離を稼いだんだっけ。と、前に飛んだ方法を思い出しながら、一気にスピードを上げてからのジャンプ! 空中にて、川の中にいるワニと目が合うけど……ワニは、「あれは獲れないな」と言うような顔で諦めたのか、先ほど俺が投げ込んだゴブリンが他にも居ないかと、キョロキョロ探し出した。

 なんというか、その瞬間だけスローに感じたが意識を陸地に向けると、一気に地面が接近して来る。


「おっと!」


 盾を使って地面をすべるように着地。まるで、ダンボールで斜面を滑り降りるような感じだったが、別に斜面と言う訳でも無いので、直ぐに勢いが無くなり停止した。


「よし、着地成功。さて、此方側に来たら大岩が出るはず何だけど」


 問とも言えない呟きに答えるかのように大岩が出現した。よし、これも変更が無い。というか、もうこれってダンジョンに変化は有りませんでした。って言っちゃっても良い気がするなぁ。まぁ、変化が有った時が怖いから、最後まで調べるけどさ。


 そんな事を考えつつも、八層へと下りて行くと、目の前には膝ぐらいまで背丈のある草のフィールドだ。


「あぁそうだった、確か此処は草刈しながら進んだんだったな。それで、余りにも面倒だったから一度もどって、除草剤を婆様に作ってもらってからリベンジしたんだっけ」


 たしか、モンスターの気配察知がまだ全然出来なかった頃だった。その為に伏せたモンスターを見つけるのが大変だからと、視界を良くする為に草刈や除草剤といった手を使ったんだよな。


「ま、今の俺なら隠れているモンスターも見つけれるからな。一度このまま進んでみるか……攻略ノートを見ると、モンスターが大量に出てくるようになって、上位のゴブリンが出てくるっと」


 なら、索敵をしつつ駆け抜ければ良いだろう。……まぁ、見つけたからと言って倒すとは限らないけど。


 そんな訳で、草を掻き分ける様に走り、カイトシールドを構え、道行く先に邪魔なモンスターが居れば、撥ね飛ばして行く。

 どんどんとモンスターの密度が濃くなって行くが、一向に問題は無い。全て撥ね飛ばすだけだ。そして、それでスピードがダウンするなんて事も無い。

 まぁ、悲惨な目に合っているモンスターは居るみたいだが……うん、飛ばされてきたモンスターが激突して、其のまま動けなくなるヤツとか。


 そうして、一際モンスター達の密度が濃い所に突入すると、ガン! と言う音と共に、軽く吹っ飛ばされる他より大きいゴブリンにぶつかった。


「あら……ボスを撥ねちゃった? まぁ、他のモンスターと違って、気持ちよく飛んでは行かなかったみたいだけど」


 とは言っても、間違いなくボスゴブリンは虫の息と言った所だ。何せ、立ち上がってくる気配が一切無い。……前に戦った時は結構良い戦いをしたんだけどなぁ。

 そんな事を考えていると、止めを刺す前にボスゴブリンが、その体を光の粒に変え消えて言った。


「いやいやいや! まさかシールドチャージ一発とか。それは無いでしょう!?」


 仮にもゴブリンの上位だぞ? それをこんな呆気なく? まぁ、階層自体深くないから、こんなものなんだろうか? 昔を考えると少し悲しいけど、まぁ、強くなったって事だな。


 兎に角、次の九層のチェックだな。攻略ノートによると、ここはゴブリンの集落となっている。


「あー……此処は、暗視ゴーグルを装着して、夜中に火計をやったんだったっけ。で、その後は狙撃と暗殺行動だったはず」


 とは言え、さっきシールドチャージで一発だった、上位ゴブリンの数が増えた程度だ。それなら、何も気にする事なく正面突破で行けるだろうな。


 そうと決めると、盾と鉄串を構えててから、脚力を魔法でブーストし一気に突入!

 途中で鉄串を投擲して、一匹の頭を撃ち抜く。そして、ソレに気を奪われた隣のゴブリンをシールドチャージで撥ね飛ばす。


「よし、このままの勢いで集落に入り込みますか!」


 集落の中は割りと狭い空間だ。だから盾と剣鉈を使い、一気に突入しつつゴブリン達を捌いて行く。

 まぁ、このレベルなら物の数じゃない。オーク達に比べたらな……やっぱり数段も落ちる。それに、武器の性能も上がってるから、寧ろここで問題が起きたら、そっちの方が大問題だ。


「よし、最後の上位ゴブリンも倒したし、これで次への道が出来るはず」


 少し待って、ゴブリン達がその姿を光の粒に変え消え魔石を残していく。そうやって残された、魔石だけ確保していると、十層への扉が出現した。


「さて、十層だな。調査は順調! というか一切の変化無し! さて、十層はどうかな?」


 攻略メモを見ると、十層の項目にはゴブリンとオークの戦争となっている。たしか此処では、大きい落とし穴を作って、戦争に介入したんだっけ。

 オークとオークソルジャーが初めて出てきたマップでもあるな。まぁ、オークといえばもっと大量の相手と戦って来たしな、それも更に強いキングとも戦った訳だし。まぁ、こっちも大人数で戦ったんだけどさ。


「その事を考えれば、そうそう問題じゃないよな」


 さて、では突入するとしますか。鉄串のストックは大量に持ってきてあるからな。先ずは狙撃の連射で仕留めていくとしようか。


「それじゃ……開戦だ!」


 カイトシールドを地面に転がしておいて、両手で鉄串を投擲。以前と違い、やはりオークでも一撃でその肉の鎧を撃ち抜き、絶命もしくは行動不能にまで持っていけている。


「やっぱり、研究班の進歩も凄いね」


 素材の使い方から魔粉の分量などなど、ノウハウが蓄積された為に、武器の性能が前ダンジョンに潜っていた頃と段違いだ。恐らく、あの当時使っていた素材を使っても、オークを貫く事は出来るだろうな。

 そんな鉄串の投擲で、オークとゴブリンの数を一気に減らし、鉄串がなくなる頃には、もう片手で数えるぐらいしか生き残っていない。


「さて、此処からは盾と……新武器一つ試しますか」


 試す武器は、片手持ちの筒の奴。まぁ、あの時石玉を飛ばすんじゃなく、武器として発動させた魔道具だ。


「さて、魔力の消費量は解決したけど、威力はどうかな?」


 皆で悩んで頑張った武器だ。……まぁ、悩んだのは武器名だけど。とりあえず、マナブレードと開発した研究員が名付けた。……剣状以外の形もあるんだけど、なぜブレードなのか。本人は浪漫だ! で押し通してたけど。


「それじゃ、先ずは石玉のハンマーから行きますか!」


 残っているオークに向かって、魔法で出来た石のハンマーで殴りつける。激しい音が鳴ると、石玉は爆発するかのように砕け……オークに打撃ダメージを与えながら、更に追加で石の欠片が大量に突き刺さった。


「うっわ……これ、一発で修復に魔力使うけど、ダメージがえげつないじゃん」


 爆破した石の欠片は、全てオークへと向かっていて、その全てが体中に刺さっている。うん、打撃でも朦朧とするぐらいの威力はあっただろうに、石爆破で完璧に絶命したな。


 更に風や水の玉も他のオークで試してみると、初手で打撃ダメージを入れ、次に魔法爆破のダメージをオークに与えた。風だと相手を吹き飛ばしながら切裂き、水は相手を濡らしつつ顔に水が張り付くという……何とも恐ろしい結果に。


 そして、残ったオークソルジャー相手には、開発者一押しのブレードモードで戦ってみる。


「ただな……これはもう少し色々と手を加えて貰った方が良さそうだな」


 斬るだけなら……正直剣鉈の方が良いな。ただ、刃毀れをしない。砕けても魔力さえあれば修復される剣という点はでかい。

 とは言ってもなぁ……。


「石剣とか全く切れないじゃないか! これ、完全に打撃武器だろ!!」


 そんな武器で、オークソルジャーを〝撲殺〟して、十層の調査を終了。

 後は戻って報告するだけなんだが、これは武器の修正点をしっかりと詰めたほうが良いだろう。

 現状だと、剣よりも一発で終る魔法爆破モードの方が使い勝手が良いからな。

ブックマーク・評・感想・誤字報告ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

宜しければ下記のリンクもお目を通して頂ければ幸いです

新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 八層のボスゴブリンが撥ねただけで死ぬのなら、六層のゴブリンも撥ねただけで死に、スコップで殴り飛ばすことはできないのでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ