百二十四話
さぁ、ダンジョン探索復活だ!!
さて、ダンジョンに入る前に装備や食料品などの確認。以前マッピングとモンスターについて書き纏めたノートに目を通しておく。
このノートから特に変更が無ければ助かるけどな。まぁ、今回の探索は違いがあるかどうかを調べる為だ。なので、違いがある事前提で調べていこう。
「それじゃ、調査開始といきますか」
「私は単独で何処まで出来るかの確認をしてくるよ。途中で会うかもね」
「そうだね。その時はお互いの調子について話でもしようか」
以前ダンジョンに潜っていた時から考えれば、俺達の能力が随分と上がっている。ただ、その変化を俺は、この間のキング戦以降に随分と理解したが、美咲さんは参戦して無かったからな、案外と吃驚してからテンションが上がりすぎて、調子に乗りどんどん先に進んでしまう可能性もあるだろう。
なら、俺は偶然じゃなく美咲さんに遭遇する方針をとる方が良い。まぁ、一階層から一気に調べて行くわけだしな、間違いなく遭遇はできるだろうけど、念の為に釘を刺しておくか。
「そうだね……とりあえず今回はお互い、別の内容だけど調べ事だし無茶はしないようにしないとね。とりあえず、美咲さんは五層辺りでゆっくりと確認するのが良いんじゃないかな?」
「あー五層か! 確かにあそこなら一本道だし、モンスターも複数出てくるから丁度良さそうだね」
恐らくだけど、一層から五層までは変化は無いと踏んでいる。何せ其処まではチュートリアルだ。それに五層はズーフの居る試練の場所だ。となれば、早々変化があると思えない。
そう言う前提で美咲さんには五層を勧めた。それに、もし一層の時点で変化が見られたら、すぐ五層に行って美咲さんを探せば良いだけだしな。
「っと、その前に以前クリアした階層への移動は出来るのかね?」
「リセットされてなければ良いよね」
そう言う訳で、開放済みの階層に行けるかどうかをチェックしておく。とは言っても、二層がどうなっているか確認すれば大丈夫だろうな。
そんな訳で、二層まで美咲さんと階段を下りて行き、扉が開くかどうかを確認。
問題なく扉が開いたのを確認すると、お互いホッと一安心。
「リセットはされて無いみたいだから、このまま私は五層まで潜って行くね」
「了解。無茶はしない様にね? こっちは、マップの調査をするだけだから駆け足だけどね。とりあえず、もし五層に変化が有りそうなら、待機か外に出たほうが良いかな。その時は一度合流して話し合いでもしよう」
「うん、解ったよ。それじゃ、お互い気をつけようね」
そうして美咲さんと離れ、俺は地上部分へと戻っていき、そのままダンジョン一層の入り口からダンジョンの中へと足を進める。
「さてと、まぁ、入り口を見たところで変化がある訳じゃないからな。マップを見ながら進むとするか」
鞄からノートを取り出して、行き止まりが在る場所から虱潰しに進み調べて行く。
現状だと変化は見られないので其のまま進む。道中に出るモンスターも、ウルフ達なのも変化が無い様ようだ。ただ、野外のモンスター達とは違い、問答無用で襲ってくる。
「これもダンジョンの特性って事か。レベル差が有ろうが無かろうが襲ってくるとはね。野外のモンスターであれば恐怖を感じて逃げ出すからな」
まぁ、襲って来るなら返り討ちにするだけだがな。兎に角今は、どんどんと駆け抜けて行こう。
一層・二層・三層と調査して行ったが、変化は一切無いようだ。
「これなら、五層までは変化が無さそうだな。というか、六層以降も変化が無いと良いんだけどな。まぁ、美咲さんの事は問題は無さそうだな」
村の戦闘班であれば能力的に、五層クラスなら無双できるだろう能力を既に身につけている。
であれば、調子に乗ったりでもしなければ早々問題は起きない。
「それに、美咲さんはお調子者って訳じゃないし大丈夫だろうな。寧ろ、俺の方が自分に言い聞かせないとって話だしな」
それにしても、こうまでモンスターが簡単に倒せると、これが自分の能力か武器の性能か解らなくなるな。どっちもかなり能力が上がってるからな。
とりあえずモンスターの情報に関しても、一切の誤差が無いからな、後は駆け抜けて五層まで突っ走るとするか。
四層のボスをスコップの一撃で首をホームランし、そのまま魔石のみ回収して五層へと足を踏み入れる。
「さて、五層は真っ直ぐ進むだけだからな、一気に走りながらマップを調べただけだから、時間も掛かってない。うん、これなら多分美咲さんとの合流も直ぐ出来るかな」
何せ、五層を進んでもモンスターの陰すら見えない。という事なら美咲さんは、まだ深くまで進んでないという事だろう。恐らくだけど、前にダンジョンに潜って居た時との違いに戸惑い、異常な程慎重になってるパターンだろうな。
それなら、俺として楽な話だからな。兎に角、合流を急ぐとするか。
五層の直線を駆けて行くと、戦闘音が聞こえ一瞬でその音が消える。ふむ、どうやら一撃で倒して行ってる見たいだな。とは言え、そろそろモンスターの出現速度が速くなって行く場所に入って来る。
その証拠に、戦闘で倒す音や歩く音が、短いサイクルで聞こえる様になって来ている。
「さて、此処は美咲さんには悪いけど、少し様子を見させて貰うか。彼女なら調子に乗って、ボスまで突撃なんてしないだろうけど、単独で無双する感覚は初めてだろうし、たがが外れたとしても可笑しくないからな。俺は何時でも止めに入れる様にしておくか」
美咲さんの戦闘を見ていると、どうやら弓でなくランスの方を使っているようで、突きをベースに複数居る時は横に振るい、モンスター達をふっ飛ばしながら前へと進んでいる。
その全ての攻撃が五層のモンスターだと一撃なので、最早ただの障害物になるかどうかと言うレベルだ。
それにしても、美咲さんもなにやら冴えている状態に入っているのか、モンスターが出た瞬間に突撃をし、速攻で倒して居る。
「あの状態で弓を使っての狙撃をしたら、とんでもない成果になりそうだな」
ゲームで言うなら、リスキル状態と言っても過言じゃないプレイだ。……あれをやったら、いろんな人に嫌われるんだよなぁ。まぁ、それは横に置いておくとして、そんなモードの美咲さんが一瞬大きく溜息を吐くと、地面に座り休み始めた。
どうやら、あのモードは色々と疲労が激しいんだろうか。どちらにしても、顔を出して話をするなら今だろうな。
「お疲れ様。なにやら凄いプレイをしてたね」
「あ、結弥君。そっちもお疲れ様! って、見てたの?」
「見てた見てた。リスキルモードな美咲さんだなぁってね」
「……えっと、そんな風に見えたの?」
挨拶と軽い会話からやり取りを初めて、お互いに気がついた情報を交換していく。
とは言っても、別に何か問題がある訳じゃないので、その殆どが戦闘の事に絞られた。
どうやら美咲さんも、以前との圧倒的な差に戸惑ったらしく、最初は異常なほど慎重になったらしいが、慣れて来てからは色々と試してみていた結果、あのリスキルモードに入る様になったようだ。
「ただ、あれって凄く疲れるんだよね……そう言う訳で、今は休憩中かな」
「どういう理由であんな風になるか解れば、自分で色々と調整出来そうだけどな」
「うーん……初めての感覚だからね。また、あの状態になれるかも解らないよ」
ふむ……武器を変えたからなのか、数年ぶりにダンジョンに入って、高濃度の魔力を浴びたからなのか……どちらにしても、魔力的な何かが関わってる様に思える。
もしかしたら、俺やイオがやっている魔力の流れの察知から、モンスターの位置を割り出してる技術と似たものかもしれないな。もしソレなら、手解きするのも簡単なんだけど。
ただイオがどうやってるか解らないし、俺のやり方だと、潜水艦のソナーと同じやり方だからな。もしかしたら、常時発動状態にすれば美咲さんと同じ事が出来るかもしれない。
てか、なんで俺はソナー方式を最初からやってたんだっけ? たしか、魔法に魔力を使うから少しでも節約しようって流れだったかな。
「とりあえず、その技術については地上に戻った後にでも調べるとして、この後はどうする?」
「実はね……五層って私クリアして無いんだよね。あの日本当だったら、お父さん達と一緒にボス攻略する予定だったから……」
あー……なるほど、大災害のあの日に本当ならズーフに挑んでいた訳か。とは言え、それも今とはってはな……。
「それなら、折角だし今日やっちゃう?」
「……そうだね。折角だし行ってみようかな」
ズーフは試練のボスだ。そして、彼との戦いで死ぬ事は無い。負けても一層からやり直しと言うだけ。それに、今の美咲さんならば、ズーフと戦った当時の俺よりもかなり強いのは間違いが無い。
それならば、今までの戦闘よりも、しっかりと自分の力について認識しやすいはずだ。
「ゆっくり休憩しながらついてきなよ。ボス部屋前までは俺が道を作るから」
「うん、解ったよ」
まぁ、この程度ならさくっと倒せるだろうけど、どこかでスイッチが入りリスキルモードになってしまったら、疲労が蓄積されるからな。そうならない為に、ボス部屋前までは俺がやって行く。
……まぁ、ズーフ相手にスイッチが入って、あのモードで戦闘してそうだけどな。まぁ、魔力が尽きるまでと言う制限時間が有るだろうけど、その時まではかなりの武器になるからな。今は、少しでも体力と魔力の回復に努めてもらおう。
其のまま、ボス部屋まで出現するモンスターをスコップで吹っ飛ばして行く。その際に何時もはソナー形式でやる探索を、常時発動でやってみると、魔力が一瞬高まる位置があり、そこでモンスターが沸くと言う現象が確認できた。
恐らく、美咲さんはこの状況を見ていたのだろう。溜まった魔力が変化した所にスコップを振るうと、正にリスキル状態になったから、恐らく間違いが無いはずだ。
とは言え、モノクルも持っていなければ魔法を使えない美咲さんが、何故この景色を認識出来たのか疑問だが、それに関しては先ほど美咲さんと話した通り、地上にもどってから調べる事にしよう。
「さて、ボス部屋前まできたな」
「うん! ありがとう! 後は……腕試しをしてくるよ!」
「ま、大丈夫だとは思うけど気をつけてな。俺は……少し六層の様子を見てから地上に戻るよ」
「解ったよ。そっちも気をつけてね」
挨拶もそこそこに、再度美咲さんと別行動。六層行きの階段を下ってから、扉を開けるとまぶしい光とともに、何も変わらぬただただ広い草原が姿を現した。
「草原って事は変わらないみたいだな。後は……次の階層への位置とモンスターの変化が有るかどうかかな」
たしか、六層の敵はゴブリンだったな。此処から鉄串を使うようになったんだっけ。うん、何とも長い付き合いだ。まぁ、ソレを言ったらスコップと剣鉈もなんだけど、この二つは完璧にサブだったり、戦闘以外で使う道具になってるからな。
「さて、双眼鏡を使ってゴブリンが居るかどうかのチェックだけしたら、地上へと戻りますか」
懐かしの双眼鏡を、バックパックから取り出し、少し進んでから周囲を確認して行く。
「おっし、ゴブリン確認! 数も種類も……変化が無いみたいだな」
とりあえず、これで今日の調査は終わりだ。まぁ、初日だからな。色々と感覚を思い出したりするってのも有るから、今日は先を急ぐつもりは無い。
それに、イオが入って良いのかどうかって言う話もあるしな。
さてさて、先ずはダンジョンから出ておくかな。後は、美咲さんが上手く行く事を祈って待ってるとしよう。
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