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百二十話

 朝になったので、念の為に小屋周辺と小屋の中を調査しておく。夜中に戻って来たオークは居なかったので、大丈夫だとは思うけどな。

 オーク達の小屋の中も探ってみたけど、有ったのは食料と少ない建材ぐらいだった。なので、拠点を作る前の周辺調査用なのは確定だろうな。まぁ、持って帰る物も無いみたいだから、そろそろ帰還したほうが良さそうだな。

 まぁ、あの長いトンネルをまた通らないといけないけど、今度は警戒をしながら無音で進む必要がない。なので少しは気分は楽な話だし、音を出して良いってことはもっとスピードを出して良いって事だ。行きよりは時間を短縮できるだろうな。




 瘴気前の拠点へと到着。結構なスピードで戻って来れたので、このまま報告に向かっておく。


 簡易に作られた拠点の協会出張所といえる小さな建物に入ると、そこでは入谷さんと守口さんが話し合いをしていた。


「瘴気と地下の調査ですが、地下調査の方に進展が有ったみたいですね」

「ほう……何が発見されたんだ?」


 お? これは正常化関連の何かが発見されたのかな? これは、かなり良い情報の予感がする。その証拠に、入谷さんがお顔が凄く楽しそうだ。


「まだ調査からの予想段階ですけどね。どうやら、彼等が捕食したモンスターの魔石が山積みになった場所が、特殊な環境を作り出す〝何か〟になってたようですね」

「ちょっとまて、それは……どういう事だ?」

「研究班の言ですが、大量の魔石により、ダンジョンや神樹の森的な環境になってたみたいですね」


 うわぁ……それは、同じ状況を作るのって難しすぎないか? オーク達が如何いう風に環境を整えたのか疑問だけど、偶発的の可能性もある。

 それに、魔石だけなら村でも大量に保管して置いてある場所もあるからな。何か他にもトリガーがあるのだろう。

 とはいえ、一歩前進したのは間違いが無さそうではある。


「疑問点も増えましたが、今も研究班が調べてますからね……遠からず何か答えが見つかると思いますよ」

「ふむ、そうなればダンジョンを潜れる訳だな」


 守口さんも思わずニヤリと笑みを見せた。しかし、相変わらず村の研究班は反則的な集団だよなぁ。彼等が居れば、何とかなるんじゃないか? と言う感覚が出てきて仕方が無い。


「おや? 白河君戻って来ていたんですね。調査はどうでしたか?」

「はい、今戻りました。それと、調査なんですけど……」


 小屋が有った事を皮切りに、上位オークが一匹にノーマルオークが四匹の編成で、周囲を調査していた事と、オーク達をその場で討伐し、小屋や周囲を調査してみたが、村側の拠点みたいに大きなものは無かった話をして行く。


「……なるほど。その状況なら、問題なく倒せるので奇襲したと言う事ですね。……まぁ、少し思うところもありますが、十分な成果ですし、白河君なら逃げるタイミングを間違える事も無いでしょうから、適切な判断と言う所ですかね」

「調査の仕事で戦闘を仕掛けるとか、我々であれば罰則だがな。まぁ、それでも今の状態だと、出来るならやったほうが良いのも解る。中々面倒な世界になったもんだ」


 確かに組織として行動しているなら、俺の行動は独自の判断ではあるし、調査をしたのであれば報告をしなくては意味が無い。それに、俺はただでさえ単独行動だったからな。逃げて報告に走る人も居ない。

 ま、そう言った組織であれば、単独行動もやらない話ではあるんだけど。


「しかし、白河君が最初に帰還ですか。しかも殲滅もしてますからね」

「運が良かったとも言えますけどね。村の側にあった拠点みたいな状況であれば、急いで撤退でしたし」

「そうなると、討伐隊を組まねばならないか。まぁ、上位が数匹程度なら我々も出るからな!」


 報告後に少し話をしていると、ドタドタと駆け込んでくる足音が聞こえた。


「守口リーダー戻りました! トンネル先ですが、拠点が出来つつありましたが、我々が到着した時には既にもぬけの殻でした!」

「そうか、ご苦労! 少し話を詰めて行きたいから、他のメンバーは解散し休息を取るように伝え次第、お前は後で此処に戻ってくるように!」

「はっ! 皆に伝え次第戻ってきます!」


 おー……しっかりと上官と部下をしているなぁ。それにしても、拠点は既にオークが撤退してたのか。

 そうなると、既に地下が落ちた事に気がついて、行動を起こしたオークが居るのだろう。……何処かで、反撃の機会を狙っているとなれば面倒だ。


「……彼等が調査した場所と、村や街との位置は如何いう感じでしたっけ?」

「あー、そうだな。地図からみて……トンネルの距離を考えるとだ」


 地図の上に透明シートを被せて、其処にオークの拠点などを描いていき、其々の位置関係を確認して行く。


「ふむ……この位置づけであれば、逃げる方向が楽なのは此方とは反対側だが」

「村や街側に向かう道だと難所が幾つか有りそうですしね」

「一応、トンネル先から此方側に向かいつつ、探索をする部隊を用意するか。まぁ、これは我々に任せてくれ」

「良いのですか?」

「……どんなモンスターが居るかも調べる必要があるからな。それに何か有るとすれば街側が先だからな」


 イオを動かせるのであれば楽ではあるけど、イオに頼りすぎるのもな。ここは、彼等の提案に乗るのが良さそうだな。入谷さんも守口さんの提案に乗るつもりのようだし、彼等の能力から考えてもそれが一番良い判断だろうな。

 そんな話しをしていると、またもや外から駆け込んでくる足音が聞こえてくる。


「入谷さん戻りました」

「お、影山君お帰り。調査はどうでしたか?」

「小屋を見つけました。その中には上位オークがニ匹とノーマルオークが三匹でしたね」

「なるほど……それで、狩って来たんですか?」

「いやいや、上位二匹とか無理です。なので、すぐさま撤退し報告しに来ました」


 上位二匹か……確かに、奇襲を仕掛けるのは賭けと言えるな。影山さんの判断は一切間違って無いだろう。それを裏付けるように、入谷さんと守口さんも納得するかのように頷いている。


「では、討伐隊を出しますか。上位二匹とノーマルオーク三匹ですし、こちらは私達がやりますね」

「お? 我々も人員を出すつもりだったが、良かったのか?」

「えぇ、守口さん達には難所超えの調査もありますし、それに、後二箇所の報告もありますからね。人は残して置きましょう」

「確かにな。解った、小屋のほうは任せる」


 これは……俺も行ったほうが良いかな? どうなんだろうか。


「あ、白河君は待機しててください。すでに一箇所単独で殲滅して貰ってますし、休憩も必要でしょう」

「そうですか。では、お言葉に甘えさせてもらいますね」


 そう言うと、入谷さんは人を呼んで部隊編成をしつつ、討伐に向かう作戦会議をしだした。

 守口さんもまた、オーク捜索隊の編成と作戦会議を行なう為に、行動しだした。


 さて、現状やる事がなくなったな。まぁ、待機と言う名の休息を貰ったから、此処でゆっくりとしていようか。村に戻るのは何かあった時に問題があるだろうからな、名目も待機だし移動するのは止めておくか。

 こういう時は、イオと戯れておくのがベストだろう。……最近、休憩はイオと戯れる事ばっかりな気がするけど、まぁ良いか。イオは可愛いしな。

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