十一話
用意した攻略ノート別紙版。紙に穴が開いていて、バインダーに纏めれるタイプにした。後々追加できるしね。きっと他の人はやってても秘匿してそうだけど……タイミングが来たんだから出すしかない!
授業が終わり、皆がわいわいがやがやと話してる中、気配を消して教室から出る。後は協会に向かってダッシュだ!
協会に入ってキョロキョロウロウロする。まだ来てないようだ。受付のお姉さんが不思議そうな目でみてる! 恥ずかしいじゃないか! まぁ時間指定してなかったし、学校からダッシュしてきたから先について当然か。
待つこと十数分程した時、協会の入り口から二人組みが入ってきた。
「白河君、待ちました?」
「ん? 其処までは待ってないよ」
二人組みは藤野さんだったようだ。ちらりと隣をみる……ダンディーなオジサマだ……もしかしていけない関係!?
「やぁ、君が白河君だね。私は美咲の叔父の桜井 信久だ。今日はよろしく頼む」
「い、いえ。こちらこそお願いします?」
失礼な邪推をしてしまったのは気づいてないよね? しかし、〝神隠し〟にあった従姉妹の父親か……彼も何かヒントが欲しいんだろうな、娘さんの行方の。
本題に入る前に受付のお姉さんを呼ぶ。今日は話があるからと時間を取ってもらっている。
「協会の人にも提供する心算でしたので、一緒に説明という形になりますが」
「それは構わないよ。寧ろ姪が半ば強引に約束したようなものだろう?」
「いえいえ、心中を考えれば……まずは、此方をどうぞ」
資料を配る。念のために十部程作ったんだけど、この場にいるのは三名だから予備のほうが多いな?
「今お配りしたのは、独自で調査して纏めた此処のダンジョンの一層から三層までのデータです」
「え……ちょっとまって? データって之って地図? どういうこと?」
お姉さんが目をくるくるさせてる? 協会ではデータ取ってなかったのか?
「えっと、四月から今の十一月までですけど、一切ダンジョン内で変化がないので正確かと。マッピングしたのは一月単位で確認しましたし、可能性があるとしたら年が変る時、ダンジョンができた日を元にした一年単位とか? まぁ現状変化が無いので使えるかと」
「そんなの上からも聞かされてなかったわよ!? アレ? 秘匿されてる? もしくは誰もやってない? 他にダンジョンに入ってる人からも聞かないわよ……」
「他の人達だったら、利益の為に隠してる人も居るかもしれないですね。上の方々の考えは……わかりませんが」
隠す理由なんて無いはず。と思うのは一般人だからだろうか? 自衛隊や警察が念入りな調査をしないはずが無いという思い込みかも? うん、解らないな。
「しかし、之があれば安全な位置や次への一番簡単に進める道が理解できるという事だね?」
「はい、桜井さんの言うとおりです。マップを見ていただければ分かりますが、定期的に安全と思われる場所もしくは、モンスターに奇襲されずに対処できる休憩場所が解ると思います」
「いやはや、少しでもダンジョンの攻略について解ればと思ったが。これほどの物とは」
「ねぇ、次の項目もすごいよ! モンスターの特徴について書いてある」
まぁ犬型しかデータ無いんだけど、それでも知らないよりは良い。今回資料にしたのは、マッピングとモンスターの性質等。火薬やらなにやらについては……秘密だ。
「しかし、ふむ、なるほど。どうやら皆ゲーム的な感覚でモンスターと対峙してた人が多かったのかしら?」
「ゲーム的と言うと、直接バトルみたいな感じですかね?」
「資料読んでみて、何でこんな事気が付かなかったんだろうって思うことが一杯よ」
「香辛料や罠とか他にも書かれてる行為は狩猟なら普通、しかしモンスターと戦うってなると気がつかない人が多いと?」
「はぁ……この書かれてるの読めば、君が殆ど無傷でダンジョンソロをやってる理由が解った気がするわ、お姉さんびっくりよ」
なにやら、お姉さんと桜井さんが意見を言い合って勝手に納得したようだ? ソレは良いがビックリされるような事なのか……他にもやってそうな人居るんじゃないかなぁ、ラノベ脳なら間違いなくたどり着く内容だろうし。
「とりあえず、協会としてはこの資料を基に調査しようと思います。調査内容が出次第ですが、報酬が出るように上と掛け合ってみますね」
「あー……報酬は無いものだと思ってたので、ありがとうございます?」
「知識や情報は力よ? 其れを無料で貰おうなんてあつかましいでしょ。出すものは出させるわ」
ふむ、確かに情報は大切だ。其の為にデータ取ったりしてたわけだし。
「そうそう、今四層よね? そっちのデータはどうなってるの?」
「こっちはまだ纏めてすら居ないですね。五層のデータが集まったら四層と同時に纏め様かと」
「なるほど……データが出来たらお願いね?」
「はい、っというか、自衛隊や警察は纏めてないんです?」
「そっちは……解んないのよネェ。管轄が違うし」
まぁ協会と組織違うからな。やり取りがあっても限られた人間だけって事か。
「白河君、今日はありがとうね」
「まぁ気にしなくて良いよ。いつかは出そうと思ってた情報だし」
「それでもだよ。白河君が普通に協会に提出してただけだったら、この情報を知る事ができるのもっと後だしね」
「其の通りだぞ? 私達は君の好意のお陰で、今日知る事ができたのだからな。ここは素直にお礼を受け取ってくれ」
どこかでやったようなやり取りだなぁ……
「そういうことでしたら」
「さてもう一つ聞きたい事があるのだがいいかね?」
桜井さんの目が据わってる? 一体なんだろうか? 何かやらかした?
「えっと……何でしょうか?」
「君と姪の美咲の関係についてだ……手だしてないだろうな?」
「えええええええええええ!? ちょっと叔父さん!?」
「黙ってなさい! 之はとーーーーーーーっても大切な事だ!」
「いや、手もなにも……」
「それ以上の事をもうしたのか!? 拳で語り合う必要がありそうだな!」
「出してません! 出してませんって!」
「なんだと! 俺の姪は可愛くないのか!」
「あああもう、なんて答えたら正解なんだこれ!?」
「叔父さん、いい加減にして! クラスメイトだから!」
実にてんやわんやだ、まぁ行方不明な娘を心配して必死に手懸りを探そうとしてくれる、姪が可愛くて仕方ないんだろうな。だが、理不尽を甘んじては受けたくない!
「とりあえず、この話はまた今度だ!」
「いや今度も何もないですよ!」
情報は一部公開したから今後ダンジョンの歩き方が変わってくるだろうな……怪我人が減ると良いな。
「そうだ、今度ダンジョン内で教えてもらって良い? 叔父さんとお父さん付いてくると思うけど……」
「え……まぁ、資料だけじゃ判らないこともあるだろうし時間がある時なら?」
「ありがとう!」
「おい、今言いよどんだな? 私や美咲の父が居ると邪魔だという事か?」
「違いますから!」
うん……保護者参加型のダンジョン研修のようだ……勘違いされないと良いなぁ……




