百十五話
キングの剣撃を盾持ちの人達がを巧みに使いガードしていくものの、ライオットシールドにどんどん罅が入って行き、もはや耐えられなくなりつつある。そんな中、俺の持っていた盾は罅すら入っていない。
盾にも魔物由来の素材や魔石を含ませているから、他の人達がもつライオットシールドよりも長持ちするみたいだ。
そんな風に盾持ちが最前衛に頑張っている最中に、遠距離攻撃主体で攻撃するが、掠り傷をつけては回復されの繰り返しだ。いたちごっこすぎる。
「キングはかなり血を失ってるはず何だがな。まだまだ元気なのか」
「瘴気は流れた血も回復するんですかね? だとすれば結構厄介ですね」
なるほど、瘴気で血液を補充か……たしかに、入谷さんの言うとおり厄介だ。ゲームでレベルアップした時に体力や魔力が全部回復するアレだ。レベルアップ前に態と無茶な戦いをしてから、一気に回復すると言うシステムを上手くついたプレイだ。
しかし、やる側としては便利だが、やられる側になると激しくムカつく行為だな。ダメージリセットで全てやり直し、しかも強化される訳だからな。さて、削りなおしか……どうしたもんか。
とりあえず、どんどん攻撃を続けないと。とはいえ、そろそろ遠距離攻撃の残弾が無くなるな。
イオが出発してから戻るまでの時間を考えれば、まだまだ時間がかかるはずだけど……イオの最高速度って確認して無いからな。其処に期待するぐらいしかないか。
「遠距離攻撃もだが、盾が破壊された場合も考えないといけないか」
「守口さん側の矢の残量ってどんなものですか?」
「正直、俺達が持ってきた矢は通用してないからな。受け取った矢を使っているが、それも後一人二発から三発撃てば終わりだろうな」
彼等が持ってきた矢は、早々に破棄した。モンスター素材を使ってない矢だった為に、薄傷すら付けれなかったからだ。
そして、その後に俺達の持っていた矢を渡した。矢も俺達が撃つよりも、キング相手にダメージが通っているが、それも微妙な差だからな。矢が刺さる深さが一センチ違うかどうかだ。
まぁ、それでもその一センチが、キングの回復速度にも多少ではあるが差があるので、本来なら矢を全部渡したかったんだけどね。こちら側の牽制や仕事が無くなると、それはそれで問題だ。
それにしても、矢の数が無いか。俺も鉄串の数がもう無いからな。しかも、キングの関節やら目やらを、一つも射抜けなかったのは辛い。できれば、どこか一つ破壊さえ出来ていれば、少しでも有利になったのに。
仕方が無いので、メイン武器を両手で持ち突撃準備を取る。他の武具は他の人に渡してるからな。
そんな準備をしていたら、遠距離攻撃の数が減って行き……とうとう、矢が尽きたのか遠距離攻撃が魔法オンリーになった。
「はぁ……有効打が一つも無かったか」
「魔法以外は近距離をするしかないですね……どうしましょうか?」
「魔法が続く間は接近しなくてもいいだろうな。ただ……魔石が届くまで魔力が続くか問題だな」
問題は其処だろう。魔法ブーストするにしても、魔石爆弾で攻撃するにしても、彼等に任せたほうが良い。とはいっても、盾以外で接近はしたくない。
だが、その盾もライオットシールド側は、攻撃を後数発耐えれたら良いぐらい罅割れ状態になっている。
「時間が足らないか……イオはまだ戻らないだろうしな」
握る武器に力が入る。あんな馬鹿みたいな身体能力相手に接近戦。まぁ、緊張するのも仕方の無い話だ。いつぞやのオーガよりも上の相手をする。……くそ、心臓が煩くなる。
あの時は、あの柴犬のお陰で生き残れた。まぁ、あの時と違って沢山の人……それも、元自衛隊や警察の人達で編成された部隊が側に居るが、それでも恐怖が思い出されるのはどうしようもない。
「おちつけ……とりあえず深呼吸深呼吸」
そうだ、三十層附近で戦える人達が側に居るんだ。大丈夫大丈夫。とりあえず、自己暗示をかけて行く。
それから、魔力を足元に溜めて一気に飛び込む体勢を作る。
「……一瞬。一瞬だけ打ち込んですぐに真っ直ぐ走り去れば大丈夫だ」
魔法が途切れる瞬間を狙って、一気に接近! 其処から、ハンマー部分でキングの膝を狙い、魔力を思いっきり武器に通してから、振り抜く! そして、其のまま後ろを見ず真っ直ぐ足に魔力を通して走り去る。
「うわっと!?」
ただ、通り過ぎざまに攻撃したものの、キングも殴られて気がついたのか、その手の大剣を振り下ろしていたらしい。直撃はさけれたけど、剣圧で思いっきり吹っ飛ばされてしまったか。
ゴロゴロと転がりながら、その勢いを利用して起き上がり、反転してキングの状況を確認する。
どうやら俺がやった後、直ぐに魔法部隊が援護してくれたみたいで、キングからの追い討ちが無かった。
そして……膝の部分だ。手ごたえはあった。……少しでも通ってれば良いんだけど。とりあえず、様子を見てみると、キングは膝を少し庇う様子を見せている……よし、ダメージがしっかりと通ってたか。
「よし! これで時間が稼げるはず!」
「ちょっと白河君。あまり無謀な事をするとか、心臓に悪いので止めてください」
「まったく……あんな面白い行動をするとはな。とは言っても、あんなの俺達じゃやらないぞ。もう少し、安全にやってくれ」
おっと……割と勝算はある積りでやったけど、傍から見ればただの無謀に見えたか。
とは言え、彼等もコレで時間を稼げるとわかっているから、その顔は苦笑と言ったところだ。
そして、膝にダメージを受けたキングは、反対の足で上手く踏ん張って魔法の攻撃に耐えつつ、盾持ちに攻撃を繰り返している。
そして、その攻撃でとうとうリタイアされていく盾メンバーが出てきた。とはいえ、死者や重傷者が出た訳じゃない。その盾が破壊され吹っ飛ばされた状態だ。
「グァ! 盾が壊された! 後は任せた!!」
「おう! 下がって魔法部隊に合流しろ!」
そうか、盾を使っていたからといって、魔法が使えない訳じゃないのか。恐らく、ガードをする為に強化魔法を掛けたりはしていただろうけど、それでも魔力消費量的にまだまだ魔法を使える量は残っているのだろう。だからこそ、魔法攻撃部隊に合流か。
こうして、魔法攻撃部隊のメンバーが増えるが、その分盾の数が減る。
火力が上がってる分、キングの防御の数が増えている……とは言え、それだけ安定度も下がる状態に為っている訳で、盾が一枚減るとそれで加速されるかの様に、また一枚と盾が破壊されて行く。
「だぁぁぁぁぁぁ!!」
カイトシールド持ちがキングに再び盾ごと突撃。そこから、思いっきりキングの膝に蹴りをぶち込んでいった。
GUAAAAAAAAAAA!!
思わずと言ったところなんだろうか。キングが膝に蹴りを受け、吠えながらガクっと体勢を崩した。
「おいおい!? 俺の部隊メンバーが白河に触発されたのか、突撃したぞ!?」
「確かに、チャンスだったんでしょうけど、良く飛び込めましたね」
上半身に魔法を集中させ、その魔法に対してガードをしていた為か、上手い具合に視界から外れ突進するチャンスが出来たみたいだ。
とはいえ、やっぱり見ていた側からすれば、良く突撃出来たなとそんな風に見えてしまうみたいだ。
しかし、此処は続くべきだろう。膝を着いたキング相手に、後ろから一気に接近。其処から、再びハンマーを使い、今度は地面に手を突いてる肘を目掛けて殴打! その後、奴が持つ武器を蹴り飛ばしてから、一気に離脱!
「よし! 成功!!」
「だから! 心臓にきつい事を皆してしないでくださいよ……まったく」
「ははは! こうも成功して行くとはなぁ。とは言え、次成功させるのは難しいだろうからな。自重してくれよ」
まぁ、流石に三回も奇襲が成功すれば、奴も警戒するだろうな。しかも二回目と三回目は連続での攻撃だ。警戒しない訳がない。
GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
キングが叫び、壊れた膝も気にせず思いっきり立ち上がった。……発狂状態か? もしかしたら、コレはキング化をする前のジェネラルと同じだろう。
何もかも気にせず突撃を開始し出したキング相手に、カイトシールド持ちの人も耐えれず盾ごと吹っ飛ばされていった。
「ちっ……ダメージは与えれたが、こうなるのか。そういえばバーサクモードと報告にあった気もするが、ここまで強化されるのか」
「バーサクモードですか?」
「あぁ、今ふと思い出したんだがな。あの状態に入ると、攻撃力・防御力共に桁外れとなるようだな」
なるほど、確かにゲームとかでもよくあるやつだ。その状態にはいると、モンスターによって行動や強化状態が変わるあれだな。
ジェネラルもバーサクモードに入ってたと思うけど、その時は一心不乱に瘴気を目指してたから、それに気がつかなかったという事かな? まぁ、どちらにしても、キングが恐ろしいほど強くなってるって事で良いだろう。
暴れるキングに魔法を撃ち込んで牽制するも、ジェネラルの時と同様、一切通用しなくなり、じわじわと此方へと接近してくる。
「これは、割と絶望でしょうかね?」
「膝の破壊で痛みは今気にしてないみたいだが、動きには多少影響があるんだろうな。動きは微妙に悪いみたいだ」
微妙に破壊された側の足を庇うように動いている。バーサクモードに入る前に膝を破壊出来ていて良かったな。もし、膝を破壊する前にバーサク化していたら、色々まずかったからな。
盾持ちが全員飛ばされ、盾壁が無くなり、真っ直ぐ進んできたら俺達の元へとたどり着く。まぁ、逃げつつ魔法を打ち込んで行くんだけどな。
そんなタイミングで、待ちに待った状況が訪れた。
「ミャン!!」
息を荒くしながら、俺達の下へとイオがたどり着いた。その体にはマジックバッグが括りつけられている。
よし、これで勝ちだ! イオの体から鞄を外し、中にある魔石をドンドン取り出していく。
「守口さん! 魔石が来ました!! これで一気にやってください」
「おお! ベストタイミングだな! よし、魔法部隊全員魔石を持て!」
イオが持ってきた魔石を全て使い、キングに向かって臨界状態にした魔石を投げる人、威力ブーストされた魔法を撃つ人と言う、全てを同時に撃ち込んだ。
投げ込まれた魔石が爆発する前に、土の壁が作られ、キングを閉じ込めた後、その中で大爆発がおきた。
その、大爆発で壁が一緒に破壊されるが、密閉された状態だったためか、その爆破の威力は凄まじいモノとなっていた様で、中に居たキングが倒れこみ、がくがくと震えている。
「……これだけの威力を喰らっても、生き残ってるとかとんでもない生命力ですね」
「ただ、この状況なら最早動けんだろうな」
後は、止めを刺すだけだ。もう復活する事も無いだろうから、一気に介錯をしてやろう。
足と腕と武器に魔力を溜めて、一気に飛び込み斧部分で首を狙い振り下ろす! ドン! っと、武器が地面を叩き付け、同時にキングの首がコロリと転がった。
「……コレで終わりか」
思わず呟く。かなり長い戦闘だったからな。なんとかやり切った……そんな気分だ。
実際、街からの援軍が無ければ、イオが間に合わなければ、俺達の中に死傷者が出たり下手をすれば全滅していた筈だ。それを考えると、今回はかなり運が良かっただろう。
とはいえ……こんなぎりぎりの戦いが最近増えてるきがする。もう少し楽にやりたいんだけどな。
そんな事を考えるが、どうやら周りでは大歓声が上がり、喜びの方がでかいようだ。
ま、今はそれに便乗するか。検証とかは後回しにして、一緒に盛り上がってこよう。
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