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百十二話

 圧倒的、言葉にすれば其れが一番しっくりと来る。そして、何が圧倒的なのかと言えば、街から来た援軍の守口さん達の技術だ。

 正直、俺達の連携が児戯に見えるほどの洗練されたチームワーク。そのフォローの仕方など一つ一つの動作がコンマレベルの差だが、確実に差を作り出していて、結果全ての行動がまったく違う速さに見える。

 それと、一人一人のスペックも違う。単体でも上位オークと戦えるのでは? と思うレベルだ。それでもチームを組んで確実に戦っていくのは、やはり元自衛隊がベースだからだろう。

 後、さり気無く魔法を打ち込んでいるのも大きいな。やっぱり奥を探索してた人達だからだろう。メンバーの全員が何かしら魔法を使っている。まぁ、その使い方が殆ど防御系に使われているのは……一般人を守る為の技術を伸ばしたからだろうな。


「ははは……乾いた笑いしか出ませんね。此処まで力に差があるんですか」

「まぁ、彼等はその殆どがニ十層から三十層レベルを潜ってた人達ですから、その点を差し引けば……村のメンバーだって負けてませんよ」


 入谷さんが指揮をするメンバーも、一匹ずつしっかりと対応している。いるのだが、彼等の技術を見た後だとな、遅いよ! と言いたくなるのは仕方ないのかもしれない。


「それにしても、盾はやっぱり使えるみたいですね」

「守口さんでしたっけ……彼等は一パーティーに付き一人は持ってますよね。ライオットシールドでしたっけ? よくまぁ、破壊されずにガードしてるなぁ」


 入谷さんが彼等の持つ盾を見て感想を述べたので、俺も見てみるけど、あの盾はなんで壊れないんだろうな? もしかして、自衛隊とかには婆様みたいな事をして盾を作った人がいる? それとも、彼等の盾捌きが異常なまでに上手いのかな。

 攻撃を受ける時に、ただガードするだけじゃなく、上手く逸らしてるんだよな。微妙な角度具合だけど……正面からは一切受けていない。

 あのライオットシールドが元々使われていた盾なら……魔粉仕様では無いのでモンスター相手だと、ただの透明な盾でしかないからな。


「そこら辺も話を聞いてみないといけませんか……折角情報提供で色々アドバンテージを取れた筈なんですけど」

「今後に繋がるから良いと思いますよ? 寧ろ前の魔粉の技術は秘匿してた訳ですし、カードは一杯ありますよね? それに……此処まで彼等が強いなら、魔粉製の武具を使ってもらえば対モンスター相手に有利になりますよ」

「確かにね。それに交渉カードにも出来るのも大きいね」


 戦場を確認しつつ、入谷さんと色々と話をしていく。まぁ、そんな事が出来るのも入谷さんは全体を見ながら指示出し、俺はジェネラルに対して足止めの為に魔法を使っているからだが。

 ただ、問題があるとすればだ……。


「なんだかジェネラルの傷が治ってきてる様に見えるんですけど」

「……奇遇だね。白河君にもそう見えるのかい?」


 やっぱりか、入谷さんにもイオがジェネラルに付けた傷が、じわじわと治っていってる様に見えているか。

 上位オーク自体は、皆が上手い具合に狩ってくれているから減ってはいるが……それでも、まだまだ残っている。

 まぁ、魔法を使ってくる杖持ちを、守口さん達が一気に落してくれたのはありがたい話だ。

 弓持ちも、イオと影山さん達が上手く奇襲をして潰し終わった所だ。

 これで、残っているのは剣と槍と無手で、その内だと剣と槍は無傷で残っているが、無手の奴は四匹討伐したらしく残りが八匹で、全てあわせて二十二匹残ってる状態か。因みにジェネラルは足止めをしているから、その内訳からは除外しておく。


「とはいえ、上位オークが残ってる間に、ジェネラルが復活しそうな気がして仕方ないな」

「白河君、魔石がそろそろ壊れるのでは? 直ぐ交換して魔法を掛け直す事は出来ますか?」

「……ジェネラルが直ぐ暴れたら難しいですけど、まぁ、やってみますよ」


 コンマレベルだけど魔法が掛かってない時間が出来てしまう。直ぐ交換できるように、既に右手には新しい魔石を用意してあるけど……ジェネラルがその隙を見逃すだろうか? 怪我をしている状態であれば大丈夫だろうけど、じわじわ治っていってるのが怖いな。


 兎に角俺は、ジェネラルから目を離さないようにしないと。現状遠距離攻撃が無くなったから、盾でガードをする場面も先ず無い。

 守口さん達も、俺が魔法でジェネラル相手に何かをしていると理解していて、上手い具合にフォローしてくれているから、近接する上位オーク達も居ない状態だ。

 討伐されてる無手オークの殆どが、俺に奇襲をしようとした奴が、横から攻撃を喰らってというのモノだったりするけど。それ以外の近接オーク達は、攻撃と防御共にバランスが取れてるみたいで、現状だと一進一退の状態だな。

 まぁ、守口さん達は上手く押しているみたいだけど、倒しきれていないのは何か攻撃力が足らないのかもしれない。


「あれだけ上手く戦えているのに、倒しきれないのは武器の威力ですかね?」

「かもしれませんね。動きが如何見ても、守り牽制する為の動き方ですし」


 ガードを意識したオークには刃が立っていないか。そういえば、無手のオークを倒した時も、後ろから奇襲で殴り倒してたな。

 なら、やるべき事は一つか。


「守口さん!! 俺の予備の武器を貸すので使ってみてください!」

「武器か! そういえば、君らの武器は奴等に通ってるみたいだしな! 借りれるのであれば助かる!!」


 右手の魔石をくわえてから、剣鉈の二本とスコップを守口さんが居る方へと投げる。

 武器といいつつ、実際は日常品みたいな道具だ。当然それをみた守口さんは、一瞬きょとんとした感じになったが、すぐさまニヤリと壮絶な笑みをみせ、投げ渡した武器を拾っていく。


「あはは、良い道具のチョイスだな! 予備の武器としても、作業としても使える物か! ま、これで三人は通用する武器を手に出来る訳だ!」


 どうやら守口さんはスコップを特段気に入ったらしい。剣鉈を別の二人に渡して、彼はスコップを両手で持ち、上位オークへと突撃して行った。


「……やっぱ、スコップ万能説は自衛隊でも変わらないんですかね?」

「実際、スコップは使えるよ? 私もスコップをサブに持ってるし、戦闘メンバーの中にはメインで持ってる人も居るからね」


 メインを変えた自分が言うのも何だけど、確かにどんな状況でも使える武器兼道具だからな。便利と言えばかなり便利だ。

 そんなスコップを持った守口さんが……無手オークをフルボッコにして動けなくなった所に、止めだ! とスコップで突きを放ち、無手オークを討伐していた。


「ははは! こいつは良い! 実に良い物を借りれたもんだ! おし、次いくぞ次!」

「リーダー!? 今度は俺にも其れ貸して下さいよ!」

「断る! このスコップは俺が使うからな!」


 ……何だかキャラが壊れる程テンション上がってないか? 剣鉈の二人もその切れ味に感動したのか、どんどんと前へ前へと進んで行っている。


「……正直、私も予備武器を貸したほうが良いんでしょうけど、万が一の為にとっておきたいですからね。いやはや、何とももどかしい」


 入谷さんが、自分の予備を貸すべきか少し悩んでいる。まぁ、俺の場合だと、魔法で行動阻害がメインだから貸せたようなもんだ。そう言った意味では、入谷さんも貸し出せそうだが、彼は現状だと俺のガードでもある訳で、簡単には武器を手放せると言えない。


「まぁ……大丈夫じゃないですか? 三つだけの貸し出しですが、殲滅速度一気に上がってますよ?」

「確かにそうだね。余裕があるなら……私の武器も貸そうかな」


 まぁ、そのタイミングが来るとすれば、上位を討伐仕切った後にジェネラルと戦う時だろうな。

 っと、そろそろ左手の魔石が壊れそうだ。等々罅が入り出したな。ピシピシと音も鳴り出している。


「入谷さん、そろそろ魔石交換のタイミングです。注意よろです」

「そうか……。全員! ジェネラルにも注意! 下手をすれば暴れるぞ!」


 入谷さんがそれを口にしてから数秒、魔石がパリーンと言う音と共に砕け散り、魔法が一瞬途切れた。

 すぐさま、新しい魔石に魔力を注いで、魔法を発動させる。が、ジェネラルは待ってました! と言わんばかりに、一気にその傷を修復。そして、直ぐに動き出そうとする。

 これは、間に合わないか! そう思ったが、酸欠の魔法は結構効いていた様で、ジェネラルの体がグラリと前方へと倒れこんだ。


 とはいえ、頭にピンポイントで魔法を掛けるには、頭が動きすぎだ。狙いが定まらない。最初はアイツの舐めプレイのお陰で、酸欠魔法が掛かったようなものだからな……。こうなったら、足場を悪くするしかないか。


「酸欠状態で上手く動けてないみたいですけど、頭が動きすぎで新たに魔法を掛けるのは無理そうです。なので、足元を最悪の状態にしますね」

「……そうだな、まずは上位オークを殲滅したいし、時間稼ぎが出来れば良い。頼んだ!」


 入谷さんに魔法を変更すると伝え許可が下りたので、ジェネラルが居る周辺の地面を泥沼へと変化させていく。当然だが、落とし穴も仕込んである。

 しかし倒れた後、あそこまでゴロゴロと転がるか? 酸欠や麻痺毒を受けたけど、その二種類はあんな風に暴れる理由にはならないはずだ。


「……何かの罠? いや、其れよりも何か弱点でも突いたのかもしれないな」

「とはいっても、その弱点ってなんでしょうね」


 謎だな。ジェネラルにやった行為なんて、水攻め・酸欠・膝裏と腰にイオが爪撃・麻痺毒による矢ぐらいだ。

 とはいえ、水攻めが弱点だったのならば、地上に飛び出てくる事なんて無理だろう。これは、選択肢から消える。

 酸欠は……確かに喰らってはいた。前のめりになって倒れたしな。ただ、あそこまでダメージがあるかどうかと言えば……保留だな。

 イオの爪は、まぁ切裂く以外の効果は無い。切り裂いた場所が急所だった? 否、それは無いか。もしそうなら、切裂いた時点で反応を見せているはずだ。これも、選択肢から排除して良さそうだな。

 後は麻痺毒だな。多分これが一番可能性が高いのでは? 良く見れば、あのジェネラル……全身を掻き毟ってないか? ただ、そう見えるだけかもしれないけど、麻痺毒によるアレルギー? それとも、正座を止めた後に来るアレか? どっちにしても、ゴロゴロと転がる理由に一番近いモノかもしれない。


「……白河君も面白い考えを言うね。まぁ、もし正座と同じなら何とも滑稽だけど」

「実際、あの麻痺毒が如何いう作用を起こしているか……解らないですからね。対モンスター用ですし、何処かで血流を圧迫し止めていても可笑しくは無いですよ」

「それは……もし、そんな効果があるなら、濃度を上げれば完全に血流を止める……何て攻撃手段にもなりそうだね」


 なんて恐ろしい攻撃手段を。まぁ、もしそんな効果があればだけどな。まぁ、アレルギー症状の方が可能性は高いかもしれない。何せ……あの麻痺毒は、雀蜂型モンスターの素材を使ったものだからな。

 元々、モンスター相手にも強力な作用があった。それを研究班が更に改良してたからな……ジェネラルオークですら涙目の効果に魔改造されてたって事だろう。


「っと、ジェネラルが穴に落ちていきましたね」

「まさか、転がりながら沼の中にある落とし穴に落ちていくなんて……」


 大きな泥飛沫を上げながら、沼の底へと沈んでいくジェネラル。まぁ、やつの生命力からして早々死なないだろう。だが、それでも十分に時間は稼げるはずだ。

 ほんの少しでも時間があれば良いからな。その証拠に守口さんチームが、今度は剣オークの首を切り落した。

 これなら、数分あれば残りの上位オークを半数以下にまで出来そうだし、それに俺も手が空いたから……そろそろ、上位狩りに突入するとしますか。

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